- 直轄要領(令和6年7月)の点検記録様式(その3)は径間別一般図。技術的助言版の「様式3」(特定事象・所見)とは別物
- 橋梁一般図に少なくとも記載する7項目=橋長・支間長・幅員・桁間隔・桁高・支承条件・径間分割番号
- 「現況の一般図がない場合には,新たに作成すること」。補強を反映した現況図にするのが前提で、無ければ作る
- 選択して載せる情報は11項目。点検車の設置可能位置・橋梁下へのアクセスルート・踏掛板の有無など、次回の計画立案のための情報が並ぶ
- 地盤内と近接不可の位置はこの図に記録する(様式その7の留意事項が明示)。図が様式その7と対になっている
「様式その3」を調べると、2つのまったく違う説明が出てきます。片方は特定事象や所見を書く欄の話で、もう片方は図面の話です。どちらも間違いではなく、読んでいる要領が違うだけです。
直轄の「橋梁定期点検要領」(令和6年7月)では、点検記録様式(その3)は径間別一般図です。図面を貼る様式なので軽く見られがちですが、原典は「必ず記載する7項目」と「現況の図面が無ければ新たに作成すること」をはっきり書いています。この記事では、その記入要領を原文で確認します。
同じ「様式その3」が2つある理由
道路橋の定期点検には、適用する要領が2系統あります。地方公共団体向けの技術的助言(道路橋定期点検要領・令和6年3月)と、国土交通省が自ら管理する橋に適用する直轄の要領(橋梁定期点検要領・令和6年7月)です。関係の整理は橋梁定期点検要領(令和6年7月・直轄)とは?道路橋定期点検要領との違いにまとめています。
「様式3」の中身が食い違うのは、この2系統で様式の割り当てが違うためです。
| 要領 | 様式その3の中身 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 道路橋定期点検要領(技術的助言・令和6年3月) | 特定事象/健全性の診断の区分の前提/特記事項(応急措置)/所見 | 別記事(様式3の書き方:特定事象・前提条件・応急措置・所見) |
| 橋梁定期点検要領(直轄・令和6年7月) | 点検記録様式(その3)径間別一般図 | この記事 |
自組織がどちらを採用しているかで、様式番号の指す中身が変わります。発注図書と要領の版を先に確認してください。
この様式は誰が作るのか
作成者は明記されています。原典は「本様式は,橋梁検査員が作成する」としています。
さらに、データ記録様式の節にも注意書きが置かれています。「データ記録様式(その1)からデータ記録様式(その6)は,橋梁検査員が,将来の維持管理の参考となり,かつ維持管理計画の策定や見直しに用いるための損傷程度の評価や外観性状を記録する。なお,橋梁検査員は,点検記録様式(その3)及び(その6)も作成することに注意すること。」
つまり、点検記録様式の多くは橋梁診断員側の成果物ですが、(その3)一般図と(その6)要素番号図・部材番号図の2つだけは橋梁検査員が作るという割り当てです。検査員と診断員の役割分担は橋梁検査員とは?診断員と分かれた「記録する側」の要件と橋梁診断員とは?資格制度が無い役割の線引きで整理しています。(その6)の中身は要素番号の付け方:起点側から振る4桁の意味にあります。
全体図と一般図は別のもの
この様式には2種類の図が入ります。原典の記入要領は次のとおりです。
・「一般図」:各径間の一般図(平面図,側面図,断面図)
様式の名前が「径間別一般図」であることが示しているとおり、一般図は径間ごとに整理します。全体図は橋1橋ぶんの模式図で、多径間ならその様式が対象としている径間をマークするという指定が付いています。
図面の品質についても1行あります。「なお,いずれの図面も,数値等が読みとれる明瞭な図面とすること。」縮小して貼って数値が読めない図は、この条件を満たしません。
橋梁一般図に必ず書く7項目
原典は、全体図に載せることが多い橋梁一般図について、記載する情報の最低線を決めています。
「少なくとも」と書かれている7項目を分けると次のようになります。
| 項目 | 何に効くか(この記事での読み方) |
|---|---|
| 橋長 | 様式その1の諸元と突き合わせる値。橋台胸壁前面間で測る |
| 支間長 | 径間の分割と部材群の区分の前提になる |
| 幅員 | 地覆前面間。点検車の設置や規制の計画に効く |
| 桁間隔 | 要素番号の「列」(橋軸直角方向の並び)の根拠 |
| 桁高 | 箱桁内部に進入できるかの判断。様式その7の「桁高が低く箱桁内部に進入できない」の記載例に直結する |
| 支承条件 | 固定・可動の配置。上下部接続部のシステムの見方に効く |
