この記事の要点
  • この参考資料が対象にしているのは、図-1で※が付いた6種類(標識・ジェットファン・吸音板・警報表示板・ケーブル類・照明)の取付状態だけで、天井板・内装板・覆工・はく落防止対策工・漏水対策工・排水施設・路肩及び路面は範囲外
  • 取付部材には一般に金属系アンカーが使われ、先端部が広がって覆工に食い込むことで固着する。だからアンカーボルト付近の覆工のひび割れが脱落の原因になり得る
  • 核心は新技術の節にある一文で、附属物は落下までに目立った変形等が生じにくい場合が多い。そのためモニタリングに寄せるときは、触診やバックアップ材の設置を組み合わせることまで検討するよう求めている
  • 落下した2事例はどちらも腐食が起点で、ラジオ再放送ケーブルの事例は番線による応急措置を行った後、対策までの期間に落下している

トンネルの定期点検で照明やジェットファンの取付部を見るとき、「どこまで触るのか」「カメラやセンサーで代えられるのか」が発注図書の文面だけでは決まらないことがあります。判定そのもの(○と×の2区分)は要領に書かれていますが、取付部の状態をどう把握するか、新技術を使うときに何を先に確認するかは、要領とは別の参考資料にまとめられています。

それが国土交通省道路局 国道・技術課の「トンネル定期点検における附属物の状態把握の留意点(参考資料)」(令和2年6月・全17ページ)です。分量は少ないのですが、実際に落下した事例2件と、モニタリング技術を使う前に確認する4項目が具体的に書かれており、計画段階で読む価値があります。

この記事では、この参考資料の全文を原文で確認し、実務で先に知っておきたい内容を順に整理します。判定区分そのものの扱いはトンネル内附属物の取付状態は○と×だけ|締め直しで○に変わる異常で扱っているため、本記事では重複を避け、状態把握の方法と新技術の側に寄せています。

この参考資料はどこに置かれているか

国土交通省の「道路の老朽化対策(予防保全)」のページには、道路トンネル定期点検要領の関連資料として2本の参考資料が並んでいます。1本が本体工(覆工)の状態把握の留意点、もう1本が本記事で扱う附属物の側です。どちらも令和2年6月です。

ここで1つ注意があります。一覧ページのリンクラベルは「トンネル定期点検における附属物の状態把握(覆工)の留意点 令和2年6月」となっており、附属物の資料にも「(覆工)」が付いています。しかしPDFの表紙は「トンネル定期点検における 附属物の状態把握の留意点 (参考資料)」で、「(覆工)」は入っていません。1行上の本体工(覆工)のラベルと同じ括弧書きが残っているかたちです。資料名で検索しても見つからないときは、この表記の差が原因になり得ます。

もう1つは版の前提です。本資料の適用範囲は次のように書かれています。

本資料は、「道路トンネル定期点検要領(平成31年2月 国土交通省道路局)」(以下「要領」という。)に記載の「4.状態の把握」において、トンネル内附属物の取付状態や取付部材の異常の確認を対象として、点検箇所の一部等において近接目視によらないときの扱いも含めて具体的な運用上の注意点や技術的留意事項を記載したものである。要領と併せて参考にするとよい。

紐づいている要領は平成31年2月版です。一方で現在同じページに掲載されている要領は令和6年3月版(技術的助言)と令和6年9月版(直轄版)で、節番号も「4.状態の把握」のままとは限りません。参照先の節が動いている可能性を踏んだうえで読む資料だということです。要領側の改定内容は道路トンネル定期点検要領とは?令和6年改定の要点に整理してあります。

