- うき(⑫)の定義は一行です。「コンクリート部材の表面付近が浮いた状態をいう」。要領の付録-3 で最も短い損傷のひとつです
- 損傷程度の評価はaとeしかありません。b・c・dは「-」で、区分そのものが置かれていません。うきを認めればeです
- 浮いた部分が剥離していれば、うきではなく「剥離・鉄筋露出」で扱います。打音検査で剥離した場合も同じです
- 床版のうきは「床版ひびわれ」では受けません。⑪とは別に⑫としても記録します
- 対象はコンクリート部材を持つ要素の広い範囲です。主桁・床版から、地覆・縁石・伸縮装置・溝橋の側壁まで表-4.1.1 に並んでいます
- 損傷図に載る損傷です。損傷図は評価が「b以上」のものを記載しますが、うきはaかeしかないため、記録されたうきはすべて図示の対象になります
- 評価(第2章)と、落下を防ぐ措置(第3章)は別の話です。打音検査のハンマー230g・間隔20cm・叩き落とし910gといった具体は第3章側にあります
- 非破壊検査で「異常なし」と判定して打音を省略した範囲は、省略したこと自体を図に残します
26種類の損傷のうち、付録-3 の記述が最も短いもののひとつが⑫うきです。定義は一行、評価区分の表も実質2行しかありません。そのぶん、実務では「どこまでがうきで、どこからが剥離か」「程度が違うのに同じeでよいのか」という迷いが出ます。
この記事では「橋梁定期点検要領」(令和6年7月・国土交通省 道路局 国道・技術課)の付録-3 ⑫と、第3章「橋梁利用者及び第三者被害の予防措置」を原文で読みます。26種類の全体像は橋梁の損傷26種類一覧、a〜eという評価そのものの考え方は損傷程度の評価(a〜e)とは?で扱っています。
定義は一行しかない
付録-3 ⑫の【一般的性状・損傷の特徴】は、次の一文です。
「コンクリート部材の表面付近が浮いた状態をいう。」
面積も深さも書かれていません。ひびわれのように幅の数値で線を引く損傷とは、記述の仕方がそもそも違います(幅の基準はひびわれ幅の基準にまとめています)。うきは「ある/ない」で記録する損傷だと読むのが素直です。次節の評価区分がそれを裏づけています。
評価はaとeの2段だけ
付録-3 ⑫の評価区分表は次のとおりです。
| 区分 | 一般的状況 |
|---|---|
| a | 損傷なし |
| b | - |
| c | - |
| d | - |
| e | うきがある。 |
b・c・dは「-」です。中間の区分が用意されていないため、手のひら大のうきも、広範囲のうきも、記録上はどちらもeになります。
これは乱暴な扱いに見えるかもしれませんが、要領は損傷程度の評価の位置づけをこう書いています。
「損傷程度の評価は、性能の評価や健全性の診断の区分の記録とは異なり、橋梁各部の外観の状態を客観的に記録するものである。記録としての客観性を確保するために、評価では、部材等の性能や措置の必要性などの観点を入れずに、観察事実を数値区分や参考写真に適合させあてはめることが求められる。」(付録-3 損傷程度の評価の基本)
つまり評価欄は「どれくらい危ないか」を書く場所ではありません。うきの広がりや位置は、評価区分ではなく損傷図・写真・所見の側で表します。健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)との関係は健全性の判定区分とは?を参照してください。
剥離していれば、この項目から外れる
【他の損傷との関係】は2項だけです。1項目めが振り分けの規定です。
「浮いた部分のコンクリートが剥離している、又は打音検査により剥離した場合には、『剥離・鉄筋露出』として扱う。」
ここで大事なのは「打音検査により剥離した場合」も含まれることです。叩く前はうきだったものが、叩いた結果として落ちたなら、記録は⑦剥離・鉄筋露出になります。⑦の評価区分は次のように3段あります。
