この記事の要点
  • 提言は平成26年4月14日・社会資本整備審議会道路分科会の建議。第Ⅰ章の表題がそのまま「最後の警告 - 今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」になっている
  • 根拠に置かれた数字は、橋約70万橋のうち7割以上の約50万橋が市町村道/通行止め・通行規制橋梁が977橋(平成20年)→2,104橋(平成25年)/建設年度不明が約30万橋(地方公共団体管理の約46%)/町の約5割・村の約7割で橋梁保全の土木技術者が0人
  • 総括は2つの根本的課題=「メンテナンスに関する最低限のルール・基準が確立していない」「メンテナンスサイクルを回す仕組みがない」
  • 提案された「国が定める統一的な基準によって、5年に1度、近接目視による全数監視」は、令和6年3月の道路橋定期点検要領でも「点検間隔は5年に1回の頻度を基本とする」「近接目視、または近接目視による場合と同等の評価が行える他の方法」として同じ形で残っている
  • 『道路インフラ健診』『道路メンテナンス会議』『道路メンテナンス技術集団』『直轄診断』はいずれも提言が作った呼び名。『道路インフラ安全委員会』は提言では「検討する」段階の記述である

点検業務の仕様書や庁内の説明資料で「平成26年の提言を受けて」という一文を見かけることがあります。この「提言」は、平成26年4月14日に社会資本整備審議会道路分科会が出した建議「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」のことです。

いま当たり前に回っている5年に1回・近接目視の法定点検、Ⅰ〜Ⅳの健全性の診断、都道府県ごとの道路メンテナンス会議、直轄診断と修繕代行は、どれもこの文書で提案されたものです。つまり、日々の点検実務が「なぜこの形なのか」を遡ると、ここに行き着きます。

この記事では、提言の原文(全14ページ)から、冒頭の「最後の警告」が何を書いていたのか、当時どんな数字が根拠に置かれたのか、そしてどの提案が現在の制度の名前になっているのかを整理します。

この提言は誰が、いつ、どういう形で出したのか

表紙には「社会資本整備審議会道路分科会建議」と記され、その下に「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」「平成26年4月14日」「社会資本整備審議会 道路分科会」が並びます。審議会が大臣に対して行う建議という形式で、法令そのものではありません。

本文は2章構成です。第Ⅰ章が「最後の警告 - 今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」で3ページ、第Ⅱ章が「道路の老朽化対策の本格実施に向けて」で、現状・方向性・具体的な取組みを扱います。第Ⅰ章だけ語り口がはっきり違い、数字ではなく危機の訴えで構成されているのが特徴です。

提言はこの問題が初めてではないことも明記しています。原文は「平成14年以降、当審議会は『今後適切な投資を行い修繕を行わなければ、近い将来大きな負担が生じる』と繰り返し警告してきた」としたうえで、その後の動きが警告に逆行したと書いています。挙げられているのは、平成17年の道路関係四公団民営化に際して高速道路の管理費が約30%削減されたこと、平成21年の事業仕分けで直轄国道の維持管理費を10〜20%削減することが結論とされたことの2点です。

なお、同じ審議会道路分科会はこの提言のあとにも建議を出しています。点検制度の次の段階にあたる議論はメンテナンスのセカンドステージとは?建議の6項目で扱っています。

第Ⅰ章「最後の警告」は何を書いていたか

第Ⅰ章は3つの小見出しで進みます。「静かに危機は進行している」「すでに警鐘は鳴らされている」「行動を起こす最後の機会は今」です。

「ある日突然、橋が落ち」という書き方

原文は市町村管理橋梁の通行規制の増加を挙げたうえで、「今や、危機のレベルは高進し、危険水域に達している。ある日突然、橋が落ち、犠牲者が発生し、経済社会が大きな打撃を受ける…、そのような事態はいつ起こっても不思議ではないのである」と書いています。そして「今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切らなければ、近い将来、橋梁の崩落など人命や社会システムに関わる致命的な事態を招くであろう」と結びます。審議会の文書としては相当に強い言い方で、この章の表題が「最後の警告」である理由がここにあります。

笹子トンネルと、2つの海外事例

直接の契機として挙げられているのは平成24年12月の中央自動車道笹子トンネル上り線の天井板落下事故です。原文は「9人の尊い命が犠牲となり、長期にわたって通行止めとなった」「老朽化時代が本格的に到来したことを告げる出来事である」としています。

