この記事の要点
  • 3語を分けているのは測る対象ではなく「何を明らかにしたうえで測るか」です。センシングは精度、モニタリングは精度・頻度等を明らかにすることが定義に入っています
  • モニタリングは「時間的に連続的または離散的に計測し続ける行為」。離散的な繰り返し計測も含むので、常時計測でなければモニタリングではない、という読み方は定義と合いません
  • 非破壊検査の定義は2つ。①破壊調査・試験で得られる物理量を推定する ②構造の内部の変状の位置や分布を推定する。狙いが違う2つが同じ語に入っています
  • 共通の特徴は定量的な情報が取れる/同条件なら再現性が期待できる/遠隔操作で現地に人が滞在しなくてよい技術もあるの3点です
  • 性能カタログに書かれているのは開発者が設計値としている動作条件・誤差特性と、開発者が保証する適用条件・誤差特性。「実際の適用や結果の解釈は、利用者が判断することになる」と明記されています
  • 診断の部分まで自動化を目指す機器は「本資料における点検支援技術の概念を超えている」が、利活用自体は否定されていません。条件は知識と技能を有する者が構造物ごとに位置づけることです
  • 令和6年改定後の要領(道路橋・トンネル・シェッド等)は、支援技術を使ったら「今後の検証が可能となるように使用機器等の情報を記録する」と求めています

ドローンの写真測量は「センシング」なのか「非破壊検査」なのか。ひずみゲージを月1回読みに行くのは「モニタリング」と言ってよいのか。稟議書や業務計画で技術の名前を書くときに、この線引きがあいまいなまま進むと、後で「カタログのどのグループで比較したのか」が説明できなくなります。

この3語を定義しているのは「モニタリング技術も含めた定期点検の支援技術の使用について(参考資料)」(令和2年6月・国土交通省 道路局 国道・技術課)です。性能カタログ自体の読み方は点検支援技術性能カタログとは?読み方と活用方法に、技術選定の全体の流れは点検支援技術の選び方 完全ガイド:AI・ドローン・LiDARに整理しました。本記事は用語の線引きと、利用者側に残る判断の範囲だけを原文で読みます。

3語は「何を明らかにしたうえで測るか」で分かれている

参考資料の2.用語の定義は、まず前置きとしてこう書いています。

「本資料、「点検支援技術性能カタログ(案)(令和2年6月国土交通省)」(以下「性能カタログ」という。)及び「監視計画の策定とモニタリング技術の活用について(参考資料)(令和2年6月国土交通省道路局国道・技術課)」では、センシング、モニタリング及び非破壊検査という用語を必ずしも厳密に定義しているわけではないが、道路トンネル定期点検要領や道路橋定期点検要領等の付録1にある用語の定義との関係性も考慮し、それぞれ概ね以下のような意味合いで用いている。」

「必ずしも厳密に定義しているわけではない」「概ね以下のような意味合い」と自ら留保を付けている点は、そのまま押さえておきます。これは条文ではなく参考資料の整理です。そのうえで並べられた3つを原文で書き出します。

用語定義(原文)定義に入っている条件
センシング構造の位置や応答等を、精度を明らかにしたうえで、センサを利用し計測する行為精度
モニタリング構造の位置や応答等の対象とする計測項目について精度・頻度等を明らかにしたうえで、時間的に連続的または離散的に計測し続ける行為精度・頻度等+計測し続ける
非破壊検査①構造の外部から計測を行い、その結果から、破壊調査・試験で得られる物理量を推定する行為 ②構造の外部から計測を行い、その結果から、構造又はその一部を破壊せずに構造の内部の変状の位置や分布を推定する行為構造の外部から計測+推定

センシングとモニタリングはどちらも「構造の位置や応答等」を測る行為で、対象が違うのではありません。違うのは、事前に明らかにしておくものがセンシングでは精度だけ、モニタリングでは精度に加えて頻度等まで含まれること、そして「計測し続ける」という時間の軸が入ることです。

カタログ側のグループ分けは、この区別どおりにはなっていません。参考資料自身が「技術のグループ分けについては、センシング技術とモニタリング技術については技術として重複していることもあり、計測・モニタリング技術としてまとめてグループ分けをしている。」と書いています。用語は分かれているが、カタログの分類は1つに束ねられている——比較表を作るときはここで名前がずれます。

モニタリングは連続計測だけを指す言葉ではない

定義の後半、「時間的に連続的または離散的に計測し続ける行為」の「離散的」が実務では効きます。常時通電して波形を取り続けるものだけがモニタリングだと読むと、定義より狭くなります。

