この記事の要点
  • 適用は内閣府沖縄総合事務局または国土交通省北海道開発局・地方整備局が管理する一般国道の橋梁。直轄国道向けの臨時点検で、定期点検とは別建て
  • 要領の「隅角部」は梁と柱との接合部を指し、「隅角」はそのうち外面に梁と柱の溶接線がある端部20〜30cmの領域と定義されている
  • 検査は3種類。目視検査と磁粉探傷検査は全橋脚・全隅角部が対象で、渦流探傷検査だけが条件付き(原文は表の種別名も括弧付きで書いている)
  • 渦流探傷が条件付きな理由は原文に明記されている=「現在は、その探傷精度が確認されていない」。だから渦流を実施した箇所でもすべて磁粉探傷試験を実施する
  • 磁粉探傷は JIS G0565-1992 を適用し、検査技術者は日本非破壊検査協会(NDIS-0601)の認定部門2種以上。点検員は別要件で、委託の場合は大学卒業後5年以上などの実務経験が望ましいとされる
  • 検査後の養生は2分岐。終了なら所定の塗装、追跡調査や補修に進むなら粘着テープなどによる応急的防錆処理

鋼製橋脚の梁と柱の接合部、いわゆる隅角部の疲労亀裂は、定期点検の近接目視では見つけにくい損傷です。亀裂は溶接部に開口していても、塗膜に覆われていれば外からは塗膜のわれや局部的な錆としてしか現れません。

この部位だけを対象にした要領が、平成14年5月に国土交通省道路局国道課から出た「鋼製橋脚隅角部の疲労損傷臨時点検要領」です。全36ページで、目視検査 → 渦流探傷検査 → 磁粉探傷検査という3段構えの検査手順と、様式1〜6の記録様式が定められています。

この記事では、原文から「隅角」の定義(端部20〜30cmという具体的な範囲)、渦流探傷が任意で磁粉探傷が全数必須になっている理由、検査技術者と点検員にそれぞれ求められる要件、塗膜を剥がしたあとの養生が2分岐になっている理由を整理します。

この要領はどの範囲に適用されるのか

1.適用の範囲は1文です。「本要領は、内閣府沖縄総合事務局又は国土交通省北海道開発局、地方整備局が管理する一般国道に係る橋梁の鋼製橋脚隅角部疲労損傷の臨時点検に適用する」。つまり直轄国道が対象で、地方公共団体が管理する道路には及びません。

2.点検の目的も1文で、「鋼製橋脚隅角部の溶接部近傍における疲労損傷の発生の有無を確認するとともに、発生していた場合にはその状況等、以後の追跡調査、補修・補強方法の検討に必要なデータを記録することを目的とする」とされています。

「臨時」であることの意味

解説には、この点検が「鋼製橋脚隅角部の溶接近傍における疲労損傷の発生が報告されたことを踏まえ、直轄国道における疲労損傷の発生の有無を早期に確認するために実施する臨時点検であり」と書かれています。定期的に回す点検ではなく、報告された損傷を受けて一巡させるための点検です。

法定の定期点検と、それ以外の点検の位置づけの違いは定期点検だけではない橋梁点検|通常・中間・特定・異常時点検とはにまとめています。

この要領が扱わないこと

4.点検方法の解説5が範囲を明示しています。この要領は「鋼製橋脚の表面に開口している亀裂損傷の有無の確認」と、見つかった場合の記録までが対象です。「亀裂損傷の原因の特定や進展性の評価等を行うために必要となる溶接部内部の調査等の詳細調査については、別途検討しなければならない」とされ、さらに「補修・補強方法の決定やそれに必要となる調査についても本要領では定めていない」と書かれています。

見つけたあとに詳細調査へ進む判断の枠組みそのものは、この要領ではなく定期点検側の体系の話になります(橋梁点検の詳細調査とは?判定S1・S2の使い分け)。

「隅角部」と「隅角」は別の言葉

この要領を読むうえで最初に押さえる必要があるのが、よく似た2語の使い分けです。解説2が定義しています。

語要領の定義
隅角部梁と柱との接合部
隅角隅角部のうち、外面に梁と柱の溶接線がある端部20〜30cmの領域

検査の対象範囲がこの2語で書き分けられています。表-4.1では目視検査が「全隅角部の溶接線全長」、渦流探傷検査と磁粉探傷検査が「全隅角部の隅角」と指定されています。つまり目視は溶接線を通して見るが、探傷は端部20〜30cmに絞るという構成です。

