ドローン(UAV)による橋梁点検は、高所や桁下など接近が難しい箇所を効率的に把握できる手段として注目されています。一方で、「近接目視を基本とする」点検要領のなかで、ドローンがどこまで認められるのかは、導入を検討する現場が最も気にする点です。令和6年改定は、この関係に一定の整理を与えました。
本記事では、ドローン点検が点検要領のなかでどう位置づけられるかを、近接目視の枠組みと令和6年改定の内容に沿って整理します。ドローン活用の要件と、性能カタログとの関係を押さえることを目的とします。
- 点検は近接目視が基本だが、令和6年改定で「同等の評価が行える他の方法」の活用が明確化された
- ドローン点検は、近接目視と同等の評価が行える範囲で、状態把握の手段として活用できる
- 活用にあたっては、使用機器等の記録や、点検技術者による確認が前提になる
- ドローン等の技術は点検支援技術性能カタログに掲載され、性能値と適用条件を確認できる
ドローン点検への期待
橋梁点検で足場や高所作業車、あるいは橋梁点検車を用いる作業は、費用と手間の大きな部分を占めます。桁下や高橋脚など、人が接近しにくい箇所ではなおさらです。ドローンは、こうした箇所に接近して撮影できるため、点検の効率化や安全性の向上につながる手段として期待されています。特に、規模の大きい橋や、交通規制が難しい橋での活用に関心が集まっています。
「近接目視を基本」との関係
ドローン点検を考えるうえで避けて通れないのが、点検が「近接目視を基本とする」枠組みのなかにあることです。近接目視は、部材の状態を評価できる距離まで接近して目視する方法であり、点検の原則です。ドローンによる撮影がこの原則のなかでどう扱われるかが、活用の可否を左右してきました。
令和6年改定でどう整理されたか
令和6年3月の改定では、状態の把握について「近接目視、または近接目視による場合と同等の評価が行える他の方法により収集する」という考え方が示され、必ずしも全ての部材に近接目視を行わなくてもよい場合もあると考えられる旨が解説で示されました。これにより、ドローンをはじめとする新技術を、近接目視と同等の評価が行える範囲で活用する道が、より明確になったと理解できます。ただし、これは近接目視の原則を外すものではなく、同等性を前提とした代替の位置づけです。
ドローン活用の要件
ドローンを点検に用いる場合、いくつかの実務的な要件を満たす必要があります。第1に、得られる情報が近接目視と同等の評価を行えるものであること。撮影距離や解像度によって捉えられる損傷が変わるため、対象とする損傷に応じた条件管理が求められます。第2に、点検支援技術を使用した場合は、使用機器等の情報を記録すること。第3に、最終的な状態把握・診断は点検技術者が確認して行うことです。加えて、ドローンの飛行そのものには航空法等の関係法令に基づく手続きが別途必要になります(特定飛行の該当判断・カテゴリー区分・DIPS2.0での申請の実務はドローン橋梁点検でできること・できないこと:航空法の手続きまで整理で詳しく扱っています)。
ドローン点検は「近接目視の代わり」ではなく「同等の評価が行える範囲での代替手段」です。対象損傷に応じた撮影条件、使用機器の記録、技術者確認をそろえて初めて、要領の枠組みのなかで活用できます。
性能カタログとの関係
ドローンや画像計測などの点検支援技術は、国土交通省の点検支援技術性能カタログに掲載されており、検出できる損傷や性能値、適用条件を確認できます。カタログは技術選定の参考になりますが、掲載は国による性能保証を意味するものではありません。導入にあたっては、カタログの性能値と適用条件を、自社が対象とする橋や損傷の条件に当てはめて確認することが重要です。技術選定の考え方は、関連記事で詳しく扱います。
よくある質問
ドローンだけで橋梁点検を完結できますか?
近接目視と同等の評価が行える範囲での活用が前提で、最終的な状態把握・診断は技術者が確認して行います。対象や条件によっては近接目視や他の方法との併用が必要になり、無条件にドローンだけで完結できるわけではありません。
ドローン飛行に許可は必要ですか?
点検要領の要件とは別に、ドローンの飛行には航空法等の関係法令に基づく手続きが必要になる場合があります。飛行させる空域や方法に応じた手続きを確認してください。
ドローンで撮った画像はそのまま調書に使えますか?
撮影画像は状態把握を支援するデータであり、そのまま診断結果になるものではありません。技術者が確認し、必要な記録(使用機器等の情報を含む)とあわせて整理する必要があります。