- 全国の橋の数は、道路統計年報では177,655橋、道路メンテナンス年報では730,788橋。どちらも国の資料です
- 差の正体は定義です。統計年報の「橋梁」は橋長15メートル以上に限られています
- この定義は1977年版からのもの。それ以前は道路橋の全数を計上していました
- メンテナンス年報側の橋長分布は2メートル以上15メートル未満が73%。市区町村に限ると81%です
- 最新版どうしでも基準日が2年ずれます(統計年報は令和6年3月31日現在、メンテナンス年報は2026年3月末時点)
- 構造形式別・上部工材料別・橋長階級別を見るなら統計年報、健全性の診断区分と措置状況を見るならメンテナンス年報です
議会答弁の資料でも、長寿命化計画の前書きでも、「全国に橋は約◯◯万橋あり」という一文はほぼ必ず出てきます。ところが、この数字を国の資料から引こうとすると、17万橋と73万橋という2つの答えが出てきます。どちらも国土交通省の公表資料で、どちらも間違っていません。
差の正体は、片方が橋長15メートル以上しか数えていないことにあります。この記事では、道路統計年報の凡例と道路メンテナンス年報の本文を原文で確認し、2つの資料がそれぞれ何を数えているのか、自分の組織の数字を語るときにどちらを引くべきかを整理します。メンテナンス年報そのものの読み方は道路メンテナンス年報とはにまとめています。
同じ「国の統計」で4倍違う
まず実数を並べます。いずれも公表されている最新版から引いたものです。
| 資料 | 橋の数 | 基準日 | 数えている対象 |
|---|---|---|---|
| 道路統計年報2025(表39-3) | 177,655橋 | 令和6年3月31日現在 | 橋長15メートル以上(高速自動車国道〜市町村道) |
| 道路メンテナンス年報(2026年8月) | 730,788橋 | 2026年3月末時点 | 定期点検の管理施設数 |
統計年報側の177,655橋は、内訳が長大橋24,464橋・中小橋153,191橋、橋長の合計が11,707,907メートルです。メンテナンス年報側の730,788橋は、そのうち供用後5年以内などを除いた点検対象施設数が726,245橋、2024〜2025年度(3巡目)の点検実施数が285,424橋で、実施率は39%と示されています。
同じ国の資料でありながら4.1倍の開きがあるので、どちらの数字を引いたかを書かずに「全国の橋は◯万橋」と書くと、読み手が別の資料と突き合わせたときに必ず食い違います。
統計年報の「橋梁」は橋長15メートル以上
道路統計年報は、章ごとに凡例のPDFが付いています。橋梁の現況の凡例には、用語の説明としてこう書かれています。
「(2)『長大橋』は、橋長 100 メートル以上、『中小橋』は、100 メートル未満のものである。」
つまり統計年報の表に出てくる「箇所数」は、はじめから橋長15メートル以上だけを数えた数です。表題にも本文にも「15メートル以上」とは書かれておらず、凡例のPDFを開かないと分かりません。ここが取り違えの起点になります。
凡例には同じ並びで、道路の状況に関する用語も定義されています。「交通不能」は「幅員、曲線半径、こう配その他道路の状況により最大積載量4トンの普通貨物自動車が通行できない区間」、「通行制限」は「道路法第 47 条の規定により通行荷重等の制限を設けている区間」、「安全」は「(3)(4)以外の区間」です。統計年報の橋梁現況総括表は、箇所数をこの3区分でも分けて載せています。荷重制限の実務は橋の重量制限で扱っています。
1977年版で定義が変わっている
この15メートルという線は、途中から引かれたものです。凡例は経緯まで書いています。
実際、表39-1の推移を見ると、国道・都道府県道の中小橋は昭和50年度当初が130,566橋で、翌51年度当初は28,145橋です。1年で10万橋が消えたわけではなく、数える対象が変わっただけです。
