この記事の要点
  • 様式2は独立した評価の様式ではなく、様式1の「⑲技術的な評価結果」の根拠としての記録です。運用の手引きにそう明記されています
  • 記入欄は11項目。そのうち①施設ID/②定期点検実施年月日/③定期点検者/④構成要素/⑤想定する状況/⑥構成要素の状態の6つは、様式1からの転記です
  • ⑥構成要素の状態は「対応する様式1の技術的な評価結果を転記する」と書かれています。様式2で評価をやり直す欄ではありません
  • ⑦写真は、様式1の「各評価に対応して」付けます。橋全体で数枚ではなく、A・B・Cを付けた評価の単位ごとに根拠を示す考え方です
  • ⑪備考には、機能の低下の有無や喪失の可能性を書きます。「その他」に区分される部材はこれによらず、考慮した技術的な観点が分かるように記録します
  • 備考に付記が望ましいとされているのは3点。抜粋なのかどうか/写真だけで判読できない場合の補足/その要素の評価に大きく影響した他の部材等の情報
  • 写真そのものの要件は付録-4にあります。全景でも300万画素以上が望ましい、対象にできるだけ正対、スケールを添える、黒板を同時撮影

健全性の診断の区分を決めた根拠を、後から誰かに説明できるか。次の点検で別の技術者が引き継いだとき、前回なぜBと評価したのかが分かるか。令和6年3月の改定で記録様式が変わり、この「根拠を残す」ための受け皿として用意されたのが様式2です。

ところが様式2は、様式1や様式3にくらべて実務での扱いが定まりにくい様式でもあります。写真台帳と何が違うのか、どの単位で1枚に収めるのか、備考に何を書けばよいのか。この記事では「『道路橋定期点検要領(令和6年3月)』運用の手引き」(2025年4月)のⅠ-4.2と付録-4を原文で読み、様式2の11項目が何を求めているかを順に整理します。様式1の基本情報欄については様式1の基本情報の書き方、所見欄を持つ様式3については様式3の書き方で別に扱っています。

様式2は「根拠としての記録」と定義されている

令和6年改定の記録様式は3枚構成です。手引きは記録様式の構成をこう説明しています。令和6年改定以前は、施設単位で決まる健全性の診断の区分(Ⅰ〜Ⅳ)に準じて、構造部分それぞれにⅠ〜Ⅳのどれに当たるかを記録する方法が示されていました。しかし告示の区分は本来、施設単位の取り扱いの考え方を示すものであり、部材や構造単位でそれぞれ独立して決まるものではありません。そのため改定後の様式では、「構造区分別の性能の見立て(主に耐荷性能の観点)」「特定事象の該当の有無及びそれに対する留意事項等(主に耐久性の観点)」という2つの観点からの評価を記録する形に改められました。

この前者にあたるのが様式1の⑲技術的な評価結果で、様式2はその裏付けです。手引きは様式2の⑥構成要素の状態についてこう書いています。

「様式1の『⑲技術的な評価結果』の根拠としての記録であり、対応する様式1の技術的な評価結果を転記する。」(運用の手引き Ⅰ-4.2 ⑥)

つまり様式2は、様式1で付けたA・B・Cの判断がどの現地の状態に基づいていたのかを、写真と補足で固定する様式です。区分そのものの考え方は健全性の判定区分、構造区分別の見立ての位置づけは性能の見立て(A〜C)にまとめています。

改定前後の様式の違いは、成果品の受け取り側にも影響します。旧様式で作られた調書をそのまま新しいデータベースへ登録できないという論点は道路橋記録様式(令和6年3月)で整理しています。

①〜⑥は様式1からの転記

様式2の記入欄11項目のうち、最初の6つは様式1の該当欄と同じ内容を書きます。手引きは1項目ずつ「様式1の○○に同じ」と指定しています。

様式2の欄手引きの指定内容
①施設ID様式1の⑤に同じ緯度経度から付与される全国共通のID
②定期点検実施年月日様式1の⑰に同じ知識と技能を有する者による状態把握が行われた末日
③定期点検者様式1の⑱に同じ「知識と技能を有する者」に該当する者の所属と氏名
④構成要素様式1の「⑲-1」に同じ上部構造・下部構造・上下部接続部などの評価単位
⑤想定する状況様式1の「⑲-2」に同じ「活荷重」「地震」「豪雨・出水」「その他」
⑥構成要素の状態様式1の「⑲-3」に同じ(技術的な評価結果を転記)表4.8のA・B・C、想定されない条件は「-」