なお本資料には「要領等で既に示されている一部の内容も含めて記載している」と明記されており、要領と重なる記述が含まれます。重複は意図されたものです。

対象は図-1で※が付いた6種類だけ

図-1「トンネル内附属物の取付状態等の確認の対象箇所」には、トンネル断面に次の施設が描かれています。このうち※が付いたものが本資料の適用範囲(取付状態)です。

図-1に出てくる施設本資料の適用範囲(取付状態)
標識対象(※)
ジェットファン対象(※)
吸音板対象(※)
警報表示板対象(※)
ケーブル類対象(※)
照明対象(※)
天井板範囲外
内装板範囲外
覆工範囲外
はく落防止対策工範囲外
漏水対策工範囲外
排水施設範囲外
路肩及び路面範囲外

天井板と内装板が範囲外になっているのは、これらが本体工の側で扱われるためです。ただし要領では、内装板・天井板そのものは本体工でも、その取付部材は異常判定のときだけ附属物等に入る整理になっています。この切り分けはトンネル内附属物の取付状態は○と×だけで詳しく扱いました。

また、トンネルの外にある標識や照明柱は、施設そのものの点検としては別の要領が担当します。門型の標識等は門型標識等定期点検要領とは?令和6年改定と基板・支柱のA〜C評価、それ以外の標識・照明施設等は附属物(標識、照明施設等)点検要領とは?5つの点検種別と頻度、小規模なものは小規模附属物点検要領と標識柱・照明柱の点検頻度が対応します。同じ照明でも、トンネル内のものは本資料の対象になり、施設としては附属物側の要領でも見るという二重の関係になります。

異常の発生要因は「附属物自体」と「外部から」の2系統

2節では、異常の発生原因を2つに分けて代表例を挙げています。原因を知っておくことが、どこを重点的に見るかの手がかりになるという位置づけです。

系統原典に挙げられている代表的な原因
①附属物自体の劣化等によるもの経年劣化による取付部材の消耗、損傷、腐食等 / 附属物の長期間の稼働(荷重や振動等)による損傷、変形、ボルト等の緩み、亀裂等 / 附属施設の劣化(油漏れ、水漏れ等)による損傷、錆等
②外部(周辺環境等)からの影響によるもの自動車の排気ガス等(漏水・塩分含む)による化学反応、腐食等 / 温度の変化や湿度による取付部材の変形、劣化、凍結等 / 車両等の衝突による損傷、破損、変形等 / 漏水および壁面の変状による腐食、変形等

注目したいのは②の最後です。漏水および壁面の変状が、附属物の腐食・変形の原因として挙げられている点です。トンネル本体工の変状区分では漏水は独立した区分として扱われますが(トンネルの変状区分とは?外力・材質劣化・漏水で単位が変わる)、その漏水が附属物側の異常の原因にもなるという関係が明示されています。本体工の記録と附属物の記録は別に残りますが、現場では同じ場所の話になることがあるわけです。

原典はこれらについて「上記のような原因が複雑に関連しあって異常の発生に至っている場合が多い」としています。1つの原因に特定できる前提で書かれていません。

把握は近接目視・打音検査・触診を基本とする

3節(1)の冒頭に、状態の把握の基本が書かれています。

定期点検等では、トンネル内附属物の取付状態や取付部材の異常を確認することを目的に、近接目視に加えて、ハンマー等による打音検査、手による触診を行うことを基本とする。

近接目視だけでは基本を満たしません。打音検査と触診の3点セットです。打音検査は橋梁側では第三者被害予防措置の文脈でよく出てきますが(第三者被害予防措置とは?定期点検の中間年に行う打音検査)、トンネル内附属物では定期点検の本体側の手段として位置づけられています。

附属物の異常の種類は6つです。原典の列挙順で「破断」「緩み・脱落」「亀裂」「腐食」「変形、欠損」「がたつき」。鋼部材の損傷の数え方とは項目の立て方が違うので、橋梁側の区分(鋼部材の腐食・亀裂・破断とは?損傷ごとに違う評価区分)をそのまま当てないよう注意が必要です。

とくに注意すべき箇所として、図-2と写真-1で照明灯具とジェットファンの取付部が示されています。挙げられている異常発生箇所は、照明灯具側がアンカーボルトの脱落・固定金具の異常・ボルト・ナットの脱落・コンクリートアンカー、ジェットファン側が吊り金具の異常・固定金具の異常・アンカーボルトの脱落・ボルト・ナットの脱落です。

