- 判定区分は無・B・C・D・未の5つ。Aは無い。B=応急措置でリスクを回避できた、C=応急措置ができなかった、D=将来の被害リスク拡大が予測される、無=その危険性がない、未=点検が実施できなかった
- 判定は部材毎に行う。橋単位でも径間単位でもない
- 見るのは落下・転倒だけ。落橋・桁端部の破損による路面段差・ケーブル破断・基礎の洗掘による不等沈下は、要領(案)が明示的に対象外としている
- 鋼部材の「著しい腐食」には数値がある。部材面積1/2以上の孔食、1/2以上の板厚減少を伴う腐食等で、表面錆などの単なる腐食は異常なしと見なす
- 既に起きたものの扱いが損傷ごとに違う。ボルトの脱落済みは対象外/剥離して落下した痕は対象外(ただし剥離痕周辺部のうきは対象)/うきは全てが対象
- 管理台帳に載っていない施設や部品も、現地に存在していれば全て対象。確認したら記録して以降の管理の充実を図る
- 調書は4枚(橋梁諸元/総括表/損傷記録表/点検予定表)。総括表の点検状況は「済」「未」「外」で、「外」は被害が想定されない箇所=点検対象外の印
橋の点検で出てくる記号は、どの点検の話かで中身が入れ替わります。定期点検の健全性はⅠ〜Ⅳ、対策区分はA〜E。ところが総点検の判定区分は、そのどちらでもありません。無・B・C・D・未の5つで、Aが無く、B・C・Dが別の意味を持ちます。
この5区分を定めているのが「総点検実施要領(案)【橋梁編】」(平成25年2月・国土交通省道路局)です。記録様式まで含めて全15ページで、適用範囲にこう書かれています。
「また、本要領(案)は、主として市町村が総点検を実施する際の参考として作成したものであり」
市町村向けに書かれた要領のため、国の定期点検要領を読み慣れていると区分の記号だけが似ていて混乱します。この記事では、判定区分5つがそれぞれ何を表すのか、対象になる損傷と対象外の線引き、調書4枚と「済・未・外」の書き分けを、要領(案)の原文から整理します。定期点検側の健全性と対策区分は健全性の診断(判定区分Ⅰ〜Ⅳ)とは?定義と判定の考え方と対策区分(A・B・C1・C2・E1・E2・M・S1・S2)一覧と判定の考え方が対応します。
市町村向けに書かれた、落下と転倒だけの点検
適用範囲は道路法の条文から入ります。
「総点検実施要領(案)【橋梁編】(以下、「本要領(案)」という。)は、道路法(昭和27年法律第180号)第3条に規定する道路の道路橋に適用する。なお、本要領(案)は、道路利用者及び第三者の被害が多いと想定されるような幹線道路に主として適用するが、その他の道路にも準用できる。」
続いて「また、本要領(案)は、主として市町村が総点検を実施する際の参考として作成したものであり、各道路管理者が本要領(案)の点検内容を越えての」点検を行うことを妨げない趣旨の記述が置かれています。「参考として」という位置づけなので、定期点検要領のような技術的助言とは強さが違います。国の要領と自治体のマニュアルの関係は国交省要領と都道府県の点検マニュアルの関係:どちらに従う?で扱っています。
実施フロー(図-1)には目的が3つ並びます。
| 目的 | 内容(原文) |
|---|---|
| 目的① | 現状で、道路利用者又は第三者被害が生じる恐れのある事象の特定 |
| 目的② | 将来的に、これら被害が生じる危険性が考えられる構造及び事象の特定 |
| 目的③ | 構造本体の著しい損傷などの異常による、重大事故の危険性の有無の評価 |
目的①と②が本体で、③は「可能な範囲で確認を行う」という扱いです。要領(案)はその理由を、着目すべき箇所が違うからと説明しています。
「道路利用者及び第三者被害防止のために着目すべき箇所とは、着目すべき箇所が一致しない。」
総点検は第三者被害と道路利用者被害の予防に特化した点検で、構造の健全性を測る点検とは見る場所がそもそも別だということです。定期点検以外の点検の種類は定期点検だけではない橋梁点検|通常・中間・特定・異常時点検とはにまとめてあります。