そのうえで海外の2例を反面教師として引いています。1つは2005年8月の米国ニューオーリンズのハリケーン「カトリーナ」で、危険性が何年も前から専門家によって政府に警告されていたにもかかわらず投資が実行されず、死者1,330人・被災世帯250万という被害が出た例です。原文は「『来るかもしれないし、すぐには来ないかもしれない』という不確実な状況の中で、現在の資源を将来の安全に投資する決断ができなかったこの例を反面教師としなければならない」と書いています。

もう1つは1980年代の「荒廃するアメリカ」です。1920年代から幹線道路網を整備した米国が、インフラ予算を削減し続けた結果、各地で橋や道路が壊れ使用不能になった事態を指し、提言は「『荒廃するニッポン』が始まる前に、一刻も早く本格的なメンテナンス体制を構築しなければならない」としています。

この章が国に求めたのは3つです。「道路管理者に対して厳しく点検を義務化」すること、「産学官の予算・人材・技術のリソースをすべて投入する総力戦の体制を構築」すること、「政治、報道機関、世論の理解と支持を得る努力」を実行することです。1つ目がのちの点検基準の法定化につながり、2つ目が支援制度の束になります。

根拠に置かれた当時の数字

第Ⅱ章1節は現状と課題を数字で並べます。いずれも平成25〜26年ごろの値で、現在の値ではありません。現在の数字は毎年公表される年報で確認する必要があります(道路メンテナンス年報とは?点検・修繕データの読み方と自組織の位置づけ)。

項目提言に書かれた値
道路橋・道路トンネルの数道路橋は全国に約70万橋、道路トンネルは約1万本
うち市町村道にある橋約70万橋のうち7割以上となる約50万橋
建設後50年経過する橋梁の割合18%(平成25年)→43%(平成35年)
建設後50年経過するトンネルの割合20%(平成25年)→34%(平成35年)
通行止め・通行規制橋梁数977橋(平成20年)→2,104橋(平成25年)
直轄国道の維持修繕予算平成16年度当初3,202億円 → 平成25年度当初2,515億円
橋梁保全業務に携わる技術者数が0人町 約5割、村 約7割
点検方法に遠望目視を定めている都道府県・政令市約8割
建設年度不明の橋梁(地方公共団体管理分)約30万橋/約66万橋(約46%)
高速道路を跨ぐ橋梁で未点検または点検不明(地方公共団体)約140橋/約3,300橋
通行規制・通行止めの橋が約1,400橋あることを知らない道路利用者約9割

この数字の並べ方には意図がある

並び自体が課題の構造を示しています。橋の7割以上が市町村道にある一方で、町の約5割・村の約7割に橋梁保全の土木技術者がいない。管理する数が最も多い主体に、最も技術者がいない。提言はこのねじれを前提に、地方公共団体への支援を具体策の中心に置きました。担い手側の論点は橋梁点検の担い手不足:背景と現実的な対策で扱っています。

遠望目視が約8割という数字も効いています。当時の地方公共団体の点検要領では遠望目視を定めている例が多く、提言は「点検の質にも課題がある」と書いています。ここが「近接目視による全数監視」という提案につながります(近接目視とは?定義と「同等の評価が行える他の方法」の要件)。

建設年度不明が約46%という数字については、原文は「道路台帳(橋調書)の作成が不十分」「橋梁設計図書を保存・管理していない道路管理者も多数存在」とも指摘し、これらは「自らが管理する施設の規模、状態等を把握できていない場合があることを示しており、維持修繕・更新の重要性についての認識が低いと考えられる」としています。台帳の扱いは橋梁台帳とは?道路台帳との違いと閲覧にまとめています。

「永久橋」と呼ばれていた時代の記述

維持管理の面では、歴史的な経緯も書かれています。原文は、日本は歴史的に木で橋を建設しており洪水や火災で架け替えるのが普通であったとしたうえで、「鉄・コンクリートでの橋の整備が本格化したのは昭和30年前後であり、当時、それらは『永久橋』と呼ばれ、鋼橋は塗装の塗り替えのみで良く、メンテナンス・フリーと考えられていたことから、その維持管理の必要性が十分認識されていなかった」と記しています。添えられた数字は木橋と鉄・コンクリート橋の構成割合が50%:50%(昭和25年)から31%:69%(昭和35年)へ変わったことです。

