損傷と判定
橋梁の損傷26種類一覧:鋼部材・コンクリート部材・共通
公開日 2026年4月9日
執筆 LiDAR Damage Detection 編集部
道路橋の定期点検では、部材に生じたさまざまな変状を「損傷の種類」ごとに記録し、それぞれの損傷程度を評価していきます。この損傷の種類は、点検要領で26種類に整理されており、鋼部材・コンクリート部材・共通の3つのグループに分かれています。点検調書の損傷記録や損傷図の凡例は、この26分類を土台に組み立てられています。
本記事では、道路橋定期点検で用いられる損傷26種類の一覧を分類ごとに示し、それぞれがどの部材のどのような変状を指すのか、そして損傷程度a〜eの評価や健全性の診断とどうつながるのかを整理します。点検を発注・受託する立場の方が、調書の記録項目の全体像を把握し、部下や協力会社に説明できる状態になることを目指します。
この記事の要点
- 道路橋定期点検の損傷は26種類に整理され、鋼部材・コンクリート部材・共通(その他)の3グループに分かれる
- 鋼部材は腐食・亀裂・破断など、コンクリート部材はひびわれ・剥離鉄筋露出・漏水遊離石灰などが代表的
- 「その他(⑰)」は道路橋の性能に関連する変状を幅広く含む概念で、代表的な損傷で表しきれない変状の受け皿になる
- 26種類はあくまで損傷の「種類」の分類であり、その程度はa〜eで、橋全体の状態は健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)で別に評価される
損傷26種類とは:分類の全体像
道路橋定期点検要領(および損傷程度の評価要領)では、点検で着目する損傷を番号付きの26種類に整理しています。これは、点検者によって記録する損傷名がばらつくことを避け、全国で比較・集計できる調書を作るための共通言語です。
26種類は、材料や部材の性格に応じて次の3グループに分けて考えると把握しやすくなります。鋼部材に生じる損傷、コンクリート部材に生じる損傷、そして部材を問わず共通して生じる(またはどの材料にも当てはまる)その他の損傷です。実際の要領では、材料の種類ごとに着目すべき変状の種類が対応づけられており、たとえば鋼部材では腐食・亀裂・破断など、コンクリート部材ではひびわれ・床版ひびわれなどが代表的な変状として示されています。
図1
損傷26種類は「部材の材料」で3グループに分かれる
鋼部材①〜⑤
- ①腐食
- ②亀裂
- ③ゆるみ・脱落
- ④破断
- ⑤防食機能の劣化
進行が早く、疲労亀裂のように致命的になり得る。桁端部・格点部が要注意。
コンクリート部材⑥〜⑨
- ⑥ひびわれ
- ⑦剥離・鉄筋露出
- ⑧漏水・遊離石灰
- ⑨抜け落ち
ひびわれ(または床版ひびわれ)で代表できることが多いが、併発した変状も記録する。
共通・その他⑩〜㉖
- ⑪床版ひびわれ
- ⑫うき
- ⑯支承部の機能障害
- ⑰その他
- ㉖洗掘 ほか
材料を問わない変状と、代表損傷で表しきれない変状の受け皿(⑰その他)を含む。
3グループのどこに属する損傷かを先に決めてから番号を選ぶと、記録のばらつきが減ります。番号の全一覧は次の表を参照してください。
損傷26種類の一覧(分類ごと)
損傷26種類を番号順に、代表的な材料分類とあわせて示すと次のとおりです。番号は点検要領の損傷程度の評価要領で用いられているものです。
出典:国土交通省「道路橋定期点検要領」および「橋梁定期点検要領(損傷程度の評価要領)」。損傷の番号・名称は要領の最新版を必ずご確認ください。
鋼部材の主な損傷
