- 要領は「変状」=本体工の不具合、「異常」=附属物等の取付状態の不具合と別の用語に分けている。記録様式も別
- 取付状態の区分は○と×の2つだけ。本体工の対策区分Ⅰ・Ⅱb・Ⅱa・Ⅲ・Ⅳとは段数も名前も違う
- 異常判定は応急措置を行った後の状態で行う。ボルトの締め直しは○に変わるが、番線固定は×のまま
- 判定の単位は附属物の大きさで変える。照明器具は器具単位、ジェットファンは取付部材単位が多い
- 様式に書くのは×だった箇所と、応急措置で○に変わった箇所だけ。異常が無い箇所は現れない
トンネルの定期点検の成果品で、本体工の調書は書けるのに附属物の側で手が止まる、ということが起きます。覆工のうきや漏水には対策区分のⅠからⅣがありますが、照明灯具の取付金具の腐食に同じ区分を付けようとすると当てはまりません。
直轄版の「道路トンネル定期点検要領」(令和6年9月)は、トンネル内附属物の取付状態だけを本体工から切り離し、○と×の2つだけで区分する仕組みを置いています。名前も対策区分ではなく「異常判定区分」です。段数が違うだけでなく、判定するタイミング、判定する単位、記録様式に書く範囲も本体工とは違います。
この記事では、同要領の第1章「用語の定義」、第2章4.4「附属物等の取付状態に対する性能の推定と措置の必要性の検討」、第2章3.の応急措置の留意点、および巻末の参考資料と記入要領を原文で照合し、附属物の取付状態をどう判定してどう記録するのかを整理します。
「変状」と「異常」は要領では別の用語
最初に用語を押さえておくと、以後の様式の分かれ方がすべて説明できます。第1章2.「用語の定義」(8)は、2つを並べて別に定義しています。
「異常 トンネル内附属物等の取付状態に発生した不具合の総称をいう。」
そして「変状等 道路トンネル内に発生した変状と異常の総称をいう。」(いずれも第1章2.(8))
つまり要領の文中で「変状」と書かれている箇所は本体工の話で、附属物の取付状態は含みません。両方を指すときだけ「変状等」になります。本体工側の変状の区分の立て方はトンネルの変状区分とは?外力・材質劣化・漏水で単位が変わるで扱っています。
何が「附属物等」に入るのかも定義されています。
| 用語 | 原文の定義(第1章2.) |
|---|---|
| トンネル本体工 | 「覆工,坑門,内装板,天井板,路面,路肩,排水施設及び補修・補強材をいう。」 |
| 取付部材 | 「天井板や内装板,トンネル内附属物を取り付けるための金具類をいい,吊り金具,ターンバックル,固定金具,アンカーボルト・ナット,継手等をいう。」 |
| 附属物 | 「トンネル付属施設,道路法第2条2項で規定される道路の附属物(標識,情報板,吸音板等)等,トンネル内や坑門に設置されるものの総称をいう。」 |
| 附属物等 | 「取付状態に対する異常判定を行う際に,トンネル本体工に属している内装板や天井板の取付部材を含む場合は附属物等と称する。」 |
| 付属施設 | 「道路構造令第34条に示されるトンネルに付属する換気施設(ジェットファン含む),照明施設及び非常用施設をいう。」関連施設・ケーブル類等を含む |
注意したいのは「附属物等」の作り方です。内装板と天井板そのものは本体工ですが、それを取り付けている金具類は、取付状態の異常判定を行うときには附属物等の側に入ります。同じ天井板が、本体の変状としては本体工で、吊り金具のゆるみとしては附属物等で扱われることになります。
トンネル内の照明や標識は、2つの要領で見る
トンネル内の照明施設や標識は、トンネルの要領だけで完結しません。第1章3.の解説が、点検の入口を2つに分けています。
附属物側の要領を見ると、同じことが逆方向から書かれています。附属物(標識,照明施設等)点検要領の第Ⅲ章1.1「適用の範囲」は、門型標識等以外の道路標識、「道路照明施設(トンネル内照明を含む。)」、道路情報提供装置および道路情報収集装置の支柱や取り付け部の定期点検に適用するとしています。さらに同章の解説は「道路橋,トンネル及び横断歩道橋に設置されている道路照明,道路標識等が道路橋,トンネル及び横断歩道橋の本体構造の状態に影響を与えることもあるので,それらについては各種要領を適用し定期点検を実施する。」と書いています。
