この記事の要点
  • 変色・劣化は損傷26種類の⑲番。部材本来の色や材質が変化する状態を指します
  • 材料・材質で4分類(1コンクリート/2ゴム/3プラスチック/4その他)に分かれ、評価区分の表は分類ごとに別です
  • 分類の基準は部材本体の材料。被覆材料は対象外で、鋼部材の被覆は「防食機能の劣化」、コンクリート部材の被覆は「補修・補強材の損傷」として扱います
  • 評価はaとeの2段階だけ。b・c・dはすべて「-」で、中間の段階がありません
  • eの定義は材質で違います。コンクリート=乳白色・黄色っぽく変色/ゴム=硬化またはひびわれ/プラスチック=脆弱化またはひびわれ
  • 分類4「その他」には評価区分の表がありません
  • 対象外が3つ明記されています。鋼部材の塗装・めっきの変色/水の伝いによる汚れや析出物の固化・排気ガスやすすの汚れ/火災によるすすの付着。後ろ2つは「⑰その他」として扱います

調書の損傷欄に「変色」と書きたくなる場面は多くあります。桁の下面が黒ずんでいる、伸縮装置のゴムが白っぽい、防護柵の樹脂部品が色あせている。ところが要領上の「変色・劣化」は、見た目が変わっていれば何でも当てはまる項目ではありません。材料そのものが変化しているかどうかで線が引かれており、汚れは別の項目に回されます。

さらに、この損傷は評価の段階が2つしかなく、しかもeの中身が材質ごとに違います。ここを取り違えると、同じ「変色・劣化e」でも調書ごとに意味がずれます。この記事では橋梁定期点検要領(令和6年7月・国土交通省道路局 国道・技術課)の付録「損傷程度の評価要領」を原文で読み、変色・劣化の分類と評価区分、そして対象外の3つを整理します。損傷26種類の全体像は橋梁の損傷26種類一覧、a〜eという評価そのものの考え方は損傷程度の評価(a〜e)にまとめています。

変色・劣化の定義は「材質が変化する状態」

要領の【一般的性状・損傷の特徴】はこう書いています。

「コンクリートの変色など部材本来の色が変化する状態,ゴムの硬化,又はプラスチックの劣化など,部材本来の材質が変化する状態をいう。」(橋梁定期点検要領 令和6年7月・付録 損傷程度の評価要領 ⑲)

短い一文ですが、2つの状態が並んでいます。

  • 部材本来の色が変化する状態(コンクリートの変色など)
  • 部材本来の材質が変化する状態(ゴムの硬化、プラスチックの劣化など)

どちらも主語が「部材本来の」である点が効いています。表面に何かが付着して色が変わったのではなく、材料そのものが変わったときに使う項目だ、という読み方になります。この線引きが、後述する「対象にしない3つ」の根拠です。

材料・材質で4つに分かれる

変色・劣化は、他の損傷と違って冒頭に分類の表が置かれています。

分類材料・材質
1コンクリート
2ゴム
3プラスチック
4その他

調書に記録するときは、この分類番号とa〜eの記号が対になります。同じ「⑲変色・劣化」でも、分類1のeと分類2のeは別の現象を指します。損傷の記号や番号の記録ルールは損傷パターン番号で扱いました。

実務上は、1つの部材の中に複数の材質が混ざることがあります。伸縮装置なら本体は鋼、止水材はゴム、後打ちコンクリートはコンクリートです。どの材質の要素を見ているかで分類が変わるため、要素の取り方が先に決まっていないと分類が定まりません。要素の単位の考え方は要素番号の付け方にまとめています。

被覆材料は対象外という分岐

分類表には注記が付いており、ここが実務で最も間違えやすい箇所です。

「ここでの分類は部材本体の材料・材質によるものであり,被覆材料は対象としていない。部材本体が鋼の場合の被覆材料は『防食機能の劣化』,コンクリートの場合の被覆材料は『補修・補強材の損傷』として扱う。」(橋梁定期点検要領 令和6年7月・付録 損傷程度の評価要領 ⑲ 注)

整理すると3本の分岐になります。

見ている対象使う損傷項目
部材本体の材料そのものの変化⑲変色・劣化(本体の材質で分類1〜4)
鋼部材を覆っている被覆材料の状態⑤防食機能の劣化
コンクリート部材を覆っている被覆材料の状態⑩補修・補強材の損傷

