- カメラの性能要件は1つだけ。「晴天時の屋外において,5m 離れた距離から,白地に書かれた太さ 0.5mm,長さ 1cm の線(黒)がカラーモニタ画面により識別可能であること」
- 条件は機材の形では決まらない。原典は「他の方法によりカメラを観察対象物まで近づけ,静止させて観察する場合も,適用条件は同様になる」としている
- 距離は5m以内で光学ズーム。デジタルズームは「画質は,減少する画素数にほぼ比例して低下する」と明記されている
- 角度は損傷で変わる。塗膜表面の異常は振れ角60°以内、ナットのゆるみは正対(0°)が望ましい
- カメラでよいのは合いマーク等が施されている場合に限られる。無ければ近接して工具でゆるみを確認し、その場で合いマークを施す
- カメラは初期点検と中間点検の資機材表に挙げられている。詳細点検の資機材表に伸縮支柱付カメラは無い
標識や照明の点検で、支柱の上の方を見るために毎回高所作業車を手配していると、交通規制と車両費だけで日程が決まってしまいます。そこで出てくるのが「伸縮支柱付カメラで代わりにできないか」という話です。
この問いには、国土交通省道路局 国道・技術課の「附属物(標識,照明施設等)点検要領」(令和6年9月)に答えが書かれています。本文ではなく、巻末の参考資料4「伸縮支柱付カメラ等の適用条件」です。カメラの性能、気象条件、対象物までの距離と角度が数値で示されていて、本文側には「どの点検でカメラを使ってよいか」の条件が別に書かれています。この記事では、その両方を原文で確認します。結論を先に書くと、カメラが近接目視の代わりになるのは「合いマークが施されている附属物」に限られます。
カメラの条件は本文ではなく参考資料4にある
「附属物(標識,照明施設等)点検要領」(令和6年9月)は、第Ⅰ章 共通、第Ⅱ章 門型標識等の定期点検、第Ⅲ章 門型以外の標識等の定期点検、点検記録様式、付録-1・付録-2、参考資料1〜8という構成です。要領全体の点検種別と頻度は附属物(標識、照明施設等)点検要領とは?5つの点検種別と頻度に、門型標識のA〜C評価は門型標識等定期点検要領とは?令和6年改定と基板・支柱のA〜C評価に整理しています。
カメラの適用条件は、このうち参考資料4「伸縮支柱付カメラ等の適用条件」に置かれています。本文(第Ⅰ章6.の初期点検、第Ⅱ章2.1の状態の把握)からは「参考資料4参照」という形で呼ばれる関係です。つまり本文は「使ってよい場面」を決め、参考資料4は「使うときの条件」を決めているという分担になっています。片方だけを読むと、条件を満たさない使い方や、条件を満たしても使えない場面を見落とします。
近接目視そのものの定義と、要領が認める「同等の評価が行える他の方法」の要件は近接目視とは?定義と「同等の評価が行える他の方法」の要件に整理しています。橋梁側でドローンを使う場合の整理はドローン橋梁点検と「近接目視を基本」の関係:要領上の整理が対応します。
定期点検は詳細点検と中間点検の2種類に分かれている
カメラの話に入る前に、点検の種別を押さえる必要があります。第Ⅰ章3.の解説は、種別を次のように定めています。
5種類の上位区分の下に、定期点検だけがさらに2つに割れている構造です。橋梁側の通常点検・中間点検・特定点検・異常時点検の整理は定期点検だけではない橋梁点検|通常・中間・特定・異常時点検とはにあります。
中間点検の位置づけは、第Ⅱ章2.1の「2)中間点検」にこう書かれています。
中間点検は「外観目視を基本」です。詳細点検は近接しての状態の把握を基本としています。カメラは外観目視の延長として位置づけられるので、この違いがそのまま使える場面の違いになります。
資機材表に伸縮支柱付カメラが載るのは初期点検と中間点検
参考資料3「点検に用いる資機材の例」は、点検別に4つの表を載せています。冒頭に「点検にあたっては,効果的な成果を得るために,その目的に応じた適切な資機材を常に携帯する必要がある。」とあり、表-1が初期点検、表-2が中間点検、表-3・表-4が詳細点検です。
