この記事の要点
  • 様式その8は様式その2の評価の根拠を残す調書です。構成要素ではなく部材群ごとに作ります
  • 8-1=上部構造(径間毎・部材群毎)、8-2=下部構造と上下部接続部(橋全体で1つ)です
  • 下部構造は1基ずつ作る必要がありません。上下部接続部も1枚に集約してよいと明記されています
  • 部材群番号は様式その5から引き継ぎます。径間番号とは一致しません
  • 評価は活荷重・地震・豪雨出水・その他の4欄。該当しない状況は空欄ではなくNAです
  • ABCは対策区分のA〜Cとは別物。「地震」の評価にフェールセーフを考慮してはならない
  • 必要性を「有」にしたら、その内容と理由を所見に書くのが要領の求めです

令和6年の改定で、橋梁の定期点検の調書は「損傷を並べる帳票」から「性能の評価とその根拠を残す帳票」に変わりました。その根拠を受け持っているのが点検記録様式(その8-1,8-2)部材群毎の性能の評価結果です。

この様式は、様式その9-1・9-2・その10が「これに準拠する」と名指しされている基準の様式でもあります。ここの書き方が決まらないと、その他構造の様式も決まりません。

この記事では、国土交通省 道路局 国道・技術課「橋梁定期点検要領」(令和6年7月)を原文で読み、8-1と8-2の分かれ目、作る枚数、14項目の記入要領を整理します。調書全体の組み立ては橋梁点検調書の構成と書き方、ABCという評価そのものの考え方は「性能の見立て(A〜C)」とは?で扱っています。

様式その8は「様式その2の根拠」として置かれている

要領は、この様式の役目を冒頭の1文で定義しています。

「本様式は,点検記録様式(その2)に記載する上部構造,下部構造,上下部接続部の各構成要素の性能の評価の根拠となる部材群毎の性能の評価の結果を記録するものである。」

読み落としやすいのは粒度が2段あることです。様式その2に書くのは構成要素(上部構造・下部構造・上下部接続部)の評価で、様式その8に書くのはその内側の部材群の評価です。構成要素に求められる機能そのものの整理は構成要素に求められる7つの機能とAからCの決め方にまとめています。

したがって作業の順序は、様式その5で部材群を区分する → 様式その8で部材群ごとに評価する → その結果を様式その2の構成要素の評価に上げる、になります。様式その8を飛ばして様式その2だけ埋めると、評価の根拠が調書のどこにも残りません。

8-1と8-2の分かれ目と、作る枚数

2つの様式の使い分けは、対象にする構成要素で決まります。

「上部構造については点検記録様式(その8-1)を,下部構造及び上下部接続部については点検記録様式(その8-2)を用いて記録する。」

枚数の考え方は、上部構造とそれ以外で違います。

「上部構造は,径間毎,部材群毎に作成する。上下部接続部及び下部構造は,径間別でなく橋全体で一つの部材群として作成することを基本とする。」

ここに続けて、要領は実務でいちばん効く2つの但し書きを置いています。

「例えば,下部構造1基ずつの調書とする必要はない。」

「また,上下部接続部は一般に2つのシステムからなるが,一般に同じ部材が2つのシステムの役割を果たすことから1枚の調書に集約してよい。」

橋脚が5基あっても様式その8-2を5枚作るわけではありません。上下部接続部も、支点反力支持システムと位置保持システムで2枚に割らず1枚にまとめてかまいません。枚数が増えるのは上部構造だけで、こちらは径間数×部材群数になります。調書作成の工数がどこで膨らむかは点検調書作成の工数を減らす方法でも扱っています。

なお、8-1と8-2は用紙の列も少し違います。8-1が「写真番号/部材名/要素番号」であるのに対し、8-2は「写真番号/部材名/径間番号・要素番号」で、径間番号の欄が写真側に入ります。下部構造は橋全体で1枚にまとめるため、どの径間の写真なのかを写真側で示す作りです。要領も径間番号について「下部構造,上下部接続部は,径間別でなく橋全体で一つの部材群として作成することを基本とするが,記録写真の情報として径間番号を記入する。」としています。

先頭4項目は様式その5から引き継ぐ

様式の左上に並ぶ「構成要素名」「力学的な機能を担う部材群名」「部材群番号」「属するシステム」は、いずれも様式その8で新しく決めるものではありません。記入要領はこう書いています。