原典はさらに1点付け加えています。

また、アンカーボルト付近に生じた覆工コンクリートのひび割れが脱落の原因となるおそれがある点にも留意する必要がある。

つまり附属物の側に異常が無くても、取り付いている覆工のひび割れが脱落につながるということです。附属物を見ているつもりでコンクリートを見る場面が出てきます。うきや剥離の評価そのものはうきとは?評価はaとeだけ・剥離との違い、打音以外の調べ方は赤外線法によるうき・剥離調査とは?打音検査との関係が対応します。

取付部材の金属系アンカーは「広げて食い込ませる」構造

3節には、取付部材そのものの解説が図2枚ぶん入っています。これは要領の側にはあまり出てこない内容です。

附属物の取付部材として、一般的に金属系アンカーが用いられている。(中略)金属系アンカーの覆工コンクリートへの固着方法は図-4に示すとおり、覆工コンクリートに挿入されたアンカーボルトの先端部が広がり、覆工に食い込むことによって固着される。

図-3では、金属系アンカーがまず施工方式で2つに分かれ、その下に種類が並んでいます。原典に出ている種類は次の8つです。

方式原典に挙げられている種類
打ち込み方式芯棒打ち込み式 / 内部コーン打ち込み式 / 本体打ち込み式 / スリーブ打ち込み式
締め付け方式テーパーボルト式 / コーンナット式 / ダブルコーン式 / ウェッジ式

図-3では各方式がさらに「型」に細分されており、締め付け方式の側は一端拡張型(テーパーボルト式・コーンナット式・ダブルコーン式)と平行拡張型(ウェッジ式)に分かれています。打ち込み方式の側の型の名称は図中の小さな文字で、本記事では特定していません。図-4には固着方法の概念図として、打ち込み方式の例が2つ(本体打ち込み式・芯棒打ち込み式)と締め付け方式の例が1つ示され、いずれも覆工コンクリートの中で拡張部分が広がる形で描かれています。

実務上の意味は、固着の原理が「先端を広げて覆工に食い込ませる」ことに統一されている点にあります。固着を担っているのは、ボルトの頭ではなく埋め込まれた先端と周囲のコンクリートです。だから前節の「アンカーボルト付近の覆工ひび割れ」が脱落の原因になり得るという話とつながります。見える範囲のボルトが締まっていても、見えない先端側の保持力は外から判断できません。この点が、後で出てくる「落下までに目立った変形等が生じにくい」理由の一部にもなっています。

なお、原典は各方式の適否や使い分けの基準を示していません。どの方式を選ぶべきかという記述は本資料には無いので、点検側では「どの型が使われているか」を記録として残すところまでが範囲です。

実際に落下した2事例

3節(2)には、写真つきで2件の落下事例が載っています。どちらも腐食が起点です。

事例1:照明灯具の落下(写真-2)

この事例は照明灯具の取付部材にステンレス材、取付に鋼材を用いており、接合部は異種金属が接している状態となっていた。取付脚に腐食が確認され、その原因として、異種金属接触や環境条件(多湿)等により腐食が進行したと考えられる。

材料の組み合わせが腐食の条件を作っていたという読み方です。ステンレスと鋼を接触させたうえで多湿環境に置いた結果として、取付脚が腐食しました。点検の目で言えば、同じ型の照明が並んでいるトンネルでは、1か所で異種金属接触が見つかれば他も同じ構成である可能性が高いことになります。

事例2:ラジオ再放送ケーブルの落下(写真-3)

この事例では、定期点検時に取付部材の腐食が確認されたため応急措置(番線による固定)を実施したが、その後、対策を実施するまでの期間にラジオ再放送ケーブルが落下した。

