この記事の要点
  • 道路橋の定期点検業務の歩掛は、国土交通省道路局の「道路橋定期点検業務積算資料(暫定版)」にまとまっています。最新版は令和7年4月で、令和6年3月の定期点検要領に対応した版です
  • 適用は3巡目以降の定期点検業務だけ。2巡目には適用せず「別途計上」と明記されています
  • 対象の構造も限定されます。一般的な溝橋・桁橋・床版橋のみで、トラス橋・アーチ橋・吊構造・複合構造その他特殊な構造は対象外。点検支援技術を使用した場合にも適用しません
  • 歩掛の単位は「10橋当り」(打合せ協議だけ「1業務当り」)。1橋ごとの単価表ではありません
  • 計画準備に部材番号図の作成は含まれません。必要なら別途計上です
  • 積上げる直接経費は機械経費・安全費・仮設費・旅費交通費の4つ。足場は「地上、梯子及び既設の点検路」が標準で、それ以外は仮設費に立てます
  • その他原価と一般管理費等の率はどちらも35%(α=β=0.35)。根拠は設計業務等標準積算基準書(令和6年度版)です

点検業務の予定価格を組むとき、あるいは受け取った見積を見比べるとき、「この単価はどこから来た数字なのか」が分からないまま押し切られることがあります。橋長も幅員も同じはずの2社の見積が倍近く違う、という相談も珍しくありません。

道路橋の定期点検については、歩掛の出どころが1つの資料にまとまっています。国土交通省道路局の「道路橋定期点検業務積算資料(暫定版)」です。この記事では令和7年4月版を原文で読み、どこまでが標準歩掛の射程で、どこからが「別途計上」になるのかを整理します。費用の内訳そのものの考え方は橋梁点検の費用と内訳で扱っているので、ここでは資料の適用範囲と構成に絞ります。

積算資料は「3巡目以降」だけの資料

資料の冒頭、適用範囲の項にこう書かれています。

「この積算資料(暫定版)は、『道路橋定期点検要領(技術的助言)(令和6年3月) 国土交通省道路局』及び同解説・運用標準(以下、『定期点検要領』という)に基づき実施する道路橋の定期点検について、各道路管理者が3巡目以降の定期点検業務を建設コンサルタント等に発注する場合の業務委託料算出資料として暫定的にとりまとめたものである。」(道路橋定期点検業務積算資料(暫定版)令和7年4月)

続けて、適用しない場合が3つ並びます。

適用しない場合原文の扱い
2巡目の定期点検「2巡目の道路橋の定期点検業務には適用しないものとし、2巡目の定期点検を行う橋梁については別途計上する」
特殊な構造の橋梁「トラス橋、アーチ橋、吊構造を有する橋、複合構造その他特殊な構造の橋梁には適用しない」(適用は一般的な溝橋、桁橋、床版橋)
点検支援技術を使った場合「点検支援技術を使用した場合には適用しない」

この3つは、見積の突き合わせで最初に効いてきます。対象の橋がまだ2巡目なのか3巡目に入っているのかで拠るべき資料が変わり、トラス橋やアーチ橋が1橋でも混ざっていればその橋は標準歩掛の外に出ます。点検の巡目の考え方は3巡目の点検スケジュールで整理しています。

標準歩掛の注記には、計画準備・定期点検・報告書作成のいずれにも「既存の定期点検の記録等を活用して実施する」という趣旨の記述が繰り返し置かれています。前回までの点検表記録様式の電子データが手元にあることを前提に組まれた歩掛だ、ということです。引き継ぎ資料が揃っていない場合に同じ歩掛でよいかは、発注前に整理しておく論点になります。

平成31年版から変わった2か所

この積算資料には平成31年2月の版があり、道路局のページで今も参照できます。適用範囲の文言を並べると、令和7年4月版で動いたのは2か所です。

項目平成31年2月版令和7年4月版
根拠とする要領道路橋定期点検要領(平成31年2月)道路橋定期点検要領(技術的助言)(令和6年3月)および同解説・運用標準
適用する巡目2巡目以降(1巡目には適用しない)3巡目以降(2巡目には適用しない)
点検支援技術を使った場合記載なし「適用しない」と明記
対象外の構造トラス橋、アーチ橋、吊構造、複合構造その他特殊な構造同じ

巡目が1つ繰り上がったのは、要領の版が上がったことに伴う横滑りです。実務上大きいのは「点検支援技術を使用した場合には適用しない」の1文が加わったことのほうで、ドローンや画像計測などを使う前提で発注するなら、この標準歩掛をそのまま当てられません。どの技術がここでいう点検支援技術に当たるかは点検支援技術の使い方性能カタログの側で確認することになります。新技術を使ったときの費用の立て方は新技術を使うと点検費用は下がるのかで別に扱っています。