結果として、トンネル内の照明施設は附属物の要領で施設としての点検を受け、取付状態についてはトンネルの定期点検の側でも状態の把握が行われるという二重の見方になります。附属物側の要領の点検種別と頻度は附属物(標識、照明施設等)点検要領とは?5つの点検種別と頻度、支柱の細かい扱いは小規模附属物点検要領と標識柱・照明柱の点検頻度が扱っています。
異常判定区分は○と×の2つだけ
第2章4.4(3)が本題です。把握した取付状態から、次回定期点検までに遭遇する状況を想定してどのような状態となる可能性があるかを推定し、「附属物等の落下が生じる可能性があるかどうかを判定するうえで適切な単位毎に」区分を決めます。表-4.3の定義は次の2行だけです。
| 異常判定区分 | 異常判定の内容(表-4.3の原文) |
|---|---|
| × | 附属物等の取付状態に異常がある場合 |
| ○ | 附属物等の取付状態に異常がないか,あっても軽微な場合 |
2区分にした理由は解説に書かれています。
原因を推定しなくてよい、対策が比較的容易である、しかし落下は利用者に直に当たる。この3つがそろうと、区分を細かく割る意味が薄れます。段階を刻んで様子を見る対象ではなく、見つけたら早期に直す対象として設計されている、と読めます。予防保全と事後保全の考え方の違いは予防保全と事後保全の違い:転換が求められる理由と費用効果で整理しています。
同じトンネル内で、判定のものさしが3つ並ぶ
ここが混乱の実際の発生源です。1本のトンネルの成果品の中で、評価の記号が3種類並びます。
| 対象 | 適用される要領と条項 | 区分 |
|---|---|---|
| トンネルの区間(本体工) | 道路トンネル定期点検要領 第2章4.3(3) 表-4.2 | 対策区分 Ⅰ/Ⅱb/Ⅱa/Ⅲ/Ⅳ |
| 附属物等の取付状態 | 同要領 第2章4.4(3) 表-4.3 | 異常判定区分 ○/× |
| 門型標識等 | 附属物(標識,照明施設等)点検要領 第Ⅱ章2.2.1(3) | A/B/C |
| 門型以外の標識等(トンネル内照明を含む) | 同要領 第Ⅲ章2.2、点検記録様式(その4) | 措置の必要性の有/無 |
本体工側の対策区分の定義は表-4.2にあり、Ⅰが「措置を必要としない状態。」、Ⅱbが「監視を必要とする状態。」、Ⅱaが「重点的な監視を行い,予防保全の観点から計画的な対策を必要とする状態。」、Ⅲが「早期に措置を講じる必要がある状態。」、Ⅳが「緊急に対策を講じる必要がある状態。」です。注記で「監視」は日常巡視等で状況を把握することをいい、「重点的な監視」は「前回の定期点検または監視から2年程度以内を目安に近接目視を行うこと」と定義されています。措置としての監視の立て方は措置としての「監視」とは?モニタリング計画の立て方で扱っています。
門型標識等の側は、附属物の要領 第Ⅱ章2.2.1(3)が「A:何らかの変状が生じる可能性は低い」「B:致命的な状態となる可能性は低いものの何らかの変状が生じる可能性がある」ⅭではなくCとして「C:致命的な状態となる可能性がある」の3区分を置いています。門型側の見方は門型標識等定期点検要領とは?令和6年改定と基板・支柱のA〜C評価にまとめてあります。
判定は応急措置を行った「後」の状態で行う
第2章4.4の解説に一文だけ、タイミングの規定があります。
応急措置そのものが、要領の用語では点検に含まれています。第1章2.(1)の※3は応急措置を「道路トンネルの状態の把握を行うときに,道路利用者や第三者被害の可能性のあるうき・はく離部などを除去,附属物等の取付状態の改善等を行うことをいう。」と定義し、※1の「点検」の中に応急措置を含むと書いています。現場で直した結果を含めて判定する、という順番です。