この1行が本資料でもっとも重い部分です。点検では見つけていて、応急措置も打っていて、それでも対策までの期間に落ちています。付録-1の付表-1.2にも「ラジオ再放送ケーブルを固定していた吊りワイヤーの腐食・破断」が異常概要「ケーブルの落下」として収録されており、同じ型の異常が事例集にも入っています。

原典の対処の書き方も、応急措置を終点に置いていません。

こうした腐食による落下を防ぐためには、早急に応急措置(被覆番線による固定等)を行うとともに、防錆対策を実施した取付部材へ交換するなど、早期に対策を実施することが肝要である。

番線が「被覆番線」と書かれている点も細かいですが意味があります。裸の番線では、それ自体が異種金属接触や腐食の新しい起点になり得ます。

この向きは要領側の整理と一致しています。取付状態の異常は外力に起因するものが少なく原因推定の調査を要さない場合が多い、本体工に比べて対策も比較的容易、という理由から、原典は応急対策を実施することなく早期に本対策を実施することが基本としています。番線で固定しただけの箇所が×のまま残る理由はトンネル内附属物の取付状態は○と×だけ|締め直しで○に変わる異常で扱っています。

もう1点、原典は耐用年数にも触れています。換気施設・照明施設・非常用施設の設備や装置等には設計時に耐用年数が設定される場合があり、対策は異常の種類とあわせて耐用年数等も考慮して行う必要があるとしています。異常の程度だけで対策の時期を決める前提になっていません。

近接目視によらないときの条件

3節(3)が、新技術やカメラを使う側にとっての本題です。原文は次のとおりです。

健全性の診断の根拠となる状態の把握は、近接目視によることが基本であるが、知識と技能を有するものが、自らの近接目視によるときと同等の診断ができると判断した場合には、点検箇所の一部について、その他の方法で状態の把握を行うことが出来る。ただし、道路管理者においては、定期点検として所要の品質が確保されなければならないことに注意する必要がある。

条件を分解すると3つです。

条件原典の表現実務での意味
誰が判断するか知識と技能を有するもの判断の主体が技術者側に置かれている。発注図書に書いてあるから使える、という組み立てではない
何を判断するか自らの近接目視によるときと同等の診断ができると判断した場合技術の性能一般ではなく、その箇所でその判断ができるか
どこまで使えるか点検箇所の一部について全面の置き換えは想定されていない

さらに原典は、その他の方法を使う場合に活用の範囲や対象となる異常の種類等について確認し、状態の把握の内容に不足する事項等が無いように留意するよう求めています。前節で見た異常の6種類のうち、どれがその方法で拾えてどれが拾えないのかを先に整理する、という作業です。

品質確保の担い手についても明記があります。道路トンネルやその維持管理等に関する必要な知識や経験、道路トンネルに関する相応の資格等、定期点検に関する技能を有したものが従事することが重要であり、新技術等を活用して状態の把握を行う場合においても同様とされています。技術を入れても従事者の要件は下がりません。

近接目視の定義と「同等の評価が行える他の方法」の要件は近接目視とは?定義と「同等の評価が行える他の方法」の要件、橋梁側でドローンを使う場合の整理はドローン橋梁点検と「近接目視を基本」の関係:要領上の整理、標識点検でカメラを使う条件は標識点検でカメラを近接目視の代わりにできる条件|5m以内・振れ角60度が対応します。近接目視によらなかった箇所をどこに書くかはデータ記録様式(その2)とは?近接目視によらない箇所の記録にまとめています。

モニタリング技術を使う前に確認する4項目

4節が新技術活用の留意事項です。まず参考にすべき資料として、要領のほか新技術利用のガイドライン(案)(平成31年2月)、点検支援技術性能カタログ(案)(令和2年6月)、モニタリング技術も含めた定期点検の支援技術の使用について(参考資料)(令和2年6月)が挙げられています。性能カタログの読み方はAIひび割れ検出ツールの選び方:性能カタログの比較観点5つに整理してあります。