「「力学的な機能を担う部材群名」:点検記録様式(その5)にて整理した,同じ役割や機能を担っている部材をグルーピングした部材群名。」

「「部材群番号」:部材群毎に付与した番号。」「「属するシステム名」:部材群が属するシステム名(第2章4.2参照)。」

そして様式その5の記入要領には、番号の付け方で間違えやすい点が名指しで注意されています

「上下部接続部や下部構造などの部材群番号は,単径間(もしくは多径間の1径間目)であっても「02」まで付番されるため,径間番号と部材群番号が必ずしも一致するものではないことに留意すること。」

単径間の橋で「1径間だから部材群番号も01のはず」と考えると合いません。様式その5の付番例は、1径間目が「床版・床組部材群01,主桁・主構部材群01,立体機能保持部材群01」、2径間目が「同02」と、システムごとに独立して増えていく作りです。様式その8の「部材群番号」は、この番号をそのまま写します。

システムの区分(ⅰ〜ⅶ)そのものは第2章4.2に定義があり、上部構造が床版・床組/主桁・主構/立体機能保持、上下部接続部が支点反力支持/位置保持/支点位置保持、下部構造が地表面位置保持です。

写真・部材名・要素番号・損傷の種類

写真については、記入要領が撮り方まで踏み込んでいます。

「写真の記録にあたっては,原因の推定に重要な情報として表面の様子がより詳細に把握できることが望ましいので,塗膜のふくれや割れや剥がれ方,ひびわれや亀裂の凹凸や連続性,錆びの深さ 位置関係などが分かるように,画角や撮影方向,撮影範囲などを工夫する。接合部や埋め込み部でも画角を工夫することが必要である。」

これは損傷の有無が分かる写真では足りないということです。剥がれ方・連続性・錆の深さという言葉が並んでいるとおり、求められているのは原因の推定に使える写真です。枚数の制約もなく、「なお,一つの所見に対して必要に応じて複数枚の写真を添付してもよい。」とされています。写真の整理の実務は損傷写真台帳の作り方に、根拠としての写真の考え方は技術的な評価の根拠を写真で残すにまとめています。

残りの3項目は、いずれも他の様式・表への参照で定義されています。

  • 写真番号:「写真と対応した番号(1から順に記入。写真は横方向に順に貼付する。)」+「点検記録様式(その1)の写真番号にリンクするものとする。」
  • 部材名:「主桁,床版などの部材名(付表-1.2「各部材の名称と記号」参照)。」
  • 要素番号:「対象部材の番号(0205 等;「点検記録様式(その6)」参照)。」
  • 損傷の種類「損傷の種類を第2章表-4.1.1に示す26種類から選択し記録する。」

要素番号の4桁は「前2桁が橋軸方向の並び(行)を示し,後2桁が橋軸直角方向の並び(列)を示す」構造で、付け方は要素番号の付け方に、26種類の一覧は橋梁の損傷26種類一覧にまとめています。損傷の種類は自由記述ではなく26種類からの選択です。

ABCとNA:対策区分のA〜Cとは別物

様式の右側の大きな枠が「想定する状況における部材群の状態の技術的な評価」です。欄は「活荷重」「地震」「豪雨・出水」「その他」の4つで、記入要領はこう定めています。

「「その他」は,道路橋の構造条件等によって「活荷重」「地震」「豪雨・出水」以外で,例えば台風等の暴風などの被災可能性があるような状況を想定することが必要と考えられる場合に,それらの状況について記入し,必要に応じて欄を追加する。」

記号の定義は第2章5.2.2(1)を経由して5.2.1(3)に戻ります。

A:何らかの変状が生じる可能性は低い

B:致命的な状態となる可能性は低いものの何らかの変状が生じる可能性がある

C:致命的な状態となる可能性がある

そして該当しない状況の扱いが明記されています。

「想定する状況(活荷重,地震,豪雨・出水)がそもそも想定されない架橋条件や地理的条件の場合は,「NA」を記載する。」

河川を渡らない跨道橋で「豪雨・出水」を空欄にするのではなく、NAと書いて「評価していない」ではなく「想定されない」ことを示すのがこの様式の作法です。

もう1つ、記号が同じであるために起きやすい取り違えにも、要領は正面から釘を刺しています。

「「想定する状況に対してどのような状態になる可能性があるのか」の概略評価であるABCの評価結果は,このように,従来同じ記号を用いていた対策区分の判定とは異なり,橋に対する対策の必要性を区分するものではないので留意する必要がある。」

対策区分のA〜C(対策区分一覧と判定の考え方)は「措置が要るか」の区分、様式その8のABCは「どうなる可能性があるか」の見立てです。同じ橋の同じ部材で、対策区分がBでも様式その8がAになることはあり得ます。

