点検業務の工数を減らそうとすると、多くの人がまず現場作業に目を向けます。しかし、費用の内訳を見ると、実は現場よりも準備やとりまとめといった内業のほうが大きな割合を占めています。工数削減の効果を出すには、この構造を理解し、ボトルネックに的を絞ることが近道です。

本記事では、点検業務の費用内訳から工数の構造を読み解き、損傷図・写真台帳・調書といった内業の効率化に絞って、工数削減の考え方を整理します。費用相場そのものは関連記事で扱います。

この記事の要点
  • 点検業務の直接人件費は、準備・点検・とりまとめに分かれ、現場(点検)以外が大きな割合を占める
  • ある試算では、準備が3〜4割超、とりまとめが2割前後を占めるとされる
  • 工数削減の効果を出すには、現場作業より「準備」と「とりまとめ」に着目するのが合理的
  • 損傷図・写真台帳・調書の整合作業は、効率化の余地が大きい典型的なボトルネック

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工数削減は「現場」だけ見ても効かない

点検の効率化というと、現場での点検作業をいかに速くするかに関心が向きがちです。もちろん現場作業の効率化にも意味はありますが、それだけでは業務全体の工数は思うように減りません。なぜなら、点検業務の工数は現場作業だけでなく、その前後の準備ととりまとめに大きく配分されているからです。全体の構造を見ずに現場だけを速くしても、効果は限定的です。

費用内訳が示す工数の構造

点検業務の工数の構造は、費用の内訳から読み取れます。学術的な試算によれば、1橋あたりの点検業務の直接人件費は、準備・点検・とりまとめに分かれ、その割合はおおむね、準備が3〜4割超、現場での点検が3〜4割、とりまとめが2割前後とされています。つまり、現場作業以外の内業(準備+とりまとめ)が、全体の過半を占めることも珍しくないのです。

工程直接人件費に占める割合(試算例)
準備おおむね3〜4割超
点検(現場)おおむね3〜4割
とりまとめおおむね2割前後
出典:川西・丸山・三木「橋梁の点検費用に関する分析」(構造工学論文集、2016年)の試算値。過去の単価に基づく試算であり、割合は条件により異なります。詳細は原典をご確認ください。

とりまとめがボトルネックになる理由

とりまとめ、すなわち現場で得た情報を調書・損傷図・写真台帳として整理する工程は、意外に大きな工数を要します。撮影した多数の写真を整理し、損傷ごとに図に落とし込み、調書の記載と対応づける。この作業は、損傷の数が多いほど、また整合を丁寧にとろうとするほど時間がかかります。しかも、現場と違って天候などに左右されない代わりに、担当者の作業に依存しやすく、繁忙期に集中して負荷が高まりがちです。ここが工数削減のボトルネックになります。

この記事の結論

点検の工数削減は、現場作業ではなく「準備」と「とりまとめ」に的を絞るのが効果的です。費用内訳では内業が過半を占めることも珍しくありません。損傷図・写真台帳・調書の整合という内業のボトルネックを効率化することが、全体の工数に効いてきます。

内業効率化の着眼点

内業を効率化する着眼点は、繰り返しの多い定型作業と、整合をとる作業にあります。写真の整理・命名、損傷図への転記、調書と損傷図・写真台帳の対応づけといった作業は、手作業で行うと時間がかかり、ミスも生じやすい部分です。撮影段階でのルール化(命名規則や撮影手順の標準化)、そして図・台帳・調書を連携させて整合を自動的にとれる仕組みを取り入れることで、この工程の負荷を下げられます。損傷図や写真台帳の作り方は、関連記事で具体的に扱っています。

効率化の進め方

効率化を進めるときは、まず自社の工数がどの工程にかかっているかを把握することから始めるのが有効です。感覚ではなく、実際にどの作業に時間が費やされているかを見える化すれば、優先して手を入れるべきボトルネックが分かります。そのうえで、定型作業の標準化・ツール化を、負荷の大きい工程から順に進めていく。現場作業の高速化に飛びつく前に、内業の構造を見直すことが、確実な工数削減につながります。

よくある質問

点検の工数で最も大きいのはどの工程ですか?

学術的な試算では、1橋あたりの直接人件費のうち準備が3〜4割超を占め、とりまとめも2割前後を占めるとされます。現場での点検以外の内業が過半を占めることも珍しくなく、工数削減では内業への着目が有効です。

現場作業を速くしても工数は減りませんか?

現場作業の効率化にも意味はありますが、工数は準備・とりまとめといった内業にも大きく配分されているため、現場だけを速くしても全体の効果は限定的です。内業のボトルネックとあわせて見直すことが大切です。

内業効率化はどこから始めればよいですか?

まず自社の工数がどの工程にかかっているかを見える化するのが有効です。そのうえで、写真整理・損傷図への転記・調書との整合など、負荷の大きい定型作業から標準化・ツール化を進めるとよいでしょう。