- 要領が言う引張材はケーブル・吊り材・ペンデル支承・グラウンドアンカー等。その定着部と挙動に影響を与える部材までが一組です
- 健全性Ⅳ(緊急に対策を行う必要がある状態)の第一の例示が「引張材に破断のおそれ」です
- 該当する構造は斜張橋・エクストラドーズド橋/吊橋/アーチ橋/吊床版橋/ドゥルックバンド橋/外ケーブル補強/ピン・ハンガーの7系統
- 要領は形式名で線を引かず、破断したとき橋全体に効く引張材を持つ橋かどうかを確かめよと書いています
- ケーブルは種類を特定してから見る。機械的性質・安全率・防食仕様が種類ごとに違います
- 内部の異常は外観に出ないことがある。錆汁・滞水・被覆の傷・線形の異常が外からの手がかりです
- 破断の要因は腐食だけではなく疲労、またはその複合。耐風対策部材の損傷も確認対象です
- 非破壊検査にも適用限界がある。要領はキャリブレーションの必要性まで書いています
橋梁定期点検要領(令和6年7月・令和7年3月訂正)には、本文とは別に参考資料が7本付いています。そのうち参考資料3「引張材を有する道路橋の損傷例」は、ケーブルや吊り材のように1本が切れると橋全体が落ちうる部材だけを集めた46ページの資料です。
この部材群は、点検の現場で扱いが難しい側にあります。数が少ないので経験が溜まりにくく、しかも見たい場所がたいてい被覆やコンクリートや保護管の内側にあるからです。この記事では参考資料3を原文で読み、どの橋が対象になるのか、外から何を手がかりにするのかを整理します。健全性の区分そのものの考え方は健全性の診断区分Ⅰ〜Ⅳとはにまとめています。
要領が言う「引張材」は3点セット
参考資料3は、自らの位置づけをこう書いています。
「本参考資料は,これまでの定期点検結果や直轄診断の実績等をもとに,ケーブル等の引張材を有する道路橋の定期点検の留意事項をまとめたものである。定期点検等,適宜,道路橋の維持管理において参考するとよい。」
対象の定義はこうです。
「道路橋の中には,引張材に破断等が生じることで,橋全体が致命的な状態に至る可能性や,橋全体の挙動に大きな影響を与えることが懸念されるものがある。例えば,以下の部材を有する橋はこれに該当すると考えてよい。」
「1)引張材:ケーブル,吊り材,ペンデル支承,グラウンドアンカー等」
「2)1)の定着部(引張材を定着するための定着具及び定着具を配置するための補強された部位)」
「3)1),2)の挙動に影響を与える部材」
読み落としやすいのが2)と3)です。点検の対象は引張材そのものだけではなく、それを留めている定着具と、その周りの補強された部位、さらにサドルや偏向部のように挙動に影響する部材までが一組になります。定着部そのものの異常は定着部の異常とはでも扱っています。
そして要領は、形式名で線を引いていません。
「これら以外の構造についても,定期点検にあたっては,破断等が生じたときに橋全体の安定や挙動に与える影響が大きい引張材を有する橋かどうかを確かめるのがよい。」
つまり「うちの橋は斜張橋ではないから関係ない」とは言えないということです。判断の軸は形式ではなく、破断したときの影響の大きさに置かれています。この考え方は、部材の役割から見ていく部材単位の判定と橋単位の判定や構成要素に求められる7つの機能と同じ方向です。
該当する構造形式7系統
参考資料3は代表的な構造を7つ挙げ、それぞれについて「引張材」「引張材定着部」「挙動に影響を与える部材」を名指ししています。
| 構造形式 | 引張材 | 引張材定着部 | 挙動に影響を与える部材 |
|---|---|---|---|
| 斜張橋、エクストラドーズド橋 | 斜材ケーブル、ペンデル支承 | 主桁側斜材ケーブル定着部、塔側斜材ケーブル定着部、ペンデル支承定着部 | サドル |
| 吊橋 | 主ケーブル、ハンガー | アンカレイジ(主ケーブル定着部)、ハンガー定着部、ケーブルバンド | サドル |
| アーチ橋(ローゼ橋等) | 吊り材 | 吊り材定着部 | — |
| 吊床版橋 | 主ケーブル、グラウンドアンカー | 主ケーブル定着部、グラウンドアンカー定着部 | 橋台 |
| ドゥルックバンド橋 | 鉛直PC鋼材、水平PC鋼材 | 鉛直PC鋼材定着部、水平PC鋼材定着部 | 橋台 |
| 外ケーブル補強された構造 | 外ケーブル | 外ケーブル定着部 | 偏向部 |