そして本資料でもっとも実務に効く一文が、この節に入っています。

こうした近接目視によらない新技術等やモニタリング技術の使用を計画する場合においても、附属物等の落下までに目立った変形等が生じにくい場合が多いことを踏まえると、新技術等の特徴や適用性を考慮した上で、必要に応じて点検時の触診やバックアップ材の設置を組み合わせることについても検討するのがよい。

変形を検出する技術は、変形が出る対象にしか効きません。附属物の取付部は、前節で見たように固着を担っているのが埋め込まれた先端側なので、保持力が落ちても外形はほとんど変わらないまま落ちることがあります。だから原典は、モニタリングに置き換えるのではなく、触診とバックアップ材を組み合わせるところまで検討するよう書いています。

その前提で、道路管理者が計測・モニタリング技術を使う際に事前に確認するとよい項目が4つ挙げられています。

確認項目原典が挙げている内容
①新技術等の活用の目的と対象項目用いる目的(常時モニタリング、ボルト等の抜け、緩み・がたつきの検出、取付部材の変形・欠損等の検出等)を明確にする。常時モニタリングに用いる場合は、対象とする異常の種類を確認し、対象外の異常の扱い(別途、近接目視による等)も事前に確認する
②対象範囲すべての取付部材に適用しない場合には、適用する部分としない部分の扱いも事前に確認する
③計測・モニタリング技術の特性及び性能各技術の特性を確認し、目的に応じて使い分ける
④実施体制等機器等の設置方法 / 活用時の環境条件(季節、時間、温度等)/ 対象トンネルの現場条件(延長、断面形状、照度、走行条件等)

①と②に共通しているのは、対象外になる部分の扱いを先に決めておくという点です。センサーで見る箇所と近接目視で見る箇所が混在したときに、どちらでも見ていない箇所が残らないようにするための確認です。

③について、原典は主な技術を3種類挙げています。

技術原典の説明
変位計測技術センサー類を対象物に取り付けることによって変位を計測する技術。検出した変位について、異常と判断するための閾値の設定は別途検討する必要がある
取付状態の異常を通知する技術光ファイバー等を用いて、附属物の取付状態の異常を可視化する技術
画像計測技術を用いた附属物の計測技術画像計測により、附属物本体等の移動や変形を検出する技術

変位計測技術の括弧内が重要です。閾値は技術側では決まっておらず、別途検討する扱いになっています。導入の検討で「何mmで異常と判断するのか」を先に聞いておかないと、計測値は取れるが判定に使えないという状態になり得ます。センシング・モニタリング・非破壊検査の線引きはセンシング・モニタリング・非破壊検査の違い|3つの定義と使い分け、措置としての監視を計画する場合の考え方は措置としての「監視」とは?モニタリング計画の立て方、支援技術の全体像は点検支援技術の選び方 完全ガイド:AI・ドローン・LiDARが対応します。

4節の末尾には「その他留意事項」として、第三者被害の予防方策が置かれています。

新技術を常時モニタリングに用いる場合であっても、突発的な異常発生による附属物の落下等を防止するためには、附属物に対してはバックアップ材を取り付ける等の第三者被害の予防方策にも留意する。

常時モニタリングでも突発的な落下は防げないという前提で書かれています。橋梁側で第三者被害の措置対象をどう決めるかは第三者被害の措置対象範囲は75°で決まる|付録-2の図の読み方にまとめてあります。

なお、措置の一部として監視を行う場合にモニタリング技術の使用を計画するにあたっては、別途「監視計画の策定とモニタリング技術の活用について(参考資料)」(令和2年6月)が参考になるとされています。

記録に残すのは応急措置の内容まで

5節は記録です。原典の指示は短く、次の1点に集約されています。

定期点検時に限らず異常を発見した時にボルトの締め直し等の応急措置を行った場合は、以後の維持管理において有効に活用出来るよう適正に記録に残すことに留意する。なお、新技術等を用いた場合には、その箇所の記録を記録様式等に残しておくとよい。

