この記事の要点
  • 橋の路面の損傷は2つに分かれます。橋軸方向の凹凸・段差が⑭路面の凹凸、橋軸直角方向の凹凸(わだち掘れ)は⑮舗装の異常として扱います
  • ⑭路面の凹凸は「発生原因や発生箇所にかかわらず、橋軸方向の凹凸や段差は全て対象」です。コルゲーション・ポットホール・陥没・伸縮継手部やパラペット背面の段差も含みます
  • ⑭の評価はa・c・eの3段階。分かれ目は段差量20mm(20mm未満=c/20mm以上=e)です
  • ⑮舗装の異常は、コンクリート床版の上面損傷(土砂化・泥状化)や鋼床版の損傷が主な原因となって舗装のうき・ポットホールとして現れる状態です
  • ⑮の評価もa・c・eの3段階で、分かれ目はひびわれ幅5mm。eは「舗装直下の床版上面のコンクリートが土砂化している、又は鋼床版の疲労亀裂により過度のたわみが発生している可能性がある」状態です
  • ポットホールの補修痕も「舗装の異常」として扱います。床版の損傷との関連性がある可能性があるためです
  • 鋼床版の場合は損傷パターン1〜5を記録し、同一要素に複数あるときは全てのパターン番号を記録します

橋の上を車で通ると分かる段差。舗装のひびわれ。どちらも「舗装の話」に見えますが、定期点検の記録では別の損傷として扱われます。しかも⑮舗装の異常は、舗装そのものの劣化を測る欄ではなく床版の中で起きていることの表れとして置かれた損傷です。

この記事では「橋梁定期点検要領」(令和6年7月・国土交通省 道路局 国道・技術課)の付録「損傷程度の評価要領」の⑬〜⑮と、第2章 表-4.1.1、付録2の溝橋の着目箇所を原文で読み、2つの損傷の線引きと記録の仕方を整理します。26種類の損傷の全体像は橋梁の損傷26種類一覧、a〜eの評価そのものの考え方は損傷程度の評価(a〜e)とは?で扱っています。

分かれ目は「凹凸の向き」

2つの損傷の線引きは、要領の【他の損傷との関係】に書かれています。⑭路面の凹凸の項にはこうあります。

「橋軸直角方向の凹凸(わだち掘れ)は、『舗装の異常』として扱う。」(付録-3 ⑭ 他の損傷との関係)

つまり橋の進行方向に生じる段差・うねりが⑭、横断方向のわだち掘れが⑮という分け方です。同じ「舗装が平らでない」現象でも、向きが違えば別の損傷になります。

⑭路面の凹凸⑮舗装の異常
拾う現象橋軸方向の凹凸・段差舗装のうき・ポットホール、橋軸直角方向のわだち掘れ
定義の主眼衝撃力を増加させる要因床版上面や鋼床版の損傷の表れ
評価区分a・c・e(b・dは「-」)a・c・e(b・dは「-」)
分かれ目の数値段差量 20mmひびわれ幅 5mm
損傷パターンなし鋼床版は1〜5を記録

どちらもbとdが「-」=使わない3段階の評価です。同じ形の評価をとる損傷は他にもあり、支承部の機能障害はaとeだけ、遊間の異常はa・c・eの3段です(支承部の機能障害遊間の異常)。

⑭路面の凹凸:原因を問わず全部拾う

⑭の定義は1文です。「衝撃力を増加させる要因となる路面に生じる橋軸方向の凹凸や段差をいう。」

実務で効くのは、そのあとの【他の損傷との関係】の書き方です。

  • 「発生原因や発生箇所にかかわらず、橋軸方向の凹凸や段差は全て対象とする。」
  • 「舗装のコルゲーション、ポットホールや陥没、伸縮継手部や橋台パラペット背面の段差なども対象とする。」

橋の損傷ではなく道路側の施工に由来する段差でも、橋の上の橋軸方向の段差なら拾う、という整理です。理由は定義の側にあります。⑭が見ているのは舗装の品質ではなく通行車から橋に入る衝撃力なので、原因が何であれ段差があること自体が評価の対象になります。