| その他(ピン・ハンガー等) | 吊り材 | — | — |
斜張橋のほかにフィンバック形式・斜版橋も「その他の構造形式」として図示されており、斜版橋については「内部に斜材ケーブルが配置されている」と注記されています。外から斜材が見えない構造にも引張材はあるという注意喚起です。
吊床版橋については、定着の方式で他碇式と自碇式が描き分けられています。他碇式はグラウンドアンカーで地盤に留めるため、橋の外側の地盤側まで含めて見ることになります。
7系統目の「その他」にはピン・ハンガーが挙がっています。参考資料3はここで「これら以外にも,定期点検においては,引張材については,その破断が生じたときに橋に与える影響を念頭におき,定期点検を実施するのがよい。」と、もう一度同じことを繰り返しています。
健全性Ⅳの筆頭に置かれている
引張材がなぜここまで別扱いされるのかは、第1章の健全性の区分の解説を読むとわかります。区分Ⅳ(緊急に対策を行う必要がある状態)の例示は、引張材から始まります。
「緊急に対策を行う必要がある状態とは,例えば,引張材に破断のおそれがあったり桁の異常な移動があったりするなど落橋のおそれがある場合,桁端部やゲルバー部,鈑桁形式の主桁ウェブ,鋼製橋脚の横梁のウェブなどに亀裂がある場合で損傷の突発的な進行で落橋のおそれがある場合,これらの他,上部構造,上下部接続部又は下部構造の構造安全性が既に著しく損なわれている場合など,…」
区分Ⅳは通行止めを含む緊急措置に直結します(健全性Ⅳは必ず通行止めになるのか)。第2章でも、慎重に状態を把握する必要がある道路橋の例として引張材が具体的に列挙されています。
「引張材の腐食や亀裂」
「・ケーブル本数の少ない斜張橋のケーブルの腐食,破断,定着部の破壊」
「・吊橋の主ケーブルの腐食,破断」
「・ニールセンローゼ橋のケーブル定着部やケーブル交差部の治具周りの腐食」
「・上下部接続部における鉛直方向の引張材の腐食,破断」
「ケーブル本数の少ない斜張橋」という但し書きに意味があります。本数が少ないほど1本あたりの分担が大きく、冗長性が効かないからです。ゲルバー部やPC定着部の扱いはゲルバー部・PC定着部の点検でも触れています。
ケーブルは「種類を特定してから」見る
参考資料3の本題は46ページの事例集です。冒頭にこう書かれています。
「これまでの定期点検結果や直轄診断の実績等をもとに1.で示した部材や橋の損傷例及び定期点検での留意事項を示す。なお,近接目視による変状の把握には限界があるため,必要に応じて非破壊検査技術などを適用することも検討しなければならない。」
「検討しなければならない」という語尾です。近接目視とは何かの限界を、要領自身がこの部材については明記しています。
ケーブルの役割と、壊れ方の連鎖はこう説明されています。
「ケーブルは、桁の死荷重や桁に作用する活荷重等を支持し、吊構造の橋においては、その張力を塔やアンカレイジに伝達する部材である。」
「ケーブルの破断にともない、支持していた荷重や衝撃の影響が他の部材やケーブルに影響を与えることで、ケーブル構造のバランスが崩れたり他の部材やケーブルの損傷につながるなど、橋全体の安全性に影響を及ぼす可能性がある。」
資料は防食方法の代表例としてめっき(1本のストランド)/めっきを複数本束ねたもの/めっき+ラッピングワイヤ+塗装/防錆油+ポリエチレン被覆/コンクリート被覆/途中に接合部がある例を並べ、さらにロックドコイル、平行線ケーブル、鋼心入りケーブルを挙げています。そのうえでの注意がこれです。
「■ケーブルには様々な種類が使われており、種類毎に機械的性質や安全率、防食仕様なども異なる。状態の把握にあたっては、ケーブルの種類を特定してその特性や構造を把握した上で、耐荷性能や耐久性等に関わる異常やその徴候の有無を的確に判断する必要がある。」
同じ趣旨が吊り材とケーブルバンドにも書かれています。吊り材は「吊り材には様々な種類が使われており、種類毎に機械的性質や安全率、防食仕様なども異なる。」、ケーブルバンドは「ケーブルバンドには様々な形状のものがあり、形状毎に性質などが異なる。状態の把握にあたってはその特性を把握した上で構造安全性や耐久性に関わる異常やその徴候を的確に判断する必要がある。」です。