塗装が浮いている、表面被覆が変色している、繊維シートが剥がれている——これらはいずれも「被覆材料」の話なので、変色・劣化には入りません。防食側の分類と評価は防食機能の劣化とは?腐食との違いと分類1〜3、補修・補強材側は抜け落ちと補修・補強材の損傷で別に整理しています。

この注記は「同じ見た目でも、それが本体か被覆かで項目が変わる」と言っています。現場で判断するには、その面が素地なのか塗装・被覆の上なのかを写真から判別できる必要があります。写真の残し方は損傷写真台帳の作り方を参照してください。

評価はaとeしかない

損傷程度の評価区分は分類ごとに表が用意されていますが、どの表もb・c・dがすべて「-」です。

分類b・c・d
1 コンクリート損傷なし乳白色,黄色っぽく変色している。
2 ゴム損傷なし硬化している,又はひびわれが生じている。
3 プラスチック損傷なし脆弱化している,又はひびわれが生じている。
4 その他評価区分の表なし

つまり「損傷なし」か「該当する」かの2択で、進行の度合いを記号では表せません。程度を残したい場合は、記号ではなく写真とスケッチ、そして所見に書くことになります。要領は「変色・劣化の発生位置やその範囲・状況をスケッチや写真で記録するとともに,代表的な損傷の主要寸法を損傷図に記載する」としています。損傷図の書き方は損傷図(その5)の書き方にまとめました。

この「中間がない」構造は変色・劣化に限りません。支承部の機能障害も評価がaとeだけ、遊間の異常はa・c・eの3段です。段階が少ない損傷は、記号だけを集計しても傾向が読めないという共通の性質を持ちます。

eの中身が材質で違う点も押さえておく必要があります。コンクリートは(乳白色・黄色っぽい)、ゴムとプラスチックは状態(硬化・脆弱化)とひびわれです。ゴムとプラスチックには「ひびわれが生じている」が入っているので、ゴム製の止水材にひびが入っていれば、⑥ひびわれではなく⑲変色・劣化のeとして記録する読み方になります。コンクリート側の個別損傷の扱いはコンクリート橋の個別損傷の見方で扱っています。

対象にしない3つ:塗装・汚れ・すす

【他の損傷との関係】には、対象としないものが3つ列挙されています。

  • 鋼部材における塗装やめっきの変色は,対象としない。
  • コンクリート部材の表面を伝う水によって発生する汚れやコンクリート析出物の固化,排気ガスや“すす”などによる汚れなど,材料そのものの変色でないものは,対象としない(「⑰その他」として扱う)。
  • 火災に起因する“すす”の付着による変色は,対象としない(「⑰その他」として扱う)。

2つ目と3つ目には行き先が指定されています。⑰その他です。つまり「記録しなくてよい」ではなく「別の枠で記録する」ということになります。桁下が黒ずんでいる、橋脚に白い筋が出ている——これらは見た目としては目立ちますが、変色・劣化ではありません。

ここで注意が要るのは、汚れの原因側が別の損傷であることがある点です。コンクリート部材の内部を通ってひびわれ等から流出してくるものは⑧漏水・遊離石灰、排水機構によらず漏れている水や滞留している水は⑳漏水・滞水です。表面に残った跡だけを「変色」と書くと、漏水という原因側の記録が落ちます。桁端部の水まわりの損傷は漏水・滞水と土砂詰まりに整理しました。

どの部材で出てくるか

要領の表-4.1.1「対象とする損傷の種類の標準」を見ると、変色・劣化がどの列に置かれているかで、想定されている材質が読み取れます。

部位・部材変色・劣化が置かれている列読み取れる想定
主桁・床版・主構・斜材等コンクリート分類1(コンクリート本体の変色)
高欄・防護柵・地覆・中央分離帯コンクリート分類1
伸縮装置(後打ちコンクリートを含む)その他分類2・3(止水材等のゴム・樹脂)
落橋防止構造・横変位拘束構造コンクリート/その他分類1と分類2・3の両方
標識施設・遮音施設・排水管その他分類3・4(樹脂製の付属物)

鋼の列に変色・劣化が入っている部材はありません。鋼部材の色の変化は塗装やめっきの話になり、防食機能の劣化か腐食で扱うためです。付属物側の点検は要領の系統が分かれるので、小規模附属物点検要領もあわせて確認してください。

令和6年改定で「対策区分の参考」が消えた

平成31年3月版の橋梁定期点検要領には、損傷ごとに「対策区分判定」の参考記述が付いていました。変色・劣化の項でいえば、判定区分S1・S2について「コンクリートが黄色っぽく変色するなど,内部への水の浸入・滞留,凍害やアルカリ骨材反応の懸念がある状況などにおいては,詳細調査を実施することが妥当と判断できる場合がある」という記述です。

