路面性状調査の成果表を開くと、区間ごとに「MCI 3.4」のような数字が並んでいます。10点満点で、小さいほど傷んでいる。そこまでは共有されているのに、その数字がどうやって出たのかを説明できる人は、発注側にも受注側にも意外と多くありません。
MCIには、実務で誤解されやすい点が3つあります。第一に、MCIは1本の式ではなく4本の式で、しかも採用するのは4本のうち最も小さい値だということ。第二に、舗装点検要領が本則としているのはMCIではないということ。第三に、縦断凹凸をIRIで測った現場では、3要素の式がそもそも使えないということです。
この記事では、複数の道路管理者が公表している舗装修繕計画と、国土交通省の舗装点検要領の原文をもとに、MCIの算出のしくみと、点検制度の中でMCIがどこに置かれているのかを整理します。舗装点検の制度そのものは舗装点検要領とは?橋・トンネルと違う「分類別・3区分」の点検制度にまとめてあります。
MCIは旧建設省土木研究所が開発した「維持修繕の要否を判断するための評価値」で、ひび割れ率・わだち掘れ量・平たん性から4本の式を計算し、そのうち最小値を代表値として採ります。一方、舗装点検要領(平成28年10月)が管理基準の基本としているのはひび割れ率・わだち掘れ量・IRIの3指標であり、MCIは「複合指標を用いることは構わない」という併用可の位置づけです。MCIと要領の診断区分Ⅰ〜Ⅲは別の軸で、MCIを出しているから要領の診断を済ませたことにはなりません。
- MCIは4本の式を計算し、最も小さい値を代表値にする。1本の式ではない
- 入力はひび割れ率C(%)・わだち掘れ量D(mm)・平たん性σ(mm)の3つ
- 縦断凹凸をIRIで測る場合、3要素の式は使えない(茨城県の維持修繕マニュアルが明記)。実務では2要素の式に落ちる
- 舗装点検要領の本則はひび割れ率・わだち掘れ量・IRIの3指標で、MCIは「複合指標(MCIなど)を用いることは構わない」と書かれた併用可の扱い
- 要領の診断区分はⅠ・Ⅱ・Ⅲの3つ。橋梁のⅠ〜Ⅳとは区分数も定義も違う
- MCIの管理水準はおおむね5.0以上が望ましい水準、3を下回ると早急な対応という目安で運用されている
- 管理基準の値そのものは各道路管理者が設定する。全国一律の合格ラインは要領に書かれていない
MCIは1本の式ではなく4本の式
MCIは Maintenance Control Index の略で、日本語では維持管理指数と呼びます。開発したのは土木研究所です。同研究所の用語解説は、成り立ちをこう書いています。
「舗装の劣化形態は様々なものがあり、例えばひび割れ卓越型の劣化形態や、わだち掘れ卓越型の劣化形態が存在する。「ひび割れ率」や「わだち掘れ量」といった単独指標では、それら劣化形態の異なる舗装の比較が困難である。」「そこで、昭和56年に建設省土木研究所が、道路局、地方建設局(いずれも当時)とともに、維持修繕判断を行う総合的な指標として開発したものがMCIである。」
着目すべきは維持修繕判断を行うという目的語です。MCIは、舗装がどれだけ傷んでいるかを表すためというより、直すべきかどうかを決めるために作られた指標です。作り方も明かされていて、同解説は「道路管理者の視点から異なる劣化形態の路面を見比べ、劣化の程度を点数により評価したものに対し、路面性状の主要指標である「ひび割れ率」、「わだち掘れ量」及び「平たん性(σ)」という路面性状値で重回帰分析することにより求められた」としています。技術者が目で見て点数をつけた結果を、測定値で再現できるようにした回帰式、というのがMCIの正体です。
そのMCIは、次の4本の式で構成されています。土木研究所の用語解説が示す式は以下のとおりです。
| 式 | 算出式 | 使う要素 |
|---|---|---|
| MCI | 10 − 1.48C0.3 − 0.29D0.7 − 0.47σ0.2 | ひび割れ率・わだち掘れ量・平たん性 |
| MCI0 | 10 − 1.51C0.3 − 0.30D0.7 | ひび割れ率・わだち掘れ量 |
| MCI1 | 10 − 2.23C0.3 | ひび割れ率のみ |
