- 記録様式の記入方法は、要領本体ではなく「『道路橋定期点検要領(令和6年3月)』運用の手引き」(2025年4月・国土交通省道路局 国道・技術課/国土技術政策総合研究所 道路構造物研究部)にまとまっています
- 橋梁名の上下線は「(上り)」「(下り)」だけが正。「(上)」「(上り線)」「上り」「上」は使用しないと明記されています
- 路線名は「一般国道」「一般県道」「主要地方道」という表記はしない。都道府県道は「府道○○」「県道○○」の形です
- 緯度経度は十進法の小数第5位まで。施設IDはその緯度経度から付与します
- 跨道橋でない橋の路下条件は「×」。「指定無し」と書かないよう注記があります
- 架設年度は西暦4桁・半角数字で、不明なら空欄にせず「不明」。橋長・幅員は小数第2位を四捨五入して第1位まで
- 基本情報の多くは「付録-1 77条調査について」に準じると書かれており、所在地・管理者名・定期点検実施年月日の3つだけが「異なる」とされています
定期点検の成果品を受け取ってから、橋梁名の全角半角や路線名の書き方で差し戻しが発生する。データベースへの登録で弾かれて、どの欄の書式が原因か分からないまま照合し直す。基本情報の欄は「見れば分かる項目」に見えるので、記入ルールがあること自体が共有されないまま進みがちです。
実際には、様式1の基本情報は表記のレベルまで決まっています。それが書かれているのは要領本体ではなく、運用の手引きという別の参考資料です。この記事では2025年4月版を原文で読み、基本情報欄がどこまで指定されているかを項目順に整理します。様式そのものが令和6年3月に変わった経緯は道路橋記録様式(令和6年3月)、調書全体の構成は橋梁点検調書の構成と書き方で扱っています。
記入要領は要領本体には載っていない
令和6年3月の道路橋定期点検要領は、技術的助言とその解説・運用標準からなります。付録として記録様式が示されていますが、各欄をどう埋めるかまでは書かれていません。そこを補うのが、2025年4月に出た参考資料「道路構造物の定期点検の実施にかかる参考資料『道路橋定期点検要領(令和6年3月)』運用の手引き」です。
手引きは冒頭で自らの位置づけをこう書いています。
「この手引きは、『道路橋定期点検要領(技術的助言の解説・運用標準) 令和6年3月 国土交通省道路局』(以下、『定期点検要領』という。)に準拠して、道路橋の定期点検を適切に行うための参考となることを意図してとりまとめたものである。」「この手引きでは、主に、技術的助言の『5.健全性の診断の区分の決定』『6.記録』を適切に実施することの一助となるよう、定期点検要領の付録として示される記録様式の活用方法を記入要領としてとりまとめた。」(運用の手引き Ⅰ-1.はじめに)
構成は2部と4つの付録です。
| 章 | 内容 |
|---|---|
| Ⅰ.付録様式の記入要領 | 定期点検の実施体系、記録内容と様式の構成、様式1〜様式3の記入要領 |
| Ⅱ.所見作成の手引き | 基本的事項、記述の内容・構成、用語の定義(全般/変状の種類/原因事象/措置または対策) |
| 付録-1 | 77条調査について(道路法第77条の条文、調査内容および様式の例) |
| 付録-2〜4 | 径間や単位毎の記録方法の例、損傷図の記録方法の例、損傷写真の記録方法の例 |
この記事が扱うのはⅠ章の様式1、そのうち①〜⑱の基本情報の部分です。⑲以降の技術的な評価結果は健全性の診断と部材単位の判定、様式3の所見欄の書き方は様式3の書き方と所見の用語10種で別に整理しています。
橋梁名とフリガナ:使ってよい表記が決まっている
様式1の①橋梁名について、手引きはこう書いています。
「道路橋名を記入する。英数字やカッコが入る場合には半角とし、道路橋名が同じ場合は連番を付加するなどして区分する。上り線、下り線については『(上り)』『(下り)』とし、『(上)』『(上り線)』『上り』『上』は使用しない。」「道路橋名のフリガナは半角カナにより記入する。数字も半角カナとして、フリガナの前後には半角カッコを必ず入れる。」(運用の手引き Ⅰ-4.1 ①)