実務に落とすと、現地へ行く前に竣工図・設計図でケーブルの種類と防食仕様を確定させておく作業が点検の一部になります。橋梁台帳に何が載っているかと基礎データ収集要領も併せて確認する場面です。
内部が見えない部材を外から推定する
参考資料3が繰り返し扱うのは「見たい場所が見えない」という条件です。掲載されている落橋事例は、いずれも内部の破断でした。
| 事例 | 資料の記述 |
|---|---|
| 島田橋 | 「コンクリートで被覆された斜材ケーブルが破断し落橋した事例」 |
| ポルチェベラ高架橋 | 「コンクリートで被覆された斜材ケーブルを有する斜張橋が落橋した事例」 |
| トロヤ歩道橋 | 「コンクリート内部にケーブルを有する吊床版橋が落橋した事例」 |
| 雪沢大橋 | 「ポリエチレン被覆されたエクストラドーズド橋の斜材ケーブルの定着部付近へ水が浸入し腐食・破断した事例」 |
雪沢大橋の項には、外観と内部の乖離についての警告が続きます。
「目視可能なケーブルの被覆に必ずしも徴候が現れるわけではなく、また、外部での徴候から想定するよりも内部で著しい損傷が生じている場合もあるため注意が必要である。」
「定着部が滞水しやすい構造となっている場合、定着部内部に水が浸入し斜材ケーブルが腐食する可能性があるため注意が必要である。」
では外から何を見るのか。資料が挙げている手がかりは大きく3つです。
1つ目は、被覆やコンクリートに出る間接的な徴候です。コンクリート被覆については「コンクリート内に配置されたケーブルが、グラウトの充填不足等により水の浸入を要因として腐食・破断した事例。」を示したうえで、「斜張橋やエクストラドーズド橋のケーブルがコンクリートで覆われている場合には、内部鋼材の変状は、コンクリートの浮き、剥離、錆汁、遊離石灰の析出となって現れることがあるので注意するのがよい。また、打音検査等でコンクリートの状態を確認するのがよい。」としています。浮き・剥離の見方はうきの損傷程度の評価、コンクリート部材の個別の損傷にまとめています。
ひびわれが無くても油断はできない、とも書かれています。「PC鋼材を被覆しているコンクリートに規則的な損傷が生じている場合、ひびわれの発生がない場合であっても、スペーサーや組立て鉄筋、せん断補強鉄筋などの腐食にともなう変色、浮き、剥離が点在することがあり、内部の鋼材の変状により耐荷性能に影響を及ぼしている場合もある。外観から得られる情報を総合的に判断して、内部の状態を推定し、耐荷性能や耐久性への影響を推定する必要がある。」
2つ目は、保護管や被覆から漏れ出るものです。アーチ橋の吊り材の項はこう書いています。「保護管の継ぎ目などに水の浸入の疑いがある変状がある場合は、既に内部鋼材の腐食により断面欠損等が生じ、引張力に対する耐荷力が低下している場合もある。」。さらに「特に下部は、保護管内部に浸透した雨水等が流下して溜まり、鋼材に著しい腐食が生じる場合がある。」と、溜まる場所=下側を名指ししています。見えないときの原則もあります。「保護管の内部を直接確認できない場合は、保護管の損傷や保護管からの漏水がないかなど周囲の状況から内部の状況を推測する必要がある。」
3つ目は、橋の形そのものです。
「ケーブルを用いた構造では部材の破断や定着部の異常が全体の形状に影響を与えやすいため、線形等から異常の徴候が発見できる場合がある。異常なたわみなどが見られる場合は、主ケーブルだけでなくその他の部材が原因となることもある。」
これは部材を見る前に橋の姿を見るという順番です。異常なたわみや音・振動の扱いは異常な音・振動・たわみで整理しています。点群で橋全体の線形を面的に取る方法が効くのもこの場面で、活用の考え方はLiDAR点群の活用にまとめています。
破断の要因は腐食だけではない
参考資料3は、破断の原因を腐食に限定しないよう繰り返し注意しています。
「■ケーブル破断の要因としては腐食の影響だけではなく、活荷重や風荷重による疲労の影響、または、その複合も考えられるため、耐風対策のために設置されている周辺部材に損傷が生じていないかどうかなどにも注意して、疲労の影響の可能性についても確認する必要がある。」
実際に、掲載されている損傷写真にはサドル部保護カバーの損傷と制震ワイヤの損傷が並びます。ケーブル本体は無傷に見えても、制震・耐風の部材が壊れていればケーブルの疲労環境が変わっているということです。ステイ材・耐風索については独立した注意書きがあります。
