この記事の要点
  • 点検支援技術性能カタログは、点検支援技術の標準的な性能項目(性能値・適用条件等)を国土交通省が取りまとめたカタログ
  • 2026年4月1日の公式集計は全407技術。総数の集計日と、橋梁・トンネル等の個別ファイルの版を分けて確認する
  • 令和6年3月の定期点検要領改定で「近接目視と同等の評価が行える他の方法」が明文化され、その性能確認の拠り所として重要性が増した
  • カタログ掲載は国の性能保証ではない。使うかどうか・どう使うかは道路管理者・点検技術者の判断

令和6年3月の道路橋定期点検要領(技術的助言)の改定で、橋の状態の把握は「近接目視、または近接目視による場合と同等の評価が行える他の方法」により行うことが明文化されました。画像計測やドローンなどの点検支援技術が、制度のうえでも現実の選択肢になったということです。

そこで実務上の問いになるのが、「同等の評価が行える」かどうかをどう確認するかです。その拠り所となるのが、国土交通省が取りまとめている「点検支援技術性能カタログ」です。本記事では、カタログの位置づけと経緯、掲載情報の読み方、実務での技術選定の手順、そして毎年の更新に追従する運用までを整理します。

点検支援技術性能カタログとは

点検支援技術性能カタログとは、国土交通省が、橋梁・トンネル等の点検に活用可能な点検支援技術について、標準的な性能項目(性能値・適用条件等)を点検技術者が確認できるよう取りまとめたカタログです。対象となる技術は、画像計測技術、非破壊検査技術、計測モニタリング技術、データ収集通信技術など多岐にわたります。

性能一覧の表が掲載されたカタログ冊子とペン
性能カタログは、技術区分・性能値・適用条件の3点で読みます。※イメージ

国土交通省の公式発表では、2026年4月1日現在で全407技術が掲載されています(画像計測141、非破壊検査75、計測・モニタリング99、データ収集・通信5、舗装55、道路巡視32)。令和7年4月時点の375技術は過去の集計です。全体総数の集計日と、分野別ファイルの更新年月を分けて記録してください。出典:点検支援技術性能カタログを拡充(2026年4月1日発表)。 原典リンク:点検支援技術性能カタログ(国土交通省・現行分野別資料)。

出典:国土交通省「点検支援技術性能カタログ」掲載ページ(https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/inspection-support/)。掲載数・掲載技術は版により異なります。 原典リンク:点検支援技術性能カタログ(国土交通省・現行分野別資料)。

令和8年版に実際は何件載っているのか

カタログの読み方を押さえたら、次に効いてくるのが規模感です。「一覧を開いたが多すぎて絞れない」という声が多い一方で、区分ごとの件数は本文では扱っていませんでした。国土交通省が公開している掲載技術一覧のファイル(点検支援技術性能カタログのページからダウンロードできるエクセル)を編集部が取得して数えたところ、次のとおりでした。

橋梁は214件、トンネルは87件

技術番号が付いている行を区分ごとに集計すると、橋梁シートは合計214件です。

  • 画像計測技術(BR01)……88件
  • 非破壊検査技術(BR02)……46件
  • 計測・モニタリング技術(BR03)……75件
  • データ収集・通信技術(CM01)……5件

トンネルシートは技術番号が94ありますが、うち7件は技術名の欄が「-(削除)」となっているため、実際に掲載されているのは87件です。

  • 画像計測技術(TN01)……40件(ほかに削除3件)
  • 非破壊検査技術(TN02)……25件(ほかに削除4件)
  • 計測・モニタリング技術(TN03)……22件

ここで2つ、実務で効く違いが見えます。ひとつはデータ収集・通信技術という区分が橋梁シートにしかないこと。センサーで集めた値をどう送るかという層は、トンネル側の一覧には区分として立っていません。もうひとつは技術番号の総数と掲載件数が一致しないことです。トンネルで「94技術」と数えると、実際に使える技術より7件多く見積もることになります。番号の最大値ではなく、技術名の欄が埋まっている行を数えてください。