指定されているのは3点です。
- 英数字とカッコは半角にそろえる
- 上下線の表記は「(上り)」「(下り)」の2通りだけ。4つの書き方が名指しで禁じられている
- フリガナは半角カナ。数字も半角カナに直し、前後を半角カッコで囲む
付録-1の記入例では、具体的な形まで示されています。「無名橋1」なら「(ムメイキョウイチ)」、「○高架橋(2)」なら「(マルコウカキョウ(ニ))」、「○IC橋」なら「(マルインターチェンジキョウ)」です。数字を読み仮名に開く点と、記号を読みに直す点が要点になります。
路線名に「一般国道」と書かない
②路線名は、表4.1の記入例に従って書きます。路線番号を書くときは半角数字です。表の内容は次のとおりです。
| 路線の種類 | 記入例 |
|---|---|
| 高速自動車国道のうち新直轄方式/一般国道の自動車専用道路 | ○○自動車道 ○○線(高速自動車国道法上の路線名) |
| 高速自動車国道に並行する一般国道の自動車専用道路/地域高規格道路 | 国道○号(○○道路) ※「一般国道」という表記はしない |
| 上記以外の国道 | 国道○号 |
| 都道府県道 | 府道○○、県道○○ 等 ※「一般県道」「主要地方道」という表記はしない |
| 市町村道 | 市道○○、町道○○ 等 |
注意書きが2か所に入っています。「一般国道」と書かない、「一般県道」「主要地方道」と書かないの2つです。道路法上の区分としては正しい呼び方でも、この様式では使いません。手元の台帳が「主要地方道○○線」で管理されている自治体は、そのまま転記すると表記が揃わなくなります。
付録-1の記入要領には、もう1点「移管された施設は『移管先の路線名』に修正すること」という注記もあります。管理替えのあった橋は、点検のたびに路線名の確認が要るということです。
所在地・緯度経度・施設IDの3点セット
③所在地は、施設の起点側の位置を「○○県△△市□□地先」の形で書きます。手引きは「伝達の確実性の向上を目的として、フリガナを付す等の工夫をするとよい」と添えています。
④緯度・経度も起点側です。精度は「定期点検対象施設のID付与に関する参考資料(案)」(令和元年10月)に規定された十進緯度経度の小数第5位。工事完成図書などで既知なら半角数字でそのまま、未知なら地図から取得します。
⑤施設IDは、その緯度・経度を用いて同じ参考資料に示される方法で付与します。つまり緯度経度の精度が揃っていないと施設IDも揃わないという順番になっています。全国のデータベースで橋を一意に指すための背骨がここです。登録側の仕組みは全国道路施設点検データベースにまとめています。
⑥管理者名は「○○地方整備局△△国道事務所□□維持出張所」「○○県△△振興局□□土木事務所」「○○高速道路会社□□管理事務所」のように、出張所・事務所レベルまで書く例が示されています。
路下条件の「×」と「指定無し」は違う
⑦路下条件から⑪占用物件までは、橋の置かれた状況を記録する欄です。ここに誤りやすい注記が入っています。
⑦路下条件では、道路橋下の道路の緊急輸送道路の指定状況を「一次」「二次」「三次」「市町村指定」「指定無し」から選びます。そのうえで、
「跨道橋ではない場合は、『×』を記入する(『指定無し』としないよう注意する)。」(運用の手引き Ⅰ-4.1 ⑦)
「指定無し」は路下に道路はあるが指定されていないという意味で、「×」はそもそも路下に道路がないという意味です。集計側から見ると、跨道橋の母数が変わってしまうため区別が要ります。同じ欄で、路下の道路の管理者名も記入し、道路法外の道路(河川用道路等)を管理している場合も対象に含めるとされています。
鉄道については「新幹線」「その他鉄道」「無し」から選び、新幹線と在来線を同時に跨ぐ場合は「新幹線」とします。鉄軌道事業者名も記入します。