対象橋梁は2つの観点で選ぶ
対象橋梁の選び方は、被害を受ける相手で2つに分かれます。
| 観点 | 標準とする橋梁(原文) |
|---|---|
| ①第三者被害の予防 | 桁下を道路が交差する場合 |
| 桁下を鉄道が交差する場合 | |
| 桁下を公園又は駐車場として使用している場合 | |
| 近接して側道又は他の道路が並行する場合 | |
| ②道路利用者被害の予防 | 下路橋、中路橋等、路面より上方に橋梁部材が存在する場合 |
| 道路照明柱等の附属物等が、路面より上方に設置されている場合 | |
| 防護柵が設置されている場合(車や人の路外逸脱の観点) |
②のまとめ方が独特です。要領(案)は「等、建築限界内(歩道を含む。)に橋梁部材や道路附属物からの落下物や転倒物が侵入する可能性がある橋梁とする。」としており、建築限界という設計側の概念で範囲を切っています。橋梁利用者と第三者の区別は横断歩道橋では渡っている人も「第三者」|落下予防の対象が道路橋と違うが対応します。
そのうえで、径間の数え方の例が2つ示されています。
「○3径間連続橋梁で、中央径間に交差道路がある場合の対象は、中央径間が対象となる。○河川を渡河している橋梁で、橋梁下の利用がなされていない場合は、桁下は対象外となる。(いずれの場合も、路面上に附属物施設がある場合は点検対象)」
桁下が対象外になっても、路面上の附属物があればその橋は点検対象から外れません。桁下と路面上が別々に判定される構造です。
点検箇所の規定には、台帳に関する一文が入っています。
「なお、管理台帳等に記載のない施設や部品等であっても、現地に存在しているものは、全て対象である。当該施設や部品等の存在を点検時に確認した場合は、記録し、以降の管理の充実を図ることが重要である。」
台帳が不完全であることを前提に書かれており、点検が台帳を更新する側に回る建て方です。橋梁台帳の記載項目は橋梁台帳とは?道路台帳との違いと閲覧、施設IDの付け方は施設IDの付け方|緯度経度18桁と付与位置のルールを参照してください。
占用物件の扱いも1行あります。「道路管理者以外が管理する占用物件については、占用者に本要領(案)と同等の点検を実施するよう要請することとする。」占用物件そのものの考え方は橋の添架物は誰が点検するのか。占用物件の線引きで扱っています。
対象損傷と、はっきり書かれた対象外
対象損傷の選び方は一貫しています。
「対象とする損傷は、部材等が落下、転倒を起こす危険性の観点で着目し、選定する。」
そのうえで「なお、点検項目を設定する(対象損傷を特定する)ことが目的ではなく、この総点検の趣旨に鑑み、現地で適切な判断と評価を行うことが極めて重要である。」と添えられています。チェックリストの消化を目的にしないという注意です。
標準的な損傷は材料別に並びます。「既に起きたもの」の扱いが損傷ごとに違うのが、この節の読みどころです。
| 材料 | 損傷 | 対象の範囲(原文の要点) |
|---|---|---|
| 鋼部材 | 著しい腐食 | 部材面積1/2以上の孔食、1/2以上の板厚減少を伴う腐食等、著しいものが対象。表面錆などの単なる腐食は、異常なしと見なす |
| き裂・破断 | 部材の両接合部にき裂が見られる等、部材の落下、転倒に繋がるものが対象 | |
| ゆるみ・脱落 | ボルト、ナット類が外れて落下する恐れがあるものが対象。既に脱落しているものは、対象外 | |
| コンクリート部材 | うき | コンクリート片やコンクリート塊となって落下する恐れがあるので、全てのうきが対象 |
| 剥離 | 既に剥離して落下した痕は、対象外。ただし、剥離痕周辺部のうきを見逃さないため、対象損傷とした | |