区分一般的状況(原文)
損傷なし
橋軸方向の凹凸が生じており、段差量は小さい(20mm未満)。
橋軸方向の凹凸が生じており、段差量が大きい(20mm以上)。

20mmという境界は、現場では巻尺やスケールで測れる寸法です。段差量を計測して残しておけば、次回の点検で進行しているかどうかが判定できます。評価記号だけを残すと、19mmと1mmが同じ「c」に丸まってしまいます。寸法の記録の考え方はひび割れの測定方法と同じで、評価区分と実測値は別に残すのが安全側です。

伸縮装置部の段差については、⑬遊間の異常の【他の損傷との関係】にも「伸縮装置部の段差(鉛直方向の異常)については、『路面の凹凸』として扱う。」と明記されています。遊間側と路面側の両方に書かれている=取り違えが多い箇所ということです。

⑮舗装の異常:見ているのは床版の中

⑮の定義は⑭よりも踏み込んでいます。

「舗装の異常とは、コンクリート床版の上面損傷(床版上面のコンクリートの土砂化、泥状化)や鋼床版の損傷(デッキプレートの亀裂、ボルト接合部)が主な原因となり、舗装のうきやポットホール等として現出する状態をいう。なお、これら原因による損傷に限定するものではない。」

順序に注意してください。原因は床版の側にあり、舗装に出るのは結果という書き方です。舗装が傷んでいるかどうかを評価する欄ではなく、上から見える範囲で床版の異常を疑うための欄になっています。だから定義はこう続きます。

「また、床版の損傷との関連性がある可能性があるため、ポットホールの補修痕についても、『舗装の異常』として扱う。」

補修痕は、現象としてはすでに直っている箇所です。それでも拾うのは、同じ場所で繰り返しポットホールが出ているなら床版上面が疑われるからです。補修済みだから「損傷なし」にしてよい、という読み方はできません。同じ考え方は⑩補修・補強材の損傷にもあり、対策済みの箇所こそ記録が要るという整理です(抜け落ちと補修・補強材の損傷)。

区分一般的状況(原文)
損傷なし
舗装のひびわれ幅が5mm程度未満の軽微な損傷がある。
舗装のひびわれ幅が5mm以上であり、舗装直下の床版上面のコンクリートが土砂化している、又は鋼床版の疲労亀裂により過度のたわみが発生している可能性がある。

要領は、この区分について「下表の一般的状況を参考にして定性的に行うことを基本とする」としています。⑭の段差量が寸法だけで決まるのに対し、⑮のeは「ひびわれ幅5mm以上」に加えて床版側の可能性まで含んだ判断になっています。5mmを超えていれば自動的にeというより、5mm以上のひびわれが出ていて床版上面の土砂化や鋼床版の疲労亀裂が疑われる状態、という読み方です。床版側の損傷の見方は床版ひびわれの評価a〜eにまとめました。

鋼床版は損傷パターン1〜5を記録する

⑮には評価区分のほかに損傷パターンの区分があります。要領は「鋼床版の場合には、損傷パターンを次表によって区分し、対応するパターン番号を記録する。同一要素に複数の損傷パターンがある場合は、全てのパターン番号を記録する」としています。

パターン損傷(原文)
1蜘蛛の巣状(又は細かい格子状)のひびわれ
2舗装の局部的な陥没
3車線方向に一致する縦に連続的に伸びるひびわれ
4車線方向に規則的に現れる局部的なひびわれ
5著しい轍掘れ及びポットホールの発生(補修痕を含む。)

パターン3と4は、下にあるものの形が路面に出ている見方です。縦に連続する3はデッキプレートと縦リブの位置に、規則的に現れる4は横リブの間隔に対応しやすい形です。パターン5に補修痕を含むと明記されているのも、定義側の考え方と揃っています。

損傷パターン番号を記録するのは⑮だけではありません。記録様式の記入要領は、損傷の種類が「亀裂」「ひびわれ」「床版ひびわれ」「舗装の異常」「支承部の機能障害」「補修補強材の損傷」「定着部の異常」の場合、損傷パターン番号を記入するとしています。番号の意味と調書での扱いは損傷パターン番号とは?で整理しました。