⑧代替路の有無は、判断基準が明示されています。「当該橋梁が通行止めとなった場合に、孤立集落が発生する場合は、代替路は無しとする」。迂回路の物理的な有無ではなく、孤立するかどうかで決める書き方です。緊急輸送道路そのものの考え方は緊急輸送道路の橋梁点検を参照してください。
⑪占用物件は、表4.2の名称例(上下水道・下水道・ガス・通信ケーブル・工業用水・電力・道路情報板・I・T・V・農業用水・電話・道路標識・駐車場・公園・不明・無し・その他)から名称を記入します。占用物件と添架物の扱いの違いは添架物と占用物件で整理しています。
橋梁諸元の丸め方と「不明」の扱い
⑬〜⑯の橋梁諸元は、数値の書式まで指定があります。
| 欄 | 書式 | 原文の指定 |
|---|---|---|
| ⑬架設年度 | 西暦4桁・半角数字 | 「和暦は使わない。『年度』は不要。」1980年度なら「1980」。不明の場合は「不明」と記入し、空欄としないこと |
| ⑭橋長 | 半角数字・小数第1位 | 橋台胸壁(パラペット)前面間の距離(m)。溝橋(カルバート)は外寸(m)。小数点以下第2位を四捨五入 |
| ⑮幅員 | 半角数字・小数第1位 | 地覆前面から地覆前面までの幅員(m)。テーパ橋梁や拡幅がある場合は平均幅員。小数点以下第2位を四捨五入 |
| ⑯橋梁形式 | 一覧から選択 | 上部構造形式・下部構造形式・基礎形式を表4.4〜表4.6の構造形式一覧から選択。形式が複数ある場合は代表的な構造形式 |
橋長の定義が橋台胸壁前面間である点は、台帳の値がそのまま使えるかどうかの分かれ目になります。幅員も地覆前面から地覆前面までで、有効幅員や全幅とは一致しません。台帳から機械的に転記すると、定義違いのまま全国データに載ることになります。
構造形式は3桁の構造形式コードで管理されており、上部構造だけでも鋼橋(ボルト・溶接継手)121番台から「その他」999番まで並びます。たとえば「I桁(非合成)」は121、リベット継手の同じ形式は221、RC床版橋(その他)は310、ポステンT桁は423です。下部構造は逆T式橋台が13、壁式橋脚(RC)が21といった2桁のコードで、「その他(橋台)」19番には「L型橋台」「インテグラルアバット」「もたれ擁壁」などの細目が例示されています。手引きは「橋台橋脚構造形式その他は、代表的な例である。個別に適切に設定すること」と注記しています。
⑫の健全性の診断の区分は、「トンネル等の健全性の診断結果の分類に関する告示」の定義に従ってⅠ〜Ⅳから選びます。この区分の決め方は健全性の判定区分にまとめました。
実施年月日と定期点検者は誰の情報か
⑰定期点検実施年月日は、書式が「yyyy.mm.dd」(半角数字・和暦不可・「年月日」不要)で、記入例は「2023.04.01」です。何の日付かの定義が重要で、手引きはこう書いています。
「健全性の診断の区分の決定に行われる、知識と技能を有する者による状態把握が行われた末日を記入する。」(運用の手引き Ⅰ-4.1 ⑰)
現地に入った初日でも、報告書の提出日でもありません。定期点検では将来の維持管理に活用する目的で事実関係を幅広く記録することも多いものの、ここに書くのは健全性の診断の区分の決定のために行った状態把握の実施末日です。
⑱定期点検者は、道路法施行規則が求める「知識と技能を有する者」に該当する者の所属と氏名を書きます。記入例は「(株)○○ △△ □□」です。手引きは、外部委託した場合と自ら行った場合を分けて説明しています。
- 民間コンサルタント会社などに委託した場合は、知識と技能を有する者として従事した受託者の技術者の所属と氏名
- 外部発注を行わず道路管理者が自ら技術的評価を行う場合は、その職員の所属と氏名