定期点検のときに限らないとあるのが要点です。巡視などで見つけて締め直した場合も記録の対象になります。加えて、新技術を使った箇所も様式に残します。

付録-2には記録様式の例が収録されており、付図-2.1が「定期点検結果総括表(トンネル内附属物等の取付状態)」です。例として入っている行は、照明(金具)の取付部でボルトの緩み2件・ボルトの欠損1件、照明(本体)でカバーの損傷1件という構成で、距離・覆工スパン番号(S8など)・異常番号・部位区分まで入っています。応急措置の欄には「ボルト締め直し」「針金により固定」「カバー取り外し」が記入され、実施状況が「済」になっています。

様式に付いている注記が4つあり、記入の判断に直結します。

注記内容
記録の対象異常判定区分×について記入する。また、応急措置により○と判定された箇所も記入する
応急措置をしない場合応急措置を実施しないで判定した箇所の異常判定区分は、異常判定区分の「応急措置後」の欄に記入する
緊急対応が必要な場合異常の除去が不完全で、緊急対応が必要な場合は対応方針欄に記入する
同一スパンに複数ある場合1スパンの覆工に複数の異常がある場合は、異常箇所毎に記入する

2つめの注記は見落としやすいところです。応急措置をしていない箇所でも、空欄にするのではなく「応急措置後」の欄に書きます。つまりこの欄は応急措置の有無ではなく、最終的な判定を置く欄として使われています。

付録-1には異常写真例が付表-1.1から付表-1.3まで3枚あり、取付部材・ボルト・ナット・照明本体取付部・ケーブル等の固定部といった部位ごとに、異常概要が「落下の危険性がある」「ケーブルの落下」として整理されています。収録されている異常概要には、照明本体取付部の覆工コンクリートのひび割れも入っています。前節で触れた「附属物ではなくコンクリートを見る」場面が、事例としても残されているかたちです。

記録様式そのものについては「記録様式作成にあたっての参考資料(道路トンネル定期点検版)」(平成31年2月)も参考にするとよいとされています。橋梁側で附属物の損傷をどう記録するかは様式その10とは?付属物の損傷は措置の必要性で記録する、調書全体の構成は橋梁点検調書の構成と書き方:様式の全体像と記入の要点が対応します。健全性の診断の区分そのものの定義はトンネルでは告示で決まっており、トンネル等の健全性の診断結果の分類に関する告示とは?Ⅰ〜Ⅳの定義を解説と健全性の診断(判定区分Ⅰ〜Ⅳ)とは?定義と判定の考え方で扱っています。

最後に6節で、トンネルの附属物に関わる基準・要領が8本列挙されています(令和2年5月現在)。道路トンネル技術基準(平成元年)、道路トンネル非常用施設設置基準(平成31年)、道路照明施設設置基準(平成19年)、附属物(標識、照明施設等)点検要領(平成31年3月)、道路関係設備(機械設備)点検・整備・更新マニュアル(案)(平成28年3月)、トンネル換気設備・非常用施設点検・整備標準要領(案)(平成28年11月)、電気通信施設点検基準(案)(平成28年11月)、電気通信施設維持管理計画指針(案)(平成30年3月)です。附属物(標識、照明施設等)点検要領は平成31年3月版が挙げられていますが、現行は令和6年9月版です。本資料が令和2年6月時点の一覧であることを踏まえて、版は個別に確認する必要があります。要領と自治体のマニュアルのどちらに従うかという関係は国交省要領と都道府県の点検マニュアルの関係:どちらに従う?にまとめています。

よくある質問

Q. この参考資料はどこにありますか。資料名で検索しても見つかりません。
A. 国土交通省「道路の老朽化対策(予防保全)」のページで、道路トンネル定期点検要領の関連資料として掲載されています。一覧のリンクラベルは「トンネル定期点検における附属物の状態把握(覆工)の留意点 令和2年6月」で「(覆工)」が付いていますが、PDFの表紙には「(覆工)」はありません。1行上に並ぶ本体工(覆工)の資料と同じ括弧書きが残っているかたちなので、表紙の名称で検索すると一覧に当たらないことがあります。