今年追加された技術だけを抜き出す列がある

一覧には「R8年新規掲載技術(○が対象)」という列があり、丸印が付いた行がその年に加わった技術です。編集部が数えたところ、丸印は橋梁で23件、トンネルで7件でした。前年に一度カタログを通読しているなら、この列でフィルタをかけると差分だけを追えます。毎年ゼロから読み直す必要はありません。

橋梁とトンネルで版の表記が違う

もうひとつ注意点があります。国土交通省のページの見出しは「点検支援技術性能カタログ(橋梁・トンネル) 令和8年3月」ですが、掲載技術一覧のファイル名は catalog_r0805.xlsx で、シートの表題は橋梁が「令和8年5月」、トンネルが「令和8年3月」でした(いずれも編集部が実ファイルで確認)。橋梁とトンネルで一覧の更新時点がそろっていないということです。社内資料に版を書き写すときは、ページ見出しではなく自分がダウンロードしたファイルのシート表題を見てください。

技術の選び方そのものは本文で扱った手順のとおりです。区分と件数が分かれば、点検支援技術の選び方 完全ガイドで整理した現場条件との突き合わせに進めます。NETISとの位置づけの違いはNETISと点検支援技術性能カタログの違いにまとめました。

なぜ重要性が増したのか:令和6年3月の定期点検要領改定

カタログ自体は平成31年から存在していましたが、その重要性が大きく増した契機は、令和6年3月27日付で行われた道路橋定期点検要領(技術的助言)の改定です。この改定は、3巡目の定期点検(令和6年度〜令和10年度)の開始に合わせて行われました。

改定前の要領では、状態の把握は「近接目視により行うことを基本」とされていました。改定後は「近接目視、または近接目視による場合と同等の評価が行える他の方法」により情報を収集すると改められ、点検支援技術の活用が制度上明確に位置づけられました。背景には、点検技術者の不足や新技術の未活用といった、点検の負担に関する課題があります。

ここで実務の論点になるのが、ある技術が「同等の評価が行える」かどうかを何で確認するかです。その確認の拠り所となるのが、標準的な性能項目に沿って各技術の性能値・適用条件を確認できる性能カタログです。要領のもとで点検支援技術を使う際は、カタログで性能を確認したうえで採否を判断する、という流れが基本形になります。改定内容の全体像は「【令和6年3月改定】道路橋定期点検要領の変更点まとめ」で解説しています。

出典:国土交通省「道路橋定期点検要領(技術的助言の解説・運用標準)」(令和6年3月)(https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/yobohozen/tenken/yobo7_6.pdf)

掲載情報の読み方:技術区分・性能値・適用条件

技術区分ごとに得意分野が異なる

カタログに掲載される点検支援技術は、大きく次のような区分に整理されています。まず自分の目的がどの区分に対応するかを押さえると、探しやすくなります。

技術区分概要(一般的な用途)
画像計測技術カメラ・ドローン等で取得した画像から、ひび割れ等の表面の損傷の状態を把握する
非破壊検査技術対象を壊さずに、外観からは分からない内部の状態を調べる
計測モニタリング技術変位・振動等を計測し、構造物の状態を継続的に監視する
データ収集通信技術点検で得たデータの収集・伝送・管理を支援する

性能値は「適用条件」とセットで読む

カタログの中心情報は、標準的な性能項目に沿って記載された各技術の性能値と適用条件です。性能値は単体では判断材料になりません。その値がどのような条件のもとで成立するのか(対象とする損傷や部材、環境・運用上の前提など)を必ずセットで確認し、自らの現場条件に当てはまるかを照合します。同じ区分の技術でも、適用条件が合わなければ期待した性能は得られません。

掲載=国の性能保証ではない

注意すべきは、カタログへの掲載が、国がその技術の性能を保証するものではないという点です。カタログは、標準的な性能項目で各技術の性能値を確認できるようにするための仕組みであり、掲載された性能値を確認して使うかどうか・どう使うかは、道路管理者・点検技術者の判断に委ねられています。点検支援技術を使う場合でも、健全性の診断を「必要な知識及び技能を有する者」が行うという枠組みは変わりません。

