橋梁の損傷26種類のうち、③ゆるみ・脱落は評価の書き方が他と違います。ひびわれ幅や腐食の範囲のように「どのくらい傷んでいるか」を見るのではなく、何本のうち何本がゆるんでいるかという割合で決まるからです。

そして、その割合には数字が書かれています。一群あたり本数の5%未満ならc、5%以上ならe。定性的な言葉で書かれることの多い評価区分の中で、③は境目が数値で示されている数少ない損傷です。さらに、その数字を無効にする注記も付いています。

この記事では、橋梁定期点検要領(平成31年3月・国土交通省 道路局 国道・技術課)の本文と付録の原文で、③ゆるみ・脱落の評価・対象範囲・他の損傷との線引き・点検方法を整理します。

この記事の要点
  • cとeは「一群あたり本数の5%」で分かれる。5%未満がc、5%以上がe
  • ただし一群あたりのボルト本数が20本未満の場合は、1本でも該当すればe
  • 「一群」は連結部ではなく連結板ごと。下フランジ・ウェブ・上フランジはそれぞれ別の群
  • 普通ボルト・高力ボルト・リベットの種類も使用部位も問わず、すべてのボルト・リベットが対象
  • ボルト・リベットの破断や折損は④破断ではなく③で扱う。逆に支承ローラーの脱落は⑯支承部の機能障害
  • 要領自身が「目視では把握が困難な場合が多く,打音等を行うことで初めて把握できることが多い」と書いている
  • ボルトが使われていない要素では「a」ではなく「NA」と記録する

対象はすべてのボルト・リベット

付録は③ゆるみ・脱落の一般的性状をこう書いています。

「ボルトにゆるみが生じたり,ナットやボルトが脱落している状態をいう。ボルトが折損しているものも含む。」「ここでは,普通ボルト,高力ボルト,リベット等の種類や使用部位等に関係なく,全てのボルト,リベットを対象としている。」

2文目が重要です。種類も使用部位も問わないと明記されています。主桁の連結部の高力ボルトも、高欄の普通ボルトも、古い橋のリベットも、同じ③で扱います。構造上重要な締結だけを対象にする、という限定はかかっていません。

この広さは、後で見る表-5.1.1の部材一覧にそのまま表れています。③は上部構造・下部構造・支承部・路上の各部材・排水施設・点検施設・添架物まで、鋼部材がある場所のほとんどに現れる損傷種類です。

cとeは一群の5%で分かれる

付録の「損傷程度の評価と記録」は、③について次の区分を定めています。

区分一般的状況(原文)
損傷なし
ボルトにゆるみや脱落が生じており,その数が少ない。(一群あたり本数の5%未満である。)
ボルトにゆるみや脱落が生じており,その数が多い。(一群あたり本数の5%以上である。)

損傷程度の評価はaからeの5段階の枠組みですが、③はbとdが「-」で、実際に選べるのは3つです。⑬遊間の異常と同じ3段構成で、⑯支承部の機能障害のaとeの2段よりは1つ多い作りになっています。

ただし③が他の3段構成と違うのは、cとeの境目に数値が置かれていることです。⑬は「左右の遊間が極端に異なる」「櫛の歯が完全に離れている」という状況の記述で分かれますが、③は割合で分かれます。同じ橋を別の点検者が見ても、母数と本数が一致すれば同じ評価になる建て付けです。

そして、その数値には注記が付いています。

「注2:格点等,一群あたりのボルト本数が20本未満の場合は,1本でも該当すれば,『e』と評価する。」

20本未満では5%の計算をしない

一群が20本未満なら、1本のゆるみでeです。5%を機械的に当てはめると、20本の群では1本=5.0%でe、19本の群では1本=5.3%でやはりeになり、注記が無くても同じ結果に見えます。しかし注記が効くのは母数が小さいときです。4本の群で1本なら25%、2本の群で1本なら50%。いずれにせよeですが、注記は「割合を計算して判断するのではなく、該当すればe」と手順のほうを定めています。トラスの格点のように本数の少ない締結では、計算に入る前に結論が決まります。

「一群」の数え方で評価が変わる

5%という数字は、分母が決まらなければ使えません。付録は「一群」を注記で定義しています。

「注1:一群とは,例えば,主桁の連結部においては,下フランジの連結板,ウェブの連結板,上フランジの連結板のそれぞれをいう。」

連結部をひとまとめにするのではなく、連結板ごとに数えるという定義です。同じ主桁連結部でも、下フランジ・ウェブ・上フランジは別の群になります。

この定義は評価を厳しい側に動かします。仮に連結部全体で120本、そのうち下フランジの連結板が20本、ウェブが80本、上フランジが20本だとして、下フランジで2本のゆるみが見つかった場合を考えます。連結部全体を分母にすると2÷120=1.7%でcですが、下フランジの連結板を一群とすれば2÷20=10%でeです。しかも20本は「20本未満」ではないので、注2ではなく5%の計算が効いて、それでもeになります。