鋼部材で中心となるのは、①腐食・②亀裂・④破断です。腐食は鋼材の板厚減少につながり、放置すれば断面の欠損や耐荷力の低下を招きます。亀裂は疲労などによって進行し、④破断に至ると部材の機能を失います。③ゆるみ・脱落はボルトやリベットなどの接合部の変状、⑤防食機能の劣化は塗装・めっき・金属溶射などの防食システムの変状を指します(耐候性鋼材の場合は腐食で評価します)。
桁端部は水や土砂が滞留しやすく、①腐食と⑤防食機能の劣化が同時に進みやすい箇所です。※イメージ
鋼部材の損傷は進行が比較的早く、疲労亀裂のように致命的な結果につながり得るものを含むため、桁端部や格点部など応力が集中しやすい箇所の観察が重要になります。
コンクリート部材の主な損傷
コンクリート部材では、⑥ひびわれ・⑦剥離鉄筋露出・⑧漏水遊離石灰・⑪床版ひびわれ・⑫うきなどが代表的です。ひびわれは劣化因子の入口となり、進行すると内部鋼材の腐食、かぶりの剥離、鉄筋露出へとつながります。⑧漏水・遊離石灰は、ひびわれ等を通じて水がコンクリート内部を移動し、水酸化カルシウムが析出したもので、内部の水みちや劣化の進行を示すサインになります。
⑥ひびわれ・⑦剥離鉄筋露出・⑧漏水遊離石灰は、同じ箇所で連続して現れることが多く、あわせて記録します。※イメージ
要領の考え方では、コンクリート部材の変状はひびわれ又は床版ひびわれで代表できることが多いとされますが、一緒に確認された鋼材露出・漏水・遊離石灰などの変状もあわせて記録しておくことが望ましいとされています。ひびわれ幅の評価基準は別記事で詳しく扱います。
「その他」が受け皿になる意味
26分類には⑰「その他」が含まれます。これは道路橋の性能に関連する変状を全て含む概念とされ、代表的な損傷名に当てはめにくい変状を記録するための受け皿です。点検要領は、あらかじめ定めた分類だけで現場のすべての変状を表現しきれないことを前提にしており、「その他」を用意することで、記録漏れを防ぎつつ、必要に応じて後から検証できるようにしています。
この記事の結論
損傷26種類は、点検者ごとの記録のばらつきをなくし、全国で比較できる調書を作るための共通言語です。鋼部材・コンクリート部材・共通の3グループで全体像をつかみ、代表損傷で表しきれない変状は「その他」で記録する。この枠組みを押さえておくと、損傷図の凡例や写真台帳の整理も一貫します。
26分類と損傷程度・健全性の関係
26種類はあくまで損傷の「種類」の分類です。実際の点検では、種類ごとに損傷の程度をa〜eの5段階で評価し、さらに橋全体としての状態を健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)で判定します。つまり「どんな損傷が(26分類)」「どの程度あるか(a〜e)」「橋としてどう診断するか(Ⅰ〜Ⅳ)」は別レイヤーの情報であり、混同しないことが調書の品質管理の第一歩になります。それぞれの詳細は関連記事をご覧ください。
図2
「種類」「程度」「健全性」は別レイヤーの情報
損傷の種類26分類
何が起きているか。①腐食・⑥ひびわれなど、変状を番号で特定する
損傷程度a〜e
どの程度進行しているか。種類ごとに5段階で評価する
健全性の診断Ⅰ〜Ⅳ
橋としてどう診断するか。部材単位・橋単位で判定し、措置の要否につながる
下に行くほど判断のレイヤーが上がります。混同すると調書の記録と診断結果が食い違う原因になります。
よくある質問
損傷26種類はどの要領に定められていますか?
道路橋定期点検要領および、その損傷程度の評価要領に整理されています。番号や名称は版によって表記が異なる場合があるため、受託業務では発注者が指定する要領・様式の最新版をご確認ください。
26種類すべてを毎回記録する必要がありますか?