技術選定の手順:現場条件の整理から本格導入まで

カタログを実務で使う際は、次のステップで進めると判断がぶれにくくなります。

会議室でカタログとPC画面を突き合わせる2人の技術者
選定は、現場条件を整理してから候補を絞る順序で進めます。※イメージ
1
現場条件の整理

対象橋梁の橋長・構造形式、桁下条件(河川・道路等)、交通規制の可否、把握したい損傷の種類など、技術に求める条件を先に洗い出します。

2
候補技術の絞り込み

技術区分(画像計測・非破壊検査など)から、目的に対応する区分の技術を候補として抽出します。

3
性能値・適用条件の確認

候補技術の性能値と適用条件をカタログで確認し、手順1で整理した現場条件に当てはまるかを照合します。

4
小規模試行

条件の合う少数の橋で試行し、得られる成果品の品質・工数・従来手法との差を検証します。

5
本格導入

試行結果をふまえて発注仕様や社内標準に反映し、適用範囲を段階的に広げます。

特に画像計測技術(AIひび割れ検出など)を検討する場合は、適合率・再現率といった精度指標の読み方と、技術者による確認の設計が試行段階の鍵になります。詳しくは「AIひび割れ検出の「精度」の見方と技術者確認の設計」をご覧ください。

更新への追従:毎年春の更新をチェックする運用

カタログは毎年度の公募をふまえて更新・拡充されるため、「一度確認して終わり」にはできません。実際に、令和7年4月版では60技術が追加され、令和8年(2026年)春にも令和8年3月版として拡充が発表されています。担当者の個人的な情報収集に頼らず、組織の運用に組み込むことをおすすめします。

  • 年度初め(春)にカタログの最新版を確認する担当とタイミングを決めておく
  • 発注仕様書や社内標準では「点検支援技術性能カタログ(令和8年3月版)」のように版を明記し、どの版に基づく確認かを特定できるようにする
  • すでに使用している技術についても、新しい版での掲載状況・性能項目の変化を確認する

版の特定は、受発注間の認識合わせにも、後から採用判断の根拠を説明する際にも効きます。小さな運用ルールですが、技術活用の説明責任を支える土台になります。

この記事の結論

性能カタログは「近接目視と同等の評価が行える方法」を確認する拠り所であり、掲載=国の性能保証ではありません。性能値は適用条件とセットで読み、参照する版(令和8年3月版など)を明記して毎年春の更新に追従する運用が実務の要点です。

よくある質問

カタログに掲載された技術は、国が性能を保証したものですか?

いいえ。カタログへの掲載は国による性能保証ではありません。標準的な性能項目に沿って性能値・適用条件を確認できるよう取りまとめたものであり、使うかどうか・どう使うかは道路管理者・点検技術者の判断に委ねられています。

点検支援技術性能カタログの最新版はどれですか?

2026年4月1日の国土交通省公式発表では全407技術です。2026年9月11日に確認した分野別掲載資料には令和8年5月の更新もあります。過去の375技術と混同せず、全体集計日、分野別ファイルの表紙年月、技術一覧のシート年月を分けて記録してください。

カタログ掲載技術を使えば近接目視は不要になりますか?

一律に不要になるわけではありません。令和6年3月改定で「近接目視による場合と同等の評価が行える他の方法」が明文化されましたが、同等の評価が行えるかどうかは、性能値・適用条件をふまえた道路管理者・点検技術者の判断によります。

出典・適用範囲

本文の版・条項・対象を確認するための一次資料です。原典の適用範囲と、編集部が作成した例・チェック表を区別しています。

原典リンク確認:2026年9月11日。専門家による個別施設・個別案件の判断を代替するものではありません。

2026年9月11日の更新:参照資料・適用範囲を明示し、本文・要点・FAQの整合を確認しました。 編集・更新方針