本体工側でも同じ考え方が第1章6.の解説に置かれています。「道路利用者や第三者の安全確保の観点からは,うき・はく離やボルトの緩み等について定期点検の際に実施した応急措置後の状態に対して,技術的な評価を実施する必要がある。」。うき・はく離の除去と評価の関係はうきとは?評価はaとeだけ・剥離との違いと剥離・鉄筋露出の評価はc・d・e|露出鉄筋の腐食は別に数えないで扱っています。
締め直しは○に変わる。番線固定は×のまま
「応急措置の後で判定する」と書かれていると、直せば全部○になるように読めます。ところがそうではありません。第2章3.の応急措置の留意点が、措置の種類で扱いを分けています。まず応急措置の例(表-解3.2)です。
| 異常の種類 | 応急措置(表-解3.2の原文) |
|---|---|
| 附属物等の固定アンカーボルトの緩み | ボルトの締め直し |
| 照明灯具のカバーのがたつき | 番線等による固定(番線等で固定した灯具等は対策を行うことを基本とする) |
そのうえで留意点が続きます。
「b)番線固定等の簡易な応急措置の場合,点検結果の判定は変更しないことに留意する。すなわち,後述する異常判定区分が「×」であれば「×」のままとなる。」
「c)附属物等の取付状態の異常に対して応急措置を実施した場合は,その実施状況が分かる写真を記録として残す。」
「d)附属物等の取付状態については調査,応急対策を行うことにならないため,点検時に応急措置または対策の必要性を確認する必要がある。」(いずれも第2章3.②3)附属物 ⅱ)応急措置の留意点)
分かれ目は「異常に対処できたと判断できるか」です。締め直しは緩みという異常そのものを解消しますが、番線での固定はがたつきを押さえているだけで、カバーの取付部の状態は変わっていません。だから○にはなりません。表-解3.2の括弧書きが「番線等で固定した灯具等は対策を行うことを基本とする」としているのと同じ向きの規定です。
参考資料の留意点にも、締め直しの記録について一文あります。「ボルトの緩みを締め直しする応急措置が講じられ、利用者被害の可能性はなくなった場合でも、締め直しを行った記録を行うことが望ましい。」。○にしたうえで、直した事実は残します。
判定の単位は、附属物の大きさで変える
第2章4.4(3)は「附属物等の落下が生じる可能性があるかどうかを判定するうえで適切な単位毎に」と書いており、単位を固定していません。解説が2つの例を挙げています。
| 対象 | 判定の単位 | 理由(解説の要旨) |
|---|---|---|
| 照明器具のような小規模な附属物 | 照明器具としての取付状態を1つで判定 | 1つの器具に複数の異常が混在することがあるが、異常ごとに判定と写真撮影を行うより、まとめて判定する方が合理的な場合が多い |
| ジェットファン等の大型の附属物 | 取付部材単位で判定 | 取付部材の1つに異常があるだけで附属物全体の落下につながることが多いため。解説は「取付部材単位での判定を行うことが多い。」とする |
小さいものはまとめ、大きいものは割る。向きが逆なので取り違えやすい箇所です。判断の基準は「その異常1つで全体が落ちるか」であって、機器の数でも異常の数でもありません。
参考資料の留意点は、器具単位でまとめた場合の限界にも触れています。「灯具の取付部材に多数の異常が確認され、附属物自体の腐食や機能低下も進行している場合などは、設備全体を更新するなどの方法も含め、個別に対応を検討することが望ましい。」。まとめて×を付けて終わりにせず、所見で分けて書くべき場合がある、ということになります。
把握の方法は近接目視に打音検査と触診を足す
判定の前段にある状態の把握について、第2章3.は附属物を本体工と分けて書いています。
