ひび割れ幅0.2mm・0.3mmという評価基準は、正確に測ってこそ意味を持ちます。しかし現場では、高所や狭隘部にあるひび割れを、どの道具でどう測るかで精度も工数も大きく変わります。近年は画像を使った計測も広がり、選択肢が増えたぶん、使い分けの判断が求められるようになりました。
本記事では、橋梁点検でのひび割れの測定方法を、クラックスケールなどの直接計測から画像計測まで整理し、それぞれの特徴と使い分け、測定位置の考え方を解説します。ひび割れ幅の評価基準そのものは関連記事で扱います。
- ひび割れ幅の直接計測にはクラックスケール(目盛付き定規)やクラックゲージが使われる
- 画像計測は、撮影した画像からひび割れ幅・長さを求める方法で、高所や広範囲に適する
- 測定は最大幅の位置を押さえることが重要で、位置・パターン・前回との比較を記録する
- 画像計測は近接目視の代替となり得るが、同等の評価が行えることが前提で、技術者の確認を伴う
測定の目的:何のために測るのか
ひび割れを測定する目的は、損傷程度の評価と、進行の把握です。ひび割れ幅は損傷程度a〜eの区分に用いられ、RC構造物では0.2mm・0.3mmが節目になります。また、前回点検からの幅や長さの変化を追うことで、進行性を評価できます。したがって測定は「今の値を正確に押さえる」ことと「前回と比較できる形で記録する」ことの両方が求められます。
直接計測:クラックスケールとクラックゲージ
最も基本的な方法が、クラックスケールやクラックゲージを用いた直接計測です。クラックスケールは、さまざまな幅の線が印刷された透明な定規状の器具で、ひび割れに当てて幅を読み取ります。クラックゲージも同様に、ひび割れ幅を目視で照合するための器具です。いずれも安価で扱いやすく、近接できる箇所では確実な方法ですが、高所や狭隘部では接近そのものが難しいという制約があります。
画像計測:撮影から幅を求める
画像計測は、デジタルカメラやUAV(ドローン)で撮影した画像から、ひび割れの幅や長さを求める方法です。撮影距離や解像度などの条件を管理することで、接近が難しい箇所でも損傷を把握できる利点があります。点検支援技術性能カタログには、こうした画像計測・AI解析による技術が、検出できるひび割れ幅などの性能値とともに掲載されています。ただし、カタログへの掲載は国の性能保証を意味するものではなく、適用条件の確認が前提になります。
測定方法の使い分け
近接できる箇所では確実かつ安価で、その場で幅を確定できます。一方、高所・広範囲・狭隘部では接近そのものが難しく、足場や高所作業車が必要になることがあります。
高所や広範囲を効率的に把握できますが、撮影距離・解像度・照明などの撮影条件が精度を左右します。近接目視の代替として用いる場合は、同等の評価が行えることと技術者の確認が前提になります。
実務では、どちらか一方に決めるのではなく、対象箇所の条件に応じて使い分けるのが現実的です。近接できる代表箇所は直接計測で確定し、接近が難しい範囲は画像計測で把握する、といった組合せが考えられます。
測定位置と記録のポイント
ひび割れ幅は、ひび割れの全長で一定ではありません。損傷程度の評価では最大幅に着目するため、どの位置で最大幅が生じているかを押さえることが重要です。記録にあたっては、最大幅の値だけでなく、その位置、ひび割れのパターン(方向・分岐・網状かどうか)、そして前回点検からの変化を残しておくと、進行性の評価に役立ちます。損傷図や写真台帳では、測定位置が後から分かる形で記録しておきましょう。
よくある質問
画像計測だけで点検を完結できますか?
画像計測は近接目視の代替となり得ますが、近接目視と同等の評価が行えることが前提で、最終的な判断は点検技術者・道路管理者が行います。対象や条件により直接計測との併用が現実的な場面も多くあります。
ひび割れ幅はどの位置で測るのが正しいですか?
損傷程度の評価では最大幅に着目します。ひび割れは全長で幅が変化するため、最大幅が生じている位置を押さえ、その値と位置を記録することが基本です。
クラックスケールとクラックゲージはどう違いますか?
いずれもひび割れ幅を目視で照合する器具です。クラックスケールは幅の異なる線が印刷された定規状のもの、クラックゲージも幅の照合に用いる器具で、現場では近接できる箇所での確実な計測に使われます。