| 表 | 対象 | 高所を見る資機材 |
|---|---|---|
| 表-1 | 初期点検 | 双眼鏡(高所のボルト部の合いマーク確認,腐食,亀裂等確認)/伸縮支柱付カメラ(同じ用途) |
| 表-2 | 中間点検 | 双眼鏡(同上)/伸縮支柱付カメラ(同上) |
| 表-3 | 詳細点検(1) | 双眼鏡(高所の概況観察)/梯子・高所作業車・オーバーフェンス車(橋梁点検車) |
| 表-4 | 詳細点検(2) | (探傷試験・塗膜除去・錆止め等の資材。高所用の資機材は無い) |
伸縮支柱付カメラが挙げられているのは表-1と表-2だけで、詳細点検の表-3・表-4には入っていません。表-3では双眼鏡の用途が「高所のボルト部の合いマーク確認,腐食,亀裂等確認」から「高所の概況観察」に変わり、代わりに梯子・高所作業車・オーバーフェンス車(橋梁点検車)が並びます。詳細点検では人が近づくことが前提になっている、という読み方になります。
点検車の種類と必要な資格は橋梁点検車とは?種類ごとに違う必要な資格と橋梁点検車とは?高所作業車との違いと必要な資格に整理しています。高所作業車を使わずにロープで降りる場合の措置はロープ高所作業とは?橋梁点検で必要な8つの措置にあります。
表-3には超音波厚さ計(板厚調査)・膜厚計(塗膜厚調査)・ファイバースコープ(支柱内部の観察)・ビデオカメラ(支柱の振動状況の記録)も並びます。非破壊検査とモニタリングの用語の切り分けはセンシング・モニタリング・非破壊検査の違い|3つの定義と使い分けを参照してください。
性能要件は「5m先の太さ0.5mm・長さ1cmの線」の1行だけ
参考資料4(1)は、カメラに求める性能を1つだけ定めています。
画素数や倍率ではなく、現場で再現できる識別テストの形で書かれているのがこの要件の特徴です。自社の機材が条件を満たすかは、白い板に0.5mmの線を引いて5m離れて撮れば確かめられます。
続けて「このような性能を有するカメラの一例として,次の仕様のものがある。」として、次の仕様が挙げられています。
| 項目 | 仕様の例 |
|---|---|
| カメラ | CCD(Charge-Coupled Device:電荷結合素子)カメラ(47 万画素以上) |
| レンズ | 光学式 12 倍ズーム(デジタルズーム併用 24 倍) |
| モニタ | カラー液晶(11.5 万画素以上) |
この表は「一例」です。47万画素という数字は要件ではなく、要件を満たした機材の例として挙げられています。現在流通している機材はこれを大きく上回りますが、だからといって識別テストを省略してよいことにはなりません。あわせて「なお,カメラを支持する伸縮架台は,安定している必要がある。」と書かれていて、画質と同じ重みで架台の安定が条件になっています。
機器の性能表示をどう読むかは、AI検出の精度表示にも同じ問題があります。AIひび割れ検出の「精度」の見方と技術者確認の設計と点検支援技術性能カタログとは?読み方と活用方法が対応します。
機材の形は問わない。「近づけて静止させる」が条件
参考資料4(1)の冒頭は、適用条件がカバーする範囲をこう示しています。
図-1には車載カメラ、伸縮支柱付きカメラ(1)、伸縮支柱付きカメラ(2)の3種類が例示されていますが、原典はそこに載っていない方法でも「カメラを観察対象物まで近づけ,静止させて観察する」なら同じ条件が適用されるとしています。要件は機材の名前ではなく、①対象に近づける ②静止させて観察する、という2つの振る舞いの側にあります。
この書き方は、新しい機材を使うときの判断材料になります。伸縮支柱でない方法で支柱上部に寄せる場合も、同じ距離・角度・気象の条件を満たしているかで判断すればよいことになります。逆に、遠くからの拡大撮影や、静止させずに撮り続ける方法は、ここで想定されている使い方の外に出ます。
距離は5m以内。デジタルズームは画素数に比例して画質が落ちる