なぜ目視だけでは足りないのかも、例として挙げられています。「ボルトのゆるみや折損なども,目視では把握が困難な場合が多く,打音検査等を行うことで初めて把握できることが多い。」「覆工のうき・はく離等の落下やはく落防止対策工,漏水対策工等の補修・補強材,附属物等の脱落の可能性なども,目視では把握が困難であり,打音検査等を行うことで初めて把握できることが多い。」。
触診については具体的な手順が書かれています。「補修材(繊維シートや鋼板接着工等)やトンネル内附属物等の取付状態等については,トンネル点検車等により点検対象箇所に接近し,直接手で触れて固定状況や変状の有無を確認する。」。写真-解3.3の例示は吊り金具です。
打音検査は本体工側にも規定があり、覆工の側は判定の仕方が3つに分かれます(覆工の打音は3つに分ける|矢板工法とNATMで注意箇所が違う理由)。近接目視を機器で代替できる条件は附属物の要領の側にあり、標識点検でカメラを近接目視の代わりにできる条件|5m以内・振れ角60度で扱っています。支援技術の選び方の全体像は点検支援技術の選び方 完全ガイド:AI・ドローン・LiDARにまとめています。
参考資料の一覧表:異常の種類6つ×部位区分3つ
巻末の参考資料「国が管理する道路トンネルの対策区分及び異常判定区分の決定例」に、附属物の異常判定の一覧表(表-22)があります。異常の種類と、×とする内容が対応づけられています。
| 異常の種類 | 異常判定区分「×」とする内容(表-22の原文) |
|---|---|
| 破断 | 破断が認められ、落下するおそれがある場合 |
| 緩み、脱落 | 緩みや脱落があり、落下するおそれがある場合 |
| 亀裂 | 亀裂が確認され、落下するおそれがある場合 |
| 腐食 | 腐食が著しく、損傷が進行するおそれがある場合 |
| 変形、欠損 | 変形や欠損が著しく、損傷が進行するおそれがある場合 |
| がたつき | がたつきがあり、変形や欠損が著しく、落下するおそれがある場合 |
読むときに2つ気づきます。1つは「落下するおそれ」と「損傷が進行するおそれ」が使い分けられていること。破断・緩み脱落・亀裂・がたつきは落下のおそれ、腐食と変形欠損は損傷の進行のおそれで書かれています。もう1つは、がたつきだけ条件が2つ重なっていることです。がたつきがあるだけでは×にならず、「変形や欠損が著しく」が加わって落下のおそれがある場合が×になります。
表-22はこの6種類を、部位区分(附属物本体/取付部材/ボルト・ナット,アンカー類)のどこに当てはまるかまで印で示しています。どの異常の種類がどの部位区分に対応するかの印の対応は、本記事では再現しません。PDFの表を直接ご確認ください。
同じ参考資料の留意点には、判定で見落としやすい点が挙げられています。
- 「定期点検の際には、現地にて前回の定期点検時の点検結果を携行し、前回定期点検の異常と照合しながら異常の進行性を把握する必要がある。」
- 「附属物本体を構成する各部についても、落下による利用者への影響が懸念される異常が確認される場合には、異常ありと異常判定区分の決定・記録し適切に措置を講じる。」
- 「腐食の進行などにより、近い将来破断するおそれがあるものについては「×」とする。」
- 「取付部材等に異種金属接触腐食が生じている場合は、局所的に腐食が進行し、脱落の原因となるおそれがあることに留意する。」
- 「アンカーボルト付近に生じた覆工コンクリートのひび割れが脱落の原因となるおそれがあることに留意する。」
記録様式に書くのは「×」と、○に変わった箇所だけ
付録「道路トンネル定期点検結果の記入要領」は、附属物用の様式を本体工用と別に用意しています。記入の範囲が本体工と違います。
| 様式 | 記入要領の規定(原文) |
|---|---|
| 様式C-1-2 定期点検結果総括表(トンネル内附属物等の取付状態) | 「異常判定区分×について記入する。また、応急措置により○と判定された箇所も記入する。」/「応急措置を実施しないで判定した箇所の異常判定区分は、異常判定区分の応急措置後の欄に記入する。」/「異常の除去が不完全で、緊急対応が必要な場合は対応方針欄に記入する。」/「1スパンの覆工に複数の異常がある場合は、異常箇所毎に記入する。」 |