「■ステイ材や耐風索の損傷(破断、ゆるみ)は橋の各部の疲労耐久性の低下に繋がる可能性があるため、破断、腐食等による能力低下、弛緩による能力低下などが生じていないか確認する必要がある。」
地震後の扱いも書かれています。「地震などによりケーブルに異常なたわみが生じている場合、異常が生じたケーブルだけではなくその他のケーブルも含めて、ケーブル張力に異常が生じていたり、その他の場合に影響を及ぼしている可能性もある。」。1本の異常を1本の問題として閉じないという読み方です。地震・出水など定期点検以外のタイミングの点検は定期点検以外の点検を参照してください。
材料の組み合わせにも固有の落とし穴が挙げられています。
「■留め具などにステンレスなど異種金属を用いている場合には、異種金属接触による著しい腐食が鋼材に生じるおそれがある。この場合、同構造の他の部位にも同時多発的に腐食が生じる可能性があるため注意が必要である。」
「同時多発的に」がこの項の要点です。1か所で異種金属接触腐食を見つけたら、同じ納まりの箇所を全数当たる根拠になります。防食機能の劣化そのものの見方は防食機能の劣化に整理しています。
定着部・サドル・アンカレイジ
引張材の定着側は、本体以上に見えません。資料の注意書きはその前提で書かれています。
「■定着部内の引張材の腐食や破断などの異常を外観のみで正確に判断することは困難であり、内部からの錆汁の漏出、定着部からの水の浸入の状況など外観から得られる様々な情報を総合的に判断して外観出来ない内部の状態も推定する必要がある。」
「■定着方法ごとに腐食環境や防食仕様、応力分布が異なるため、定着方法ごとに防食や疲労の弱点となる箇所も異なることに注意が必要である。」
サドルについてはこうです。「■サドル内部は直接視認出来ないことが多く、内部やサドル出入り口付近で主ケーブルに腐食が生じていないか慎重に確認する必要がある。」。サドルは前節の表で「挙動に影響を与える部材」に分類されていた部材で、引張材そのものではないのに独立した注意が置かれています。
吊橋のアンカレイジは、構造が橋ごとに違うことが先に断られています。
「■アンカレイジにはサドル、アンカーフレーム、スプレイ室などがあり、その構成は橋毎に異なる。」
「■点検にあたって、埋込部の内部を含めた定着部全体の異常の有無や徴候を確認する必要がある。」
外ケーブル補強の場合は、新しく付けた側だけでなく既設側も対象になります。
「■外ケーブル補強工法では、定着部や偏向部を設ける既設部材にもプレストレスにより複雑な応力が発生するため、新設部、既設部双方の耐荷性能や耐久性が保たれていることを確認する必要がある。」
補修・補強材そのものの損傷の扱いは補修・補強材の損傷と補修・補強材の抜け落ちにまとめています。狭い場所の実務的な工夫も1行だけ書かれています。「■支承周辺等、狭隘部の点検では手鏡等を用いて目視することも有効である。」
非破壊検査にも適用限界がある
「見えないなら非破壊検査で」と短絡しないよう、資料は適用性そのものに注意を促しています。ニールセンローゼ橋の項がもっとも具体的です。
「■ニールセンローゼ橋では、ケーブルは、活荷重の衝撃の影響、風荷重、地震の影響による応力変動が大きい場合がある。」
「■非破壊検査を計画、結果の解釈を行う場合には、局所的なケーブルの腐食に対する検査の適用性を考慮する必要がある。たとえば張力やケーブル長の変化が顕著でないとケーブルの振動で損傷が検知できる可能性が低いこと、局所的な腐食に対する検知の感度についてキャリブレーションが必要な可能性があることを考慮し、検討や結果の考察を行うのがよい。」
振動法でケーブルの張力を測る方法は広く使われますが、局所的な腐食は張力やケーブル長をほとんど変えないので振動には出にくい、という限界が名指しされています。「異常なし」という測定結果が、局所腐食が無いことの証明にはならないということです。新技術を選ぶときの考え方は新技術の導入手順、点検支援技術性能カタログ、NETISと性能カタログの違いに整理しています。
より踏み込んだ確認についても書かれています。