業務委託料の組み立て

業務委託料の積算式は次のとおりです。

業務委託料 =〔{(直接人件費)+(直接経費)+(その他原価)}+(一般管理費等)〕×{1+(消費税率)}

それぞれの決め方も資料に書かれています。

構成要素決め方
直接人件費業務に従事する技術者の人件費。名称と基準日額は国土交通省が別途定める「設計業務委託等技術者単価」を使う
直接経費機械経費・安全費・仮設費・旅費交通費について必要額を積算。旅費交通費は各道路管理者の旅費基準・規則等に準じる
その他原価(直接人件費)×0.35/0.65。αは業務原価に占めるその他原価の割合で35%
一般管理費等(業務原価)×0.35/0.65。βは業務価格に占める一般管理費等の割合で35%

その他原価と一般管理費等の算出式は、資料の中で完結しているわけではありません。どちらも「設計業務等標準積算基準書(令和6年度版 国土交通省)」の「第4編 調査、計画業務」の「4-2 橋梁定期点検業務等積算基準」にある式で算定した額の範囲内とする、と書かれています。率だけを孫引きせず、基準書側の年度版を合わせて確認するのが安全です。

なお、建設コンサルタント以外の個人に委託する場合(諸謝金による場合を除く)は同じ方法で積算しますが、その他原価と一般管理費等は算入しないと定められています。

標準歩掛は「10橋当り」で書かれている

標準歩掛の表は、計画準備・定期点検・報告書作成が10橋当り、打合せ協議だけが1業務当りです。1橋の単価表ではないので、そのまま橋数で割るときに端数の扱いが問題になります。

業務内容は4つに分かれます。

業務内容含まれるもの
計画準備業務計画書・実施計画書の作成、現地踏査、関係機関との協議資料作成。部材番号図の作成は含まない
定期点検近接目視による状態の把握と健全性の診断区分の決定、様式1・様式2・様式3の作成、橋梁間の移動時間、台帳補完のための現地計測
報告書作成資料と点検結果の記録のとりまとめ。様式1・様式2・様式3のオリジナルデータの電子媒体納品を含む
打合せ協議業務着手時・中間打合せ・成果品納入時。中間打合せは1回が標準で、2回以上必要な場合はその回数を計上

数値の並び方を具体的に見ておきます。定期点検の歩掛(特定の溝橋等以外・標準幅員10m程度)は、10橋当りで次のようになっています。

橋長技師B技師C技術員
15を超え20m以下7.37.16.6
20を超え30m以下8.88.57.9
30を超え50m以下10.911.09.9
50mを超える14.113.913.0

この区分では主任技師と技師Aは「-」で、点検そのものには計上されません。一方で報告書作成の歩掛は橋長によらず一定で、主任技師0.5・技師A0.6・技師B1.0・技師C1.2・技術員1.5(10橋当り)が全区分に並びます。橋が大きくなっても報告書側の標準工数は動かない、という組み方です。とりまとめ工数の実態については点検調書の作成工数でも触れています。

橋梁点検車を使う場合の作業日数も表になっています(標準幅員10m程度・10橋当り)。橋長15を超え20m以下で4.6日、20を超え30m以下で5.2日、30を超え50m以下で6.9日、50mを超えると8.4日です。日当り稼働時間は6.0〜6.6時間で、燃料費は稼働時間×4.4L/h、点検車の賃料は日1.4、運転手は1.0人という積み方になっています。点検車そのものの区分は橋梁点検車とはで整理しています。

安全費は、橋梁点検車を使用して点検を行う場合に交通誘導員の費用を計上します。標準幅員10m程度・10橋当りで、橋長15を超え20m以下なら交通整理員A4.8・交通整理員B9.7、50mを超えると交通整理員A8.2・交通整理員B18.6です。規制そのものの組み方は点検時の交通規制と道路使用許可を参照してください。

別途計上になるもの

資料が「別途」と書いているものを拾うと、予定価格から落ちやすい項目がそのまま並びます。

別途計上になるもの資料の記述
部材番号図の作成計画準備に「部材番号図の作成は含まないため、必要な場合は別途、計上するものとする」
2巡目の橋梁「2巡目の定期点検を行う橋梁については別途計上する」
点検車以外の機械リフト車、ゴンドラ、船舶などが必要な場合は「別途、費用を計上する」
仮設費足場条件は「地上、梯子及び橋梁に添架された既設の点検路」が標準。その他の仮設備が必要なら別途
特殊構造の橋梁トラス橋・アーチ橋・吊構造・複合構造その他特殊な構造は適用範囲外