⑥で転記するA・B・Cの定義は、手引きの表4.8に示されています。Aは「何らかの変状が生じる可能性は低い」、Bは「致命的な状態となる可能性は低いものの何らかの変状が生じる可能性がある」、Cは「致命的な状態となる可能性がある」です。ここでいう変状は、道路機能に支障が生じるかどうかの観点から、構成要素それぞれに求められる状態が満足されるかどうかという意味だと注記されています。A・B・Cの決め方そのものは構成要素に求められる7つの機能とA〜Cの決め方で扱いました。

⑤想定する状況は4つです。「活荷重」は日常的に生じる程度を超える重量の車両が複数台同時に載る、あるいは過大な軸重が載荷される状況。「地震」は一般に道路管理者が緊急点検を行う程度以上の、規模が大きく稀にしか生じない地震の影響を受ける状況。「豪雨・出水」は洪水が発生して橋の条件によっては被災の可能性があるような状況です。手引きは「それぞれ起こりえないとは言えないまでも通常の供用ではまれにしか生じないと考えられる程度のもの」を想定すればよいとしています。

転記が6欄もあるということは、様式2だけを見ても評価の文脈が読めるようにしてあるということでもあります。写真の束だけが切り離されて残る事態を避ける構成です。

⑦写真:評価1つに対して根拠1つ

様式2の中心は⑦の写真欄です。手引きの指定はこうです。

「様式1の『⑲技術的な評価結果』の各評価に対応して、根拠となったことができるだけ確認できるよう、点検時点の状態の写真を添付する。」(運用の手引き Ⅰ-4.2 ⑦)

読み取れるのは3点です。

  • 対応づける単位は「各評価」。構成要素×想定する状況の組み合わせごとに付けた評価が単位になる
  • 写真が示すべきは「根拠となったこと」。損傷そのものの記録ではなく、その評価に至った理由が確認できること
  • 時点は「点検時点の状態」。過去の写真や補修前の写真で代えられない

手引きは続けて、補足の置き場所も指定しています。構成要素の役割に対して技術的な観点からどのように評価したのかといった補足が有効な場合には「⑪備考」に付記すること。そして、記録に反映した写真以外に根拠を明確にするうえで必要な資料等の情報がある場合には、それらが特定できる情報も付記することです。

後者は実務上の逃げ道になります。詳細調査の報告書、過去の補修履歴、設計図書といった様式に貼りきれない資料は、様式2に全部を綴じ込むのではなく、どこにあるかが特定できる情報を備考に書けばよい、という整理です。詳細調査の位置づけは橋梁点検の詳細調査にまとめています。

⑧⑨⑩ 写真番号・径間・部材番号で位置を特定する

写真に添える3つの欄は、どれも「その写真がどこの話か」を特定するためのものです。

手引きの指定
⑧写真番号写真番号や部材番号がある場合は記入する
⑨径間記録対象の構成要素の径間番号を記入する
⑩部材番号記録対象に部材番号が付されている場合には、それを記入する

⑨径間だけは「記入する」と無条件で、⑧と⑩は「ある場合」という条件付きです。部材番号の付け方には要領側のルールがあり、要素番号は起点側から振ります。この体系は要素番号の付け方で詳しく扱いました。

なお様式1の⑲-4にも写真番号の欄があり、そこには「該当する様式2の写真番号(〇〇)を記入する」と指定されています。様式1と様式2は写真番号で相互に参照する設計です。番号の採番を現場ごとにばらばらに決めると、この参照が機能しなくなります。

⑪備考に書くのは「機能が保てるかどうか」

備考欄は自由記述に見えますが、手引きは何を書くかをかなり具体的に指定しています。

「必要に応じて、構成要素の役割に対して技術的な観点からどのように評価したのか等の補足を記入する。例えば、『表4.7 構成要素に求められる機能について』を参考に、構成要素の機能が保持される可能性が高いかどうか、機能を喪失する可能性が高いかどうか、そのいずれでもない状態かなど、技術的な評価の根拠となる、機能の低下の有無や喪失の可能性などを記載する。」(運用の手引き Ⅰ-4.2 ⑪)