参考資料4(2)②の留意事項は、距離をこう定めています。
そのうえで、デジタルズームの扱いに注意が付きます。
先の仕様例が「光学式 12 倍ズーム(デジタルズーム併用 24 倍)」と書いていた理由がここにあります。24倍は到達できる倍率で、点検に使う倍率は光学の12倍までという読み方です。5mという距離の上限と、光学ズームという条件はセットで効きます。遠くから高倍率で撮れば同じ画が得られる、という置き換えは原典の想定の外です。
画像を記録として残す側の実務は損傷写真台帳の作り方:撮影から整理までの実務に整理しています。
振れ角は損傷の種類で変わる。塗膜60°・ナット0°
距離の次に角度の条件があります。図-2は対象物までの距離(5.0m・2.0m・1.0m・0.5m)と振れ角(0°・30°・60°・90°)を組み合わせた図で、角度の条件は損傷の種類ごとに違います。原典は「観察対象物への角度は,一部の損傷については次のとおりとする。」として2つを挙げています。
| 損傷 | 角度の条件 | 原典の但し書き |
|---|---|---|
| 塗膜表面の異常(塗膜の割れ,錆汁の発生など) | 「振れ角が60°以内となる位置で点検することが望ましい」 | 「ただし,塗膜の状態や溶接ビードの形状によっては,このとおりとならない場合があるため,注意が必要である。」 |
| ゆるみ・脱落 | 「合いマークによらず,ナットのゆるみを確認する場合には,ナット遊間に正対(0°)することが望ましい」 | 「なお,遊間を確認できる程度までを限度とする。」 |
塗膜の60°は片側ではなく±60°の扇形で図示されています(図-3)。これに対してナットのゆるみは正対が望ましく、しかも許容されるのは「遊間を確認できる程度」まで(図-4)です。ナット遊間という狭い隙間を見る作業なので、角度が付くほど隙間が見えなくなる、という物理がそのまま条件になっています。
この2つの差は現場の段取りに直結します。塗膜の確認なら支柱の片側から広い範囲を見られますが、ボルト部のゆるみを見るならナットごとに正対できる位置までカメラを回り込ませる必要があります。1本の支柱で複数のボルト群を見るなら、カメラの設置位置を何回変えるかを先に数えておくことになります。
鋼部材の腐食・亀裂・破断がそれぞれ別の評価区分になることは鋼部材の腐食・亀裂・破断とは?損傷ごとに違う評価区分、防食機能の劣化と腐食の違いは防食機能の劣化とは?腐食との違いと分類1〜3に整理しています。
カメラでよいのは合いマークが施されている場合に限られる
ここが、この記事でいちばん押さえてほしい条件です。第Ⅰ章6.の初期点検は、上部の部位について近接しなくてよいとしています。
解説側はさらに踏み込んで、代替が許される範囲を限定しています。
「〜場合に限られる」と「〜しなければならない」が並んでいます。合いマークが無い附属物では、カメラは選択肢になりません。近接して工具でゆるみを確認し、締め付けを確認したうえで、その場で合いマークを施すところまでが要求です。
中間点検側も同じ構造です。第Ⅱ章2.1の「2)中間点検」は次のように書いています。
つまりカメラの導入は、合いマークの整備とセットでしか効きません。合いマークの施工自体は参考資料7に手順があり、参考資料3の表-1・表-2では「塗料(合いマーク施工用)」が初期点検・中間点検の携帯資機材に入っています。初回に近接して回る費用を1回払い、以後をカメラに置き換える、という順番になります。
あわせて、合いマークには寿命があることも第Ⅱ章2.1(e)に書かれています。「ただし,合いマークのようなマーキング手法による場合,経年劣化によりマークが消える可能性もあるため,定期点検等に併せて必要に応じ再施工することが望ましい。」です。消えたマークをカメラで確認し続けることはできないので、再施工の機会を点検計画に織り込む必要があります。
