- 要素番号は4桁の数字で、付表-1.2の2文字の部材記号と組み合わせて要素を特定します(例:Mg0205)
- 4桁は前2桁が橋軸方向の並び(行)、後2桁が橋軸直角方向の並び(列)。位置そのものを表す番号です
- 数字は部位・部材ごとに図の左側(=起点側)から右側(=終点側)へ、上側から下側へ増やします。向きが決まっているので、誰が振っても同じ番号になります
- 箱桁の内部を点検した場合は、4桁のうち左端の桁を9にします(例:Mg9205)
- 部材番号は2桁で、径間単位で評価する部材には「00」を付します
- 前後の径間で共有する部材は若番側の径間の部材とするため、2径間目以降は「**01」が欠番になります
- 一度振った番号は更新してはいけません。経年変化を追うための下地だからです。補強・拡幅で部材が増えたときも振り直さず、新しい番号を追加します
点検調書を初めて開いたとき、いちばん面食らうのが「Mg0205」のような記号と数字の並びだと思います。損傷の種類や健全性の区分は言葉で説明できても、この4桁が何を指しているのかは、要領の本文を読んだだけでは分かりません。付録の図まで開かないと、どちらが行でどちらが列なのかも見えてこないためです。
この番号は、調書の見た目の問題ではありません。次回の点検で「前回と同じ場所」を指すための唯一の手がかりです。ここが揺れると、5年後に損傷の進行を比べられなくなります。この記事では、橋梁定期点検要領(令和6年7月、国土交通省 道路局 国道・技術課)の付録-1と点検記録様式(その6)の記入要領から、要素番号と部材番号の決め方を原文で整理します。
要素番号は「部材記号2文字+4桁」で1つの要素を指す
要領は要素番号をこう定義しています。
「要素番号は,各部位・部材毎に4桁の番号をつけるものであり,付表-1.2『各部材の名称と記号』に示す2文字の部材記号を組み合わせることで要素を特定することができる。」(橋梁定期点検要領 令和6年7月・点検記録様式(その6)の記入要領)
つまり番号だけでは要素は決まりません。部材記号と対で初めて意味を持ちます。要領が挙げている例は「Mg0205」「Ds0304」「Ej0106」です。それぞれ主桁、床版、伸縮装置の特定の要素を指しています。
部材記号は付表-1.2にまとめられていて、たとえば次のようなものです。
| 部材記号 | 部材種別 | 工種 |
|---|---|---|
| Mg | 主桁 | 主桁・床版・主構・斜材等 |
| Cr | 横桁 | |
| Ds | 床版 | |
| Pw | 柱部・壁部 | 橋脚 |
| Ap | 胸壁 | 橋台 |
| Aw | 翼壁 | |
| Ff | フーチング | 基礎 |
| Bh | 支承本体 | 支承部 |
| Ej | 伸縮装置 | 路上 |
前2桁は行、後2桁は列
4桁の意味は、要領の本文に明記されています。
「要素番号の4桁の数字は,前2桁が橋軸方向の並び(行)を示し,後2桁が橋軸直角方向の並び(列)を示す。この4桁の数字の組合せで,要素の位置を示すものである。」
橋軸方向は橋の長さの方向、橋軸直角方向は幅の方向です。したがって「Mg0205」は、主桁のうち橋軸方向に2番目、橋軸直角方向に5番目の要素ということになります。番号が飛び飛びに見えるときは、たいてい行と列を取り違えています。
支承の例を見ると、この構造がよく分かります。要領は付図-1.2で、I桁の場合は前2桁が主桁の部材番号と同一になり、後2桁は「01」が起点側支承、「02」が終点側支承になると説明しています。主桁1本ごとに、その両端に支承が2つある、という現場の見え方がそのまま番号になっています。
番号を増やす向きは「起点側から」で固定されている
どこから数え始めるかは、現場ごとの判断ではありません。要領はこう書いています。
「数字は部位・部材毎に図の左側(=起点側)から右側(=終点側)へ,上側から下側へ向けて順に増加するように番号を振る。」
ここで押さえておきたいのは、起点側・終点側が橋の向きとして先に決まっていることです。要領は様式(その1)の緯度経度についても「施設の起点側の緯度経度を記入する」としていて、記録全体が起点側を基準に組み立てられています。要素番号だけが独自のルールで振られているわけではありません。
この向きの固定には実務上の意味があります。番号の振り方が人によって変わると、次回点検の担当者が前回の調書を見ても、どの主桁の話なのかを図に戻らないと判断できません。方向を要領側で決めておくことで、調書だけを見て位置を再現できる状態が保たれます。