対象となる橋脚の形

図-3.1に挙げられている鋼製橋脚の例は3種類で、ラーメン橋脚・二層ラーメン橋脚・T型橋脚です。図解-3.1ではさらに、隅角部にA・B・C・Dのアルファベット識別記号を、隅角に丸数字の通し番号を振る例が示されています。T型橋脚については角柱と円柱の2通りが描かれ、いずれも隅角①〜④(二層側は⑤〜⑧まで)という番号の振り方になっています。

記録のために部材や箇所へ番号を振る考え方は、定期点検側の要素番号と同じ発想です(要素番号の付け方:起点側から振る4桁の意味/部材記号の一覧|重複する2文字の読み分けと4列の構成)。

外面から始めて、見つかれば内面へ

3.点検対象箇所は「主として鋼製橋脚の隅角部の外面とする」です。解説2がその理由を書いています。「既往の損傷事例によると、亀裂損傷は隅角部の外面に現れることが多いことから、本要領では、はじめに鋼製橋脚の全隅角部の外面を対象に調査することとしている。しかし、亀裂損傷が確認された場合には、原則として橋脚内面からも亀裂損傷の状況を点検するものとする」。

内面に入る点検は、閉鎖空間の作業としての備えが別に必要になります(箱桁・カルバート内部の点検は酸素欠乏危険作業か)。

検査は3種類。全数なのは目視と磁粉だけ

表-4.1「点検の種別」が、この要領の骨格です。原文の対象と方法をそのまま並べます。

種別対象橋脚(箇所)点検の方法
事前調査全橋脚(全隅角部)現地踏査及び竣工図等の図面による書類調査
目視検査全橋脚(全隅角部の溶接線全長)表面亀裂の存在が疑われる塗膜割れ等の変状及び溶接部の形状や仕上げ状況を目視で調査
(渦流探傷検査)全橋脚(全隅角部の隅角)塗膜の上から実施する渦流探傷検査
磁粉探傷検査全橋脚(全隅角部の隅角)対象部位の塗膜を除去して実施する磁粉探傷検査

渦流探傷検査だけが種別名まで括弧でくくられています。これは表記のゆれではなく、実施が条件付きであることを示しています。

渦流探傷が条件付きな理由は原文に書かれている

4.点検方法の解説2が理由を明記しています。「渦流探傷検査は、塗膜の除去を必要とせず検査時間も比較的短い非破壊検査で、迅速性、経済性に優れる方法である。しかし、現在は、その探傷精度が確認されていない。このため、今後の点検のあり方を検討する目的で、本臨時点検の緊急性を損なわないで期間内に機器と人員を調達できる場合は渦流探傷検査を行うこととした。したがって、渦流探傷検査を実施する箇所においてもすべて磁粉探傷試験を実施する」。

読み替えると、渦流探傷はこの臨時点検では「精度を確かめるためのデータ取り」として位置づけられており、合否判定の役割を負っていないということです。だから渦流をやった箇所でも磁粉を省略できません。

7.渦流探傷検査の(1)も同じ方向です。「『人工欠陥対比試験体』を用いてシステムの性能を確認し、調査職員の承諾を受けて行う」とされ、解説1では「現在定まった規格が無いため」性能確認試験を行うとした経緯と、「欠陥検出性能としては、人工欠陥長5mmを欠陥として検出できる能力で行うこと」という基準が書かれています。

渦流が反応せず磁粉で亀裂が出た場合の扱い

8.磁粉探傷検査の(4)は「渦流探傷検査において欠陥指示信号が出ない個所に、磁粉探傷検査において亀裂が発見された場合は、7.(4)の任意の様式に含めて記録を行う」としています。解説6では、影響する要因として「渦流探傷検査システムの感度調整、塗膜の仕様(種類、厚さ)等が考えられる」と挙げられています。見逃しの事実そのものを記録として残す構成になっているのが、この要領の特徴です。

この2手法の役割分担は、現在の定期点検要領側でも「疑われる場合」の方法として整理されています(疲労亀裂が疑われる橋は何で見るのか|渦流探傷と磁粉探傷/センシング・モニタリング・非破壊検査の違い|3つの定義と使い分け)。

事前調査で竣工図から拾う項目

5.事前調査は現地踏査と書類調査の2本立てです。現地踏査は表-5.1の3項目で、路下の利用状況/隅角部周辺の障害物の有無/マンホール設置状況。マンホールが入っているのは、亀裂が出たときに橋脚内面へ入る経路を先に確かめるためです。