「地震」の欄には、もう1つ制約があります。

「なお,「地震」の影響に対する状態の技術的な評価にあたっては,フェールセーフの機能を考慮してはならない。」

落橋防止装置があるから地震時も大丈夫、という評価はできません。フェールセーフは別に様式その9-1で評価します(フェールセーフと伸縮装置の評価)。

特定事象等の有無と、対応や調査の必要性

ABCの下に2段の欄が続きます。1段目が「特定事象等の有無(有もしくは無)」で、用紙には疲労/塩害/アルカリ骨材反応/防食機能の低下/洗掘/伸縮装置からの漏水の影響/その他が並びます。

要領の第2章5.4が挙げている「主な特定事象の例」は、1)疲労 2)塩害 3)アルカリ骨材反応(ASR) 4)防食機能の低下 5)洗掘 6)その他の6項目です。用紙にある「伸縮装置からの漏水の影響」は、この表-5.4.1の列挙には含まれていません。要領は5.4(2)で「その他,確認された変状について,当該部材等の耐久性能に影響を与えたり,周辺部材の耐久性能に影響を特に与える観点で特筆すべき事象の有無を評価する。」としており、記入要領も「その他,予防保全の観点で記録しておくべき事象があれば,具体の事象名を記入する。」としています。特定事象の考え方そのものは点検要領の「特定事象」とは?にまとめています。

2段目が「対応や調査の必要性」です。用紙は緊急対応の必要性(E)/維持工事等対応の必要性(M)/調査の必要性=詳細調査(S1)・追跡調査(S2)の4つを、それぞれ「有もしくは無」で書かせます。

「維持工事等での対応や詳細調査や追跡調査等の必要性の「有・無」を記入する。各区分(E,M,S1,S2)の基本的な考え方は,第2章6.2から6.4によるものとする。なお,必要性があると判定し「有」を記録した場合は,その内容と理由を,「所見」の欄に記載するとよい。」

つまり「有」に丸を付けただけで終わらせないのがこの様式の作りです。Mの実務はM判定とは?維持工事等での対応と引き継ぎの記録、S1とS2の使い分けは橋梁点検の詳細調査とは?判定S1・S2の使い分けで扱っています。

所見に書く6つの観点

所見欄は自由記述ですが、書くべき観点が列挙されています。

「状態の把握から得られた技術的な評価結果の理由や予防保全の観点からの損傷等の変状の状態などの特筆すべき事項や補足すべき事項を自由記述で記録する。」

続く留意点は6つです。

  1. 性能の見立ての根拠となる把握した状態の詳細な事項
  2. 該当する特定事象の状態も勘案した、予防保全の必要性や長寿命化の実現などの観点から経年的劣化に対する評価
  3. 橋梁利用者への影響や第三者被害の発生等の可能性
  4. 措置の緊急性の有無
  5. 状態の把握により得た情報の精度に基づく性能の見立ての見込み違いの可能性など、詳細調査や追跡調査の必要性の有無
  6. その他、措置や次回定期点検に向けて必要に応じて記録しておくのがよい事項

5つ目は「情報の精度」に触れている点で他と性格が違います。近接目視ができなかった部位があれば、その制約が見立てに与える影響をここに書く、という趣旨です。状態把握の方法を記録する様式その7(点検記録様式(その7)とは?)と対になっています。

書き方そのものは、外部の手引きを参照するよう指示されています。

「記入にあたっては,以下に留意するとともに,所見欄への記入にあたっては,「道路橋定期点検要領(技術的助言の解説・運用標準)」様式3の記録の手引き「4.所見」を参照する。」

直轄の要領が、自治体向けの技術的助言側の手引きを参照先に指定している形です。2つの要領の関係は橋梁定期点検要領(令和6年7月・直轄)とは?にまとめています。

もう1点、文章と写真だけでは足りないときの逃がし方も定められています。

「損傷写真だけでは部材等の状態を俯瞰して把握しにくく記号や文章では伝わりにくい質的な情報の記録が必要な場合に,スケッチとして補足し,記録する。その場合の記録は,データ記録様式(その3-1)損傷図に追記し,情報を追記した橋梁診断員名もあわせて記載する。」

スケッチは様式その8の中ではなく損傷図の側に追記し、追記した橋梁診断員の名前を残す点が要点です。損傷図の作図ルールは損傷図(その5)の書き方と作図ルール、橋梁診断員という役割の線引きは橋梁診断員とは?で扱っています。