どの部材に記録するか:舗装と伸縮装置

第2章の表-4.1.1(定期点検時の主な着目箇所の例)を見ると、⑭⑮がどの部材に紐づくかが分かります。

部位・部材区分対象とする項目(抜粋)
舗装(橋台背面アプローチ部を含む。⑭路面の凹凸/⑮舗装の異常/㉔土砂詰まり
伸縮装置(後打ちコンクリートを含む。)①腐食/②亀裂/③ゆるみ・脱落/④破断/⑤防食機能の劣化/⑬遊間の異常/⑭路面の凹凸/⑳漏水・滞水/㉑異常な音・振動/㉓変形・欠損/㉔土砂詰まり ほか

要点は2つです。1つは舗装の対象範囲に橋台背面アプローチ部が含まれること。橋の上だけを見て終わりにはなりません。もう1つは⑭が伸縮装置の側にも並んでいることです。伸縮装置部の段差は、伸縮装置という部材の損傷としても、路面の凹凸としても記録の対象になります。要素番号の付け方は要素番号の付け方を参照してください。

㉔土砂詰まりが舗装の欄に並んでいるのも見落としやすい点です。排水が詰まって路面に水が滞れば、舗装と床版の両方に効いてきます(漏水・滞水と土砂詰まり)。

下面に及んでいれば、そちらでも扱う

⑮の【他の損傷との関係】は1行です。

「床版上面損傷の影響が床版下面にも及んでいる場合には、それに該当する損傷(『床版ひびわれ』、『剥離・鉄筋露出』、『漏水・遊離石灰』など)についてそれぞれの項目でも扱う。」

上面の異常と下面の異常は、同じ床版の話であっても別々の損傷として両方に記録するということです。上から見た⑮と、下から見た⑪床版ひびわれ・⑦剥離・鉄筋露出・⑧漏水・遊離石灰が同じ径間で揃っていれば、それは床版が上下から傷んでいる状態の記録になります。コンクリート部材の個別損傷の見方は漏水・遊離石灰、剥離・鉄筋露出とは?、鋼部材側は鋼部材の腐食・亀裂・破断とは?にまとめています。

逆に言えば、上面だけを見て床版の状態を結論づけることはできません。⑮のeが「可能性がある」という書き方で止まっているのは、上からは確かめられないからです。確かめる手段が詳細調査で、必要性の判定はS1・S2として記録されます(橋梁点検の詳細調査とは?)。

表-4.1.1 の損傷は全部a〜eを書く

記録様式の記入要領には、点検の記録漏れを防ぐための決まりがあります。

「全ての要素において、第4章表-4.1.1に示されている損傷に対して、点検した結果を確実に残すため、損傷程度の評価(a〜e)を記入する。」

例として挙げられているのは、鋼製主桁で⑤防食機能の劣化だけが「c」だった場合に、同表に示される残りの損傷(②亀裂、③ゆるみ・脱落、④破断、⑩補修・補強材の損傷、⑬遊間の異常、⑱定着部の異常、⑳漏水・滞水、㉑異常な音・振動、㉒異常なたわみ、㉓変形・欠損)に「a」を記入するという扱いです。

ただし例外があります。「当該要素において明らかに対象外である損傷種類(例えば、ボルトが使われていない要素での③ゆるみ・脱落)では、『NA』とする。」

舗装の要素でいえば、表に並ぶ⑭⑮㉔について毎回a〜eのどれかを書くことになります。空欄は「見ていない」と読まれ、aは「見て損傷がなかった」と読まれます。NAは「その要素には原理的に当たらない」ときだけです。この3つの書き分けが、後から記録を読む人にとっての情報量を決めます。調書全体での書き方は橋梁点検調書の構成と書き方を参照してください。

溝橋では路上が着目箇所になる

同じ要領の付録2(溝橋(ボックスカルバート)の損傷事例)では、着目箇所の表に「その他/路上」という行があり、対象とする変状として⑮舗装の異常が挙げられています。本体側の表でも、路上【Rd】の欄にはこう書かれています。

「活荷重等の影響により、損傷が著しく進展し、内空の外から流入する排水不良が続くと、本体コンクリートの損傷を促進させるおそれがある」——対象とする項目は舗装の異常/路面の凹凸/その他