総括された「2つの根本的課題」

1節の最後は「現状の総括(2つの根本的課題)」です。提言はまず地方公共団体には「予算不足・人不足・技術力不足」の三つの課題があるとし、さらに「法令等において、点検頻度や方法を定めるなどし、老朽化対策を実施するための制度を設けるだけでは、予算不足や技術力不足等のため、その実施が徹底できないのが現状である」と書きます。そのうえで「同時に取り組まなければ解決できない」課題として2つを挙げています。

根本的課題提言が挙げた中身
① メンテナンスに関する最低限のルール・基準が確立していない法令に道路構造物の点検頻度や方法等の定めがない等、維持修繕・更新に関するルール・基準が未確立/そのため点検方法として技術的に問題のある点検基準を定めている例も存在/点検結果や修繕履歴等の記録・保存が徹底されず、計画的な維持修繕・更新となっていない
② メンテナンスサイクルを回す仕組みがない厳しい財政・技術者がいない等の理由により点検・診断・措置・記録のメンテナンスサイクルを回すことが困難/点検業務や修繕・更新工事の発注(歩掛の設定、変更契約)、監督(成果品の確認)が困難/技術的に高度な対応が必要とされる大規模な構造物等の修繕・更新を実施できない場合が想定

この2つが、2節の「目指すべき方向性」でそのまま二本柱になります。①メンテナンスサイクルを確定(道路管理者の義務の明確化)と②メンテナンスサイクルを回す仕組みを構築です。前者が基準の法定化、後者が予算・体制・技術の支援策にあたります。

②に挙がっている「歩掛の設定、変更契約」は、具体的な取組みの側でも「施工実態等を踏まえた点検業務・修繕工事の適正な積算基準を設定する」として再度出てきます(点検業務の歩掛はどこにあるか:積算資料の読み方)。

なお提言は、笹子トンネル事故を踏まえて平成25年を「メンテナンス元年」と位置付けたことと、すでに平成25年の道路法改正により点検基準の法定化や国による修繕等代行制度の創設等を実施していたことを明記しています。つまり法定化そのものは提言より前に動き出しており、提言はその本格実施を求めた文書という位置づけになります。

点検・診断・措置・記録をこう書いた

3節(2)は「メンテナンスサイクルを確定(道路管理者の義務の明確化)」で、点検・診断・措置・記録の4つに分けて推進すべき内容を挙げています。現在の実務とそのまま重なるので、原文の言い方で見ておく価値があります。

点検

2つ書かれています。1つ目が「施設の特性を踏まえた合理的な点検を実施する」で、その下に「橋梁、トンネル等については、国が定める統一的な基準によって、5年に1度、近接目視による全数監視を実施」、「舗装、照明柱等構造が比較的単純なものは、経年的な劣化に基づき適切な更新年数を設定し、点検・更新することを検討」と続きます。橋・トンネルと舗装等で考え方を分ける書き方が、この段階で既に出ています(舗装点検要領とは?橋・トンネルと違う「分類別・3区分」の点検制度)。

2つ目が「緊急輸送道路上の橋梁や高速道路の跨道橋などの重要度や施設の健全度等から、優先順位を決めて点検を実施」です。緊急輸送道路という条件は、現在の記録項目にも残っています(緊急輸送道路の橋梁はなぜ点検・耐震で優先されるのか)。

診断

1項だけです。「全国の橋梁等の健全度を把握し比較できるよう、統一的な尺度で、『道路インフラ健診』と呼べる健全度の判定区分を設定し、診断を実施」。「道路インフラ健診」という言い方は提言の造語で、現在の制度ではこの名称ではなく、告示に定義された健全性の診断の区分としてⅠ〜Ⅳが運用されています(健全性の診断(判定区分Ⅰ〜Ⅳ)とは?定義と判定の考え方)。

措置

点検・診断結果に基づく措置として3つが挙がります。「損傷の原因、施設に求められる機能、ライフサイクルコスト等を考慮して修繕計画を策定し、計画的に修繕を実施」、「すぐに措置が必要と診断された施設について、予算や技術的理由から、必要な修繕ができない場合は、通行規制・通行止めを実施」、「人口減少、土地利用の変化など、社会構造の変化に伴う橋梁等の利用状況を踏まえ、必要に応じて橋梁等の集約化・撤去を実施」です。