| MCI2 | 10 − 0.54D0.7 | わだち掘れ量のみ |
Cはひび割れ率(%)、Dはわだち掘れ量(mm)、σは平たん性(mm)です。同解説は「上式のとおり10点法を採用しており、舗装の劣化に伴いMCIは低下する。」としています。指数がいずれも1未満なので、傷みが浅いうちは点数が急に落ち、傷みが深くなるほど落ち方が緩やかになります。ひび割れ率が0%から10%に増えるときの減点は、40%から50%に増えるときの減点よりずっと大きい、という挙動です。
なぜ最小値を採るのか
4本の式のうち、どれを使うのか。答えは「全部計算して、いちばん小さい値を採る」です。土木研究所の用語解説は「以下の式のうち、最小値をもってMCIとすることとしている。」と書いています。
その理由も、土木研究所の研究者による論文にはっきり書かれています。
「維持管理指数(Maintenance Control Index: MCI)は3種類の路面特性値から算出することが基本である.ただし,データの未整備や特定の路面特性値だけが著しく増加する舗装の存在を想定して,以下の4式のうち最小値をもってMCI とすることとしている.」
理由は2つある、ということです。データの未整備と、特定の路面特性値だけが著しく増加する舗装の存在。前者は測っていない項目があっても計算できるようにするため、後者は1つの損傷だけが突出した区間を取りこぼさないためです。
後者の挙動を具体的に見ておきます。3要素の式は、3つの損傷が平均的に進んでいる区間ではよく効きますが、ひとつの損傷だけが極端に進んでいる区間では点数が薄まります。ひび割れ率だけが突出して高く、わだち掘れも平たん性も良好な区間を3要素式に入れると、良好な2要素が減点を打ち消して実態より高い点が出ます。ひび割れ率だけを見る式(MCI1)を併走させておけば、その区間は低い点が出るので、最小値を採る運用によって拾い上げられます。
ここから、成果表の読み方が1つ決まります。MCIが低いとき、4本のどの式で決まった値なのかまで遡ると、その区間で何が起きているのかが見えます。MCI1で決まっていればひび割れが主因、MCI2で決まっていればわだち掘れが主因、と読めるからです。
入力になる3つの路面性状
MCIに入る3つの値は、いずれも路面性状調査で測る量です。茨城県の舗装維持修繕マニュアルは、測定の方法を4つに分類しています。路面性状自動測定車による方法、車上や徒歩による目視法、3mプロフィルメーターや横断プロフィルメーターを使う機械測定(半人力)、そして「スマートフォンやドライブレコーダーにより取得した路面画像などのデータを、AI等を用いて解析し、破損程度を評価する手法」です。同マニュアルは「現在主流として行われている方法は、①の路面性状自動測定車による方法であるが、近年の調査技術進歩に伴い、今後は④のその他測定法を取り入れることも検討していく。」としています。
| 要素 | 記号・単位 | 何を測っているか |
|---|---|---|
| ひび割れ率 | C(%) | 調査区間の面積に対する、ひび割れが生じている面積の割合 |
| わだち掘れ量 | D(mm) | 車輪の通過位置に生じた横断方向のくぼみの深さ |
| 平たん性 | σ(mm) | 縦断方向の凹凸のばらつき。標準偏差として表す |
3つのうち、ひび割れ率とわだち掘れ量は損傷の量を直接測るものですが、平たん性は走り心地に効く縦断方向の凹凸を測っています。性格が違う指標が同じ式に混ざっているため、後述するように測り方が変わると式の使い方まで変わります。
ひび割れ率は、面積の割合という定義上、現場写真や路面画像からの検出・数量化と相性のよい指標です。橋梁の損傷図・写真台帳で進んでいる画像からの自動抽出の発想は、舗装のひび割れ記録にもそのまま応用が利きます(ひび割れの測定方法:クラックスケールから画像計測まで、橋梁点検DXの進め方)。
IRIで測ると3要素の式が使えない
ここがこの記事でいちばん実務に効く点です。茨城県の舗装維持修繕マニュアル(令和6年3月)は、MCIの説明に注記としてこう書いています。
「縦断凹凸を平たん性でなくIRI で測定する場合は、3 要素の式は使用しない。」