年報は昭和25年から連続して掲載されているので、長期のグラフを作るときにこの段差をまたいでしまいがちです。1976年版以前と1977年版以降は、同じ系列として扱えません。
15メートル未満が全体の7割を占める
では、統計年報から落ちているのはどれくらいの量なのか。道路メンテナンス年報の「管理者別の橋長分布」が、そのまま答えになります。
| 管理者 | 2m以上15m未満 | 15m以上50m未満 | 50m以上100m未満 | 100m以上 |
|---|---|---|---|---|
| 全道路管理者 | 73% | 18% | 4% | 4% |
| 国土交通省 | 51% | 25% | 10% | 15% |
| 高速道路会社 | 23% | 28% | 12% | 37% |
| 都道府県・政令市等 | 65% | 22% | 7% | 6% |
| 市区町村 | 81% | 16% | 3% | 1% |
年報の本文は、この図に「橋長 50m 以上の橋梁は国土交通省、高速道路会社に多くなっています。」「市区町村は管理する橋梁の 80%以上が橋長 15m 未満です。」と添えています。
メンテナンス年報によれば、我が国の橋梁は約73万橋あり、このうち地方公共団体が管理するものが約67万橋と9割以上を占めます。道路種別では市町村道が71%(約516,000橋)です。市町村の橋を語るのに統計年報を使うと、手元の橋のうち2割ほどしか視野に入りません。自組織の管理台帳との突き合わせは橋梁台帳の側で行うことになります。
基準日が2年ずれる
もう1つ、足し引きを避けたほうがよい理由があります。最新版どうしでも基準日が揃いません。
道路統計年報2025は、概況・道路の現況・橋梁の現況・トンネルの現況のいずれも令和6年3月31日時点で、事業費は令和5年度のものです。公表は調査の翌年度に行われます。一方、道路メンテナンス年報は2026年8月に公表され、橋梁数も橋長分布も「2026.3 末時点」と注記されています。
調査の仕組みも別です。統計年報のもとになる道路統計調査は道路法第77条第1項に基づくもので、道路施設現況調査と道路事業費等調査の2本立て、報告するのは都道府県・政令指定都市・各地方整備局・高速道路株式会社などです。メンテナンス年報は、2014年7月から5年に1回の頻度で行われている近接目視点検の結果を集計したものです。点検結果を国へ報告する仕組みそのものは道路法第77条調査で扱っています。
ちなみに統計年報の凡例には「東日本大震災の影響により、福島県の市町村道の一部は最新データになっていない部分がある。」という注記も残っています。全数が揃った数字ではない、という前提で扱うのが正確です。
県境をまたぐ橋の計上ルール
「1橋をどこに計上するか」にも決まりがあります。統計年報の凡例は次のとおりです。
都道府県別の表を横に比べるときは、このルールが効いています。「県内にある橋の数」ではなく「その県に計上された橋の数」です。定期点検の側でも1橋の数え方には別の決まりがあり、行政境界で管理者が違っても1橋として扱います。点検側の単位の考え方は健全性は部材単位で判定するのかで整理しています。
どちらを引くかは「何を言いたいか」で決まる
2つの年報は競合していません。載っている項目がそもそも違います。
| 知りたいこと | 見る資料 | 該当箇所 |
|---|---|---|
| 構造形式別(床版橋・桁橋・トラス・アーチ・ラーメン・斜張橋・吊橋・カルバート)の数 | 道路統計年報 | 表41〜51 |
| 上部工の使用材料別の数 | 道路統計年報 | 表52〜62 |
| 橋長階級区分別の数 | 道路統計年報 | 表63〜73 |
| 交通不能・通行制限・安全の別 | 道路統計年報 | 表40-1、表40-2 |
| 健全性の診断区分Ⅰ〜Ⅳの割合 | 道路メンテナンス年報 | 2章 |
| 点検実施率・修繕等措置の着手状況 | 道路メンテナンス年報 | 2章・3章・4章 |