打音や触診の実務は点検中の叩き落とし作業とは?ハンマーの重さと打音の間隔に、近接目視によらない箇所をどこに記録するかはデータ記録様式(その2)とは?近接目視によらない箇所の記録に整理しています。
気象条件は雨・照度・風の3つ。風速の目安は3m/秒
参考資料4(2)の適用条件は、まず前置きとして根拠を示しています。「現地におけるフィールドテストを実施した結果より,カメラの適用条件を以下のとおりとする。」です。机上の想定ではなく実測に基づく条件として置かれています。
①「調査に適した気象条件」は3つの項目から成ります。
| 条件 | 原典の記述 | 対処 |
|---|---|---|
| 雨天 | 「雨天の作業はカメラユニットに水滴がつき損傷の確認が困難となるため,雨天時は作業を避けることが望ましい。」 | 作業日を変える |
| 曇天・照度 | 「曇天においても,屋外であれば損傷の確認が可能である。しかし,夕刻や障害物等で点検に必要な照度が得られない場合には,照明設備を用いる必要がある。」 | 照明設備を用意する |
| 強風 | 「強風時は,支柱が転倒する可能性があるため,安全上作業を避けることが望ましい。フィールドテストの結果では,概ね3m/秒程度の風速であれば支障なく点検を行い得ることが確認された。」 | 下の2つの方法で対応する |
3つのうち強風だけは理由が画質ではなく「支柱が転倒する可能性」=安全です。曇天は作業可、雨天は画質で不可、強風は安全で不可、という並びになっています。3m/秒という数字は上限の規定ではなく「フィールドテストの結果では…確認された」という実測の報告の形で書かれている点に注意してください。
3m/秒を超えるときの対処も続けて示されています。
控え索を取るか、支柱を下げてズームで補うかの2択です。ただし後者は距離5m以内・光学ズームの条件とぶつかる可能性があるので、下げた結果として対象までの距離が5mを超えないか、デジタルズーム側に入らないかを確認する必要があります。
もう1つ、安全側の留意が第Ⅱ章2.1の中間点検の節にあります。「なお,中間点検等で伸縮支柱付カメラを使用する場合には,風等によりカメラが安定しないことも想定されるため,附属物周辺の電線や走行車両等に接触しないよう,十分留意する必要がある(参考資料4参照)。」です。風の影響は画が揺れることではなく、支柱が電線や車両に接触することとして書かれています。照明柱には電気設備が付くので、電線との離隔は現地で先に確認する項目になります。
点検計画に落とすときに決めておく5つのこと
ここまでの条件を、発注・計画の側で決めておく形に並べ替えると次の5つになります。
| 決めること | 根拠 | 決まっていないと起きること |
|---|---|---|
| 対象の附属物に合いマークが施されているか | 第Ⅰ章6.解説「〜場合に限られる」/第Ⅱ章2.1「合いマークがない場合など〜近接し」 | 現地でカメラが使えず、近接のための車両を手配し直すことになる |
| その点検が詳細点検か中間点検か | 第Ⅰ章3.解説(定期点検の2種類)/参考資料3 表-2と表-3の資機材の違い | 詳細点検にカメラだけで臨み、近接しての状態の把握が不足する |
| 使う機材が識別テストを満たすか | 参考資料4(1)【カメラの性能】 | 画が撮れても、損傷を識別できる画かどうかの根拠が残らない |
| ボルト群ごとに正対できる設置位置があるか | 参考資料4(2)②イ)図-4(ナット遊間に正対・遊間を確認できる程度を限度) | ゆるみの確認が角度不足のまま記録され、やり直しになる |
| 作業日の雨・照度・風と、電線の離隔 | 参考資料4(2)①/第Ⅱ章2.1(電線や走行車両等に接触しないよう) | 当日中止、または支柱の接触事故につながる |
新技術を使うときの費用の整理と積算の適用範囲は新技術を使った橋梁点検の費用:積算の適用範囲と見積り比較、社内の承認を取る側の構成は点検支援技術の導入稟議の書き方:承認される4つの構成要素にまとめています。支援技術全体の選び方は点検支援技術の選び方 完全ガイド:AI・ドローン・LiDARが入口です。