箱桁の内部は左端の桁を9にする
箱桁のように、外からは見えない内部を点検する部材には追加のルールがあります。
「箱桁の内部の点検を行った場合は,要素番号4桁の数字のうち,左端の桁を9の値とする。」
要領が挙げている例は「Mg9205」です。外側から見た Mg0205 と、内部の Mg9205 が別の要素として並びます。同じ主桁でも、外面と内部では見える損傷も、近づくための手段もまったく違うため、番号の時点で分けておくという考え方です。
この「9」は2桁の部材番号にも同じように使われ、要領は「Mg91」を例に挙げています。桁内に入る点検は、酸素欠乏や進入経路の制約がつきまとう作業です。調書の番号を見ただけで内部の記録だと分かる形にしておくと、次回の計画を立てるときの手がかりになります。
部材番号は2桁、径間単位なら「00」
要素番号と並んで出てくるのが部材番号です。こちらは桁数も意味も違います。
「部材番号は,特定の部材毎に2桁の番号をつけるものであり(中略)部材番号の2桁の数字は,橋軸方向の並び(行)又は橋軸直角方向の並び(列)を示す。」
要素番号が行と列の両方を持つのに対し、部材番号はどちらか一方です。主桁のように1本ずつ数える部材は、その並び順だけで特定できるからです。増やす向きは要素番号と同じで、起点側から終点側へ、上側から下側へ向かいます。
そして、実務で迷いやすいのがここです。要領は1本単位・1箇所もしくは1基単位で付番する部材を表で限定し、それ以外についてこう定めています。
「下表に示す以外の,径間単位で評価する部材にあっては,『00』を付す。」
表に挙がっているのは、上部構造では主桁、主桁ゲルバー部、横桁、縦桁、上・下弦材、格点、斜材・垂直材のコンクリート埋込部、アーチリブ、補剛桁、主構(桁)、主構(脚)、塔柱、PC定着部、吊り材等のコンクリート埋込部、下部構造では柱部・壁部、梁部、隅角部・接合部、胸壁、翼壁、基礎、溝橋では頂版、側壁、底版、隔壁です。ここに無い部材の番号が「00」になっているのは、記入漏れではなく要領どおりだということになります。
共有する部材は若番側の径間に入れる=「**01」が欠番になる
多径間の橋で必ず出てくるのが、「この橋脚は第1径間と第2径間のどちらに入れるのか」という問題です。要領は径間の考え方として、次のように整理しています。
「多径間の橋梁において,橋脚,伸縮装置,連続桁中間支点の支承,支点上の対傾構・横桁,桁連結装置(落橋防止)等,前後の径間で共有する部材については,若番側の径間部材とする。」
下部構造の付番は、この考え方をそのまま数字にしたものです。付図-1.2はこう定めています。
「1径間目(単径間を含む。)は,起点側下部工を『**01』,終点側下部工を『**02』とする。2径間目以降は,起点側下部工は起点側径間の部材(要素)とし,終点側下部工を『**02』とする(『**01』が存在しない。)。」
つまり第2径間以降の下部構造には、意図的に「**01」がありません。起点側の下部工はすでに1つ手前の径間で番号を持っているからです。伸縮装置(Ej)にも同じ規定が置かれています。調書を点検して「01が抜けている」と指摘したくなる場面ですが、多径間橋の2径間目以降では、欠番である方が要領どおりです。
同じ理由で、部材群番号も径間番号と一致しません。要領は「上下部接続部や下部構造などの部材群番号は,単径間(もしくは多径間の1径間目)であっても『02』まで付番されるため,径間番号と部材群番号が必ずしも一致するものではないことに留意すること」と、わざわざ注意を書いています。橋の両端に下部構造があるためで、これも数え間違いではありません。
一度振った番号は更新してはならない
要素番号の規定でもっとも強い言い方をしているのが、この部分です。
「要素番号図は損傷の経年変化を知るために,初期入力されたものを更新してはならない。」
部材番号図についても同じ趣旨の記述があります。番号は現場を整理するための便宜ではなく、時系列を接続するための固定された座標だ、という位置づけです。前回と番号が変わってしまえば、損傷が進んだのか、別の場所を見ているのかを区別できなくなります。
ただし、例外は要領自身が挙げています。過去の記録が規則に従っておらず、要素分割方法の見直しなどで明らかに不都合が生じる場合は修正する、として次の4つを示しています。
