道路トンネルや橋梁の定期点検の結果は、最終的に「健全性の診断」としてⅠ〜Ⅳの4区分に分類されます。この4区分の分類を定めているのが、「トンネル等の健全性の診断結果の分類に関する告示」(平成26年国土交通省告示第426号)です。
本記事では、この告示の位置づけ(省令との関係)、対象となる「トンネル等」の範囲、そしてⅠ〜Ⅳそれぞれの定義と実務上の考え方を、道路法施行規則と道路トンネル定期点検要領(令和6年9月)に基づいて整理します。
- 告示第426号は、道路法施行規則に基づく健全性の診断結果を4区分(Ⅰ〜Ⅳ)に分類する全国共通の基準
- 対象の「トンネル等」はトンネルだけでなく、橋その他道路を構成する施設・工作物・道路附属物を含む
- Ⅰ健全/Ⅱ予防保全段階/Ⅲ早期措置段階/Ⅳ緊急措置段階の4区分で、措置の必要性と緊急度を表す
- トンネルの健全性の診断は「道路トンネル毎」に区分を決定する(現行要領は令和6年9月版)
告示の位置づけ:省令とセットで機能する
定期点検の法的な枠組みは、道路法施行規則(省令)と告示のセットで構成されています。道路法施行規則第4条の5の5は、道路の維持・修繕に関する技術的基準として、次の3点を定めています。
- 点検:トンネル等の点検を適正に行うために必要な知識及び技能を有する者が、近接目視により、5年に1回の頻度で行うことを基本とする
- 診断:点検を行ったときは健全性の診断を行い、その結果を国土交通大臣が定めるところにより分類する
- 記録:点検・診断の結果と措置の内容を記録し、当該トンネル等が利用されている期間中は保存する
このうち「国土交通大臣が定めるところ」に当たるのが告示第426号です。つまり省令が「診断して分類せよ」と義務づけ、告示が「その分類はⅠ〜Ⅳの4区分」と定める関係にあります。全国のどの道路管理者(国・高速道路会社・都道府県・市区町村)でも、法定点検の最終的な診断結果はこの共通の4区分に分類されます。
対象となる「トンネル等」の範囲
名称に「トンネル等」とあるため、トンネルだけが対象と誤解されがちですが、施行規則第4条の5の5は対象を次のように定義しています。
「トンネル、橋その他道路を構成する施設若しくは工作物又は道路の附属物のうち、損傷、腐食その他の劣化その他の異状が生じた場合に道路の構造又は交通に大きな支障を及ぼすおそれがあるもの」
つまり橋梁の健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)も、この同じ告示に基づいています。橋梁・トンネル・シェッドや大型カルバートなどの道路附属物等が、共通の枠組みで診断・分類される仕組みです。検索などで「トンネル等の告示」に行き当たった橋梁点検の実務者の方も、参照すべき告示はこれで合っています。
健全性の診断の区分Ⅰ〜Ⅳの定義
告示の定義に従った健全性の診断の区分は次のとおりです(表の文言は道路トンネル定期点検要領(令和6年9月)表-6.1のトンネル向け表記。橋梁では「道路トンネル」が「道路橋」に読み替わります)。
| 区分 | 名称 | 定義 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 健全 | 道路トンネルの機能に支障が生じていない状態。 |
| Ⅱ | 予防保全段階 | 道路トンネルの機能に支障が生じていないが、予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態。 |
| Ⅲ | 早期措置段階 | 道路トンネルの機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態。 |
| Ⅳ | 緊急措置段階 | 道路トンネルの機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態。 |
ポイントは、Ⅰ〜Ⅳが損傷の「見た目のひどさ」ではなく、機能への支障と措置の必要性・緊急度を表す区分だということです。同じような変状でも、構造や交通条件によって区分は変わり得ます。
Ⅰ〜Ⅳ区分の実務上の考え方
道路トンネル定期点検要領(令和6年9月)の解説では、Ⅰ〜Ⅳに分類する場合の措置の基本的な考え方が次のように整理されています。