| 区分 | ⑦ 剥離・鉄筋露出の一般的状況 |
|---|---|
| c | 剥離のみが生じている。 |
| d | 鉄筋が露出しており、鉄筋の腐食は軽微である。 |
| e | 鉄筋が露出しており、鉄筋が著しく腐食又は破断している。 |
同じ箇所でも、うきのまま残っていればe、剥離に変わればc〜eと、記録先も区分も変わります。現地で叩いた前後のどちらの状態を書くのか、班の中で揃えておく必要があります。うきと剥離の線引きは赤外線法によるうき・剥離調査とは?でも触れています。
なお、⑧漏水・遊離石灰の【他の損傷との関係】にも「ひびわれ、うき、剥離など他に該当するコンクリートの損傷については、それぞれの項目でも扱う」とあります。漏水があるからうきを書かない、という整理にはなりません。
床版でも「うき」で書く
【他の損傷との関係】の2項目めです。
「コンクリート床版の場合も同様に、本損傷がある場合は本損傷で扱う。」
床版には⑪床版ひびわれという専用の損傷があり、ひびわれの評価はそちらに集約されます。しかしうきは集約されません。⑪とは別に⑫でも記録します。同じ構造は⑦剥離・鉄筋露出や⑧漏水・遊離石灰にもあり、いずれも「床版ひびわれ以外に本項目でも扱う」と書かれています。
どの部材で対象になるか
表-4.1.1「対象とする損傷の種類の標準」を、⑫うきが並んでいる欄だけ抜き出すと次のようになります。いずれもコンクリートの列です。
| 部位・部材区分 | 補足 |
|---|---|
| 主桁・床版・主構・斜材 等 | 主桁、主桁ゲルバー部、横桁、縦桁、床版、対傾構、横構ほか |
| アーチ/トラス/ラーメン/斜張橋の主構部材 | アーチリブ、補剛桁、吊り材、支柱、塔柱など |
| 下部構造 | 柱部・壁部、梁部、隅角部・接合部、胸壁など |
| 路上の部材 | 高欄、防護柵、地覆、中央分離帯、伸縮装置、縁石 |
| 溝橋(ボックスカルバート) | 頂版、側壁、底版、隔壁、翼壁、プレキャストの連結部 |
| RC床版橋の上部構造 | 主桁 |
鋼部材の列に⑫は出てきません。表面付近が浮くという損傷の性質上、当然ではあります。逆に言えば、コンクリートがある要素ではほぼどこでも評価欄が立つということです。溝橋の点検は溝橋(ボックスカルバート)の点検、路上の附属物は道路附属物の点検にまとめています。
データ記録様式の記入要領 留意事項④は、表-4.1.1 に示された損傷のうち損傷が見つからなかったものに「a」を記入するとしています。ただし「当該要素において明らかに対象外である損傷種類(例えば、ボルトが使われていない要素での③ゆるみ・脱落)では、『NA』とする」という例外があり、まったく損傷がない要素は損傷の種類を「NON」、損傷程度を「a」として入力します。調書の書き方は点検調書の書き方で扱っています。
うきは必ず損傷図に載る
損傷図に何を描くかについて、要領は次のように定めています。
「ここで作成する損傷図は、基本的には、定期点検時点で観察された損傷を対象に、損傷程度の評価で『b』以上と区分されたものを記載する。」
うきの評価はaかeしかありません。aは損傷なしですから、記録に現れるうきはすべてe=「b以上」に該当します。つまり、うきを1件でも記録したなら、その位置は損傷図に載ります。評価欄では程度を表せないぶん、図と写真が情報を持つことになります。
同じ箇所には、質的な情報を図に補足せよという規定もあります。
「個別の損傷について、コンクリート部材のひびわれ、遊離石灰、うき、剥離、漏水、鉄筋露出や鋼部材の亀裂など、損傷の原因の検討や損傷程度の評価に有益と考えられ、かつ、損傷程度の評価として必ずしも記号化しきれない質的な情報や写真では伝えにくい質的情報についても同じ損傷図にスケッチ等で補足し、整理、記録する。」