2つ目は、修繕ができないときに通行規制が選択肢になるという考え方で、現在の判定区分Ⅳの扱いと同じ筋です(健全性Ⅳの橋はなぜ通行止めになるのか)。3つ目の集約化・撤去は、のちにガイドラインの形になります(道路施設の集約・撤去ガイドラインとは?判断基準と補助制度)。

あわせて国が検討することとして2つ挙げられています。「緊急措置が必要と判断されても適切な措置が行われていない場合等は、国が必要な手順を踏んだ上で地方公共団体に対し適切な措置を講じるよう勧告・指示」と、「重大な事故発生直後より、道路管理者の要請に応じて、原因の究明や再発防止策等を検討する常設の第三者委員会『道路インフラ安全委員会』を設置」です。どちらも「検討する」という書き方で、確定した制度として書かれていません。

記録

1項だけで、しかも方向が外向きです。「メンテナンスサイクルが定着するよう、全道路管理者の点検・診断・措置の結果をとりまとめ、国等が評価するとともに公表し、『見える化』を図る」。記録の様式ではなく集計と公表を記録の節に置いているのが特徴で、この「見える化」が毎年の年報という形につながります。年報の橋の数え方は道路統計年報と違うので、使うときは注意が必要です(道路統計年報と道路メンテナンス年報|橋の数が4倍違う理由)。

提言の呼び名と、いまの制度の対応

提言には、いま実務で使われている固有名詞がいくつも初出で登場します。下の表は提言の記述と、現在その名前で呼ばれている仕組みを並べたものです。右側は当サイトの解説記事への案内で、提言と現行制度の一対一の対応関係を国が明示した文書は本記事では確認していません。

提言の記述現在の呼び名・参照先
国が定める統一的な基準によって、5年に1度、近接目視による全数監視道路橋定期点検要領(令和6年3月)は「点検間隔は5年に1回の頻度を基本とする」「近接目視、または近接目視による場合と同等の評価が行える他の方法」と規定。法定点検の対象施設は橋だけではない(道路の法定点検「5施設」と5年ルール/橋梁点検はなぜ5年に1回?義務化の法的根拠)
『道路インフラ健診』と呼べる健全度の判定区分告示に定義された健全性の診断の区分Ⅰ〜Ⅳ。「道路インフラ健診」という名称では運用されていない(健全性の診断(判定区分Ⅰ〜Ⅳ))
都道府県ごとに『道路メンテナンス会議』を設置道路メンテナンス会議(道路メンテナンス会議とは?)
『道路メンテナンス技術集団』を派遣し、『直轄診断』を実施直轄診断(直轄診断・修繕代行・地域一括発注)
高度の技術を要する橋梁等の緊急的な修繕・更新については、国による代行制度を活用修繕代行(同上)
メンテナンス業務は、地域単位での一括発注や複数年契約など、効率的な方式を導入地域一括発注・複数年契約(包括的民間委託とは?/点検業務を複数年で発注するには?)
利用状況を踏まえた集約化・撤去を進めつつ、必要に応じて、国や高速道路会社等が定期点検や修繕等を代わりに行う集約・撤去(集約・撤去ガイドライン)、隣接自治体への委託は別制度として整備(連携協力道路制度とは?)
点検を適正に実施している地方公共団体に対し、重要度や健全度に応じた交付金の重点配分や、複数年にわたり集中的に実施する大規模修繕・更新を支援する補助制度を検討個別補助と交付金の使い分け(道路メンテナンス事業の財源まとめ)
点検・診断の知識、技能、実務経験を有する技術者を確保するための資格制度を検討点検に必要な資格・登録資格(橋梁点検に必要な資格とは?/点検士の登録資格は1つではない)
非破壊試験技術やモニタリング技術、新材料・工法等の新技術について、民間が開発した技術の試行・評価や、産学官による共同研究開発等を国が中心となって戦略的に取組む点検支援技術の整理(点検支援技術の選び方 完全ガイド)
常設の第三者委員会『道路インフラ安全委員会』を設置(検討)本記事では設置状況を確認していない

「総力戦」と「リダンダンシー」

3節(1)の基本的な考え方には、よく引用される一文があります。「産学官のリソース(予算・人材・技術)を全て投入し、総力をあげて、まさに『道路メンテナンス総力戦』という意識で取組むことが求められている」です。