たとえば、同じ測点を同じ精度で定期的に測り直して並べていく形も、頻度を明らかにして「計測し続ける」のであれば定義の中に入ります。逆に、1回だけ測って終わるのであれば、それは「計測し続ける」に当たらず、センシングの側の説明になります。回数と間隔を計画に書いているかどうかが分かれ目です。

なお、措置としての監視でモニタリング技術をどう位置づけるかは別の参考資料が担当しています。参考資料自身が「道路トンネル定期点検要領や道路橋定期点検要領等の付録1の2(9)では、監視において、各種のモニタリング技術の活用も検討するのがよいことが助言されている。これについては、今般、別途「監視計画の策定とモニタリング技術の活用について(参考資料)(令和2年6月国土交通省道路局国道・技術課)」を作成しているので、そちらを参考にされたい。」と案内しています(措置としての「監視」とは?モニタリング計画の立て方)。定期点検を支援するための使い方と、措置としての監視の使い方は、別の文書に分けて書かれているということです。

非破壊検査には定義が2つある

非破壊検査だけは、1)2)と番号が振られた2つの定義が並んでいます。どちらも「構造の外部から計測を行い、その結果から」で始まりますが、推定する先が違います。

推定するもの(原文)知りたいこと
1)破壊調査・試験で得られる物理量を推定する材料や断面の性質。本来は壊して調べるもの
2)構造又はその一部を破壊せずに構造の内部の変状の位置や分布を推定する内部のどこに、どれだけ広がっているか

この2つは、1つの機器で両方できるとは限りません。「非破壊検査技術を使う」と書いただけでは、どちらを狙っているのかが伝わらない構造になっています。うき・剥離の広がりを見る赤外線法は2)の側の話です(赤外線法によるうき・剥離調査とは?打音検査との関係)。

3つの技術に共通する特徴は3点

3.の冒頭が、目視・打音・触診との違いを次のように述べています。

「いずれの技術も、診断に資する情報として、状態の把握を行うことを支援するものである。これらの技術の特徴として、目視、打音・触診では情報に占める定性的な部分の割合が多いことに比べ、センシング技術、モニタリング技術、非破壊検査技術はいずれも構造物の応答や挙動を表す物理量を、精度・頻度等を明らかにしたうえで、計測できるという特徴がある。」

続けて挙げられている具体的な特徴は3つです。

  • 変位、ひずみ、加速度等について、定量的な情報の取得が可能であること。
  • 同じ条件、環境下であれば、一定の誤差等の範囲で再現性が得られると期待されること。
  • 点検支援技術を遠隔操作することで、現地に必ずしも人が滞在する必要がない技術もあること。

2つ目は「同じ条件、環境下であれば」という限定と「期待される」という語尾が付いています。無条件に再現するとは書かれていません。3つ目も「技術もある」で、すべてがそうだとは書かれていません。このあたりは稟議書の効果欄に写すときに言い切らないほうが安全な部分です(点検支援技術の導入稟議の書き方:承認される4つの構成要素)。

いずれも「状態の把握を行うことを支援するもの」という位置づけで、近接目視そのものの置き換えとして書かれているわけではない点も確認しておきます(近接目視とは?定義と「同等の評価が行える他の方法」の要件)。

目的ごとに「より直接的」な手段が示されている

3.の後半は、何を知りたいかによって「より直接的」な手段が変わることを述べています。原文の対応を表にします。

知りたいこと原文が「より直接的」としている手段
部材の有効断面やそこに含まれる材料の物理的・機械的性質の推定それを目的にしたサンプリング(破壊)検査、非破壊検査等
設計基準に則した部材等の限界状態(強度や破壊形態)の評価、強度の評価同上(有効断面と材料の性質の把握が必要になるため)
沈下、傾斜、移動等が既に発生しているかどうか測量やセンシング機器等による計測

そしてモニタリング技術については「技術の特徴によっては、いずれの目的でも用いることができる可能性があるし、時間的に継続して計測し続けられる。」としています。万能だと書いているのではなく、「技術の特徴によっては」「可能性がある」という条件付きです。

この整理は、点群で何が分かるかの線引きとも対応します。沈下や傾斜のような幾何量の変化は測れる側、内部の材料の性質は別の手段という並びです(LiDAR・点群データの橋梁点検活用:できること・できないこと)。

