道路橋の定期点検では、部材に生じたさまざまな変状を「損傷の種類」ごとに記録し、それぞれの損傷程度を評価していきます。この損傷の種類は、点検要領で26種類に整理されており、鋼部材・コンクリート部材・共通の3つのグループに分かれています。点検調書の損傷記録や損傷図の凡例は、この26分類を土台に組み立てられています。
本記事では、道路橋定期点検で用いられる損傷26種類の一覧を分類ごとに示し、それぞれがどの部材のどのような変状を指すのか、そして損傷程度a〜eの評価や健全性の診断とどうつながるのかを整理します。点検を発注・受託する立場の方が、調書の記録項目の全体像を把握し、部下や協力会社に説明できる状態になることを目指します。
- 道路橋定期点検の損傷は26種類に整理され、鋼部材・コンクリート部材・共通(その他)の3グループに分かれる
- 鋼部材は腐食・亀裂・破断など、コンクリート部材はひびわれ・剥離鉄筋露出・漏水遊離石灰などが代表的
- 「その他(⑰)」は道路橋の性能に関連する変状を幅広く含む概念で、代表的な損傷で表しきれない変状の受け皿になる
- 26種類はあくまで損傷の「種類」の分類であり、その程度はa〜eで、橋全体の状態は健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)で別に評価される
損傷26種類とは:分類の全体像
道路橋定期点検要領(および損傷程度の評価要領)では、点検で着目する損傷を番号付きの26種類に整理しています。これは、点検者によって記録する損傷名がばらつくことを避け、全国で比較・集計できる調書を作るための共通言語です。
26種類は、材料や部材の性格に応じて次の3グループに分けて考えると把握しやすくなります。鋼部材に生じる損傷、コンクリート部材に生じる損傷、そして部材を問わず共通して生じる(またはどの材料にも当てはまる)その他の損傷です。実際の要領では、材料の種類ごとに着目すべき変状の種類が対応づけられており、たとえば鋼部材では腐食・亀裂・破断など、コンクリート部材ではひびわれ・床版ひびわれなどが代表的な変状として示されています。
損傷26種類の一覧(分類ごと)
損傷26種類を番号順に、代表的な材料分類とあわせて示すと次のとおりです。番号は点検要領の損傷程度の評価要領で用いられているものです。
| 分類 | 番号と損傷の種類 |
|---|---|
| 鋼部材 | ①腐食 ②亀裂 ③ゆるみ・脱落 ④破断 ⑤防食機能の劣化 |
| コンクリート部材 | ⑥ひびわれ ⑦剥離・鉄筋露出 ⑧漏水・遊離石灰 ⑨抜け落ち |
| 共通・その他 | ⑩補修・補強材の損傷 ⑪床版ひびわれ ⑫うき ⑬遊間の異常 ⑭路面の凹凸 ⑮舗装の異常 ⑯支承部の機能障害 ⑰その他 ⑱定着部の異常 ⑲変色・劣化 ⑳漏水・滞水 ㉑異常な音・振動 ㉒異常なたわみ ㉓変形・欠損 ㉔土砂詰まり ㉕沈下・移動・傾斜 ㉖洗掘 |
鋼部材の主な損傷
鋼部材で中心となるのは、①腐食・②亀裂・④破断です。腐食は鋼材の板厚減少につながり、放置すれば断面の欠損や耐荷力の低下を招きます。亀裂は疲労などによって進行し、④破断に至ると部材の機能を失います。③ゆるみ・脱落はボルトやリベットなどの接合部の変状、⑤防食機能の劣化は塗装・めっき・金属溶射などの防食システムの変状を指します(耐候性鋼材の場合は腐食で評価します)。
鋼部材の損傷は進行が比較的早く、疲労亀裂のように致命的な結果につながり得るものを含むため、桁端部や格点部など応力が集中しやすい箇所の観察が重要になります。
コンクリート部材の主な損傷
コンクリート部材では、⑥ひびわれ・⑦剥離鉄筋露出・⑧漏水遊離石灰・⑪床版ひびわれ・⑫うきなどが代表的です。ひびわれは劣化因子の入口となり、進行すると内部鋼材の腐食、かぶりの剥離、鉄筋露出へとつながります。⑧漏水・遊離石灰は、ひびわれ等を通じて水がコンクリート内部を移動し、水酸化カルシウムが析出したもので、内部の水みちや劣化の進行を示すサインになります。
要領の考え方では、コンクリート部材の変状はひびわれ又は床版ひびわれで代表できることが多いとされますが、一緒に確認された鋼材露出・漏水・遊離石灰などの変状もあわせて記録しておくことが望ましいとされています。ひびわれ幅の評価基準は別記事で詳しく扱います。
「その他」が受け皿になる意味
26分類には⑰「その他」が含まれます。これは道路橋の性能に関連する変状を全て含む概念とされ、代表的な損傷名に当てはめにくい変状を記録するための受け皿です。点検要領は、あらかじめ定めた分類だけで現場のすべての変状を表現しきれないことを前提にしており、「その他」を用意することで、記録漏れを防ぎつつ、必要に応じて後から検証できるようにしています。
損傷26種類は、点検者ごとの記録のばらつきをなくし、全国で比較できる調書を作るための共通言語です。鋼部材・コンクリート部材・共通の3グループで全体像をつかみ、代表損傷で表しきれない変状は「その他」で記録する。この枠組みを押さえておくと、損傷図の凡例や写真台帳の整理も一貫します。
26分類と損傷程度・健全性の関係
26種類はあくまで損傷の「種類」の分類です。実際の点検では、種類ごとに損傷の程度をa〜eの5段階で評価し、さらに橋全体としての状態を健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)で判定します。つまり「どんな損傷が(26分類)」「どの程度あるか(a〜e)」「橋としてどう診断するか(Ⅰ〜Ⅳ)」は別レイヤーの情報であり、混同しないことが調書の品質管理の第一歩になります。それぞれの詳細は関連記事をご覧ください。
よくある質問
損傷26種類はどの要領に定められていますか?
道路橋定期点検要領および、その損傷程度の評価要領に整理されています。番号や名称は版によって表記が異なる場合があるため、受託業務では発注者が指定する要領・様式の最新版をご確認ください。
26種類すべてを毎回記録する必要がありますか?
26種類は着目すべき損傷の分類であり、実際に確認された変状を記録します。コンクリート部材の変状はひびわれ等で代表できることが多いとされますが、一緒に確認された他の変状も記録に残しておくことが望ましいとされています。
損傷の種類と損傷程度a〜eはどう違いますか?
損傷の種類(26分類)は「何が起きているか」、損傷程度a〜eは「どの程度進行しているか」を表します。さらに橋全体の状態は健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)で評価され、これらは別レイヤーの情報です。