その直後に、点検のしやすさをネットワーク計画の側から考える記述が置かれています。「今後の道路ネットワーク計画の策定に際しても、リダンダンシーが確保されることにより、一部区間を通行規制しても交通に大きな支障がなく、点検・修繕等が可能になることは、メンテナンス上重要であることに留意されたい」。規制をかけられる余裕があること自体が維持管理の条件になるという見方で、交通規制の手配に苦労する現場感覚とつながる箇所です(橋梁点検の交通規制は誰が決めるのか。要領に無く積算にある)。

国民の理解・協働と、その他

3節(3)4)には、情報共有と並んで「地域住民や学生、マスコミを対象とした橋梁の現地見学会や、各地域における産学官の連携による橋守制度の取組み拡大など、老朽化の現状や対策についての理解と協働の取組みを推進する」とあります。情報の取りまとめ先は『道路メンテナンス会議』とされています。

5)その他は1項だけで、内容は重量車両の取締りです。「重量制限を超過する大型車両を通行させる者に対する取締り・指導について、報告徴収及び立入検査の実施や関係機関との連携などにより一層強化を図るとともに、特殊車両通行許可制度の審査基準の見直しや審査の迅速化等を図ることで、大型車両が適正に通行しやすい環境を整備する」。橋の重量制限の話はここに置かれています(橋の重量制限は何を根拠に決めるのか)。

提言を読むときに注意したいこと

法令ではないので、これを根拠に点検はできない

提言は審議会の建議であって、点検の義務や方法を定める法令ではありません。実際の義務は道路法施行規則と告示にあり、技術的な中身は技術的助言としての定期点検要領が示します。庁内説明で経緯を語るときの出典としては使えますが、点検の実施根拠としては要領と法令を引く必要があります(定期点検要領の法的位置づけ:省令・告示・技術的助言の関係)。

数字はすべて平成25〜26年ごろの値

「約70万橋」「50年経過が43%(平成35年)」といった値は提言当時の見込みを含みます。提言の数字をそのまま現在値として資料に載せると古くなります。現在の点検実施率・判定区分の分布・修繕の進捗は年報側で確認してください。

提言に出てくる固有名詞がそのまま制度名になっているわけではない

『道路インフラ健診』が分かりやすい例で、提言の呼び名はそのまま使われていません。逆に『道路メンテナンス会議』『直轄診断』は提言の言い方がそのまま定着しています。提言の語をそのまま現行制度の名前として引用すると、読み手に通じないことがあります。

おわりにの一文

最後の節は見直しを前提にしています。「メンテナンスサイクルを回していく中で、新たな課題の発生や新技術の開発も予想されることから、地方公共団体の取組み状況も踏まえつつ、点検基準や支援策の見直し等を含めた対応について引き続き検討することが必要である」。実際に定期点検要領は平成31年2月と令和6年3月に改定されており、提言のこの一文のとおりに動いています(道路橋定期点検要領の最新版(令和6年3月改定)変更点まとめ)。

よくある質問

「最後の警告」というのは提言の正式な一部ですか。

はい。第Ⅰ章の表題そのものが「最後の警告 - 今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」で、目次にもこの表記で載っています。通称ではなく原文の見出しです。

提言はいつ、どの会議体が出したものですか。

平成26年4月14日、社会資本整備審議会 道路分科会です。表紙には「社会資本整備審議会道路分科会建議」と記されており、建議という形式で出されています。

5年に1回・近接目視は、この提言で決まったのですか。

提言が「国が定める統一的な基準によって、5年に1度、近接目視による全数監視を実施」と提案しています。ただし提言自身が、平成25年の道路法改正により点検基準の法定化が既に実施されたと書いているため、法定化そのものはこの提言より前に動き出しています。提言はその本格実施を求めた文書と読むのが正確です。

「道路インフラ健診」という制度は今もありますか。

その名称では運用されていません。現在は、告示に定義された健全性の診断の区分(Ⅰ健全/Ⅱ予防保全段階/Ⅲ早期措置段階/Ⅳ緊急措置段階)として運用されています。「道路インフラ健診」は提言が使った呼び名です。