性能カタログに載るのは開発者の保証値。解釈は利用者の判断

4.が、カタログに何が書かれているのかを明確にしています。

「そのうえで、性能カタログに記載の機器については、開発者が機器等の設計値としている動作条件や誤差特性、開発者が保証する適用条件や誤差特性等を記載している。記載のない機器についても、同様の情報を開発者に求めることで比較検討すればよい。ただし、開発者が全てを事前に想定できるものではないので、各機器の原理等も参考に、実際の適用や結果の解釈は、利用者が判断することになる。」

読み取れることが3つあります。

  1. カタログの数値は開発者の設計値・保証値であって、第三者の検定結果として書かれているわけではない
  2. カタログに載っていない機器も比較できる。「同様の情報を開発者に求めることで比較検討すればよい」と書かれている
  3. 適用と結果の解釈の責任は利用者側に残る。「開発者が全てを事前に想定できるものではない」が理由として示されている

2つ目は、カタログ掲載を調達の必須条件にしなくてよい根拠として読めます。掲載の意味そのものはNETISと性能カタログの違い。掲載は使用許可ではないに整理しています。

また、統一表記が整ったのは公募を経た結果であることも書かれています。「性能カタログに記載のある技術では、計測や導出の原理、適用条件、誤差特性については、統一的な表記項目と表示方法について、今回、公募した技術の開発者と共同で整理がされた。」——つまり表記が揃っているのは公募に応じた技術の範囲です。

現地計測は1日の中で動く。複数箇所の同時計測を計画に入れる

4.の中で、現地計測の解釈について具体的な注意が書かれています。

「また、現地計測での結果の解釈にあたっては、温度変化の影響、構造物の左右上下の温度差など構造物を取り巻く状況は一日の中でも常に変化し、また、構造物は常に応答しつづけていることに注意する必要がある。そのため、複数箇所の計測を同時に行うことも計画時点から想定することも求められる場合がある。」

「構造物は常に応答しつづけている」という前提が置かれているので、1点1回の計測値を絶対値として扱う作りの計画は、この注意に正面から当たります。対策として挙げられているのが複数箇所の同時計測で、しかも「計画時点から想定する」ことが求められる場合がある、と書かれています。現地に行ってから足せるものではない、という読み方になります。

続けて、記録についての一文があります。

「計画策定の際には、これらの計画策定にあたっての背景も、計測結果の利用や計画の見直しを行うときに第三者が遡って参照できるように記録しておくとよい。」

残すのは測定値だけでなく「計画策定にあたっての背景」です。なぜその測点にしたのか、なぜその頻度にしたのかを、第三者が遡って参照できる形で置いておく、という指示です。

診断の自動化を目指す機器は「概念を超えている」が否定されない

参考資料の最後の段落が、AIによる判定まで行う機器の扱いに触れています。

「なお、機器等によっては、特定の部位・事象に着目し、独自の着眼点で健全性を評価するなど、いわゆる診断の部分についても自動化を目指すものもある。本資料における点検支援技術の概念を超えているが、それらの情報の利活用自体は否定されるものではない。ただし、利活用するとしても、知識と技能を有する者が、構造物ごとに、その解釈と活用方法について適切に位置付けたうえで用いることが肝要である。」

3段構えになっています。①この資料の言う「点検支援技術」の枠の外である ②だが使うこと自体は否定しない ③使うなら、知識と技能を有する者が構造物ごとに位置づける。

条件が「構造物ごとに」である点が重い部分です。ツール単位で一度位置づけを決めて全橋に適用する、という運用は条文の書き方と合いません。AI側の精度をどう読むかはAIひび割れ検出の「精度」の見方と技術者確認の設計、比較観点はAIひび割れ検出ツールの選び方:性能カタログの比較観点5つにまとめています。

令和6年の要領が求めるのは、使用機器の情報まで記録すること

この参考資料は令和2年6月で、本文が引いているのは平成31年2月版の要領です(「「道路トンネル定期点検要領」や「道路橋定期点検要領」等(いずれも平成31年2月 国土交通省道路局)では」)。要領はその後、令和6年3月に改定されています。

そこで令和6年3月の解説・運用標準3本を実際に確認しました。「センシング」「モニタリング」はいずれも0件で、用語の定義は改定後の要領側に移されていません。この参考資料が引き続き定義の置き場所になっているという状態です。

一方で、令和6年版の3本には様式1の記録の手引き「2.健全性の診断の区分の前提」に同じ一文が置かれています。

「また、点検支援技術や非破壊検査技術等を活用する場合は、その部位・部材について記録するとともに、今後の検証が可能となるように使用機器等の情報を記録する。」

文書センシングモニタリング上の一文
道路橋定期点検要領 解説・運用標準(令和6年3月)0件0件あり
道路トンネル定期点検要領 解説・運用標準(令和6年3月)0件0件あり
シェッド・大型カルバート等定期点検要領 解説・運用標準(令和6年3月)0件0件あり

