この記事の要点
  • 損傷程度a〜eの「評価の目安」が表として書かれているのは定期点検要領ではなく、国土交通省道路局 国道・技術課「基礎データ収集要領(道路橋)令和6年版」(2024年8月)です
  • 対象は15種類の損傷。うちa〜eの5段階で評価するのは4種類だけ(腐食・防食機能の劣化・ひびわれ/漏水/遊離石灰・床版ひびわれ)で、残り11種類は「a か e」の2択です
  • 目的は「劣化傾向の分析ができるだけ少ないデータで行えること」。診断のための要領ではなく、記号で記録するための要領です
  • ひびわれは程度の区分に加えて部材・位置ごとの「ひびわれパターン番号」で記録します
  • 令和7年3月14日通知で4か所が改定されました。うち実務に効くのはラーメン橋脚のひびわれパターン⑨⑪の書き換えと、PC定着部の「PCケーブル」→「PC鋼材」です
  • 様式1の名称も「橋梁諸元と総合点検結果」から「橋梁諸元」へ変わりました

「この腐食はcかdか」を決めるとき、手元にあるのは定期点検要領でしょうか。要領の本体には、損傷ごとの区分の目安は載っていません。写真つきで区分の目安を並べているのは別の要領で、そちらは点検の記録ではなく劣化傾向を分析するためのデータ収集を目的にしています。

その要領が「基礎データ収集要領(道路橋)」です。この記事では令和6年版(2024年8月・令和7年3月14日通知で改定)を原文で読み、どの損傷が何段階で評価されるのかと、改定で何が変わったのかを整理します。損傷程度a〜eそのものの位置づけは損傷程度の評価(a〜e)とは、損傷の分類体系は橋梁の損傷26種類一覧で扱っています。

この要領は「診断」のための資料ではない

要領の第1章は、目的をこう書いています。

「本要領は,道路橋の変状や損傷の有無,あるいはその規模や性状などについて,劣化傾向の分析ができるだけ少ないデータで行えることを意図して,部材分割の考え方や劣化や損傷の状態を区分し,記号で記録する場合の方法を取りまとめたものである。」(基礎データ収集要領(道路橋)令和6年版 1.目的)

続けて、次の一文が置かれています。

「なお,客観的な事実関係の記録も含め,定期点検等の記録については,道路管理者が利活用目的に応じて記録項目の選定や方法を検討するものであることに留意する。」(同)

つまりこの要領は、健全性の診断の区分を決めるための基準ではなく、後から劣化の傾向を追えるように記号で残すための約束ごとです。何を記録するかの最終的な判断は道路管理者側にある、とも書かれています。区分が悪いことが直ちに健全性Ⅲ・Ⅳを意味しないのはこのためで、その関係は健全性の判定区分にまとめています。

構成は4章です。1.目的(1ページ)、2.対象とする主要な部材(2〜5ページ)、3.損傷程度の評価要領(6〜38ページ)、4.データ収集結果の記録(39ページ以降)。分量の大半が第3章で、損傷ごとに区分の目安表と写真例が並びます。

対象は15種類。5段階評価は4つだけ

第3章の冒頭に「表-3.1 損傷の種類と評価区分」が置かれています。内容はそのまま次のとおりです。

分類損傷の種類評価区分
①腐食a〜e
②亀裂a,e
③ボルトの脱落a,e
④破断a,e
⑤防食機能の劣化a〜e
コンクリート⑥ひびわれ・漏水・遊離石灰a〜e
⑦鉄筋露出a,e
⑧抜け落ちa,e
⑨床版ひびわれa〜e
⑩PC定着部の異常a,e
その他・共通⑪路面の凹凸a,e
⑫支承の機能障害a,e
⑬補修・補強材の損傷a,e
⑭沈下・移動・傾斜a,e
⑮洗堀a,e

要点は評価区分の欄です。a〜eの5段階があるのは①腐食・⑤防食機能の劣化・⑥ひびわれ/漏水/遊離石灰・⑨床版ひびわれの4種類だけで、残る11種類は「損傷なし=a」か「あり=e」の2択です。亀裂もボルトの脱落も破断も、中間の区分がありません。

「a,e」の損傷に b・c・d を付けることはできません。たとえば③ボルトの脱落は「ボルトの脱落がある(本数の多寡によらない)」でeです。1本でも全数でも同じ区分になります。④破断も「破断している(部材がつながっている場合は亀裂)」でeの1段だけです。数量の情報を残したい場合は、区分ではなく別の記録項目で持つことになります。