| ひびわれ | 漏水を伴い、併合しているひびわれ等、将来「うき」に進行するリスクが高いものを抽出する観点から、対象損傷とした | |
| その他 | 想定外の損傷 | 点検対象は橋梁本体に加え、附属物、添架物その他橋梁に付帯されているもの全てとしたため、上記で網羅されない想定外の損傷に備えて設けた |
腐食に1/2という分数が入っていること、そして表面錆を異常なしと見なすと明記していることは、定期点検の評価の考え方とは別の割り切りです。防食機能の劣化の評価は防食機能の劣化とは?腐食との違いと分類1〜3、ゆるみ・脱落はゆるみ・脱落の評価は「一群の5%」で分かれる、うきと剥離の区別はうきとは?評価はaとeだけ・剥離との違いが対応します。
そして対象外が明示されています。
「道路橋においては、これら以外にも、橋梁本体の重大損傷等による被害として、落橋、桁端部の破損による路面段差、ケーブルの破断による橋全体の異常変形、基礎の洗掘による不等沈下等が考えられる。しかし、これらを把握するためには、別途、定期点検等、本要領(案)で定めた以上の点検レベルでの点検を行うことが必要であることから、本要領(案)の対象外とした。」
ただし放置してよいという趣旨ではないと続きます。「ただし、今回の点検によりこれらの損傷を発見した場合でも、それを放置してよいとする趣旨ではなく、後述の7.に規定のとおりに、重大事故に繋がる損傷の状況及び緊急度等を判定することが必要である。」
点検方法は近接目視が基本、うきは打音が原則
方法の規定は短く、1か所だけ強い指定があります。
「点検の方法は、近接目視を基本とし、点検項目に応じて、触診、打音検査等を併用する。ただし、コンクリートの「うき」に対しては、打音検査の実施を原則とする。」
近接目視という語の定義は近接目視とは?定義と「同等の評価が行える他の方法」の要件で扱っています。表-2には、損傷ごとの標準的な方法と、必要に応じて採用できる方法が並びます。
| 材料 | 損傷の種類 | 点検の標準的な方法 | 必要に応じて採用することができる方法の例 |
|---|---|---|---|
| 鋼部材 | 著しい腐食 | 近接目視点検 | ノギス、超音波板厚計 |
| き裂・破断 | 近接目視点検、打音検査 | 渦流探傷試験、磁粉探傷試験、超音波探傷試験、浸透探傷試験 | |
| ゆるみ・脱落 | 近接目視点検、打音検査、触診 | 超音波探傷試験、軸力計を使用した調査 | |
| コンクリート部材 | うき | 近接目視点検、打音検査 | 赤外線サーモグラフィ法(スクリーニング) |
| 剥離 | 近接目視点検、打音検査 | - | |
| ひびわれ | 近接目視点検、打音検査 | クラックゲージ、画像解析 | |
| その他 | ボルト類 | 近接目視点検、打音検査、触診 | - |
| その他 | 近接目視点検 | 適切な手法 |
赤外線法が(スクリーニング)と括弧付きで位置づけられている点に注意してください。うきの確定には打音が原則なので、赤外線は絞り込みの道具という扱いです。撮影条件の考え方は赤外線法によるうき・剥離調査とは?打音検査との関係が対応します。
非破壊検査を使う場合の条件も1行で付いています。「なお、この場合は、当該検査法に精通した技術者(場合によっては有資格者)が実施しなければならない。」
応急措置は3つの例が挙がります。「・コンクリート部材のうきをハンマーでたたき落とす ・ナットのゆるみの再締め付け ・落下可能性のある部品等の撤去」。そして限界も書かれています。
「更には、応急措置が恒久対策を兼ねることは多くない。例えば、コンクリートのうきのたたき落とし後は、断面修復等が必要である。」
たたき落とし作業そのものは点検中の叩き落とし作業とは?ハンマーの重さと打音の間隔で扱っています。
判定区分は無・B・C・D・未の5つ
判定の単位が最初に示されます。