| 不都合の例 | 内容 |
|---|---|
| ア)番号が重複している | 同じ番号が複数の要素に付いている |
| イ)番号定義がない | 番号の根拠となる定義が残っていない |
| ウ)部材種別の取り違い | 部材記号と実際の部材が合っていない |
| エ)要素分割方法の見直し | 分割の仕方そのものを改めた |
もう1つ、実務で頻繁に起きるのが補強や拡幅で部材が増える場面です。ここも要領に定めがあります。
「補強,拡幅等により,部材の追加,変更が生じた場合は,既存の要素番号の振り直しは行わず,新規の番号を追加するものとする。」
番号体系をきれいに並べ直したくなるところですが、振り直しは禁止で、追加だけが認められています。過去の記録との接続を優先する、という一貫した考え方です。
よくある質問
Q. 橋台の「A1」「A2」はどう決まるのですか。
A. 橋梁定期点検要領の全文を確認すると、「A1」という表記は1か所しか現れず、それは点検記録様式(その11)の「箇所」欄の記入例(「A1橋台側排水管,下流側排水桝 など,箇所が特定できるよう記載」)です。A1・A2の付番規則そのものは、この要領には定義が見当たりません。要領が定めているのは、橋台の工種記号「A」と部材記号(胸壁 Ap、竪壁 Ac、翼壁 Aw)、そして起点側の下部工を「**01」、終点側を「**02」とする要素番号の方です。調書を書くときは要素番号側が正、現場や打合せで位置を言い表すときの通称がA1・A2、と切り分けておくのが安全です。
Q. 前2桁と後2桁、どちらが橋の長さ方向ですか。
A. 前2桁です。要領は「前2桁が橋軸方向の並び(行)を示し,後2桁が橋軸直角方向の並び(列)を示す」としています。橋軸方向=橋の長さ方向、橋軸直角方向=幅方向です。
Q. 2径間目の下部構造に「01」が無いのは記入漏れですか。
A. 記入漏れではありません。前後の径間で共有する部材は若番側の径間の部材として扱うため、2径間目以降は起点側下部工が1つ手前の径間に含まれ、「**01」は存在しないと要領が明記しています。伸縮装置にも同じ規定があります。
Q. 部材番号が「00」になっているものがありますが、これは未記入ですか。
A. 要領どおりの記入です。1本単位・1箇所もしくは1基単位で付番する部材は要領の表で限定されていて、それ以外の径間単位で評価する部材には「00」を付すと定められています。
Q. 前回の点検の要素番号が明らかに間違っています。直してよいですか。
A. 要領は原則として「初期入力されたものを更新してはならない」としたうえで、番号の重複、番号定義がない、部材種別の取り違い、要素分割方法の見直しなど、明らかに不都合が生じるものは修正するとしています。判断の理由を記録に残し、前回までの記録とどう対応するのかを引き継げる形にしてください。引き継ぎ事項の書き場所は点検の引き継ぎ事項はどこに書く?様式5か所で整理しています。
Q. 補強して主桁が増えました。番号を振り直すべきですか。
A. 振り直しません。要領は「既存の要素番号の振り直しは行わず,新規の番号を追加するものとする」と定めています。番号が連続していなくても、過去の記録との対応が保たれている方が要領の意図に沿います。
出典・適用範囲
本文の版・記述・対象を確認するための一次資料です。PDFを取得して全文をテキスト抽出し、該当箇所を原文で照合しました。
- 国土交通省 道路局 国道・技術課「橋梁定期点検要領」(令和6年7月) — 参照箇所:付録-1「1.点検記録様式への記入方法」のうち点検記録様式(その5)の部材群番号、点検記録様式(その6)要素番号図及び部材番号図(1径間の考え方・要素番号・部材番号)、データ記録様式(その3-3)の記入要領、点検記録様式(その11)の「箇所」欄の記入例、付表-1.2「各部材の名称と記号」(38ページ)、付図-1.2「要素番号例」(58ページ以降。⑥支承、⑦橋脚・橋台・基礎、⑧伸縮装置)、付図-1.3「部材番号例」(113ページ)。
原典リンク確認:2026年9月13日。本記事は直轄の橋梁定期点検要領(令和6年7月)を対象にした実務解説です。地方公共団体が定める要領・マニュアルでは付番の運用が異なる場合があります。また、付図が図として示している番号の並びそのものは本文では扱わず、文章で定められている規定のみを引用しています。要領は改定されます。実施にあたっては必ず最新版をご確認ください。