令和6年7月版では要領の構成そのものが変わり、損傷ごとに対策区分の参考を示す付録は置かれていません。詳細調査・追跡調査の必要性の判定は第1章5.4に独立した節として立っています。版が違えば、同じ損傷でも参照すべき箇所が違うということです。

ただし、黄色っぽい変色が水の浸入・凍害・アルカリ骨材反応のサインになりうるという着眼点自体は、現場での見立てとして残ります。原因側を追う必要があると考えたなら、記号ではなく所見と詳細調査の要否で残すのが現行の構成に沿った書き方です。詳細調査の位置づけは橋梁点検の詳細調査、対策区分という枠組み自体の整理は対策区分一覧と判定の考え方、要領が2種類ある事情は橋梁定期点検要領(令和6年7月・直轄)とはで扱っています。

なお、損傷を全国共通の方法でデータ化して蓄積する枠組みは別に用意されています。基礎データ収集要領を参照してください。塩害やアルカリ骨材反応など、特定の劣化機構を扱う枠組みは特定事象塩害の地域区分にまとめています。

よくある質問

Q. 桁下が黒ずんでいるのは変色・劣化ですか。
A. 排気ガスや“すす”などによる汚れは対象外で、「⑰その他」として扱います。要領は「材料そのものの変色でないものは,対象としない」としています。

Q. 塗装が変色している鋼桁はどう記録しますか。
A. 「鋼部材における塗装やめっきの変色は,対象としない」と明記されています。被覆材料の状態は「⑤防食機能の劣化」で扱います。

Q. 変色・劣化にb・c・dはありますか。
A. ありません。分類1〜3のいずれの表もb・c・dは「-」で、a(損傷なし)とeの2段階だけです。程度は記号ではなく写真・スケッチ・所見で残します。

Q. ゴムにひびが入っていたら、ひびわれで記録しますか。
A. 分類2ゴムのeは「硬化している,又はひびわれが生じている。」です。ゴム部材のひびわれはこの項目のeに含まれます。

Q. 分類4「その他」のときは何を書きますか。
A. 分類4には評価区分の表が用意されていません。発生位置や範囲・状況をスケッチや写真で記録し、代表的な損傷の主要寸法を損傷図に記載する、という記録側の指示に従うことになります。

Q. コンクリートが黄色っぽいときは詳細調査が要りますか。
A. 令和6年7月版の要領には、損傷ごとに対策区分の参考を示す付録がありません。詳細調査・追跡調査の必要性は第1章5.4の判定として行います。平成31年3月版には、内部への水の浸入・滞留、凍害やアルカリ骨材反応の懸念がある場合に詳細調査が妥当と判断できることがある、という参考記述がありました。

出典・適用範囲

本文の版・記述・数値を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。

  • 国土交通省 道路局 国道・技術課「橋梁定期点検要領」(令和6年7月・表紙の版数表記 20250314) — 参照箇所:第2章 4.1 損傷程度の評価(対象とする損傷の種類は26種類を標準とすること)、表-4.1.1 対象とする損傷の種類の標準(主桁・床版・主構・斜材等/高欄・防護柵・地覆・中央分離帯/伸縮装置/落橋防止構造・横変位拘束構造/標識施設・遮音施設・排水管の各行)、付録 損傷程度の評価要領 ⑲変色・劣化(材料・材質による分類1〜4と被覆材料に関する注記、一般的性状・損傷の特徴、他の損傷との関係の3項目、損傷程度の評価区分の分類1〜3の表、その他の記録)、⑳漏水・滞水(他の損傷との関係)、第1章 5.4 詳細調査又は追跡調査の必要性の判定(節の存在)。
  • 国土交通省 道路局 国道・技術課「橋梁定期点検要領」(平成31年3月) — 参照箇所:付録-2 損傷程度の評価要領 ⑲変色・劣化の対策区分判定の参考記述(判定区分S1・S2に関する記述)、および同要領が付録-1に対策区分判定要領を持つ構成であること。令和6年7月版との構成の違いを確認するために参照しました。

原典リンク確認:2026年9月17日。本記事は損傷の記録区分を確認するための実務解説で、個別の点検結果の妥当性や健全性の診断の区分を判断するものではありません。要領は改定されることがあり、各道路管理者が別のマニュアルを定めている場合があります。適用にあたっては、その時点の最新版と管理者の運用をご確認ください。