どこを一群として数えたかを所見に残す

原文は「例えば」という書き方で、主桁の連結部の場合を示しています。高欄の支柱、添架物の支持金具、伸縮装置の取付けボルトなど、連結板という部品を持たない締結では、群の切り方を点検者が決めることになります。母数の取り方で評価が1段変わるため、点検調書の所見に「何を一群として何本のうち何本か」を書いておくと、次回点検で同じ数え方を再現できます。付録は「その他の記録」でも「各損傷の数やボルトの種類(材質)を損傷図に記載するものとする。」と定めており、本数と材質は損傷図(その5)側に残すことが求められています。

ボルトの破断は④ではなく③で書く

③の【他の損傷との関係】は2項目です。

状態扱う項目根拠(付録の原文)
支承ローラーの脱落⑯支承部の機能障害「支承ローラーの脱落は,『支承の機能障害』として扱う。」
支承アンカーボルト・伸縮装置の取付けボルト③(前者は⑯としても扱う)「支承アンカーボルトや伸縮装置の取付けボルトも対象とする。前者の損傷を生じている場合には,『支承の機能障害』としても扱う。」

ここに、④破断の側からの線引きが加わります。付録の④の【他の損傷との関係】にはこう書かれています。

「ボルトやリベットの破断,折損は,『破断』ではなく,『ゆるみ・脱落』として扱う。」

ボルトが折れていても、記録先は④破断ではありません。③の一般的性状が「ボルトが折損しているものも含む。」と書いているのと表裏の関係です。部材が破断していれば④、締結が破断していれば③という切り分けになります。

⑯側にも対応する規定があります。⑯支承部の機能障害の前書きに「支承アンカーボルトの損傷(腐食,破断,ゆるみなど)や沓座モルタルの損傷(ひびわれ,剥離,欠損など)など支承部を構成する各部材の損傷については,別途それぞれの項目でも扱う。」とあります。支承アンカーボルトのゆるみは、③と⑯の両方に書く場面がある、ということです。⑬遊間の異常と⑯の関係と同じく、1つの変状が複数の項目に現れます。

なお、ボルトの錆の扱いは③ではありません。付録の①腐食の【他の損傷との関係】に「ボルトの場合も同様に,減肉等を伴う錆の発生を腐食として扱い,板厚減少等を伴わないと見なせる程度の軽微な錆の発生は『防食機能の劣化』として扱う。」とあります。同じボルトでも、ゆるんでいれば③、減肉していれば①、表面の錆だけなら⑤に分かれます。

目視では把握が困難だと要領が書いている

③には、他の損傷にはあまり無い特徴があります。要領本文が、この損傷は目視で見つけにくいと明言していることです。

本文5.の解説は、近接目視で把握できる範囲では情報が不足するときの例として、次を挙げています。

「ボルトのゆるみや折損なども,目視では把握が困難な場合が多く,打音等を行うことで初めて把握できることが多い。」

近接目視を基本とする定期点検の中で、目視の限界が名指しで示されている損傷です。この記述は、表-5.1.2「状態の把握の標準的な方法」とも整合しています。

損傷の種類点検の標準的方法必要や目的に応じて採用することのできる方法の例
③ ゆるみ・脱落目視,点検ハンマーボルトヘッドマークの確認,打音検査/超音波探傷(F11T等),軸力計を使用した調査
④ 破断目視,点検ハンマー打音検査(ボルト)/写真撮影(画像解析による調査)
② 亀裂目視磁粉探傷試験,超音波探傷試験/渦流探傷試験,浸透探傷試験

③の標準的方法には、②亀裂と違って点検ハンマーが最初から入っています。目視だけでは標準を満たさない建て付けです。ボルトヘッドマークの確認は、ボルト頭の刻印の向きが施工時から回っていないかを見る方法で、機器を使わずに回転の有無を追える手段として挙げられています。