書類調査は表-5.2で、竣工図等から次を把握します。

区分把握する項目
板組種別梁貫通・柱貫通の区分/梁・柱の板組構造
部材の板厚及び材質部材の板厚及び材質
溶接種別及び寸法脚長/開先形状/開先寸法(深さ・高さ)/ルートフェイス量及びルートギャップ量/完全溶け込み溶接、部分溶け込み溶接の別/溶接の仕上げ指示
施工業者・竣工年度施工業者・竣工年度
適用基準適用された設計基準

なぜここまで図面を読むのか

解説2が答えています。「隅角部において、疲労損傷の発生が予想されるのは、溶接部のルート、ビード上、ビード止端並びにその周辺の母材である。しかし、隅角部それぞれにおいて、その板組種別や使用される母材の板厚並びに溶接の種類及びサイズが異なっており、しかも、その仕上げ状況によっては現地において溶接部の位置の特定が困難な場合も考えられる」。現地で溶接部がどこか分からなくなるので、先に図面で押さえておくという理屈です。

解説3は、集めたデータの用途を点検の外にも広げています。「書類調査において収集するデータは、本要領に示す点検のみならず、疲労損傷発生原因の究明や疲労寿命予測、並びに当該隅角部の補修・補強方法の検討にとって貴重な資料となるものである」。

竣工図や工事の記録がそろっているかは、台帳の整備状況に左右されます(橋梁台帳とは?道路台帳との違いと閲覧/補修・補強工事調書とは?竣工図書になる1枚と57行の工法表)。

仮設備計画もここで作る

解説1は、現地踏査の目的に仮設備計画の作成を挙げ、括弧の中で「高所作業車の選定、足場設置計画、交通規制計画等」を具体的に書いています。あわせて「点検対象隅角部周囲の付属物あるいは添架物の設置状況」も調べる対象です。

また、4.の解説6は不可能だった場合の扱いを定めています。「このとき検査が不可能であることが判明した場合には、検査が不可能である理由を付して事前調査結果(様式-1〜4)のみ作成する」。できなかったことを空欄ではなく理由つきで残す形です。

アクセス手段と規制の手配は、現在の点検業務でも仮設側の論点です(橋梁点検車とは?高所作業車との違いと必要な資格/ロープ高所作業とは?橋梁点検で必要な8つの措置/橋梁点検の交通規制は誰が決めるのか。要領に無く積算にある)。

目視検査:探すのは亀裂ではなく塗膜のわれ

6.目視検査の(1)は「塗膜われ、局部的な錆の発生及び溶接仕上げ状況について行う」です。解説1がその理屈を書いています。「溶接部に開口した亀裂が存在すると、塗膜われや局部的な錆の発生などの変状が現れることが多く、目視検査ではこれらの表面亀裂の存在が疑われる表面の変状を肉眼で調査するものである」。

実施手順は5段で、原文の指示が具体的です。

  1. 検査箇所の現状を、塗膜われの有無が分かるように写真撮影する
  2. 塗膜われが認められた場合は、油性マジックによりわれに沿ってマーキングを行い、われの範囲(長さ)を直接当該部位に明示した上で写真撮影を行うとともに、われの発生位置・長さ・発生形態などを記録する
  3. 局部的な錆についても同様に写真撮影を行い、発生位置・範囲などを記録する
  4. 溶接部の状況については、ビード形状、のど厚及び余盛り量、仕上げの程度、止端部の状態等について検査し、記録する
  5. 検査結果及び写真記録は、様式-5及び6による

範囲を広げる2つの条件

(2)は検査範囲を「隅角部の溶接線全長及びその周辺の母材」としたうえで、「ただし、隅角部の取付金具部等の疲労損傷の心配される溶接部が存在する場合は、適宜その範囲を拡大する」と書いています。解説2はさらに踏み込み、拡大の理由を「取付金具あるいはそれに類する付加物が隅角部に溶接されている場合やフィレットが設けられている場合は、それらの先端付近に応力集中していることが考えられるため」としています。