- Ⅰ:次回定期点検までの間、予定される維持行為は必要だが、特段の監視や対策を行う必要のない状態
- Ⅱ:次回定期点検までに、長寿命化を行うにあたって時宜を得た修繕等の対策を行うことが望ましい状態
- Ⅲ:次回定期点検までに、構造物としての安全性の確保や第三者被害の防止のための措置等を行う必要がある状態
- Ⅳ:緊急に対策を行う必要がある状態
区分の決定にあたっては、点検時点の状態だけでなく、次回定期点検までにどのような状態になる可能性があるかの推定、道路機能への支障、道路利用者や第三者被害のおそれ、過去の維持管理の履歴などを考慮します。区分の決定は道路管理者が行い、必要に応じて追加調査や有識者の助言を得ることもあります。
なお、トンネルの健全性の診断の区分は「道路トンネル毎」に決定します。橋梁では令和6年3月改定で健全性の診断(Ⅰ〜Ⅳ)が「橋全体のみ」となり、部材単位は技術的な評価(A〜C)で記録する体系に変わりました。施設種別ごとの要領で診断の単位が異なる点に注意してください。
トンネルの定期点検の頻度と方法
道路トンネル定期点検要領(令和6年9月・国土交通省 国道・技術課)は、国土交通省と内閣府沖縄総合事務局が管理する道路トンネル(直轄)に適用される要領で、各道路管理者の点検の参考にもされています。頻度と方法の要点は次のとおりです。
- 初回点検は建設後1年から2年の間に行う。施工時の品質やコンクリートの乾燥収縮・温度変化の影響による初期変状が、覆工打設完了後1〜2年程度の間に発生する場合が多いため
- 二回目以降は5年に1回の頻度を基本とする(状態によっては5年より短い間隔も検討)
- 点検は近接目視を基本とし、必要に応じて打音検査・触診・その他の非破壊検査等による状態の把握を行う
- 対象はトンネル本体工の変状と、附属物等(照明・換気設備等)の取付状態の異常
- 点検時に、うき・はく離部の除去などの応急措置を行うことも点検の一部に含まれる
橋梁と比べたときのトンネル点検の特徴は、初回点検(建設後1〜2年)の規定があること、打音検査・触診が状態把握の手段として明示されていることです。覆工コンクリートのうき・はく離は第三者被害に直結するため、打音による確認が重視されています。
独自の判定区分との関係(NEXCO・自治体)
実務では、告示のⅠ〜Ⅳとは別に、高速道路会社や一部の自治体が独自の判定区分を設けています。例えばNEXCOでは変状の程度や機能低下への影響に応じたAA・A1・A2・B・C等の区分、自治体によってはⅠ〜Ⅴの5段階やA〜E系の区分を用いる例があります。
これらの独自区分は告示と矛盾するものではなく、最終的に省令・告示のⅠ〜Ⅳへ読み替えて報告する形で運用されています。受託業務では、発注者がどの判定体系を使っているか、成果品でどの区分を記載するのかを仕様書で確認することが重要です。「対策区分(A〜S2)」「損傷程度(a〜e)」「技術的な評価(A〜C)」など、似た記号の別概念が多いため、混同しないよう注意してください。
よくある質問
告示第426号はトンネル専用ですか?
いいえ。対象は「トンネル、橋その他道路を構成する施設若しくは工作物又は道路の附属物」のうち、異状が生じた場合に道路の構造又は交通に大きな支障を及ぼすおそれがあるもの(トンネル等)です。橋梁の健全性の診断Ⅰ〜Ⅳも同じ告示に基づきます。
Ⅰ〜Ⅳの区分は誰が決めるのですか?
道路管理者が決定します。点検技術者の技術的所見をもとに、次回定期点検までの措置の必要性を踏まえ、告示の定義に従って道路管理者が判断・決定します。必要に応じて追加調査や有識者の助言を得る場合もあります。
トンネルの健全性はスパンごとに診断するのですか?
法令上の健全性の診断の区分は「道路トンネル毎」に決定します。状態の把握は覆工スパン等の単位で行いますが、告示に基づくⅠ〜Ⅳの区分はトンネル単位です。橋梁では令和6年3月改定で橋全体のみにⅠ〜Ⅳを付す体系となっており、施設種別で単位が異なります。
トンネルの定期点検はいつ行うのですか?
道路トンネル定期点検要領(令和6年9月)では、初回は建設後(覆工打設完了後)1年から2年の間、二回目以降は5年に1回の頻度で行うことを基本としています。状態によっては5年より短い間隔での実施も検討します。