判定はF11Tの遅れ破壊から立つ

付録の【対策区分判定】は、③について次のように書いています。

判定区分付録に書かれている想定(原文の趣旨)
E1「接合部で多数のボルトが脱落しており,接合強度不足で構造安全性を損なう状況などは,緊急対応が妥当と判断できる場合がある。」
E2「常に上揚力が作用するペンデル支承においてアンカーボルトにゆるみを生じ,路面に段差が生じるなど,供用性に直ちに影響する事態に至る可能性がある状況や,F11T ボルトにおいて脱落が生じており,遅れ破壊が他の部位において連鎖的に生じ,第三者被害が懸念される状況などは,緊急対応が妥当と判断できる場合がある。」
S1・S2「F11Tボルトでゆるみ・脱落が生じ,損傷したボルトと同じロットのボルトや同時期に施工されたボルトなど条件の近い他のボルトが連鎖的に遅れ破壊を生じるおそれがある状況などにおいては,詳細調査を実施することが妥当と判断できる場合がある。」
「高欄や付属物の普通ボルトにゆるみが発生しているなど損傷の規模が小さい状況においては,維持工事で対応することが妥当と判断できる場合がある(ただし,複数箇所でゆるみや脱落が生じている場合には,原因を調査して対応することが望ましい。)。」

E2とS1・S2の両方で、F11Tボルトの遅れ破壊が名指しされています。1本のゆるみ・脱落が、その1本の問題では終わらない可能性を扱う書き方です。S1・S2の原文は「同じロットのボルトや同時期に施工されたボルト」と、調査の広げ方まで示しています。

この構造は、③の評価が割合で決まることとも関係します。今日cだったとしても、同じロットの締結が同時期に劣化していれば、母数側が一斉に動く可能性があります。本数と材質を損傷図に残すという付録の指示は、この追跡のために効いてきます。

Mの側は逆に、規模が小さければ維持工事で対応してよいと書かれています。ただし括弧書きで「複数箇所でゆるみや脱落が生じている場合には,原因を調査して対応することが望ましい」と付記されており、点在しているときは原因側に戻ることが求められています。

所見を記載する上での参考として、付録は鋼部材全般の損傷原因と影響の例も挙げています。原因の例は「連結部の腐食」「走行車両による振動」「ボルトの腐食による断面欠損」「F11Tボルトの遅れ破壊」「車両の衝突,除雪車による損傷」。影響の例は「直ちに耐荷力には影響はないものの,進行性がある場合には危険な状態となる。」「主桁のうき上がりにより伸縮装置等に段差が生じる場合がある。」「二次的災害」です。

3つ目の「二次的災害」は、落下したボルトやナットが橋下に及ぼす被害を指すものと読めます。この観点は第三者被害予防措置と接続します。

高欄のボルトは詳細調査の例外として名指しされている

要領本文の6.5「詳細調査又は追跡調査の必要性の判定」の解説に、③に関する重要な一文があります。

「一般的にはこれらが不明の場合,6.2に規定されている補修等の必要性の判定は困難で,詳細調査又は追跡調査が必要となる。しかし,高欄のボルトのゆるみのように原因が不明であっても,容易に補修や改善の対応が可能であり,直ちに対処することが望ましいと考えられるものについては,例えばMに判定するなど,必ずしも詳細調査が必要とはならない場合も考えられるので,上記のように規定した。」

原因が不明ならS1、というのが原則です。その原則の例外として要領が挙げている唯一の具体例が、高欄のボルトのゆるみです。締め直せば済むものを、原因究明のために詳細調査へ回す必要はない、という判断が要領の側で示されています。

ただし範囲は限定的に読むべきです。原文の条件は「容易に補修や改善の対応が可能であり,直ちに対処することが望ましいと考えられるもの」です。主桁連結部の高力ボルトや支承アンカーボルトは、締め直しで済む対象ではありません。同じ解説の中で、初回点検で発見した損傷のうち原因が不明なものは「規模の大小を問わず,S1判定が望まれる」とも書かれています。

記録する部材は橋の全域にわたる

要領の「表-5.1.1 対象とする損傷の種類の標準」で、③ゆるみ・脱落が対象になっている部位・部材は次のとおりです。

部位部材材料区分
上部構造主桁/主桁ゲルバー部/横桁/縦桁
下部構造柱部・壁部/梁部/隅角部・接合部
支承部支承本体/アンカーボルト/落橋防止システム
路上高欄/防護柵/地覆/中央分離帯
路上伸縮装置(後打ちコンクリートを含む。)
路上遮音施設/照明施設/標識施設鋼/その他
点検施設・添架物点検施設/添架物鋼/その他

鋼部材がある場所のほとんどに現れます。⑬遊間の異常が支承部と伸縮装置の3か所に限られていたのと対照的です。部材単位の判定を組み立てるとき、③は多くの要素で評価欄に登場する項目になります。

そのため、記録様式の記入方法にも③が例として出てきます。要領は「全ての要素において,橋梁定期点検要領の『表-5.1.1 対象とする損傷の種類の標準』に示されている損傷に対して,点検した結果を確実に残すため,損傷程度の評価(a~e)を記入する。」としたうえで、例外をこう定めています。