| 径間分割番号 | どの径間の一般図かを特定する。「1径間の考え方」(共有部材は若番側)と対応する |
橋長・幅員の測り方や様式その1の諸元の書き方は様式1の基本情報の書き方:橋梁名・路線名・緯度経度に、構造形式の記号は構造形式コードの選び方|付表1.1の4区分と「不明」「その他」の扱いにまとめています。
「現況の一般図がない場合には,新たに作成すること」
この様式でいちばん工数に効くのが、次の2行です。
現況の一般図がない場合には,新たに作成すること。
2つのことが書かれています。①完成図のままではなく、補強を反映した現況の図にする ②現況図が無ければ作る。古い橋では完成図書しか残っていないことがあり、その場合は補強の履歴を反映した図を新たに起こす作業が発生します。
原典は、選択して載せる情報の中に「前回定期点検以降の補修・補強の情報」も挙げており、その理由を「補修・補強工事の範囲(又は位置)は,前回定期点検にて確認された損傷への対応を把握できる情報である」と説明しています。補強を図に反映するのは、形を正しく描くためというより、前回の損傷にどう手を打ったかを次の点検者に渡すためです。
補修・補強材そのものの損傷の扱いは補修・補強材の損傷とは?5分類で変わる評価にあります。
平面図・側面図・断面図に選んで載せる11項目
一般図側(平面図・側面図・断面図)は、橋そのものの情報に加えて「地形・交差条件・周辺状況及び設計条件等,定期点検をより効率的・効果的に行うための情報」を載せます。原典は「記載する情報は,次の中から適切なものを選択する」として11項目を挙げています。必須ではなく選択です。
| 項目 | 原典が書いている理由 |
|---|---|
| 方向別表示(○○方面) | 当該橋梁の起点・終点を示し、各部位における正確な位置把握に有益 |
| 地質縦断図・柱状図 | 地形・地質が把握できるほか、生じた損傷の原因の推定に有益 |
| 交差物件の名称・方向・条件明示 | 名称はその管理者を特定するための情報。緊急時・災害時の情報共有と連携に必要 |
| 河川の計画及び現況河床 | 河川を横架する場合、洗掘の有無等の判断の一助となる |
| 第三者被害予防措置の対象範囲 | 架橋条件や維持管理の前提条件が確認できる |
| 梯子、橋梁点検車の設置可能位置 | 定期点検の計画立案だけでなく、災害時の緊急点検の際にも有益 |
| 橋梁下へのアクセスルート | 特に山間部等、周辺道路が十分整備されていない地域で有益 |
| 前回定期点検以降の補修・補強の情報 | 前回確認された損傷への対応を把握できる |
| 踏掛板の有無 | 大規模地震後の緊急点検計画の立案時に、橋台背面の沈下の生じやすさを把握できる |
| 定期点検の現地実施において調整等が必要となる施設 | 大規模な送電線、光ファイバーの幹線等は事前調整が必要 |
| 近接が不可能な位置/近接目視によらずに状態を把握した位置 | その位置を一般図に記録として残す。記入内容は点検記録様式(その7)が参考にできる |
並べてみると、11項目のうち5項目(点検車の設置可能位置・アクセスルート・調整が必要な施設・踏掛板・交差物件の管理者)は「次に現場へ行く人」のための情報です。損傷の記録ではなく、段取りの引き継ぎがこの図に載っています。
第三者被害予防措置の対象範囲の決め方は第三者被害の措置対象範囲は75°で決まる|付録-2の図の読み方、点検車と高所作業車の違いは橋梁点検車とは?高所作業車との違いと必要な資格に整理しています。
交差物件は名称だけでなく方向も明示する
交差物件の項目には、書き方の例まで付いています。
例:河川…上下流/道路…至○○/海岸付近…海側,山側
さらに「交差条件(建築限界,H.W.L等)を明示することにより,定期点検の計画立案に必要な情報となる」とされています。建築限界は点検車や足場が入れるかに、H.W.L(計画高水位)は水中部の作業時期に効きます。
交差物件が道路・鉄道・河川のときに誰が管理者になるか、立入りの段取りがどう変わるかはその橋は誰が点検するのか?指定区間と道路管理者の決まり方と点検で他人の土地に立ち入るときの手続と補償が近い内容です。河川を渡る橋の洗掘の見方は橋脚の洗掘は誰が水中を見るのかにあります。
地盤内と「近接できなかった位置」はこの図に残す
一般図の記入要領とは別に、点検記録様式(その7)の留意事項の側からも、この図への記録が指定されています。
地盤に埋まっている部分は「見えなかった」のではなく「原理的に見えない」ので、様式その7に理由を書くのではなく図に地盤線を引いて示すという整理です。