Q. 対象はトンネル内のすべての施設ですか。
A. いいえ。図-1で※が付いた6種類(標識・ジェットファン・吸音板・警報表示板・ケーブル類・照明)の取付状態だけが本資料の適用範囲です。天井板・内装板・覆工・はく落防止対策工・漏水対策工・排水施設・路肩及び路面は図には描かれていますが範囲外です。

Q. 近接目視だけで基本を満たしますか。
A. 満たしません。原典は「近接目視に加えて、ハンマー等による打音検査、手による触診を行うことを基本とする。」としています。ボルトの緩みや折損は目視では判断しにくいため、触診が基本の中に入っています。

Q. モニタリング技術を入れれば点検の手間を置き換えられますか。
A. 本資料はその組み立てになっていません。「附属物等の落下までに目立った変形等が生じにくい場合が多い」ことを踏まえ、必要に応じて点検時の触診やバックアップ材の設置を組み合わせることについても検討するのがよい、とされています。また常時モニタリングに用いる場合でも、突発的な異常発生による落下を防ぐためにバックアップ材等の第三者被害の予防方策に留意するよう書かれています。

Q. 変位計測技術を使うとき、異常と判断する閾値は資料に載っていますか。
A. 載っていません。原典は「検出した変位については、異常と判断するための閾値の設定については、別途検討する必要がある」としています。数値の基準は本資料では示されていないため、導入の検討段階で誰がどう決めるのかを確認しておく必要があります。

Q. 応急措置をすれば落下は防げますか。
A. 本資料には、定期点検時に取付部材の腐食が確認されて番線による固定を行ったものの、対策を実施するまでの期間にラジオ再放送ケーブルが落下した事例が写真つきで載っています。原典は、応急措置を行うとともに防錆対策を実施した取付部材へ交換するなど早期に対策を実施することが肝要であるとしており、応急措置を終点に置いていません。

Q. 附属物に異常が無ければ、その箇所は見終わったことになりますか。
A. なりません。原典は「アンカーボルト付近に生じた覆工コンクリートのひび割れが脱落の原因となるおそれがある点にも留意する必要がある」としています。金属系アンカーは先端部が広がって覆工に食い込むことで固着する構造なので、取り付いているコンクリート側の状態も脱落に関わります。

Q. 本資料は平成31年2月版の要領に紐づいていますが、今でも使えますか。
A. 本資料は令和2年6月に出され、適用範囲で参照している要領は平成31年2月版です。現在同じページに掲載されているトンネルの要領は令和6年3月版(技術的助言)と令和6年9月版です。節番号や記述が移動している可能性があるため、要領側の該当箇所は現行版で確認する必要があります。本記事も、本資料の記述がそのまま現行要領の条文であるという扱いはしていません。

出典・適用範囲

本文の記述・表・注記を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。原典の図(図-1〜図-4)、写真(写真-1〜写真-3)、付録-1の異常写真例、付録-2の様式の罫線やレイアウトは再現していません。

本記事は、トンネル内附属物の取付状態の状態把握について、令和2年6月の参考資料の記述を原文で確認するための実務解説です。異常判定区分(○・×)の定義と応急措置による判定の変わり方は、同じ参考資料の表-1にも載っていますが、本記事では要領側を扱った既存記事に譲り、重複を避けています。図-3の打ち込み方式の側の「型」の名称、図-2・写真-1〜3・付録-1の写真そのもの、付録-2の様式の全項目、新技術利用のガイドライン(案)・点検支援技術性能カタログ(案)・記録様式作成にあたっての参考資料の各本文は本記事では扱っていません。本資料が参照している要領は平成31年2月版で、現行版での節番号・記述の対応は確認していません。個別のトンネルや個別の附属物についての異常判定・措置の要否の判定も行いません。適用される要領の版、発注図書の仕様、道路管理者の指示を優先してください。