なお、小規模な標識柱・照明柱については別の要領があり、頻度も違います。対象の切り分けは小規模附属物点検要領と標識柱・照明柱の点検頻度を確認してください。自治体のマニュアルが別に定められている場合の優先関係は国交省要領と都道府県の点検マニュアルの関係:どちらに従う?に整理しています。
よくある質問
Q. 伸縮支柱付カメラを使えば、高所作業車を手配しなくてよくなりますか。
A. 点検の種別と、合いマークの有無で変わります。「附属物(標識,照明施設等)点検要領」(令和6年9月)の参考資料3は、伸縮支柱付カメラを初期点検(表-1)と中間点検(表-2)の資機材として挙げる一方、詳細点検(表-3)には挙げず、梯子・高所作業車・オーバーフェンス車(橋梁点検車)を並べています。またボルト部のゆるみについては、第Ⅰ章6.の解説が「「合いマーク」等が附属物の新設又は更新等に併せて施されている場合に限られる」としています。合いマークが無い附属物では近接が必要です。
Q. カメラに求められる性能は何画素以上ですか。
A. 画素数では定められていません。参考資料4(1)の【カメラの性能】は「晴天時の屋外において,5m 離れた距離から,白地に書かれた太さ 0.5mm,長さ 1cm の線(黒)がカラーモニタ画面により識別可能であること」の1行だけです。続けて「このような性能を有するカメラの一例として」としてCCDカメラ(47 万画素以上)・光学式 12 倍ズーム(デジタルズーム併用 24 倍)・カラー液晶(11.5 万画素以上)が示されていますが、これは要件ではなく例です。
Q. 伸縮支柱ではない方法でカメラを寄せる場合も、同じ条件ですか。
A. 同じです。参考資料4(1)は「図-1の例に限らず,他の方法によりカメラを観察対象物まで近づけ,静止させて観察する場合も,適用条件は同様になる。」としています。条件は機材の名称ではなく、対象に近づけて静止させて観察するという使い方の側に紐づいています。
Q. 対象までの距離に上限はありますか。
A. 5m以内です。参考資料4(2)②ア)は「観察対象物までの距離は5m以内とし,カメラの光学ズーム機能を利用して点検を行うものとする。」としています。性能要件も「5m 離れた距離から」の識別で書かれているので、距離と性能の条件が同じ5mで揃っています。
Q. デジタルズームで倍率を上げれば、5mより遠くから見てもよいのですか。
A. 原典はデジタルズームの使用に注意を付けています。「デジタルズーム機能を用いた場合,撮像素子(CCD等)の中央付近の画素しか使用できないため,画質は,減少する画素数にほぼ比例して低下することに注意しなければならない。」です。距離5m以内・光学ズームという条件は維持されるため、遠くから高倍率で撮る方法に置き換えることは想定されていません。また「レンズの広角側では画像周辺部にゆがみが生じる場合がある」という注意も付いています。
Q. カメラを向ける角度の条件はありますか。
A. 損傷の種類で変わります。塗膜表面の異常(塗膜の割れ,錆汁の発生など)は「振れ角が60°以内となる位置で点検することが望ましい」とされ、ただし「塗膜の状態や溶接ビードの形状によっては,このとおりとならない場合がある」と但し書きが付きます。ゆるみ・脱落は「合いマークによらず,ナットのゆるみを確認する場合には,ナット遊間に正対(0°)することが望ましい」で、「遊間を確認できる程度までを限度とする」とされています。
Q. 中間点検と詳細点検はどう違うのですか。
A. 第Ⅰ章3.の解説は「定期点検には,詳細点検と,詳細点検を補完するため中間的な時期を目途に行う中間点検の2種類がある。」としています。中間点検は第Ⅱ章2.1で「新設又は仕様変更後及び詳細点検後概ね5年を目処に行う」「外観目視を基本に行い,異常の有無を確認する」と定められています。詳細点検は近接しての状態の把握が基本で、資機材表にも高所作業車等が並びます。