26種類は着目すべき損傷の分類であり、実際に確認された変状を記録します。コンクリート部材の変状はひびわれ等で代表できることが多いとされますが、一緒に確認された他の変状も記録に残しておくことが望ましいとされています。
損傷の種類と損傷程度a〜eはどう違いますか?
損傷の種類(26分類)は「何が起きているか」、損傷程度a〜eは「どの程度進行しているか」を表します。さらに橋全体の状態は健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)で評価され、これらは別レイヤーの情報です。
損傷程度の評価は「a〜eの5段階」とは限らない
26種類の一覧を押さえた次につまずくのが、評価区分の記号です。損傷程度の評価はa・b・c・d・eの記号で記録しますが、26種類のすべてが5段階で評価されるわけではありません。国土交通省道路局国道・技術課「橋梁定期点検要領」(平成31年3月)の付録-2「損傷程度の評価要領」では損傷の種類ごとに区分表が用意されており、使わない区分には「-」が入っています。同要領は「国土交通省及び内閣府沖縄総合事務局が管理する道路橋の定期点検に適用する」ものですが、地方公共団体の要領・様式もこの区分を土台にしていることが多く、記号の意味を取り違えると調書の集計がそのまま狂います。
aとeの2つしか使わない損傷(11種類)
次の11種類は区分表のb・c・dがすべて「-」で、実質「損傷なし(a)」か「あり(e)」の二択です。
- ④破断(e「破断している。」)
- ⑨抜け落ち(e「コンクリート塊の抜け落ちがある。」)
- ⑫うき(e「うきがある。」)
- ⑯支承部の機能障害(e「支承部の機能が損なわれているか,著しく阻害されている可能性のある損傷が生じている。」)
- ⑰その他(e「損傷あり」)
- ⑲変色・劣化(分類1コンクリート・分類2ゴム・分類3プラスチックのいずれもaとeのみ)
- ⑳漏水・滞水、㉑異常な音・振動、㉒異常なたわみ、㉔土砂詰まり、㉕沈下・移動・傾斜
「cかdか」で迷わずに済むかわりに、eを付けた時点でその損傷は最も重い区分になります。程度の軽重は損傷図・写真・所見の側で表す設計です。
a・c・eの3段階で評価する損傷(9種類)
②亀裂、③ゆるみ・脱落、⑩補修・補強材の損傷、⑬遊間の異常、⑭路面の凹凸、⑮舗装の異常、⑱定着部の異常、㉓変形・欠損、㉖洗掘はb・dが「-」で、a・c・eの3段階です。判断の目安が数値で示されているものもあります。
- ②亀裂:「長さが極めて短いとは,3mm 未満を一つの判断材料とする。」
- ③ゆるみ・脱落:cは「一群あたり本数の5%未満」、eは「5%以上」。さらに「格点等,一群あたりのボルト本数が20本未満の場合は,1本でも該当すれば,「e」と評価する。」
- ⑭路面の凹凸:橋軸方向の段差量が20mm未満ならc、20mm以上ならe。
- ⑮舗装の異常:舗装のひびわれ幅が5mm程度未満ならc、5mm以上で床版上面の土砂化や鋼床版の疲労亀裂が疑われる状態ならe。
なお⑦剥離・鉄筋露出と⑧漏水・遊離石灰はbだけが「-」の4段階(a・c・d・e)で、⑦はd「鉄筋の腐食は軽微」/e「著しく腐食又は破断」のように、鉄筋の状態で上下が分かれます。
2つの要因の組合せで決まる損傷
①腐食と⑥ひびわれは、単独の状況ではなく2つの要因の大小の組合せで区分します。①腐食は「損傷の深さ」×「損傷の面積」で、面積については「大小の区分の閾値の目安は,50% である。」と示されています。⑥ひびわれは「最大ひびわれ幅」×「最小ひびわれ間隔」で、幅の大はRC構造物0.3mm以上・PC構造物0.2mm以上、間隔の大は「最小ひびわれ間隔が概ね0.5m 未満」です(ひび割れ幅の評価基準)。⑪床版ひびわれは、ひびわれの性状(1方向か2方向か、幅、格子の大きさ)と漏水・遊離石灰の有無の組合せで決まります(床版ひびわれの評価)。