| 建設後50年を経過した橋梁の割合 | 道路メンテナンス年報 | 7章 |
| 個別の施設の諸元・点検結果 | 全国道路施設点検データベース | 損傷マップ |
3巡目の点検結果では、橋梁の判定区分はⅠが45%、Ⅱが48%、Ⅲが7%、Ⅳが0.1%です。実数では点検実施数285,424橋に対してⅢが18,698橋、Ⅳが178橋となっています。区分そのものの定義は健全性の診断区分Ⅰ〜Ⅳとはを、施設単位のデータを引く方法は全国道路施設点検データベースをご覧ください。
資料に書くときの実務的な落としどころは単純で、数字のうしろに資料名と基準日を1行添えることです。「全国に約73万橋(道路メンテナンス年報・2026年3月末時点)」と書いてあれば、読み手は同じ資料に当たれます。橋長15メートル以上に限った数を使うなら、そのことも書き添えます。点検の3巡目がどこまで進んでいるかは3巡目点検のスケジュールで確認できます。
よくある質問
Q. 全国の橋は何橋ですか。
A. どちらの資料を見るかで変わります。道路統計年報2025(令和6年3月31日現在)の表39-3では、高速自動車国道から市町村道までの橋梁が177,655橋です。道路メンテナンス年報(2026年8月公表・2026年3月末時点)では、橋梁の管理施設数が730,788橋とされています。統計年報の「橋梁」は橋長15メートル以上に限られているため、同じ「全国の橋の数」でも4倍以上の開きが出ます。
Q. 道路統計年報の「橋梁」の定義はどこに書いてありますか。
A. 年報の各章に付いている凡例です。橋梁の現況の凡例は用語の説明として「『橋梁』は、橋長 15 メートル以上の道路橋(高架の道路橋及び桟道橋を含む。)である。」と定めています。あわせて「『長大橋』は、橋長 100 メートル以上、『中小橋』は、100 メートル未満のものである。」とされています。
Q. 昔から15メートル以上だったのですか。
A. 違います。凡例は「1976 年版(内容:昭和 50 年度当初)以前の統計年報では、道路橋の全数を計上していたが、1977 年版(内容:昭和 51 年度当初)から、橋長 15 メートル以上の橋梁について計上している。」と書いています。表39-1でも、昭和50年度当初の中小橋130,566橋が、翌51年度当初は28,145橋へ落ちています。年報の古い数値と新しい数値を同じ線でつなぐと、ここで段差が出ます。
Q. 市町村の橋は統計年報に出てこないのですか。
A. 出てきますが、ほとんどが定義から外れます。道路メンテナンス年報の管理者別の橋長分布では、市区町村が管理する橋梁の81%が橋長2メートル以上15メートル未満で、年報本文も「市区町村は管理する橋梁の 80%以上が橋長 15m 未満です。」としています。市町村道の橋を数えたい場合に統計年報を使うと、実態の2割程度しか拾えないことになります。
Q. 2つの年報の数字を足したり引いたりしてよいですか。
A. おすすめしません。基準日が違います。道路統計年報2025は令和6年3月31日現在、道路メンテナンス年報(2026年8月公表)は2026年3月末時点で、最新版どうしでも2年ずれています。対象範囲と調査の仕組みも別で、統計年報は道路法第77条第1項に基づく道路統計調査、メンテナンス年報は5年に1回の定期点検の結果を集めたものです。
Q. 県境をまたぐ橋はどちらの県に数えられますか。
A. 統計年報の凡例に計上ルールがあります。「橋梁が二つの都道府県及び政令指定市にまたがる場合は、当該橋梁を管理する都道府県(指定市)に、両都道府県(指定市)で管理する場合は、協議によりいずれか一方の都道府県(指定市)に、また、2都道府県(指定市)以上にわたって管理区域を有する場合の橋梁については、橋長の長い方の都道府県(指定市)に計上している。」とされています。
出典・適用範囲
点検結果の報告の流れは道路法第77条調査、点検の対象となる施設の範囲は法定点検の対象施設にまとめています。予算の裏づけは道路メンテナンスの財源をご覧ください。