様式その9-1・9-2・その10はこの様式に準拠する

様式その8を先に固める理由は、後続の3様式がこれを基準にしているからです。要領は3か所とも同じ言い回しで指定しています。

様式その9-1(フェールセーフ):「記載方法については,下記のほかは,点検記録様式(その8-1,8-2)に準拠するものとする。」

様式その9-2(伸縮装置):「記載方法については,下記のほかは,点検記録様式(その8-1,8-2)に準拠するものとする。」

様式その10(フェールセーフ・伸縮装置以外のその他構造):「記載方法については,点検記録様式(その8-1,8-2)に準拠するものとする。」

差分は小さく、9-1は構成要素名に「フェールセーフ」と書いて「地震」の欄で評価すること、9-2は構成要素名に「伸縮装置」と書いて「活荷重」に対する走行性の確保の観点で評価すること、の2点が本体です。様式その8の書き方を1つ決めれば、その他構造の様式は差分だけ追えば済みます。

健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)はこれらの評価を受けて道路管理者が決めるもので、様式その8はその前段にあたります(健全性の診断(判定区分Ⅰ〜Ⅳ)とは?)。令和6年改定で何が変わったかの全体像は【令和6年3月改定】道路橋定期点検要領の変更点まとめにまとめています。

よくある質問

Q. 様式その8-1と8-2は何が違いますか。
A. 対象にする構成要素が違います。要領は「上部構造については点検記録様式(その8-1)を,下部構造及び上下部接続部については点検記録様式(その8-2)を用いて記録する。」としています。様式の用紙も、8-1は「写真番号/部材名/要素番号」、8-2は「写真番号/部材名/径間番号・要素番号」と列が少し違います。

Q. 1つの橋で様式その8は何枚になりますか。
A. 上部構造は径間毎・部材群毎に作るので、径間数×部材群数の枚数になります。下部構造と上下部接続部は「径間別でなく橋全体で一つの部材群として作成することを基本とする」とされ、要領は「例えば,下部構造1基ずつの調書とする必要はない。」と明記しています。上下部接続部も「一般に2つのシステムからなるが,一般に同じ部材が2つのシステムの役割を果たすことから1枚の調書に集約してよい。」とされています。

Q. 部材群番号は径間番号と同じ数字になりますか。
A. なりません。要領は「上下部接続部や下部構造などの部材群番号は,単径間(もしくは多径間の1径間目)であっても「02」まで付番されるため,径間番号と部材群番号が必ずしも一致するものではないことに留意すること。」と注意を置いています。部材群番号は様式その5で付けた番号をそのまま引き継ぎます。

Q. ABCは対策区分のA〜Cと同じものですか。
A. 違います。要領は「「想定する状況に対してどのような状態になる可能性があるのか」の概略評価であるABCの評価結果は,このように,従来同じ記号を用いていた対策区分の判定とは異なり,橋に対する対策の必要性を区分するものではないので留意する必要がある。」としています。記号が同じでも意味が別です。

Q. 想定する状況が成り立たない橋では何と書きますか。
A. NAです。要領は「想定する状況(活荷重,地震,豪雨・出水)がそもそも想定されない架橋条件や地理的条件の場合は,「NA」を記載する。」としています。空欄やハイフンではありません。

Q. 「地震」の評価で、落橋防止装置があることを考慮してよいですか。
A. 考慮できません。要領は「なお,「地震」の影響に対する状態の技術的な評価にあたっては,フェールセーフの機能を考慮してはならない。」としています。フェールセーフそのものの評価は、別に点検記録様式(その9-1)で行います。

出典・適用範囲

本文の版・記述・引用を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。引用の読点・句点は資料の表記に合わせています。

  • 国土交通省 道路局 国道・技術課「橋梁定期点検要領」(令和6年7月) — 参照箇所:第2章 5.2.1(3)(ABCの定義・対策区分との違い・フェールセーフを考慮しない旨、p.40〜41)/第2章 5.2.2(部材群の耐荷性能の推定、p.41〜42)/第2章 5.3(伸縮装置及びフェールセーフの性能の推定、p.43)/第2章 5.4 および表-5.4.1(特定事象等の有無の評価、p.44)/点検記録様式への記入方法 5)点検記録様式(その5)・6)点検記録様式(その6)・8)点検記録様式(その8-1,8-2)p.15〜16・9)点検記録様式(その9-1)p.17・10)点検記録様式(その9-2)p.18・11)点検記録様式(その10)p.18/様式その8-1・その8-2の用紙。
  • 国土交通省 道路局「道路の老朽化対策」 — 各要領の掲載ページ。

原典リンク確認:2026年9月23日。本記事は「橋梁定期点検要領」(令和6年7月)=国土交通省および内閣府沖縄総合事務局が管理する道路の橋梁に適用される要領の、点検記録様式の記入方法を確認するための実務解説です。地方公共団体が管理する道路橋については、技術的助言としての「道路橋定期点検要領」および各管理者のマニュアルが適用され、様式体系が異なります。要領は改定されることがあるため、その時点の最新版をご確認ください。