同じ損傷名でも、下位分類ごとに区分表が違う
⑤防食機能の劣化は「1 塗装」「2 めっき,金属溶射」「3 耐候性鋼材」の3分類があり、区分表が分類ごとに別です。塗装はa・c・d・eの4段階、めっき・金属溶射はa・c・eの3段階、耐候性鋼材だけがa〜eの5段階すべてを使い、bは「損傷なし。ただし,保護性錆は生成されていない状態である。」という独自の意味を持ちます。同じように⑩補修・補強材の損傷は5分類、⑱定着部の異常は4分類、⑲変色・劣化は4分類、⑯支承部の機能障害は2分類が定義されています。調書に分類番号を書き忘れると、後から区分の妥当性を検証できません。
⑰「その他」は6つに分かれている
受け皿である⑰その他も、内容を書かずに済ませてよい欄ではありません。要領は損傷内容を次の6分類に定めています。
- 不法占用
- 落書き
- 鳥のふん害
- 目地材などのずれ,脱落
- 火災による損傷
- その他
そのうえで「「6 その他」の場合,所見にその損傷内容を記載する。」とされています。⑰を選び、さらに分類6を使うときは、所見への記述までが1セットです。
評価の単位は「要素」。対策区分の判定の単位とは違う
①腐食の評価区分には、26種類すべてに効く注意書きが置かれています。「損傷程度の評価にあたって,主桁ゲルバー部,格点,コンクリート埋込部においては当該要素でのみ扱い,当該部位を含む主桁等においては当該部位を除いた要素において評価する(以下,各損傷において同じ。また,対策区分の判定の単位とは評価単位が異なるので注意のこと)」。損傷程度は要素単位、対策区分の判定は構造上の部材区分あるいは部位ごとで、集計の単位がそもそも違います。桁端部だけ著しく腐食している橋で、主桁全体をeにしてしまう記録はこの注意書きに反します。
この違いは要領の考え方そのものにも書かれています。付録-2の冒頭は「損傷程度の評価は,対策区分の判定や健全性の診断と異なり,橋梁各部の外観の状態を客観的かつ記号化して記録するものである」とし、損傷の程度を「橋の耐荷性能に与える影響などと直接関係づけず,損傷の外観の相対的な違いを目視にて区分しやすいように決めている」と説明したうえで、「損傷程度の評価ではこれらの推定・判断を含むこと無く,外観として観察された事実が記録されることが求められる」と明記しています。eを付けるかどうかは危険かどうかの判断ではなく、外観の記録です。
番号の取り違えが起きやすい組合せ
- 被覆材の劣化:⑲変色・劣化の注記に「部材本体が鋼の場合の被覆材料は「防食機能の劣化」,コンクリートの場合の被覆材料は「補修・補強材の損傷」として扱う。」とあり、⑲が見るのは部材本体の材料・材質です。
- 支承部の土砂:「支承部の土砂堆積は,原則,「土砂詰まり」として扱うものの,本損傷に該当する場合は,本損傷でも扱う。」(⑯支承部の機能障害)。㉔と⑯の両方に記録する場合があります。
- 支承部を構成する部材の損傷:支承アンカーボルトの腐食・破断・ゆるみや沓座モルタルのひびわれ・剥離・欠損は「別途それぞれの項目でも扱う」とされ、①腐食や⑥ひびわれの側にも記録が残ります。
出典:国土交通省道路局国道・技術課「橋梁定期点検要領」(平成31年3月)付録-1「対策区分判定要領」および付録-2「損傷程度の評価要領」。引用は同要領の本文によります。地方公共団体が管理する道路橋では、各道路管理者が定める要領・様式の最新版をご確認ください。
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