一方、物理的に見られなかった箇所は様式その7側に「その範囲と理由を明記する」とされ、記載例として「添架物により床版下面が目視できない」「桁高が低く箱桁内部に進入できない」「化粧板により桁が目視できない」「コンクリート橋の支点上横桁の背面は目視できない」「コンクリート橋の支点上横桁があり,胸壁前面は目視できない」が挙げられています。そして一般図側の11項目にも「人が近づけるだけの空間が存在しないなど物理的に近接が不可能であるときや,近接目視によらずに状態を把握した場合は,その位置を一般図に記録として残す」とあります。
理由は様式その7、位置は一般図という分担です。様式その7の詳細は点検記録様式(その7)とは?見えなかった箇所の記録、近接目視によらない方法の要件は近接目視とは?定義と「同等の評価が行える他の方法」の要件にまとめています。
記載が望まれる4つの情報:交通・情報源・取得年次・側道橋
選択の11項目とは別に、「(2) その他記載が望まれる情報」として4つが挙げられています。
| 内容 | 原典の例 | |
|---|---|---|
| ①周辺の交通等状況 | 橋梁の位置する道路にどのような交通が見られるかは、損傷の進展を考察する場合に重要な要素の一つ | 主要なアクセス道路(高速道路、主要地方道等)/大規模な工業団地等の大型車の通行が想定される地域 |
| ②情報源となる施設 | 災害時に遠隔地からでも速やかに現地の情報が取得できるように記載する | CCTVの設置位置、撮影範囲・方向、可能な旋回範囲等/気象観測装置、路温計等の設置情報 |
| ③情報取得年次 | 記載している情報の確からしさを示すため、各情報の取得年次等について記載する | 形式・形状は完成図から精緻に転載されたものか、想定が含まれるのか/河床高は○年○月現在時点の高さ/交差道路の高さは○年○月現在の高さ |
| ④側道橋 | 側道橋には本橋側を、本橋には側道側を記載する | — |
③の「情報取得年次」は、図面を資料として扱うときに効く指定です。完成図からの転載か、想定を含むのかを図の上で区別するという考え方で、損傷程度の評価で観察事実と推定を混ぜない原則(損傷程度の評価(a〜e)とは?健全性の診断との関係を整理)と同じ筋です。
①の大型車の通行は、重量制限や通行の適正化の話につながります(橋の重量制限は何を根拠に決めるのか)。
この様式が効いてくるのは次回の計画立案のとき
一般図は、その回の健全性の診断には直接使われません。原典の位置づけは「点検記録様式(その1)から点検記録様式(その11)は,道路橋毎の所在地や諸元などの基礎的な情報,健全性の診断の区分,その主たる決定要因となる橋の性能の概略の評価,そのために必要な状態の把握,及び性能の評価を踏まえた次回定期点検までの部材群の措置の必要性の技術的見解等を記入する」で、一般図はこのうち「基礎的な情報」の側です。
そのうえで、載せる情報の理由として原典が繰り返し挙げているのは「定期点検の計画立案」「災害時の緊急点検」「緊急時及び災害時の情報共有及び対応への連携」でした。この図を手を抜いて作ると、困るのは5年後に同じ橋へ行く人という構造になっています。定期点検計画そのものの組み方は定期点検計画とは?道路管理者が共通で確認する5項目と連絡体制、引き継ぎ事項の様式は点検の引き継ぎ事項はどこに書く?様式5か所に整理しています。
調書全体での位置づけは橋梁点検調書の構成と書き方:様式の全体像と記入の要点、作成工数を削る側の話は点検調書作成の工数を減らす方法:ボトルネックは「とりまとめ」にまとめています。
よくある質問
Q. 様式その3は一般図ですか、それとも所見を書く欄ですか。
A. 読んでいる要領で変わります。直轄の「橋梁定期点検要領」(令和6年7月)では点検記録様式(その3)は「径間別一般図」で、原典は「本様式では,径間毎に,対象橋梁の全体図及び一般図(平面図,側面図,断面図)などを整理し,記載する」としています。特定事象や所見を書く「様式3」は地方公共団体向けの技術的助言(道路橋定期点検要領・令和6年3月)の側の様式です。
Q. この様式は誰が作るのですか。
A. 橋梁検査員です。原典は「本様式は,橋梁検査員が作成する」とし、データ記録様式の節にも「なお,橋梁検査員は,点検記録様式(その3)及び(その6)も作成することに注意すること」と書かれています。
Q. 一般図に最低限書かないといけない項目は何ですか。
A. 7項目です。原典は「当該図には,少なくとも,橋長・支間長・幅員・桁間隔・桁高・支承条件・径間分割番号を記載する」としています。理由として「そこに記載する情報は当該橋梁の点検・診断を行うにあたっての基本的な諸元を網羅する必要がある」と書かれています。