ここで求められているのは損傷の描写ではありません。その損傷によって、その部材が担っている機能が保てるのかどうかという一段上の記述です。表4.7には、上部構造の3機能、上下部接続部の2機能、下部構造の2機能の計7つが挙げられており、たとえば床版や縦桁は「通行車などによる路面に作用する荷重を直接的に支持する機能」、主桁や主構は「上部構造へ作用する鉛直及び水平方向の荷重を支持し、上下部接続部まで伝達する機能」を担う場合が多いと例示されています。備考は、その機能に照らして状態を言葉にする欄です。

ただし例外があります。手引きは「『その他』に区分される部材等について記録する場合はこれによらず、考慮した技術的な観点がわかるように記録する」としています。表4.7の7機能に当てはめにくいものは、無理に当てはめずに、何を見て判断したのかが分かるように書く、という指示です。

そのうえで、記録が正しく理解されるために必要に応じて付記することが望ましい事項として、3つが挙げられています。

  • 当該記録が抜粋なのかどうか
  • 写真だけで状態が正確に判読できない可能性がある場合の補足説明
  • 当該要素の評価に大きく影響した、他の部材等についての情報

1つ目は実務で効きます。確認した箇所すべてを様式2に載せているのか、代表的な数枚を抜粋したのかで、記録の読み方は変わります。抜粋である旨が書かれていなければ、次の点検者は「これで全部だ」と受け取る可能性があります。3つ目も同様で、支承部の状態が主桁の評価を左右したというような関係は、写真を並べただけでは伝わりません。所見欄で使う用語の整理は所見の用語10種にまとめています。

写真そのものの要件は付録-4にある

様式2に貼る写真がどうあるべきかは、Ⅰ章ではなく付録-4「損傷写真の記録方法の例」に書かれています。手引きはその冒頭で、写真を重視する理由を述べています。記号や描画、文章による記述では性状や色、正確な位置関係の情報が伝達できないため、写真は将来の対比など維持管理上きわめて重要な情報になる。一方で、箇所が特定できなかったり、意図せず現状が適切に表現されていない写真記録は誤った判断に繋がるなどの問題を生じさせかねない、という書き方です。

示されている基本的事項と留意点は次のとおりです。

項目手引きの内容
解像度着目している損傷の状態がわかる解像度を確保する。全景であっても、少なくとも撮影画素数300万画素以上が望ましい。個別の損傷は、着目している状態(位置・寸法、色など)を表現できているか都度確認する
アングル撮影する際は、対象にできるだけ正対する。プログラムで画角補正が行われる場合、解像度や再現性に注意する
ピントピント外れがないように注意する。単焦点となる場合、着目箇所で必要な鮮明さで撮影できているか注意する
自動補正色調補正、スムージングなどにより実際と異なる表現で記録されることがある。損傷記録としての再現性を都度確認する。必要に応じてRAWデータを残しておくのがよい
撮影条件デジタルズーム機能では解像度が必要以上に低下する場合がある。ストロボ撮影や高速度撮影でも解像度が低下することがある
色調できるだけ実際の色調が再現できるよう設定する。逆光、暗所、照明方法・種類、ストロボの条件は色調に大きく影響する
写真番号箇所や対象が特定できるよう工夫する。番号の若い径間から1から順に番号を付与し、全径間で唯一の番号とするなどの工夫を行うのがよい
スケールスケールが判るようなものを添えておくことが望ましい。必要に応じて寸法がわかるように同時に撮影する
黒板黒板などを同時撮影することで、撮影位置や方向の特定および事後の改ざんや照合間違いが生じないよう工夫する。ただし黒板の影響で対象の表現に影響がないこと(遮蔽、陰影、色調異常、反射等による判読困難)を都度確認する

黒板に記入する一般的な項目の例として挙げられているのは、写真番号/橋梁名/部材名/部材番号/損傷の種類の5つです。⑧⑨⑩で様式に書く情報と重なっており、黒板が写っていれば様式側の記入と照合できる関係になっています。