「ただし,当該要素において明らかに対象外である損傷種類(例えば,ボルトが使われていない要素での③ゆるみ・脱落)では,NA』とする。」

a・NA・NONの使い分け

ボルトが使われていない要素での③は「a」ではなく「NA」です。「a」は見て損傷が無かったこと、「NA」はそもそも対象外であることを表します。さらに、まったく損傷がない要素は損傷の種類を「NON」、損傷程度を「a」として入力するとされています。道路橋記録様式へ登録するときは、この3つの区別が必要です。要領が「NA」の代表例として③を挙げているのは、③の対象部材が広いぶん、ボルトの無い要素にも評価欄が現れてしまうためだと読めます。

付録の「その他の記録」は、③についてこう定めています。「ゆるみ・脱落の発生位置やその範囲・状況をスケッチや写真で記録するとともに,各損傷の数やボルトの種類(材質)を損傷図に記載するものとする。」

評価区分の欄に残るのはa・c・eの1文字だけで、何本のうち何本か、どの材質かは残りません。5%の判断の根拠は損傷図と写真台帳の側にしか残らない構成です。次回点検で進行を比較するには、この2つが要ります。

出典:国土交通省 道路局 国道・技術課「橋梁定期点検要領」(平成31年3月)本文および付録-1「対策区分判定要領」・付録-2「損傷程度の評価要領」。引用は原文の表記に従いました。最新の要領・様式は必ず原典をご確認ください。

なお、ここで引用したのは橋梁定期点検要領(平成31年3月)です。国土交通省が地方公共団体向けに示している道路橋定期点検要領(令和6年3月改定)とは位置づけが異なります。2つの要領の違いを踏まえ、実際の業務では各道路管理者が採用している要領の版を確認してください。

よくある質問

ゆるみ・脱落のcとeは、どこで分かれるのですか。

一群あたりの本数に対する割合で分かれます。付録はcを「ボルトにゆるみや脱落が生じており,その数が少ない。(一群あたり本数の5%未満である。)」、eを「ボルトにゆるみや脱落が生じており,その数が多い。(一群あたり本数の5%以上である。)」と定めています。5%未満か以上かが境目です。ただし注記で、一群あたりのボルト本数が20本未満の場合は1本でも該当すればeと評価する、と定められています。

「一群」とは何本を指すのですか。

付録の注記は「一群とは,例えば,主桁の連結部においては,下フランジの連結板,ウェブの連結板,上フランジの連結板のそれぞれをいう。」と定めています。連結部をひとまとめにするのではなく、連結板ごとに数えます。同じ連結部でも、下フランジ・ウェブ・上フランジは別の群です。母数の取り方で5%の分母が変わるため、どこを一群として数えたかを所見に残しておくと再現性が確保できます。

ボルトが破断していたら、③ゆるみ・脱落と④破断のどちらで書きますか。

③ゆるみ・脱落です。付録の④破断の【他の損傷との関係】に「ボルトやリベットの破断,折損は,『破断』ではなく,『ゆるみ・脱落』として扱う。」と明記されています。③の一般的性状にも「ボルトが折損しているものも含む。」とあります。部材が破断していれば④ですが、ボルト・リベットの破断は④に入れません。

ボルトが使われていない部材でも、③の評価を記入するのですか。

記入しますが「a」ではなく「NA」です。記録様式の記入方法は、表-5.1.1に示される損傷には点検結果を確実に残すため評価を記入するとしたうえで、「ただし,当該要素において明らかに対象外である損傷種類(例えば,ボルトが使われていない要素での③ゆるみ・脱落)では,NA』とする。」と定めています。ボルトが無い要素での③が、この規定の名指しの例になっています。

ボルトのゆるみは、近接目視だけで見つけられますか。

要領は難しいと書いています。本文の解説は非破壊検査等で情報を補う例として「ボルトのゆるみや折損なども,目視では把握が困難な場合が多く,打音等を行うことで初めて把握できることが多い。」を挙げています。状態の把握の標準的な方法の表でも、③の標準的方法は「目視,点検ハンマー」で、必要や目的に応じて採用できる方法としてボルトヘッドマークの確認・打音検査・超音波探傷(F11T等)・軸力計を使用した調査が並んでいます。

高欄のボルトがゆるんでいて原因が分からないときは、詳細調査(S1)にするのですか。

必ずしもS1にはなりません。要領本文の6.5の解説は「しかし,高欄のボルトのゆるみのように原因が不明であっても,容易に補修や改善の対応が可能であり,直ちに対処することが望ましいと考えられるものについては,例えばMに判定するなど,必ずしも詳細調査が必要とはならない場合も考えられる」と述べています。高欄のボルトのゆるみは、要領自身がこの例外の代表例として名指ししている状況です。