つまり改定後に残っているのは、用語の分類ではなく記録の義務のほうです。支援技術を使ったら、どの部位・部材に使ったかと使用機器等の情報を、「今後の検証が可能となるように」記録する。前段の「近接目視により状態が把握できない部位・部材がある場合は、健全性の診断の区分の前提条件として記録する。」と一組で読む形になっています。

令和2年の参考資料が「選定と解釈は利用者の判断」と言い、令和6年の要領が「使った機器を検証可能な形で記録せよ」と言う。判断を預けた代わりに、根拠の記録を求めているという並びになっています。

よくある質問

Q. センシングとモニタリングは何が違うのですか。
A. 明らかにしておく項目と、時間の軸が違います。「モニタリング技術も含めた定期点検の支援技術の使用について(参考資料)」(令和2年6月・国土交通省 道路局 国道・技術課)は、センシングを「構造の位置や応答等を、精度を明らかにしたうえで、センサを利用し計測する行為」、モニタリングを「構造の位置や応答等の対象とする計測項目について精度・頻度等を明らかにしたうえで、時間的に連続的または離散的に計測し続ける行為」としています。測る対象は同じで、モニタリングには頻度等の明示と「計測し続ける」ことが入ります。

Q. 常時計測でなければモニタリングと呼べないのですか。
A. 定義は「時間的に連続的または離散的に計測し続ける行為」なので、離散的な繰り返し計測も含みます。1回だけ測って終わる場合は「計測し続ける」に当たりません。頻度を明らかにして計画に書いているかどうかが分かれ目になります。

Q. 性能カタログに載っていない機器は使えないのですか。
A. 参考資料は「記載のない機器についても、同様の情報を開発者に求めることで比較検討すればよい」としています。カタログに記載があるのは、開発者が設計値としている動作条件や誤差特性、開発者が保証する適用条件や誤差特性等です。また「開発者が全てを事前に想定できるものではないので、各機器の原理等も参考に、実際の適用や結果の解釈は、利用者が判断することになる」と明記されています。

Q. AIが損傷の判定まで行うツールは、点検支援技術に入りますか。
A. 参考資料は、診断の部分についても自動化を目指すものは「本資料における点検支援技術の概念を超えている」としつつ、「それらの情報の利活用自体は否定されるものではない」と述べています。ただし条件があり、「知識と技能を有する者が、構造物ごとに、その解釈と活用方法について適切に位置付けたうえで用いることが肝要である」とされています。構造物ごとの位置づけが求められている点が要点です。

Q. 計測の計画で、特に注意すべきことは何ですか。
A. 温度と時間です。参考資料は「温度変化の影響、構造物の左右上下の温度差など構造物を取り巻く状況は一日の中でも常に変化し、また、構造物は常に応答しつづけていることに注意する必要がある」としたうえで、「複数箇所の計測を同時に行うことも計画時点から想定することも求められる場合がある」と述べています。あわせて、計画策定の背景を第三者が遡って参照できるように記録しておくとよいとしています。

Q. この参考資料は令和2年のものですが、今も使えますか。
A. 用語の定義の置き場所としては現行です。令和6年3月の解説・運用標準3本(道路橋・道路トンネル・シェッド大型カルバート等)を確認したところ、「センシング」「モニタリング」はいずれも0件で、定義は改定後の要領側に移されていません。一方、令和6年版の3本には様式1の記録の手引き「2.健全性の診断の区分の前提」に「点検支援技術や非破壊検査技術等を活用する場合は、その部位・部材について記録するとともに、今後の検証が可能となるように使用機器等の情報を記録する」という一文が置かれています。適用される要領の版は道路管理者ごとに異なるため、採用版をご確認ください。

出典・適用範囲

本文の版・記述・引用を確認するための一次資料です。PDFを当夜取得し、該当箇所を原文で照合しました。引用の読点・句点は原典の表記に合わせています。「0件」と記した語の出現数は、当夜取得したPDFの全文テキストに対する実測値です。

原典リンク確認:2026年10月4日。本記事は点検支援技術に関する用語と留意点を確認するための実務解説で、個別の機器の性能評価や推奨を行うものではありません。引用元の参考資料は令和2年6月時点のもので、本文が参照している定期点検要領は平成31年2月版です。適用される要領は道路管理者ごとに異なるため、採用版を必ずご確認ください。