腐食は「深さ×広がり」の2軸で決まる

①腐食の区分表は、錆の深さと広がりの2軸でできています。

損傷の有無錆の深さ錆の広がり区分
なしa
あり表面のみ局部的b
広範囲c
板厚減少、鋼材表面の著しい膨張局部的d
広範囲e

要領には区分ごとに写真例が添えられており、bは「主桁の一部に表面的な錆が発生している」、cは「下フランジ全体に表面的な錆が発生している」、dは「主桁端部に局部的だが板厚減少を伴う錆が発生している」、eは「主桁全体に板厚減少を伴う著しい錆が発生している」と説明が付いています。

bとdを分けているのは広がりではなく深さです。局部的でも板厚減少があればdになります。逆にcとdでは、広がりの大きいcより局部的なdのほうが上の区分になる、という順序です。鋼部材の損傷の種類そのものは鋼部材の個別の損傷に整理しています。

②亀裂は「損傷なし/塗膜割れ程度(長さが短く、錆が出ていない)」がaで、「明らかな亀裂を生じている/亀裂の疑いのある塗膜割れが生じている(長さが長く、錆が出ている)」がeです。塗膜割れでも、長くて錆が出ていればeに入るのが判断の分かれ目になります。

防食機能の劣化は防食方法ごとに表が違う

⑤防食機能の劣化は、1つの表ではなく防食方法の分類ごとに別の表が用意されています。

分類評価の目安区分
分類1:塗装損傷なしa
最外層の防食塗膜に変色が生じたり、局所的なうきが生じているc
部分的に防食塗膜が剥離し、下塗りが露出しているd
防食塗膜の劣化範囲が広く、点錆が発生しているe
分類2:めっき、金属溶射損傷なしa
局所的に防食皮膜が劣化し、点錆が発生しているc
防食皮膜の劣化範囲が広く、点錆が発生しているe

気づきにくいのはどちらの表にもbが無いことです。分類1は a・c・d・e、分類2は a・c・e で、区分の記号は連番として使われていません。「a〜e」と書いてあっても5段階すべてが登場するとは限らない、という読み方が要ります。防食機能の劣化の位置づけそのものは防食機能の劣化とはにまとめています。

ひびわれは程度とパターン番号の2つを記録する

⑥ひびわれ・漏水・遊離石灰は、区分の目安が幅と付随現象で決まります。

ひびわれの有無ひびわれ幅漏水・遊離石灰区分
なしa
あり0.2mm未満ひびわれのみb
0.2mm以上ひびわれのみc
幅を問わない漏水を伴うd
遊離石灰を伴うd
明らかな錆汁を伴うe

漏水・遊離石灰・錆汁があるときは幅を問わないのが要点です。0.1mmでも錆汁を伴えばeになります。ひびわれ幅の測り方はひびわれ幅の基準で扱っています。

そのうえで要領は「2)ひびわれパターン」として、ひびわれパターンを表で区分し、対応するパターンの番号を記録するよう求めています。上部構造(RC・PC共通)の場合、位置ごとに次のように並びます。

位置ひびわれパターン(抜粋)
支間中央部①主桁直角方向の桁下面又は側面の鉛直ひびわれ/②主桁下面縦方向ひびわれ
支間1/4部③主桁直角方向の桁下面又は側面の鉛直又は斜めひびわれ
支点部④支点付近の腹部に斜めに発生しているひびわれ/⑤支承上の桁下面又は側面に鉛直に発生しているひびわれ/⑥支承上の桁側面に斜めに発生しているひびわれ/⑦ゲルバー部のひびわれ/⑧連続桁中間支点部の上側の鉛直ひびわれ
その他⑨亀甲状、くもの巣状のひびわれ/⑩桁の腹部に規則的な間隔で鉛直方向に発生しているひびわれ/⑪ウェブと上フランジの接合点付近の水平方向のひびわれ/⑫桁全体に発生している斜め45°方向のひびわれ
横桁㉔横桁部のひびわれ

同じ「c」でも、支間中央部の鉛直ひびわれ(①)と支点付近の斜めひびわれ(④)では意味が違います。程度だけでは劣化の傾向は追えないので、番号を併記する設計になっています。番号体系そのものは損傷パターン番号で扱っています。

令和7年3月改定の4か所

令和6年版は令和6年8月13日通知で出たあと、令和7年3月14日通知で改定されました。国土交通省が公開している新旧表に載っている修正は4か所です。

該当箇所令和6年8月13日通知令和7年3月14日通知
3章 p.19(支間1/4部 ⑮)PC連続中間支点の変曲点付近のPC鋼材に直交したひびわれPC連続中間支点の変局点付近のPC鋼材に直交したひびわれ
3章 p.23(ラーメン橋脚 ⑨)柱上下端・ハンチ全周にわたるひびわれ柱上下端のハンチ境界部に生じている断面周方向のひびわれ
3章 p.23(ラーメン橋脚 ⑪)柱上部・ハンチ全周にわたるひびわれ柱上部のハンチ区間内に生じている断面周方向のひびわれ(⑨に該当するものは除く)
3章 p.30(⑩PC定着部の異常)PCケーブル定着部の損傷(程度によらない)/PCケーブルの損傷PC鋼材定着部の損傷(程度によらない)/PC鋼材の損傷