自動補正への注意は、機材が新しいほど当てはまります。撮って出しの画像が見やすく整えられていること自体が、損傷記録としては再現性を損なう方向に働くことがあります。ひび割れの幅を写真から読む場合の考え方はひび割れの測定方法で扱いました。

損傷写真台帳とは目的が違う

様式2と損傷写真台帳は、どちらも写真を並べたものですが、答えている問いが違います。

様式2損傷写真台帳
位置づけ定期点検要領の付録様式道路管理者がそれぞれ必要に応じて行う記録
答える問いこの評価の根拠は何かどこにどんな損傷があるか
単位構成要素×想定する状況の評価ごと損傷の箇所ごと
網羅性抜粋でよい(抜粋である旨を備考に付記)できるだけ網羅的に残すことが望ましい

手引きは、事実関係の記録を残すこと自体については「法定点検の適切な実施を義務づけるものとは異なり、道路管理者それぞれが必要に応じて行えばよい」という考え方から、方法などが法令や技術基準で規定されておらず全国で統一的な様式も定められていない、と説明しています。そのうえで、点検時に把握される情報を全国共通の方法でデータ化して蓄積することは将来の道路アセットマネジメントのために有意義であるとして、別途「基礎データ収集要領(道路橋) 令和6年版」が道路管理者宛に情報提供されているとしています。損傷そのものを15種類の評価区分で記録する仕組みは基礎データ収集要領にまとめました。

整理すると、損傷を網羅的に拾うのが基礎データ収集要領と写真台帳、その中から評価の根拠になった分を抜き出して文脈ごと固定するのが様式2という関係です。台帳の作り方そのものは損傷写真台帳の作り方、見えなかった箇所の記録は点検記録様式(その7)、調書全体の構成は橋梁点検調書の構成と書き方で扱っています。

よくある質問

Q. 様式2は様式1とは別に評価をやり直す様式ですか。
A. 違います。手引きは⑥構成要素の状態について「様式1の『⑲技術的な評価結果』の根拠としての記録であり、対応する様式1の技術的な評価結果を転記する」と書いています。①〜⑥は様式1からの転記です。

Q. 写真は何枚単位で付けますか。
A. 手引きは「様式1の『⑲技術的な評価結果』の各評価に対応して」添付するとしています。橋全体で数枚ではなく、構成要素と想定する状況の組み合わせごとに付けた評価が単位になります。

Q. 備考欄には損傷の説明を書けばよいですか。
A. 手引きが求めているのは、表4.7の機能に照らして「機能が保持される可能性が高いかどうか、機能を喪失する可能性が高いかどうか、そのいずれでもない状態か」といった機能の低下の有無や喪失の可能性です。「その他」に区分される部材はこれによらず、考慮した技術的な観点が分かるように記録します。

Q. 確認した箇所の一部だけを載せてもよいですか。
A. 手引きは、記録が正しく理解されるために必要に応じて付記することが望ましい事項として「当該記録が抜粋なのかどうか」を挙げています。抜粋であること自体は否定されていませんが、抜粋である旨を備考に書くことが想定されています。

Q. 写真の画素数に決まりはありますか。
A. 付録-4に「全景であっても、少なくとも撮影画素数300万画素以上が望ましい」とあります。個別の損傷については、着目している位置・寸法・色などが表現できているかを都度確認して必要な解像度を確保するのがよい、とされています。

Q. 写真番号はどう付ければよいですか。
A. 付録-4は「番号の若い径間から、1から順に番号を付与し、全径間で唯一の番号とするなどの工夫を行うのがよい」としています。様式1の⑲-4には「該当する様式2の写真番号(〇〇)を記入する」とあり、様式間の参照に使われます。

出典・適用範囲

本文の版・記述・数値を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。

原典リンク確認:2026年9月17日。本記事は記録様式の記入方法を確認するための実務解説で、個別の点検結果の妥当性や健全性の診断の区分を判断するものではありません。様式および記入要領は改定されることがあります。記入にあたっては、その時点の最新版と各道路管理者の運用・登録要領をご確認ください。