足場の標準条件は見落としやすいところです。既設の点検路が使えない橋、河川内で船が要る橋、高所でロープ作業になる橋は、標準歩掛の前提から外れます。ロープ高所作業の扱いはロープ高所作業での点検にまとめました。

また、直接経費のうち積上げない分には、開発者の受託が必要な点検支援技術、全国道路施設点検データベース登録、特殊な技術計算・図面作成等の外注費、業務実績の登録等に要する費用が含まれる、と資料に書かれています。データベース登録の作業そのものは全国道路施設点検データベースで扱っています。

見積を比べる前に確認する4点

ここまでを、発注側が着手前に確かめる形に畳むと4点になります。

  1. 対象の橋は3巡目に入っているか。2巡目の橋が混ざっていれば、その橋はこの積算資料の外です
  2. 特殊構造の橋が混ざっていないか。トラス橋・アーチ橋・吊構造・複合構造は標準歩掛の対象外です
  3. 点検支援技術を使う前提か。使う前提なら、この標準歩掛を根拠にした比較はできません
  4. 部材番号図と仮設が計上されているか。どちらも標準の外側で、見積側で立っているかどうかが分かれます

同じ条件で比べるための仕様の揃え方は点検業務の共通仕様書、価格だけで決めない発注方式は総合評価方式での点検業務の発注、年度をまたぐ発注は複数年度での点検業務の発注にそれぞれ整理しています。要領そのものの改定内容は令和6年改定の定期点検要領を参照してください。

よくある質問

Q. 道路橋定期点検業務の積算基準はどこにありますか。
A. 国土交通省道路局が公開している「道路橋定期点検業務積算資料(暫定版)」にまとまっています。本記事が参照したのは令和7年4月版です。その他原価と一般管理費等の算出式については、「設計業務等標準積算基準書(令和6年度版)」の第4編4-2「橋梁定期点検業務等積算基準」を参照するよう資料が指示しています。

Q. 2巡目の橋にもこの積算資料を使えますか。
A. 使えません。資料は「2巡目の道路橋の定期点検業務には適用しないものとし、2巡目の定期点検を行う橋梁については別途計上する」と明記しています。

Q. ドローンや画像計測を使う場合も同じ歩掛でよいですか。
A. 令和7年4月版には「点検支援技術を使用した場合には適用しない」と書かれています。使用する前提で発注するなら、この標準歩掛をそのまま当てることはできません。

Q. 歩掛は1橋あたりの数字ですか。
A. 計画準備・定期点検・報告書作成の表はいずれも「10橋当り」です。打合せ協議だけが「1業務当り」で、業務着手時・中間打合せ・成果品納入時に分かれています。

Q. 部材番号図の作成費は計画準備に入っていますか。
A. 入っていません。資料は「部材番号図の作成は含まないため、必要な場合は別途、計上するものとする」としています。

Q. 足場を組む必要がある橋はどう積みますか。
A. 標準の足場条件は「地上、梯子及び橋梁に添架された既設の点検路」です。それ以外の仮設備(足場等の設置)が必要な場合は、仮設費として別途計上します。

出典・適用範囲

本文の版・記述・数値を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。

  • 国土交通省 道路局「道路橋定期点検業務積算資料(暫定版)」(令和7年4月) — 参照箇所:Ⅰ適用範囲(3巡目以降・2巡目は別途計上・特殊構造は対象外・点検支援技術を使用した場合は適用しない)、Ⅱ業務委託料の構成と費目の内容、Ⅲ業務委託料の積算(積算式、技術者単価、α=β=0.35、個人委託時の扱い)、Ⅳ業務内容(計画準備の部材番号図の除外、定期点検、報告書作成、打合せ協議)、Ⅴ標準歩掛(計画準備・定期点検・報告書作成の各表、打合せ協議、橋梁点検車の作業日数と日当り稼働時間・燃料費・賃料、安全費の交通整理員)。
  • 国土交通省 道路局「道路橋定期点検業務積算資料(暫定版)」(平成31年2月) — 参照箇所:Ⅰ適用範囲(平成31年2月の定期点検要領に基づくこと、2巡目以降に適用し1巡目には適用しないこと、対象外の構造)。令和7年4月版との差分の確認に使用。

原典リンク確認:2026年9月14日。本記事は積算資料の記載事項を確認するための実務解説で、個別の業務の予定価格・見積金額の妥当性を判断するものではありません。技術者単価は年度ごとに改定され、その他原価・一般管理費等の算出式は設計業務等標準積算基準書の年度版に拠ります。積算にあたっては、その時点の最新版と各道路管理者の基準・規則をご確認ください。