実務に効くのは真ん中の2つです。ラーメン橋脚の⑨と⑪は、旧版ではどちらも「全周にわたるひびわれ」で、柱上下端と柱上部の境目がはっきりしませんでした。新版では⑨=ハンチ境界部、⑪=ハンチ区間内と位置で切り分けられ、さらに⑪には「⑨に該当するものは除く」という但し書きが付いています。同じひびわれを両方に数えない、という整理です。橋脚まわりの記録は下部構造の沈下・移動・傾斜もあわせて確認してください。

⑩は用語の統一です。「PCケーブル」を「PC鋼材」に改めたもので、区分の中身(程度によらずe)は変わっていません。定着部の異常の考え方はPC定着部の異常に整理しています。

第4章の様式1では、名称が「橋梁諸元と総合点検結果」から「橋梁諸元」へ変わりました。記入欄の項目(橋梁名・路線名・施設ID・所在地・距離標・管理者・架設年度・活荷重等級・適用示方書・橋長・総径間数・上下部構造形式・基礎形式・交通条件・幅員・海岸からの距離・緊急輸送路の指定・代替路の有無・路下条件・全体図・径間別一般図)は同じで、名称だけが実態に合わせて短くなった形です。路線名の記入例の表も1行が統合され、「高速自動車国道のうち新直轄方式」と「一般国道の自動車専用道路」の2行が「高速自動車国道(新直轄方式含む)」「一般国道の自動車専用道路」という並びに整理されました。

構造形式ごとに「主要な部材」が示されている

第2章は、構造形式ごとにどの部材を対象にするかを図で示しています。冒頭の指示は「構造形式から主要な部材を適宜選択するものとする」で、鋼橋については鋼鈑桁橋・鋼箱桁橋・鋼トラス橋・上路式アーチ橋・ラーメン橋などが順に並びます。

鋼トラス橋では、主構トラス(上弦材・下弦材・斜材・垂直材)、橋門構、横構、横支材、横桁、縦桁、床版、支承が個別に挙がります。鋼鈑桁橋のように主桁・下部構造・支承・路面で足りる形式とは、記録すべき部材の数がまるで違います。同じ「1橋」でも、構造形式によってデータの粒度が変わるということです。なお「路面」はどの形式にも共通の対象とされています。

この部材分割は、写真台帳や損傷図の単位ともつながります。撮影と転記の流れは写真台帳の作り方、床版ひびわれの評価は床版ひびわれの評価、記録の集約先は全国道路施設点検データベースを参照してください。

よくある質問

Q. 損傷程度a〜eの目安はどの資料に載っていますか。
A. 国土交通省道路局 国道・技術課「基礎データ収集要領(道路橋)令和6年版」の第3章「損傷程度の評価要領」です。損傷ごとに区分の目安表と写真例が並んでいます。

Q. すべての損傷がa〜eの5段階で評価されますか。
A. いいえ。表-3.1では15種類のうち5段階(a〜e)とされているのは①腐食・⑤防食機能の劣化・⑥ひびわれ/漏水/遊離石灰・⑨床版ひびわれの4種類で、残る11種類は「a,e」の2択です。

Q. ボルトの脱落は本数で区分が変わりますか。
A. 変わりません。要領は「ボルトの脱落がある(本数の多寡によらない)」をeとしています。aかeの2択です。

Q. 幅0.1mmのひびわれでもeになることがありますか。
A. あります。⑥ひびわれ・漏水・遊離石灰の表では、明らかな錆汁を伴う場合は「幅を問わない」でeとされています。漏水や遊離石灰を伴う場合も幅を問わずdです。

Q. 令和7年3月の改定で何が変わりましたか。
A. 新旧表に載っているのは4か所です。支間1/4部⑮の「変曲点」を「変局点」に、ラーメン橋脚⑨⑪のひびわれパターンの記述をハンチ境界部/ハンチ区間内で切り分ける表現に、⑩PC定着部の「PCケーブル」を「PC鋼材」に改め、様式1の名称を「橋梁諸元と総合点検結果」から「橋梁諸元」に変更しています。

Q. この要領で健全性の診断の区分を決められますか。
A. この要領は劣化傾向の分析のために状態を記号で記録する方法をまとめたもので、健全性の診断の区分を決めるための基準ではありません。要領自身も、記録項目の選定や方法は道路管理者が利活用目的に応じて検討するものだと留意を求めています。

出典・適用範囲

本文の版・記述・数値を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。

原典リンク確認:2026年9月15日。本記事はデータ収集の区分方法を確認するための実務解説で、個別の損傷の評価や健全性の診断の区分を判断するものではありません。要領は改定されることがあります。記録にあたっては、その時点の最新版と各道路管理者の運用をご確認ください。写真例の判断は原典の画像とあわせてご確認ください。