のど厚と余盛りは塗膜を剥がしたあとに測る

解説4に測定の段取りが書かれています。のど厚と余盛り量を計測し、仕上げの有無や程度、ビード表面の凹凸、アンダーカットやオーバーラップなど止端部の状態を記録するとしたうえで、「なお、計測位置は、隅角部の溶接線において亀裂が生じやすいと考えられる端部近傍で適宜設定する。また、今回の点検では後述の磁粉探傷検査において塗膜を除去することから、この検査は、表面性状がより鮮明に観察できる塗膜除去後に行うものとする」。

図解-6.2の注記では、計測位置を「隅角部の溶接線端部から50mm程度の範囲」で設定する例が示されています。

鋼部材の損傷を区分として評価する側の考え方は鋼部材の腐食・亀裂・破断とは?損傷ごとに違う評価区分にまとめています。

磁粉探傷検査:塗膜を剥がす範囲と記録の取り方

8.磁粉探傷検査の(1)は規格を1本だけ指定しています。「JIS G0565-1992『鉄鋼材料の磁粉探傷試験方法及び磁粉模様の分類』」です。

実施手順の①が、現場で効く具体的な数字を持っています。「検査対象箇所において、検査範囲+約20mm程度の領域の塗膜をすべて除去し、溶接形状や溶接仕上げ状況、塗膜剥離範囲を写真撮影する」。検査範囲そのものではなく、そこから約20mm外側まで剥がす指定です。

「亀裂指示模様」は亀裂と同義ではない

手順③は「亀裂指示模様が不明確な場合は、適切な方法により亀裂かどうか確認するものとする」とし、④は「亀裂ではなく、表面欠陥と思われる指示模様についても同様に写真撮影を行い、その寸法、位置、形態などを記録する」としています。

見極めの方法は4.の解説3と8.の解説4に書かれています。「例えばアンダーカットによって亀裂指示模様が現れる場合もあり、このような場合には止端部を仕上げることで亀裂かどうか判断できることが多い」、「このような場合にはグラインダーで止端部を削る等により亀裂であるかどうかを確認する必要がある」。ただし同じ解説3に歯止めもあり、「亀裂の特定にあたって構造物本体に加工を行う場合には構造物に悪影響がないよう充分な検討を行う必要がある」とされています。

記入例が指定している4つのルール

図解-8.1「亀裂指示模様の記入例」の注は4点です。

  • 亀裂指示模様の位置、形状・サイズはスケッチで記入する
  • 亀裂指示模様の位置・サイズは部材端面を基準面として測定する
  • 亀裂指示模様の位置の単位はmmで記入する
  • 溶接形状及び溶接ビード幅、のど厚及び余盛りを測定する。測定位置は、亀裂指示模様の中間付近等、適時設定する

接写についての指定もあります(解説3)。「亀裂指示模様の接写については、亀裂指示模様のサイズが確認できるようにスケールを設置して撮影する」。

写真の撮り方・整理の実務は損傷写真台帳の作り方:撮影から整理までの実務で扱っています。

範囲を越えて進展していた場合

解説1の④は、亀裂が標準範囲の外へ伸びていた場合の扱いを定めています。「磁粉探傷検査において、亀裂指示模様が図解-7.1に示す検査範囲を越えて進展している場合は、亀裂指示模様先端が確認出来る範囲まで塗膜を除去し、亀裂の発生状態を正確に把握しなければならない」。先端が見えるところまで剥がす、という指示です。

なお、事前調査でビード幅が分からなかった場合の扱いが渦流側(解説5)と磁粉側(解説5)の両方に同文で入っています。「事前調査において溶接ビード幅が不明な場合は、ビード幅を溶接部板厚と仮定し検査範囲を設定するものとする」。

養生が2分岐になっている理由

9.検査箇所の養生は、磁粉を除去したあとの防錆処理をその後の進み方で2つに分けています。

その後の処理要領が指定する養生
検査を終了する場合所定の塗装を行う
補修又は追跡して調査を行う場合粘着テープなどにより応急的防錆処理を行う

解説1が区分の理由を書いています。「本点検後の処置に応じて当該部位を追跡して検査する場合があるため」で、亀裂等が確認され追跡検査や補修・補強が必要と判定された場合「又はその恐れがある場合」は応急的な防錆処理にとどめる、としています。本塗装をしてしまうと次に見るときにまた剥がすことになるので、見る予定があるなら塗らないという考え方です。