「必ずしも記号化しきれない質的な情報」という言い方に、aとeしかない評価区分の裏側が出ています。様式の作り方は損傷図(様式その5)の作り方、写真と根拠の残し方は様式その2の写真と損傷程度の評価根拠を参照してください。
評価の話と、落下を防ぐ話は別の章にある
ここまでは第2章と付録-3、つまり状態を記録する側の話です。うきにはもうひとつ、落下を防ぐ側の扱いがあります。要領の第3章「橋梁利用者及び第三者被害の予防措置」です。
「コンクリート片の落下の防止を対象に、落下の可能性のあるコンクリートのうき・剥離を打音検査等、適切な方法で把握し、必要に応じて叩き落とすなどの適切な予防措置をとる。」(第3章 4.1(1))
同じ解説には、見落としやすい前提が書かれています。
「ただし、一見したところ健全と思える箇所についても、うき・剥離の可能性は否定できない(本章では、むしろこのような個所を主な対象と想定している。)ので、目視により確認できる損傷箇所以外についても、打音検査等でうき・剥離を把握し予防措置を実施する。」
第3章の打音検査は、損傷が見えている場所を確かめる作業ではありません。見えていない場所を探す作業として設計されています。手順の具体は4.2 の解説にあります。
- 打音が清音であればうき・剥離はないと考え、濁音の場合はあると考える。清音の目安は澄んだ乾いた音、濁音は濁った鈍い音
- 点検ハンマーは重量が1/2ポンド(約230g)程度のものを用いる
- 打音検査の密度(間隔)は、原則として縦横20cm程度を目安に行う
- 濁音が認められた箇所にはチョーク等でマーキングを行う
- 叩き落とし作業には、健全なコンクリートに損傷を与えることのないよう重量が2ポンド(約910g)程度の石刃ハンマーを使用する
- 遠望目視で把握した損傷や非破壊検査で推定した箇所への打音検査は、その周囲を含めて広めに行うのがよい
叩き落とせばよい、とも書かれていません。
「なお、うき・剥離の範囲が広い場合やPC桁等叩き落とすことによって当該箇所付近の応力状態が変化する場合等、叩き落とすことによって構造安全性が損なわれるおそれがあるときは、別途の方法を検討しなければならない。」
落とした後の扱いも決まっています。「叩き落とし作業などの応急措置によりコンクリートが落下した場合には、第2章の点検・診断に活用できるように、落下個所の状態について記録する。その後、本格的な補修までの処置として鉄筋の防錆処置を行う。」。措置の全体像は第三者被害予防措置とは?にまとめています。
非破壊検査で打音を省略した範囲は図に残す
打音検査は「基本」であって唯一の方法ではありません。第3章 4.2(2) は「(1)によったときと同等の点検、措置ができる適切な方法」を認めています。ただし、使った場合に記録へ残す項目が増えます。予防措置の実施記録様式では、次の範囲を図示することが求められています。
- 予防措置の対象範囲
- 対象範囲のうち、点検が実施できなかった範囲(打音触診による検査、または非破壊検査法を用いたうき・剥離箇所の推定が実施できなかった範囲)
- 非破壊検査法を用いて「異常なし」と判定し、その後の詳細な打音触診による検査を省略した範囲
- 発見された損傷に対して応急措置を実施した箇所。コンクリート片の叩き落としや鋼部材の錆片のうきに対する腐食片の削ぎ落としの結果、落下しなかったものの異音などの疑義がある箇所も記録を残す
3つ目が実務上の要点です。非破壊検査を入れて打音を減らしたなら、減らした範囲そのものが成果品に残ります。どこを機械で見て、どこを人が叩いたかが後から分かる形になっているか。技術の選定にあたっては近接目視とは?で扱った「同等の評価が行える他の方法」の要件も併せて確認してください。