| 様式D-1-2 異常写真台帳(トンネル内附属物等の取付状態) | 「異常判定区分×について記入すること。また、応急措置前に異常判定区分×とした箇所のうち応急措置により○と判定した箇所も記入する。」/「応急措置を実施した場合は、その実施状況が分かる写真を添付する。」 |
つまり様式に現れるのは×だった箇所と、×から○へ変わった箇所の2通りだけです。最初から○の箇所は様式に行が立ちません。本体工側の様式D-1-1も同じ考え方で、「対策区分の判定区分Ⅱb~Ⅳの変状または本対策が適用された対策区分の判定区分Ⅰの変状を抽出したうえで」写真をとりまとめるとされています。橋梁側で「措置の必要性」の欄に載せる考え方は様式その10とは?付属物の損傷は措置の必要性で記録すると似た構造です。
入力に使う分類表も付録にあります。対象箇所(付表-2.3)は照明施設(灯具/ケーブル本体/ケーブル本体以外)、換気施設(ジェットファン/VI計/CO計/風向風速計/その他)、非常用施設(通話型通報設備から監視設備まで)、その他(標識/天井板取付部材/内装板取付部材/吸音板取付部材/その他)に分かれます。部位区分(付表-2.4)は附属物本体/取付部材/ボルト・ナット,アンカー類の3つ、異常種類(付表-2.5)は破断/緩み、脱落/亀裂/腐食/変形,欠損/がたつき/その他の7つです。
位置の特定は覆工スパン番号で行います。付録は「覆工スパン番号は横断目地毎(矢板工法の場合は上半アーチの横断目地毎)に設定する。」「覆工スパン番号の表記形式を3桁表示(例:S001)とする。」「横断目地の変状は前の覆工スパン番号で計上する。」としています。附属物の異常もこの番号で場所を書くため、スパン割りが決まらないと附属物側の調書も書けません。施設そのものの識別子の付け方は施設IDの付け方|緯度経度18桁と付与位置のルール、登録先は点検義務があるのは橋だけではない|道路の法定点検「5施設」と5年ルールで扱っています。
健全性の診断の区分との関係は「参考とするのがよい」
○と×を付けた結果は、告示の健全性の診断の区分にどう効くのか。第2章4.4(4)の解説は、効き方を限定して書いています。
「主たる根拠」ではなく「参考とするのがよい」です。本体工側の技術的な評価が主たる根拠で、附属物の取付状態はそれに添えられる位置づけになります。決定の主体についても、第2章4.3の解説が明確に書いています。「定期点検実施者によるこれらの検討を根拠とし,道路管理者は定期点検時点での道路管理者としての最終決定結果として,対象道路トンネルの措置に対する考え方と告示に定める「健全性の診断の区分」を決定する。しがたって,定期点検実施者が告示に定める「健全性の診断の区分」を決定するものではない。」(原文のまま。「しがたって」は原典の表記です)
なお健全性の診断の区分を付ける単位も要領が定めています。第1章6.の解説は、上下線等に分離して設けられている場合は「分離されているトンネル毎に計上し,複数トンネルとして取り扱う。」、都道府県界または市区町村界に設けられている場合も「1 つの道路トンネルとして 1 箇所と取り扱う。」、管理者が複数に渡る場合も1箇所として取り扱うとしています。要領全体の構成と改定の要点は道路トンネル定期点検要領とは?令和6年改定の要点、予防保全の観点で特別な扱いをする事象は点検要領の「特定事象」とは?塩害・疲労・ASR・防食機能の低下を整理で扱っています。
成果品の仕様で先に決めておく4点
以上を踏まえると、附属物の取付状態について着手前に確認しておくとよい点が整理できます。いずれも要領が一意に決めていない、または発注図書の側で決まる事項です。
- 附属物の施設点検まで含むのか、取付状態の異常判定だけか。前者は附属物(標識,照明施設等)点検要領の様式に、後者はトンネル側の様式C-1-2・D-1-2になります