Q. 完成図をそのまま貼ってもよいのですか。
A. いいえ。原典は「※補強等を反映させた現況の一般図とすること。」としており、さらに「現況の一般図がない場合には,新たに作成すること。」と続きます。完成図のままでは条件を満たさず、現況図が無ければ作成する作業が発生します。
Q. 図面の大きさや縮尺の指定はありますか。
A. 寸法の指定はありませんが、品質の条件が1行あります。「なお,いずれの図面も,数値等が読みとれる明瞭な図面とすること。」縮小して数値が読めない図はこの条件を満たしません。
Q. 全体図と一般図はどう使い分けるのですか。
A. 原典は「全体図」を「橋梁全体の模式図(多径間の場合,対象としている径間をマークする。)」、「一般図」を「各径間の一般図(平面図,側面図,断面図)」としています。様式の名前が「径間別一般図」であるとおり、一般図は径間ごとに整理し、全体図では対象径間をマークします。
Q. 交差物件はどこまで書くのですか。
A. 名称に加えて方向を書きます。原典は「交差物件(河川・道路・鉄道等)の方向別表示を行う」として「例:河川…上下流/道路…至○○/海岸付近…海側,山側」を挙げています。名称を書く理由は「その管理者を特定するための情報であり,緊急時及び災害時の情報共有及び対応への連携等に際し必要な情報である」と説明されています。あわせて「交差条件(建築限界,H.W.L等)を明示することにより,定期点検の計画立案に必要な情報となる」とされています。
Q. 見られなかった箇所は様式その7に書けばよいのではないですか。
A. 理由は様式その7、位置は一般図という分担です。様式その7の留意事項は「下部構造等の地盤内は目視できないので,点検記録様式(その3)に地盤線とその記号を記入する」とし、一般図側の選択項目にも「人が近づけるだけの空間が存在しないなど物理的に近接が不可能であるときや,近接目視によらずに状態を把握した場合は,その位置を一般図に記録として残す。記入内容は,点検記録様式(その7)が参考にできる」と書かれています。
Q. 情報取得年次まで書く必要があるのですか。
A. 「記載が望まれる情報」として挙げられています。原典は「記載している情報の確からしさを示すため,各情報の取得年次等について記載する」とし、例として「形式・形状は完成図から精緻に転載されたものか,想定が含まれるのか」「河床高は,○年○月現在時点の高さ」「交差道路の高さは,○年○月現在の高さ」を挙げています。
Q. 側道橋がある場合はどう書くのですか。
A. 原典は「側道橋には本橋側を,本橋には側道側を記載する」としています。互いの存在を図に入れる形です。
出典・適用範囲
本文の版・記述・引用を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。引用の読点・句点は原典の表記に合わせています。
- 国土交通省 道路局 国道・技術課「橋梁定期点検要領」(令和6年7月) — 参照箇所:付録-1「定期点検結果の記入要領」の目次/1.点検記録様式への記入方法の総論(付録-1 1ページ)/3)点検記録様式(その3)径間別一般図とその留意事項(1)①②・(2)①〜④(付録-1 8〜10ページ)/7)点検記録様式(その7)診断のための状態把握の方法の留意事項①ア)〜エ)(付録-1 15ページ)/3.データ記録様式への記入方法の総論(付録-1 23ページ)/付表-1.2「各部材の名称と記号」の参照指定
- 国土交通省 道路局「道路の老朽化対策」 — 要領・参考資料の一覧(原典PDFの掲載元)
本記事が読んでいるのは直轄の「橋梁定期点検要領」(令和6年7月)で、適用は国土交通省が管理する道路橋です。地方公共団体が管理する道路橋に自動的に適用されるものではなく、そちらは「道路橋定期点検要領」(技術的助言・令和6年3月)の系統で様式の割り当てが異なります。本記事は付録-1のうち点検記録様式(その3)の記入要領と、その3に関係する様式(その7)の留意事項のみを扱っており、他の様式(その1・その2・その4〜その11)の記入要領、予防措置の実施記録様式、データ記録様式、付表-1.1/付表-1.2の一覧、付図-1.1〜付図-1.4の図版の個別の内容は扱っていません(いずれも原典でご確認ください)。個別の橋の一般図が要件を満たしているかの判定は行っていません。自組織が採用している要領と発注図書を優先してください(国交省要領と都道府県の点検マニュアルの関係:どちらに従う?)。