提言が挙げた数字をそのまま資料に載せてよいですか。

出典と年次を添えるのであれば経緯の説明として使えますが、現在値としては使えません。たとえば「建設後50年経過する橋梁の割合18%(平成25年)→43%(平成35年)」は当時の見込みを含む値です。現在の実績は毎年の道路メンテナンス年報で確認してください。

地方公共団体の課題は、提言ではいくつと整理されていますか。

2通りの整理が出てきます。1つは「予算不足・人不足・技術力不足」の三つの課題で、もう1つが総括としての「2つの根本的課題」(ルール・基準が未確立/メンテナンスサイクルを回す仕組みがない)です。後者が「目指すべき方向性」の二本柱に対応します。

「道路メンテナンス会議」はこの提言が最初ですか。

提言には「都道府県ごとに『道路メンテナンス会議』を設置する」という記述があり、鉤括弧付きの新しい呼び名として登場します。この名称の初出が提言であるかどうかは本記事では確認していませんが、設置の提案がここに書かれていることは原文で確認できます。

「道路インフラ安全委員会」は設置されたのですか。

提言では国が「検討する」とされた項目で、常設の第三者委員会として「重大な事故発生直後より、道路管理者の要請に応じて、原因の究明や再発防止策等を検討する」と書かれています。その後の設置状況は本記事では確認していません。

提言の原文はどこで読めますか。

国土交通省「道路の老朽化対策」のページに全14ページのPDFとして掲載されています。本記事の出典節にURLを載せています。同じページには、より前の建議である「道路のメンテナンスサイクルの構築に向けて」(平成25年6月)や「道路橋の予防保全に向けた提言」(平成20年5月)も並んでいます。

出典・適用範囲

  • 社会資本整備審議会 道路分科会「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」(平成26年4月14日・建議) — 表紙と目次/Ⅰ.最後の警告(「静かに危機は進行している」「すでに警鐘は鳴らされている」「行動を起こす最後の機会は今」の全文)/Ⅱ.1.道路インフラを取り巻く現状((1)現状、(2)課題の1)予算・2)体制・3)メンテナンス産業・4)国民の理解、(3)現状の総括=2つの根本的課題)/2.国土交通省の取組みと目指すべき方向性/3.具体的な取組み((1)基本的な考え方、(2)点検・診断・措置・記録、(3)1)予算・2)体制支援・3)民間の技術力・4)国民の理解・協働・5)その他)/4.おわりに の確認に使用(当夜取得 HTTP 200・全14ページ・299,305バイト)
  • 国土交通省 道路局「道路橋定期点検要領(技術的助言)」(令和6年3月) — 1.適用範囲(橋長2.0m以上)/2.定期点検の頻度(「点検間隔は5年に1回の頻度を基本とする」)/4.状態の把握(「近接目視、または近接目視による場合と同等の評価が行える他の方法」)/6.記録(記録項目に「緊急輸送道路」「告示に基づく健全性の診断の区分」が含まれること)の確認に使用。提言の提案が現行要領でどう書かれているかを突き合わせる目的のみで参照しています(当夜取得 HTTP 200・77,974バイト)
  • 国土交通省「道路:道路の老朽化対策」 — 上記2件のPDFの掲載場所、および同じページに「道路のメンテナンスサイクルの構築に向けて」(平成25年6月)・「道路橋の予防保全に向けた提言」(平成20年5月)が提言として並んでいること、道路メンテナンス年報が年度ごとに公表されていることの確認に使用(当夜取得 HTTP 200)

本記事は、「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」の原文に何が書かれているかを読み解くための実務解説です。引用はすべて提言の原文表記(「平成35年」「昭和30年前後」などの元号表記、全角括弧・鉤括弧の使い方を含む)をそのまま用いています。

提言は審議会の建議であり、点検の義務や方法を定める法令ではありません。実際の点検の根拠は道路法施行規則・告示と、技術的助言としての各定期点検要領です。また提言の各提案と現行制度の一対一の対応関係を国が明示した文書は、本記事では確認していません。本文の対応表は、提言の記述と現在その名前で呼ばれている仕組みを並べたうえで当サイトの解説記事を案内したもので、『道路インフラ安全委員会』の設置状況、『道路メンテナンス会議』という名称の初出、勧告・指示の制度化の有無はいずれも確認していません。提言に載っている数値は平成25〜26年ごろの値および当時の見込みであり、現在値ではありません。