- 判定の単位をどう置くか。要領は「適切な単位毎に」としか書いていません。照明器具は器具単位、ジェットファン等は取付部材単位という解説の例をどこまで踏むかを決めておきます
- 応急措置をどこまで点検作業の範囲で行うか。締め直しは○に変わりますが番線固定は×のままです。措置の種類と、実施状況の写真の撮り方をそろえておきます
- 前回結果の携行をどう用意するか。参考資料は前回の異常と照合して進行性を把握する必要があるとしています。前回の様式D-1-2が手元に無いと照合ができません
よくある質問
Q. トンネルの点検で「変状」と「異常」はどう使い分けるのですか。
A. 要領の用語の定義で分かれています。変状は「トンネル本体工の覆工,坑門,天井板本体等に発生した不具合の総称をいう。」、異常は「トンネル内附属物等の取付状態に発生した不具合の総称をいう。」と定義され、両方をまとめた呼び方が「変状等」です。記録様式も変状側と異常側で別に用意されています。
Q. 異常判定区分には何段階ありますか。
A. ○と×の2つだけです。×が「附属物等の取付状態に異常がある場合」、○が「附属物等の取付状態に異常がないか,あっても軽微な場合」と定義されています。本体工側の対策区分がⅠ・Ⅱb・Ⅱa・Ⅲ・Ⅳの5区分であるのに対して、附属物の取付状態は2区分です。
Q. なぜ附属物の取付状態だけ2区分なのですか。
A. 要領の解説は3つの理由を挙げています。取付状態の異常は「外力に起因するものが少ないと考えられ,原因推定のための調査を要さない場合が少なくない。」こと、道路利用者被害につながるおそれがあるため早期の対策が必要であること、そして「トンネル本体工に比べて,対策も比較的容易に実施できる場合が多い。」ことです。その結果、×を早期に対策を要するもの、○を対策を要さないものとする2区分になっています。
Q. 点検中にボルトを締め直したら、判定はどうなりますか。
A. ○に変わりえます。要領は「ボルトの締め直しは,異常に対処できたと判断できる場合には後述する異常判定区分を「◯」とし,締め直しを行ったことを記録する。」としています。異常判定そのものが「応急措置を行った後の状態で行う」と定められているためです。
Q. 照明灯具のカバーのがたつきを番線で固定した場合も○になりますか。
A. なりません。要領は「番線固定等の簡易な応急措置の場合,点検結果の判定は変更しないことに留意する。すなわち,後述する異常判定区分が「×」であれば「×」のままとなる。」と明記しています。応急措置の表でも、番線等で固定した灯具等は「対策を行うことを基本とする」とされています。
Q. 判定は異常1つごとに付けるのですか、それとも機器ごとですか。
A. 附属物の大きさで変えます。要領の解説は、照明器具のような小規模な附属物では複数の異常をまとめて照明器具としての取付状態の異常を判定する方が合理的な場合が多いとしています。一方でジェットファン等の大型の附属物は、取付部材の1つの異常が全体の落下につながることが多いため「取付部材単位での判定を行うことが多い。」とされています。
Q. 取付状態に異常が無かった箇所も記録様式に書くのですか。
A. 書きません。様式C-1-2と様式D-1-2はいずれも「異常判定区分×について記入する」とされ、これに加えて応急措置により○と判定された箇所を記入します。つまり様式に現れるのは×だった箇所と、×から○へ変わった箇所です。
Q. トンネル内の照明施設は、附属物の点検要領では見ないのですか。
A. 見ます。附属物(標識,照明施設等)点検要領の第Ⅲ章は、門型以外の道路標識や「道路照明施設(トンネル内照明を含む。)」の支柱や取り付け部に適用されます。トンネル定期点検要領の側は「これとは別に,附属物等の取付状態については,トンネルの定期点検時にも状態の把握を行うことを基本とする。」としており、取付状態は両方で見ることになります。
Q. 異常判定区分は健全性の診断の区分を直接決めますか。