なお第3章 4.2 の解説は、打音検査以外の方法についても「打音検査により見つけられる程度のうき、剥離について落下の予防がなされるように、適切な方法の選定、現地における必要なキャリブレーションや適用条件の検証の実施、採用する方法の実施に求められる知識・技術によるものの従事など、適切な点検と措置がされるように計画、実施する必要がある」としています。導入して終わりではなく、現地での検証まで含めた計画が前提です。
よくある質問
Q. うきの評価にcやdを付けたいのですが、可能ですか。
A. できません。付録-3 ⑫の評価区分表は、aが「損傷なし」、eが「うきがある。」で、b・c・dはいずれも「-」です。区分そのものが用意されていないため、うきを認めた時点でeになります。程度の差は評価区分ではなく、損傷図や写真、所見で表します。
Q. 打音で叩いたらコンクリートが落ちました。うきのeでよいですか。
A. 「剥離・鉄筋露出」で扱います。⑫の【他の損傷との関係】に「浮いた部分のコンクリートが剥離している、又は打音検査により剥離した場合には、『剥離・鉄筋露出』として扱う」とあります。鉄筋が露出していなければ剥離のみのc、鉄筋が出ていて腐食が軽微ならd、著しい腐食や破断があればeです。
Q. 床版にうきがあります。「床版ひびわれ」で書けば足りますか。
A. 足りません。⑫は「コンクリート床版の場合も同様に、本損傷がある場合は本損傷で扱う」としています。⑪床版ひびわれとは別に、⑫うきとしても記録します。
Q. うきが見つからなかった部材の評価欄は空欄でよいですか。
A. 空欄にしません。記入要領は、表-4.1.1 に示された損傷について評価を記入するとしており、損傷がなければ「a」を書きます。当該要素で明らかに対象外である損傷種類だけが「NA」、まったく損傷がない要素は損傷の種類「NON」・損傷程度「a」です。
Q. 打音検査はどの密度で行うのですか。
A. 第3章 4.2 の解説は「打音検査の密度(間隔)は、原則として縦横20cm程度を目安に行うものとする」としています。点検ハンマーは重量が1/2ポンド(約230g)程度、濁音が認められた箇所にはチョーク等でマーキングします。
Q. 叩き落とせば、うきの記録は要らなくなりますか。
A. 要りません、とはなりません。第3章 4.2 の解説は「叩き落とし作業などの応急措置によりコンクリートが落下した場合には、第2章の点検・診断に活用できるように、落下個所の状態について記録する」としています。措置の実施記録様式でも、落下しなかったが異音などの疑義がある箇所まで記録を残すことが求められています。
出典・適用範囲
本文の版・記述・数値を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。引用の読点・句点は本文の表記に合わせています。
- 国土交通省 道路局 国道・技術課「橋梁定期点検要領」(令和6年7月) — 参照箇所:付録-3 損傷程度の評価要領 ⑫うき(一般的性状・損傷の特徴/他の損傷との関係2項/損傷程度の評価区分)/同 ⑦剥離・鉄筋露出の評価区分/同 ⑧漏水・遊離石灰 他の損傷との関係/同 損傷程度の評価の基本/表-4.1.1 対象とする損傷の種類の標準(⑫うきが並ぶ部位・部材区分)/データ記録様式の記入要領 留意事項④(NAとNONの扱い)/第3章 橋梁利用者及び第三者被害の予防措置 1.総則・2.措置の対象・4.1 落下する可能性のある損傷・4.2 措置の手順及び方法/同章の実施記録様式に図示する範囲/損傷図の作成に関する規定(「b」以上の記載と質的情報の補足)。
- 国土交通省「道路:道路の老朽化対策」 — 参照箇所:橋梁定期点検要領(令和6年7月)の掲載状況。
原典リンク確認:2026年9月20日。本記事は損傷の区分と記録方法を確認するための実務解説で、個別の橋の損傷程度の評価や健全性の診断の区分を判断するものではありません。要領は改定されることがあります。評価にあたっては、その時点の最新版と各道路管理者の運用をご確認ください。