(2)は「養生の状況を写真撮影し、様式-6に記録する」としており、養生そのものが記録対象になっています。

次に見る人へ引き継ぐ情報をどこに書くかは、現在の様式でも論点です(点検の引き継ぎ事項はどこに書く?様式5か所)。

実施体制と資格要件

11.実施体制は3つの節に分かれています。

人員配置

11.1は「点検は、点検員、検査技術者、点検補助員等で構成し、適切な人員を配置する」。解説1はより具体的で、「点検を総括する点検員1名、補助する点検補助員、資格を有する各種検査を実施する検査技術者等で構成し、橋脚の立地条件や交通状況等に応じて、高所作業車運転員及び交通整理員を実施体制に加えるものとする」としています。

点検員

11.2は「点検員は、橋梁に関する専門的技術を十分に有する者とする」。解説1が理由を、解説2が委託時の目安を書いています。「本点検は疲労損傷に関する専門的知識を必要とするため、点検員は橋梁に関する計画、設計、施工や維持管理等の専門的技術を有する者でなければならないこととした」。委託の場合は橋梁点検要領(案)を準用し、次のいずれかの実務経験を有することが望ましいとされます。

  • 大学卒業後5年以上の橋梁に関する実務経験を有する者
  • 短大・高専卒業後8年以上の橋梁に関する実務経験を有する者
  • 高校卒業後11年以上の橋梁に関する実務経験を有する者
  • 前3項と同等以上の能力を有する者

検査技術者

11.3は探傷側の資格です。「渦流探傷試験及び磁粉探傷試験は、(社)日本非破壊検査協会(NDIS-0601)の非破壊検査技量認定技術者、認定部門2種以上の技術者が行う」。

解説1は資格だけでは足りないとも書いています。「検査の結果は検査技術者の知識、技量、判断によるところが大きいので、その資格を満たすとともに、鋼製橋脚隅角部の亀裂損傷に関する十分な知識と実務経験を有する者とすることが望ましい」。

点検員と検査技術者で要件の立て方が違うのが読みどころです。点検員は学歴と実務年数、検査技術者は非破壊検査の認定資格で、どちらか一方では両方を満たせません。現在の定期点検側の担い手要件は橋梁点検に必要な資格とは?技術者要件と主な登録資格を整理と橋梁検査員とは?診断員と分かれた「記録する側」の要件で扱っています。

様式1〜6の構成と整理の順番

10.点検結果の記録は、事前調査と検査結果で様式を分けています。

様式名称・内容単位
様式-1鋼製橋脚隅角部台帳(その1)。整備局名・事務所名・出張所名・路線名・現旧区分・整理番号1(MICHI)・橋梁名・橋脚番号・構造形式・完成年月・設計基準・製造施工会社・調査年月日・隅角総数+橋梁一般図(点検対象橋脚、隅角部の明示)1橋脚で1枚
様式-2台帳(その2)。様式1と同じ基本情報+隅角部構造詳細図/マンホールの位置/路下の利用状況/隅角部障害物の有無/点検が不可能な隅角についてはその理由隅角部ごと
様式-3台帳(その3)。隅角部板組み概略図(溶接形状寸法、材質、板厚を明示)。注記に「隅角部構造詳細図が無い場合は、現地踏査により作成する」隅角部ごと
様式-4現況写真。橋脚の全景・路下の状況がわかる写真/点検状況写真(高所作業車、足場、等)/隅角部の障害物の状況がわかる写真(該当する場合)1橋脚で1式
様式-5点検記録(一覧表)。橋脚の検査結果を一覧にまとめる1橋脚で1式
様式-6点検記録(点検記録写真)。各検査の範囲/各検査の検査結果写真/亀裂等が発見された場合はそのスケッチ/養生写真。注に「取付金具部等の特殊な検査対象がある場合にはその検査結果も記入する」隅角ごと

加えて渦流探傷検査システム及び検出波形等は任意様式とされています(7.(4))。解説4は、記録した検出波形を「渦流探傷検査における欠陥指示信号と磁粉探傷検査における亀裂との関係が分かるように整理し、提出する」とし、そのために「システムとして、センサー走査の位置、その時の波形を再現できる機能を有していることが必要となる」と機器側の条件まで書いています。

綴る順番が決められている

解説7は様式の整理順を箇条で指定しています。様式1(1橋脚で1枚)→ 様式2・様式3(1番目の隅角部)→ 様式2・様式3(2番目の隅角部)→ …→ 様式4(1橋脚で1式)→ 様式5(1橋脚で1式)→ 様式6(1番目の隅角)→ 様式6(2番目の隅角)→ … という並びです。