そのうえで手引きは、記録の位置づけについてこう述べています。「技術的評価(様式1〜様式3)の作成にあたって、外部委託の有無によらず様式に記録した時点で、一般にはそれらは道路管理者としての見解として採用されたものと解釈されることになる。」(運用の手引き Ⅰ-4.1 ⑱)。受託者が書いた内容であっても、様式に載れば道路管理者の見解として扱われるという整理です。誰が点検者になれるかの要件は定期点検を行う「知識と技能を有する者」にまとめています。
なお、基本情報の各欄には「※『付録-1 77条調査について』に準じる」という注記が並びます。裏を返すと、準じないものが3つだけ明示されています。③所在地(付録-1では行政区域に該当)、⑥管理者名(付録-1では管理者名・管理事務所名に該当)、⑰定期点検実施年月日の3つです。国への報告と様式の記載が同じ値でよいかを確認するとき、まずこの3つを見ることになります。要領そのものの改定点は令和6年改定の定期点検要領に整理しています。
よくある質問
Q. 様式1の記入方法はどこに書かれていますか。
A. 要領本体ではなく、国土交通省道路局 国道・技術課と国土技術政策総合研究所 道路構造物研究部が2025年4月にまとめた参考資料「『道路橋定期点検要領(令和6年3月)』運用の手引き」のⅠ章「付録様式の記入要領」に書かれています。
Q. 上り線・下り線はどう書きますか。
A. 「(上り)」「(下り)」です。手引きは「『(上)』『(上り線)』『上り』『上』は使用しない」と明記しています。カッコは半角です。
Q. 路線名に「主要地方道」と書いてよいですか。
A. 書きません。都道府県道は「府道○○」「県道○○」の形で、表4.1には「一般県道、主要地方道という表記はしない」と注記があります。国道側にも「一般国道という表記はしない」という注記があります。
Q. 路下条件の「×」と「指定無し」はどう使い分けますか。
A. 跨道橋ではない場合が「×」です。手引きは「『指定無し』としないよう注意する」と書いています。「指定無し」は路下に道路があって緊急輸送道路の指定がない場合に使います。
Q. 架設年度が分からない橋はどう書きますか。
A. 「不明」と記入します。手引きは「空欄としないこと」と指示しています。分かる場合は西暦4桁の半角数字で、和暦は使わず「年度」も付けません。
Q. 定期点検実施年月日は現地に入った日ですか。
A. 違います。知識と技能を有する者による状態把握が行われた「末日」を記入します。書式は「yyyy.mm.dd」で、記入例は「2023.04.01」です。
出典・適用範囲
本文の版・記述・数値を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。
- 国土交通省 道路局 国道・技術課/国土技術政策総合研究所 道路構造物研究部「道路構造物の定期点検の実施にかかる参考資料『道路橋定期点検要領(令和6年3月)』運用の手引き」(2025年4月) — 参照箇所:Ⅰ-1.はじめに(手引きの位置づけ)、Ⅰ-3.記録内容と様式の構成、Ⅰ-4.1 様式1の記入要領①〜⑱(橋梁名とフリガナ、路線名の表4.1、所在地、緯度経度、施設ID、管理者名、路下条件、代替路の有無、自専道/一般道、緊急輸送道路、占用物件の表4.2、健全性の診断の区分、架設年度、橋長の表4.3、幅員、橋梁形式の表4.4〜4.6、定期点検実施年月日、定期点検者)、付録-1「77条調査について」(道路法第77条の条文、道路橋名とフリガナの記入例、路線名の記入例)。
- 国土交通省「道路:道路の老朽化対策」 — 参照箇所:定期点検要領および運用の手引きの掲載状況と更新日(運用の手引きの更新 R7.5.7)。
原典リンク確認:2026年9月15日。本記事は記録様式の記入方法を確認するための実務解説で、個別の点検結果の妥当性や健全性の診断の区分を判断するものではありません。様式および記入要領は改定されることがあります。記入にあたっては、その時点の最新版と各道路管理者の運用・登録要領をご確認ください。