A. 直接は決めません。要領は附属物等の取付状態に対する評価結果も「最終的な健全性の診断の区分の決定にあたって参考とするのがよい」としています。告示に定める健全性の診断の区分を決定するのは道路管理者であり、定期点検実施者ではありません。
Q. この要領は地方公共団体のトンネルにも適用されますか。
A. 本記事が扱っているのは直轄版の「道路トンネル定期点検要領」(令和6年9月)で、適用対象は国土交通省および内閣府沖縄総合事務局が管理する道路トンネルです。地方公共団体のトンネルに自動的に適用されるものではありません。対象に適用される要領の版と発注図書の仕様を優先してください。
出典・適用範囲
本文の版・記述・引用を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。引用の読点・句点・全角半角は原典の表記に合わせています(原典は読点に「,」を用いています)。原典に誤字と思われる表記がある箇所は、引用であることを示すため原文のまま載せ、その旨を本文に添えています。
- 国土交通省 道路局 国道・技術課「道路トンネル定期点検要領」(令和6年9月・全129ページ) — 参照箇所:第1章1.「適用範囲」/2.「用語の定義」(1)(6)(7)(8)/3.「定期点検の目的」解説/6.「道路トンネル毎の健全性の診断の区分の決定」表-6.1と解説/第2章3.「状態の把握」の附属物に関する解説・②代表手法の留意点・③応急措置の例と留意点(表-解3.2)/4.1/4.2(3)(4)(表-4.1)/4.3(3)〜(6)(表-4.2)/4.4(1)〜(4)(表-4.3)と解説/5.「点検・診断結果の記録」/付録「道路トンネル定期点検結果の記入要領」の様式C-1-2・D-1-1・D-1-2および付表-2.1〜2.5/参考資料「国が管理する道路トンネルの対策区分及び異常判定区分の決定例」②附属物 1)異常判定区分(表-22)・2)留意点(当夜取得 HTTP 200・4,372,376バイト・SHA256 16b8fcc06c52723a29a16d0916f94cf7842ec8aee5ba54d2025f898e5a2f0075)
- 国土交通省 道路局 国道・技術課「附属物(標識,照明施設等)点検要領」(令和6年9月・全219ページ) — 参照箇所:第Ⅱ章2.2.1(3)(A〜Cの区分)/第Ⅲ章1.1「適用の範囲」とその解説/第Ⅲ章2.2「措置の必要性の検討」/付録-2 点検記録様式(その4)(当夜取得 HTTP 200・5,827,018バイト・SHA256 6caa8cbecd9e2feb81f9d0dfe1fda337159dbc1963895ea98ef35e5d36dae5c8)
- 国土交通省「道路の老朽化対策(予防保全)」(点検要領一覧) — 各要領の版と公表年月の確認に使用
本記事は、直轄版の道路トンネル定期点検要領におけるトンネル内附属物等の取付状態に対する異常判定区分(○・×)の決め方と記録の範囲を原文で確認するための実務解説です。同要領の適用対象は国土交通省および内閣府沖縄総合事務局が管理する道路トンネルであり、地方公共団体のトンネルに自動的に適用されるものではありません。また同要領は山岳トンネル工法や矢板工法を含めた山岳工法によって建設されたトンネルの維持管理を想定しており、シールド工法や開削工法等で建設されたトンネルでは「本要領に記載されている一部の内容をそのまま使用することができない場合があることに留意する必要がある。」とされています。本体工側の変状の評価、トンネルの区間の設定方法、対策区分Ⅰ〜Ⅳの判定の実際、参考資料の決定例の写真と個別の判断、附属物(標識,照明施設等)点検要領の各章の点検の実施方法、トンネル内附属物の電気設備としての点検は本記事の範囲外です。参考資料 表-22の「異常の種類」と「部位区分」の対応を示す印は本記事では再現していません。また、個別の附属物について○と×のどちらを付すかの判定は行いません。対象に適用される要領の版、発注図書の仕様、道路管理者の指示を優先してください。