溝橋は内空に入れなければ中が見えない構造物です。そのため路上の異常が、地中で起きていることを推定する手がかりとして位置づけられています。周辺地盤・背面盛土【Sg】の欄にも、「近傍の路面に異常がある場合は、地中の不可視部で背面土が流出している可能性がある」と書かれています。路面の異常を「舗装の話」で閉じないのは、橋でも溝橋でも同じ考え方です。溝橋が橋梁として扱われる条件は溝橋(ボックスカルバート)の定期点検にまとめました。

なお、舗装そのものを対象にした点検は別の制度です。分類別・3区分で管理する舗装点検要領の考え方は舗装点検要領とは?、路面の状態を数値で扱うMCIはMCI(維持管理指数)とは?で扱っています。橋の定期点検の⑭⑮と、舗装点検要領の管理は別の枠組みなので、混ぜて記録しないよう注意してください。

よくある質問

Q. わだち掘れは「路面の凹凸」ではないのですか。
A. 違います。⑭路面の凹凸の【他の損傷との関係】に「橋軸直角方向の凹凸(わだち掘れ)は、『舗装の異常』として扱う」と明記されています。橋軸方向の凹凸・段差が⑭、橋軸直角方向が⑮です。

Q. 橋の手前の取付部の段差も記録の対象ですか。
A. 対象です。⑭は「発生原因や発生箇所にかかわらず、橋軸方向の凹凸や段差は全て対象とする」としており、橋台パラペット背面の段差も例示されています。表-4.1.1 の舗装の欄も「橋台背面アプローチ部を含む。」と書かれています。

Q. ポットホールを補修した箇所は「損傷なし」でよいですか。
A. いいえ。要領は「床版の損傷との関連性がある可能性があるため、ポットホールの補修痕についても、『舗装の異常』として扱う」としています。鋼床版の損傷パターン5にも「著しい轍掘れ及びポットホールの発生(補修痕を含む。)」と明記されています。

Q. 舗装のひびわれ幅が5mm以上なら必ずeですか。
A. eの一般的状況は「舗装のひびわれ幅が5mm以上であり、舗装直下の床版上面のコンクリートが土砂化している、又は鋼床版の疲労亀裂により過度のたわみが発生している可能性がある」です。区分は「一般的状況を参考にして定性的に行うことを基本とする」とされており、幅の数値だけで機械的に決まるものではありません。

Q. 損傷パターンは1つだけ選ぶのですか。
A. 複数記録します。要領は「同一要素に複数の損傷パターンがある場合は、全てのパターン番号を記録する」としています。

Q. 舗装の要素で損傷が見つからなかった場合、欄は空けてよいですか。
A. 空けません。記入要領は、表-4.1.1 に示されている損傷について「点検した結果を確実に残すため、損傷程度の評価(a〜e)を記入する」としており、損傷がなければ「a」を書きます。「NA」は、その要素で明らかに対象外の損傷種類に限られます。

出典・適用範囲

本文の版・記述・数値を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。

  • 国土交通省 道路局 国道・技術課「橋梁定期点検要領」(令和6年7月) — 参照箇所:付録-3 損傷程度の評価要領 ⑬遊間の異常(p.40)・⑭路面の凹凸(p.41)・⑮舗装の異常(p.42)の一般的性状・他の損傷との関係・評価区分・損傷パターンの区分/第2章 表-4.1.1 定期点検時の主な着目箇所の例(舗装=橋台背面アプローチ部を含む、伸縮装置=後打ちコンクリートを含む、その他/路上)/データ記録様式の記入要領(損傷パターン番号を記入する損傷の種類、分類欄を記入する損傷の種類、表-4.1.1 の損傷すべてにa〜eを記入する扱いとNAの例外)/付録2 溝橋(ボックスカルバート)の損傷事例 付表2-1 と本体側の路上【Rd】・周辺地盤・背面盛土【Sg】の記述。
  • 国土交通省「道路:道路の老朽化対策」 — 参照箇所:橋梁定期点検要領(令和6年7月)の掲載状況。

原典リンク確認:2026年9月18日。本記事は損傷の区分と記録方法を確認するための実務解説で、個別の橋の損傷程度の評価や健全性の診断の区分を判断するものではありません。要領は改定されることがあります。評価にあたっては、その時点の最新版と各道路管理者の運用をご確認ください。