平たん性σ(mm)とIRI(mm/m)は、どちらも縦断方向の凹凸を表す量ですが、定義も単位も別物です。3要素の式の第4項はσを前提に係数が決まっているので、単位も定義も違うIRIの数値をそのまま代入することはできません。σが無いときにどうするかは、土木研究所の研究者による論文がはっきり書いています。「σが未測定の場合はMCI の代わりにMCI0 を用いる.」つまり2要素の式に落とす、ということです。
そして現在、国の要領はIRIのほうを基本に据えています。舗装点検要領(平成28年10月)の本文で「平坦性」という語は使われず、代わりに「IRI」が繰り返し登場します。切り替えの経緯は、国土交通省道路局の「総点検実施要領(案)【舗装編】」(平成25年2月)に書かれています。
「IRIは、1989年に世界銀行が提案した路面のラフネス指標である。国内では、従前より縦断凹凸に関する指標として平たん性(σ)が用いられているが、これには路面性状測定車による調査又は3mプロフィルメータ等による調査が必要である。そこで、より簡易な手法も採用可能であり、また国際的に同一尺度で比較可能であることから、本要領(案)に従った点検では、IRIを区間内の路面の平均的な縦断凹凸を示す指標として採用することとしている。」
同資料は換算についても触れていて、「σとIRIは異なる指標であるが、路面性状測定車を用いて従来の指標であるσを測定する或いはしている場合は、下図を参考にσからIRIへの換算をしてもよい。」としたうえで、図中に相関式 IRI=1.33σ+0.24 を示しています。ただしこの図のキャプションは「県道、市道レベルを対象としたσ-IRI相関結果例」であり、全国一律の公式な換算式ではありません。「してもよい」という書き方も含めて、参考値として扱うべきものです。
実際の運用がどうなるかは、道路管理者の計画書を見ると具体的です。栃木県さくら市は調査項目を「ひび割れ率、わだち掘れ量およびIRIの3要素」としたうえで、「これらのうちひび割れ率、わだち掘れ量の2要素からMCIを算出した」と書いています。茨城県の舗装維持修繕マニュアルも、MCIの注記として「縦断凹凸を平たん性でなくIRI で測定する場合は、3 要素の式は使用しない。」と明記しています。IRIで測った現場では、MCIは事実上2要素の指標になります。
舗装点検要領の本則はMCIではない
MCIは長く使われてきた指標ですが、国の舗装点検要領における位置づけは「本則」ではありません。要領(平成28年10月・国土交通省道路局)の本文は次のように書いています。
「管理基準は、ひび割れ率、わだち掘れ量、IRI(International Roughness Index:国際ラフネス指標)の3指標を使用することを基本とする(3指標と合わせて、その他指標や、複合指標(MCIなど)を用いることは構わない)。」
読み方は2段構えです。基本は3指標。そのうえで複合指標を合わせて使うのは構わない。MCIは括弧の中に、その他指標と並んで例示されているにすぎません。要領がMCIを禁じているわけではありませんが、MCIを算出していれば要領の求める管理基準を満たしている、とは書かれていないことははっきりしています。
要領は、管理基準の値についても道路管理者に委ねる書き方をしています。同じ節に続く目安は次のとおりです。
| 分類 | ひび割れ率 | わだち掘れ量 | IRI |
|---|---|---|---|
| 分類Aに相当する道路 | 15〜20% | 20〜25mm | 3.5mm/m |
| 分類B以下に相当する道路 | 20〜40% | 20〜40mm | 8mm/m |
要領はこれらを「採用している事例があるので、管理基準の設定にあたって参考にするとよい」という書き方で示しており、義務づけてはいません。分類C・D側も同様で、「各種指標を総合的に評価しているケースも存在するが、各道路管理者が道路の特性等に応じて適切に設定する。」としています。道路の分類A〜Dの考え方そのものは舗装点検要領の解説記事に整理しています。要領・告示・技術的助言といった文書の効力の違いについては定期点検要領の法的位置づけを参照してください。