Q. 風が強い日はどこまで作業できますか。
A. 原典は「強風時は,支柱が転倒する可能性があるため,安全上作業を避けることが望ましい。」としたうえで、「フィールドテストの結果では,概ね3m/秒程度の風速であれば支障なく点検を行い得ることが確認された。」と書いています。これ以上の風速では「支柱ぶれ防止の控え索を取ることや,支柱高さを下げカメラ高さを低くしカメラのズーム機能を利用するなどの方法により,対応するとよい。」とされています。3m/秒は上限値の規定ではなく実測の報告として書かれている点に注意してください。
Q. 曇りの日や夕方は点検できますか。
A. 曇天は可とされています。「曇天においても,屋外であれば損傷の確認が可能である。しかし,夕刻や障害物等で点検に必要な照度が得られない場合には,照明設備を用いる必要がある。」です。雨天は「カメラユニットに水滴がつき損傷の確認が困難となるため,雨天時は作業を避けることが望ましい」とされています。
Q. 合いマークが無い附属物では、カメラをいつから使えますか。
A. 近接して確認した回に合いマークを施した後からです。第Ⅰ章6.は「合いマーク等が施されていないものについては,近接し,工具等を利用してゆるみの確認を行うとともに,確実に締め付けたことを確認しなければならない。この際,以後の点検の効率化のため,合いマーク等を施すものとする。」としています。なお合いマークは「経年劣化によりマークが消える可能性もあるため,定期点検等に併せて必要に応じ再施工することが望ましい」とされており、再施工の機会も計画に入れる必要があります。
出典・適用範囲
本文の版・記述・引用を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。引用の読点・句点・全角半角は原典の表記に合わせています(原典は読点に「,」を用いています)。
- 国土交通省 道路局 国道・技術課「附属物(標識,照明施設等)点検要領」(令和6年9月・全219ページ) — 参照箇所:第Ⅰ章3.「点検の種別」の解説(5種類と、定期点検における詳細点検・中間点検の2種類)/第Ⅰ章4.「点検の体制」の解説(非破壊検査を行う者の要件・参考資料3への案内)/第Ⅰ章5.「通常点検」/第Ⅰ章6.「初期点検」(2)本文と解説(上部の部位はカメラなど別途の手段で確認してもよい/合いマークが施されている場合に限られる/合いマーク等を施すものとする)/第Ⅱ章2.1「状態の把握」のうち(e)ボルト・ナットのゆるみ・脱落(合いマークの再施工)・(f)支柱継手部・(g)重ね貼り用のビス・リベット・(h)トンネル照明、非破壊検査や点検支援機器等を用いる場合の留意、および「2)中間点検」(頻度・外観目視を基本・合いマークが無い場合・電線や走行車両等への接触)/参考資料3「点検に用いる資機材の例」表-1〜表-4/参考資料4「伸縮支柱付カメラ等の適用条件」(1)調査に用いる機器・(2)カメラの適用条件(①気象条件ア)〜ウ)、②留意事項ア)距離とズーム・イ)角度と図-2〜図-4)
本記事は、附属物(標識・照明施設等)の点検でカメラによる確認が認められる場面と、その適用条件を要領の原文で確認するための実務解説です。参考資料5「超音波厚さ計による板厚調査の実施手順」、参考資料6「亀裂探傷試験の実施手順」、参考資料7「合いマークの施工」の手順、参考資料8「路面掘削等の実施の目安」、付録-1「定期点検結果の記入要領」、付録-2「損傷程度の評価要領」、参考資料1「一般的な構造と主な着目箇所」、参考資料2「附属物(標識,照明施設等)の損傷事例」の内容は扱っていません。また第Ⅱ章2.2の性能の推定(A〜C評価)と第Ⅲ章 門型以外の標識等の定期点検の各節も本記事の範囲外です。個別の附属物についてカメラによる確認で足りるかどうかの判断は行いません。対象に適用される要領の版、発注図書の仕様、道路管理者の指示を優先してください。小規模な標識柱・照明柱には別途「小規模附属物点検要領」が適用されます。