「■ケーブル内部の異常が疑われた場合には、耐荷力への影響を推定するにあたって、非破壊検査技術で適用可能な技術がないか確認するとともに、必要に応じてラッピングワイヤの一部撤去やワイヤにくさびを打ち込んで内部を直接目視により確認すること等も必要に応じて検討するのがよい。」
「■コンクリート内部の鋼材に腐食が疑われる場合は、ハツリや非破壊検査により内部を確認する必要性についても検討するのがよい。」
ラッピングワイヤの一部撤去やハツリは、定期点検の枠を超えた調査です。定期点検から詳細調査へ渡す判断は詳細調査(S1・S2)の考え方、継続的に見る場合は監視・モニタリング計画で扱っています。自治体側で技術的な判断が難しい場合には、直轄診断・修繕代行という制度上の受け皿もあります。
最後に、要領本文側の位置づけも確認しておきます。第4章の損傷程度の評価では「引張材を有する道路橋の定期点検にあたっての着目箇所については,表-1(その1)及び表-1(その2)の他に参考資料3も適宜参考にすることができる」とされ、第2章では「ケーブル構造の状態把握の留意事項を参考資料3「引張材を有する道路橋の損傷例」…にまとめてあるので参考にするのがよい。」と案内されています。参考資料3は独立した基準ではなく、通常の着目箇所に重ねて使う資料です。損傷程度の評価の全体像は道路橋の損傷26種類を参照してください。
よくある質問
Q. 引張材を有する道路橋とは、具体的にどんな橋ですか。
A. 参考資料3は斜張橋・エクストラドーズド橋、吊橋、アーチ橋(ローゼ橋等)、吊床版橋、ドゥルックバンド橋、外ケーブル補強された構造、ピン・ハンガーを用いた構造の7系統を挙げています。ただし形式で線を引いてはおらず、「これら以外の構造についても,定期点検にあたっては,破断等が生じたときに橋全体の安定や挙動に与える影響が大きい引張材を有する橋かどうかを確かめるのがよい。」としています。
Q. 点検の対象はケーブル本体だけですか。
A. 違います。要領は「1)引張材:ケーブル,吊り材,ペンデル支承,グラウンドアンカー等」「2)1)の定着部(引張材を定着するための定着具及び定着具を配置するための補強された部位)」「3)1),2)の挙動に影響を与える部材」の3つを挙げています。サドルや偏向部のように引張材そのものではない部材も対象に入ります。
Q. ケーブルの内部は外から判断できますか。
A. 資料は困難だとしています。定着部について「定着部内の引張材の腐食や破断などの異常を外観のみで正確に判断することは困難であり、内部からの錆汁の漏出、定着部からの水の浸入の状況など外観から得られる様々な情報を総合的に判断して外観出来ない内部の状態も推定する必要がある。」と書いています。雪沢大橋の事例では「外部での徴候から想定するよりも内部で著しい損傷が生じている場合もある」とも述べられています。
Q. 破断の原因は腐食だと考えてよいですか。
A. 腐食だけではありません。「ケーブル破断の要因としては腐食の影響だけではなく、活荷重や風荷重による疲労の影響、または、その複合も考えられるため、耐風対策のために設置されている周辺部材に損傷が生じていないかどうかなどにも注意して、疲労の影響の可能性についても確認する必要がある。」とされています。制震ワイヤやサドル部保護カバーの損傷も写真で示されています。
Q. 非破壊検査をすれば内部の状態は分かりますか。
A. 適用限界があります。ニールセンローゼ橋の項では「張力やケーブル長の変化が顕著でないとケーブルの振動で損傷が検知できる可能性が低いこと、局所的な腐食に対する検知の感度についてキャリブレーションが必要な可能性があることを考慮し、検討や結果の考察を行うのがよい。」とされています。検査の結果を、局所腐食が無いことの証明として扱わないほうがよい、という趣旨です。
Q. 引張材の異常は健全性の区分でどう扱われますか。
A. 区分Ⅳの例示の筆頭に置かれています。第1章の解説は「緊急に対策を行う必要がある状態とは,例えば,引張材に破断のおそれがあったり桁の異常な移動があったりするなど落橋のおそれがある場合,…」としています。区分の決定そのものは橋全体を単位に行います。
出典・適用範囲
国の要領と自治体のマニュアルの関係は国の要領と自治体マニュアルの関係、直轄の要領と技術的助言の2本立てについては橋梁定期点検要領が2種類ある理由で整理しています。令和6年改定の全体像は令和6年改定の要点をご覧ください。