なお、舗装分野でも点検支援技術の性能カタログが整備されています。令和8年4月1日現在の掲載技術数は舗装が55技術(同日に15技術を追加)で、対象とする変状は「ひび割れ率・わだち掘れ量・IRI」です。カタログの読み方と、掲載が使用許可を意味しないことは点検支援技術性能カタログとは?とNETISと性能カタログの違いにまとめています。
診断区分Ⅰ〜ⅢとMCIは別の軸
舗装点検要領の健全性の診断は、次の3区分です。橋梁のⅠ〜Ⅳとは区分の数からして違う点に注意してください。
| 区分 | 状態 | 要領の記述 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 健全 | 損傷レベル小:管理基準に照らし、劣化の程度が小さく、舗装表面が健全な状態である。 |
| Ⅱ | 表層機能保持段階 | 損傷レベル中:管理基準に照らし、劣化の程度が中程度である。 |
| Ⅲ | 修繕段階 | 損傷レベル大:管理基準に照らし、それを超過している又は早期の超過が予見される状態である。 |
さらに区分Ⅲは、Ⅲ-1(表層等修繕)とⅢ-2(路盤打換等)に分かれます。分けているのは損傷の大きさではなく表層の供用年数が使用目標年数を超えているかどうかです。要領は、Ⅲ-1を「表層の供用年数が使用目標年数を超える場合(路盤以下の層が健全であると想定される場合)」、Ⅲ-2を「表層の供用年数が使用目標年数未満である場合(路盤以下の層が損傷していると想定される場合)」としています。
ここがMCIと決定的に違うところです。MCIは路面の数値だけで決まりますが、要領の区分Ⅲの枝分かれは路面の数値だけでは決まりません。目標より早く傷んだのなら路盤以下を疑い、目標を全うしたうえで傷んだのなら表層だけを直す。同じ路面性状でも、表層をいつ打ったかで打ち手が変わる建て方になっています。舗装台帳に供用年数が残っていない区間では、この判定ができません。
要領の付録には、目視で判断するときの目安が損傷ごとに示されています。数値の帯は次のとおりです。
| 診断区分 | ひび割れ率 | わだち掘れ量 | IRI |
|---|---|---|---|
| Ⅰ(健全) | 0〜20%程度 | 0〜20mm程度 | 0(完全平坦)〜3mm/m程度 |
| Ⅱ(表層機能保持段階) | 20〜40%程度 | 20〜40mm程度 | 3〜8mm/m程度 |
| Ⅲ(修繕段階) | 40%程度以上 | 40mm程度以上 | 8mm/m程度以上 |
この付録は、IRIについては体感で言い換えた記述まで添えています。区分Ⅱの上のほうは「古い舗装の場合で劣化がやや進行したような状態。高速で走行すると適度に車両が振動・うねりを感じるような路面。」で概ねIRI 4〜5mm/m、区分Ⅲの入口は「古い舗装の場合で劣化が進行し、明確な損傷が部分的に発生している状態。50~60km/hで強く認識できる揺れを感じ、車両の損傷につながりかねない。10mに1箇所程度路面のへこみが存在するような路面。」で概ねIRI 9〜10mm/m、といった具合です。機器が無い管理者でも、走って感じた印象を数値の帯に置き直せるように書かれています。
ただしこの付録は「あくまで例示であり、現場の供用環境は様々であるので、個々の区間で判断していくことが重要である。」と断っており、管理基準そのものではありません。
健全性の診断という言葉自体の考え方は、橋梁側の健全性の診断(判定区分Ⅰ〜Ⅳ)とは?と損傷程度の評価(a〜e)と読み比べると、制度ごとの違いがはっきりします。舗装が法定点検の5施設のどこに位置するかは道路の法定点検「5施設」と5年ルールにまとめました。
管理水準はどう決められているか
MCIの判断基準は、土木研究所の研究者による論文に簡潔に書かれています。「MCI による判断基準は,5 以上であれば望ましい管理水準,4 以下であれば修繕が必要,3 以下であれば早急に修繕が必要,である.」同論文は、この基準の出どころとして日本道路協会の「道路維持修繕要綱」(1978年)を挙げています。
| MCI | 判断 |
|---|---|
| 5以上 | 望ましい管理水準 |
| 4以下 | 修繕が必要 |
| 3以下 | 早急に修繕が必要 |