様式2と様式3は隅角部ごとに対で繰り返し、様式6は隅角ごとに繰り返すのがポイントで、繰り返しの単位が様式によって違います(隅角部=接合部、隅角=端部20〜30cmの領域)。本文の2語の使い分けが、そのまま綴りの枚数に効いてきます。

よくある質問

この要領は市町村の橋にも適用されますか。

いいえ。適用の範囲は「内閣府沖縄総合事務局又は国土交通省北海道開発局、地方整備局が管理する一般国道に係る橋梁」です。直轄国道向けの臨時点検要領で、地方公共団体が管理する道路は対象外です。

「隅角部」と「隅角」はどう違うのですか。

隅角部は梁と柱との接合部で、隅角はそのうち外面に梁と柱の溶接線がある端部20〜30cmの領域です。目視検査は「全隅角部の溶接線全長」、渦流探傷と磁粉探傷は「全隅角部の隅角」が対象なので、この2語の違いが検査範囲の違いになります。

渦流探傷検査は必ずやるのですか。

条件付きです。要領は「本臨時点検の緊急性を損なわないで期間内に機器と人員を調達できる場合は渦流探傷検査を行うこととした」としています。理由は「現在は、その探傷精度が確認されていない」ためで、今後の点検のあり方を検討する目的での実施という位置づけです。

渦流探傷をやれば磁粉探傷は省略できますか。

できません。要領は「渦流探傷検査を実施する箇所においてもすべて磁粉探傷試験を実施する」と明記しています。

塗膜はどこまで剥がすのですか。

磁粉探傷検査の手順①で「検査範囲+約20mm程度の領域の塗膜をすべて除去」と指定されています。さらに亀裂指示模様が検査範囲を越えて進展している場合は、先端が確認できる範囲まで除去することとされています。

検査に必要な資格は何ですか。

探傷検査は日本非破壊検査協会(NDIS-0601)の非破壊検査技量認定技術者・認定部門2種以上の技術者が行います。点検員はこれとは別で、橋梁に関する専門的技術を十分に有する者とされ、委託の場合は大学卒業後5年以上・短大高専卒業後8年以上・高校卒業後11年以上などの実務経験が望ましいとされています。

検査したあとは塗り直すのですか。

その後の進み方で分かれます。検査を終了する場合は所定の塗装、補修または追跡して調査を行う場合は粘着テープなどによる応急的防錆処理です。あとで再度見る予定があるなら本塗装をしない、という区分になっています。養生の状況は様式-6に写真で記録します。

亀裂の原因や進展性の評価もこの要領で行うのですか。

いいえ。要領は「亀裂損傷の原因の特定や進展性の評価等を行うために必要となる溶接部内部の調査等の詳細調査については、別途検討しなければならない」とし、「補修・補強方法の決定やそれに必要となる調査についても本要領では定めていない」と書いています。この要領は表面に開口した亀裂の有無の確認と記録までです。

足場が組めず検査できない隅角があった場合はどうしますか。

理由を付けて事前調査の様式だけを作ります。要領は「検査が不可能であることが判明した場合には、検査が不可能である理由を付して事前調査結果(様式-1〜4)のみ作成する」としています。様式-2にも「点検が不可能な隅角については、その理由」を記入する欄が設けられています。

出典・適用範囲

本記事は、鋼製橋脚隅角部の疲労損傷臨時点検要領が定める検査の種別・範囲・手順・記録様式・実施体制を原文から読み解くための実務解説です。引用は原文表記(「塗膜われ」「亀裂指示模様」「余盛り」「板組」などの用字、全角の算用数字を含む条番号)に沿っています。

本要領は平成14年5月のもので、適用も直轄国道に限られています。現在どの道路管理者がこの要領をどの範囲で運用しているか、またこの要領が改定・廃止されているかは、本記事では確認していません。法定の定期点検(道路法施行規則・告示・令和6年3月の定期点検要領)との関係、および隅角部の疲労損傷が健全性の診断の区分にどう反映されるかも扱っていません。要領が引用するJIS G0565-1992 と NDIS-0601 の現行版・改正状況、資格制度の現在の名称も確認していません(本記事は要領の記載を転記したものです)。図-4.1の点検フロー図、図解-7.1の検査範囲例(11パターン)は図版のため本文では扱わず、原典をご確認ください。亀裂が確認されたあとの詳細調査・補修補強の方法は要領自身が範囲外としているため、本記事でも扱っていません。