道路管理者の計画書では、これを刻んだ表として使われています。千葉県多古町は「5.0以上=望ましい管理水準/4.1〜4.9=維持・修繕が望ましい/3.1〜4.0=維持・修繕が必要/3.1未満=早急に補修・修繕が必要」の4段階で評価したとしています。栃木県さくら市は同種の管理水準の出典を「土木技術資料(平成4 年8 月)より」と記しています。いずれも舗装点検要領由来の数値ではありません。MCIと同じ系譜の技術資料に由来する目安です。
実際の管理水準は、道路管理者が自分の管内の実態から設定し直しているケースがあります。茨城県は、パッチングを実施した際の路面性状データを整理した結果として「平均ひび割れ率は70%であり、MCI は2.0 相当であった。」とし、「よって、「MCI2.0」を舗装の管理限界と設定し、この水準を下回らない管理水準を設定すること」としています。そのうえで交通量の多いグループ1・2の管理水準を「MCI3.5」と設定しており、その根拠として「国土交通省では、ひび割れ率40%(MCI3.3)以上を修繕対象(切削オーバーレイなど)としている」ことや、舗装設計施工指針や舗装の維持修繕ガイドブック2013が「ひび割れ率が35%以上(MCI3.5)で重度の破損」と定義していることを挙げています。
管理限界を自分たちの応急措置の実績から逆算して決める、という組み立て方は、そのまま他の道路管理者にも移せる考え方です。全国一律の合格ラインを探すより、自分の管内でパッチングに追われている区間のMCIがいくつなのかを数えるほうが、実態に合った基準になります。
ひとつ補足しておくと、MCIの限界は開発元の側からも指摘されています。土木研究所の研究者は「修繕要否の判断基準として開発されたMCI は道路機能に対応していない.」とし、MCIに代わる複合指標を提案する論文を書いています。同論文は「1990 年代に入り舗装の修繕がMCI だけでなく,沿道住民や道路利用者からの苦情を受けて判断されている実態が明らかとなった」とも述べています。MCIは道路管理者の目線を数値化したものであって、利用者や沿道住民が感じる不便を表す指標ではない、という前提で扱ってください。
点検管理職から見た使いどころ
発注・管理の立場でMCIを扱うときの勘所は3つです。
区間どうしの優先順位づけ。1つの数値に落ちるので、限られた修繕予算をどこから配るかの並べ替えに使いやすい。経年の推移も追いやすく、予算要求の資料に載せやすい形になります。
工法の選定。要領の区分Ⅲ-1とⅢ-2の分岐は表層の供用年数で決まるため、路面の数値だけでは表層等修繕か路盤打換等かを決められません。台帳側の情報が要ります。
第一に、成果品の仕様で「どの式で決まった値か」を残させること。最小値を採る運用である以上、採用された式の番号は主因の情報を持っています。ここが空欄のまま納品されると、後の工法選定でもう一度データに戻ることになります。
第二に、測定方法を変えた年を記録しておくこと。σからIRIに切り替えた年、路面性状測定車から画像解析に切り替えた年は、MCIの連続性が切れる可能性のある地点です。切り替えの前後で同一区間を両方式で測っておくと、後で経年グラフを説明できます。
第三に、要領の3指標とMCIを両方持っておくこと。要領はひび割れ率・わだち掘れ量・IRIの3指標を基本としており、MCIを出していてもこの3つの生の値は求められます。逆に、生の値さえ残っていればMCIは後から計算できます。集約した指標だけを保存して、元の3つを捨てないことが、記録としては最も重要です。要領は「点検、診断、措置の結果を記録し、当該舗装が供用されている期間はこれを保存する。」としています。
調査の外注費用の考え方や、機器を使った点検の積算の勘所については橋梁点検の費用相場と内訳と新技術を使った橋梁点検の費用はどう決まるかが参考になります。路面性状測定車を走らせる場合は交通規制と安全費の扱いが費用に効いてくるので、あわせて点検の交通規制は誰が決めるのかも確認してください。複数年で維持管理をまとめて発注する方式は包括的民間委託とは?に整理しています。
よくある質問
MCIは舗装点検要領で義務づけられていますか?
義務ではありません。要領は「管理基準は、ひび割れ率、わだち掘れ量、IRIの3指標を使用することを基本とする」としたうえで、括弧書きで「3指標と合わせて、その他指標や、複合指標(MCIなど)を用いることは構わない」と書いています。MCIは併用可の例示という位置づけです。
MCIの4本の式は、どれを使えばよいのですか?
4本すべてを計算して、得られた値のうち最も小さい値を代表値とします。土木研究所の用語解説は「以下の式のうち、最小値をもってMCIとすることとしている。」としています。理由も明かされていて、同研究所の研究者による論文は「データの未整備や特定の路面特性値だけが著しく増加する舗装の存在を想定して」と書いています。
IRIしか測っていない場合、MCIは出せませんか?
3要素の式は使えませんが、ひび割れ率とわだち掘れ量があれば2要素の式でMCIを出せます。土木研究所の研究者による論文は「σが未測定の場合はMCIの代わりにMCI0を用いる.」としています。茨城県のマニュアルも「縦断凹凸を平たん性でなくIRI で測定する場合は、3 要素の式は使用しない。」と明記しています。
σからIRIへの換算式を使ってもよいですか?
参考値としてなら使えます。国土交通省道路局の総点検実施要領(案)【舗装編】は「σとIRIは異なる指標であるが、路面性状測定車を用いて従来の指標であるσを測定する或いはしている場合は、下図を参考にσからIRIへの換算をしてもよい。」として、相関式 IRI=1.33σ+0.24 を図示しています。ただしその図は「県道、市道レベルを対象としたσ-IRI相関結果例」であり、全国一律の公式換算式ではありません。
MCIと要領の診断区分Ⅰ〜Ⅲはどう対応しますか?
一対一で対応する換算表は要領にありません。要領の診断は「道路管理者が設定した管理基準に照らし」て行うもので、その管理基準にMCIを採用するかどうかも道路管理者の判断です。MCIの値を診断区分に読み替える基準を持っているのは、そのように定めた個々の道路管理者です。
舗装の診断区分は橋梁と同じⅠ〜Ⅳですか?
違います。舗装はⅠ(健全)・Ⅱ(表層機能保持段階)・Ⅲ(修繕段階)の3区分です。さらに区分Ⅲはこれ以降の措置がⅢ-1(表層等修繕)とⅢ-2(路盤打換等)に分かれますが、その分岐は損傷の大きさではなく、表層の供用年数が使用目標年数を超えているかどうかで決まります。
MCIの数字が同じなら、傷み方も同じと考えてよいですか?
いいえ。最小値を採る仕組みのため、同じ値でも決め手になった式が違えば主因が違います。式3(ひび割れ率のみ)で決まった区間と式4(わだち掘れ量のみ)で決まった区間は、疑うべき原因も採るべき工法も別になります。成果品では採用式まで確認してください。
管理水準はMCIいくつを目標にすればよいですか?
全国一律の値は要領にありません。土木研究所の研究者による論文は「5 以上であれば望ましい管理水準,4 以下であれば修繕が必要,3 以下であれば早急に修繕が必要」とし、日本道路協会の道路維持修繕要綱(1978年)を出どころとして挙げています。茨城県のようにパッチング実施区間の実績から管理限界(同県はMCI 2.0)を逆算し、そこから管理水準を設定している例もあります。