「総点検では、損傷状況を把握した上で、かつ、応急措置の結果を含め、部材毎に、道路利用者又は第三者被害が生じる恐れの観点で、点検結果の判定を行う。」
部材毎です。橋単位でも径間単位でもありません。健全性の判定が施設単位であることとは違う決め方なので、ここを取り違えると調書の枚数が合わなくなります。判定の単位の違いは健全性の診断は最も厳しい部材で決めるのか?改定後の考え方で扱っています。
5つの区分は、次の順で決まります。
| 区分 | どういうときに付くか(原文の要点) | 付いたら作るもの |
|---|---|---|
| 未 | 点検が実施できなかった場合。橋梁全体が点検できなかった場合に加え、部材の一部のみ点検できなかった場合も該当 | 点検ができなかった理由及び実施予定の点検計画(時期・方法)を策定・記録 |
| B | 異常があり、応急措置にて当面のリスクが回避できた場合 | - |
| C | 応急措置ができなかった場合、応急措置を試みたもののその目的が達成できなかった場合 | できなかった理由及び実施予定の措置計画(時期・方法)を策定・記録 |
| D | 異常は「無」だが、将来被害リスクが拡大する危険性が予測(想定)される場合 | - |
| 無 | 異常が「無」で、将来の被害リスクが拡大する危険性がない場合 | - |
並べ替えると構造が見えます。異常ありの枝はBとC(応急措置が効いたかどうか)、異常なしの枝は無とD(将来のリスクがあるかどうか)、そして点検できなかった枝が未です。Aが無いのは、定期点検の対策区分A(措置を行う必要がない)に当たる位置が、この要領では「無」になっているためと読めます。ただし要領(案)はAを置かない理由を書いていません。健全度と健全性の用語の違いは「健全度」とは?道路橋の点検で正しいのは「健全性」が対応します。
もう1つ、区分の表に入らない判定があります。
「②構造的要因等の潜在的リスク 構造面から、フェールセーフ機能の追加の必要性の観点で判定する。必要性ありと判定した場合は、その状況、緊急度等を含めて判定する。」
こちらは記号ではなく、総括表の特記事項欄に書く扱いです。フェールセーフの考え方そのものはフェールセーフと伸縮装置の評価|様式その9-1・9-2で扱っています。
重大事故につながる損傷は別枠で緊急度を判定する
sec3 で対象外とされた重大損傷も、見つけた場合は判定します。
「総点検の範囲において、重大事故(落橋等)に繋がる損傷を発見した場合は、その状況、緊急度等を判定する。」
例として6つが挙げられています。
| 順 | 重大事故につながる損傷の例(原文) |
|---|---|
| 1 | 主桁のウエブ・フランジに生じたき裂 |
| 2 | 鈑桁の桁端部に生じた著しい板厚減少を伴う腐食 |
| 3 | 支承の著しい損傷 |
| 4 | 橋軸方向PC鋼材(周辺のグラウト、シースを含む。)の著しい腐食、破断 |
| 5 | トラスの斜材・垂直材、アーチの吊り材の著しい腐食、き裂、破断 |
| 6 | 斜張橋の斜材、吊り橋のケーブルの著しい腐食、き裂、破断 |
実施フロー(図-1)では、重大事故の危険性が「有」のとき緊急度を判定し、高い場合は「道路管理者に連絡」へ、低い場合は記録して「必要に応じ、対策実施」へ分かれます。緊急度の高低で連絡が走るかどうかが決まる構造です。疲労き裂の見つけ方は疲労亀裂が疑われる橋は何で見るのか|渦流探傷と磁粉探傷、支承部の異常は支承部の機能障害とは?評価がaとeしかない理由が対応します。
調書4枚と「済・未・外」の書き分け
記録の規定は1文です。「総点検結果は、次の様式に記録し、保管する。」そして「記録した調書は、次回点検時に活用できるよう保管する。」と添えられています。
| 様式 | 名称 | 作成の単位(原文の注記) |
|---|---|---|
| ① | 総点検調書:橋梁諸元 | 橋単位(橋梁ID・位置情報・幅員・交通条件・路下条件など) |
| ② | 総点検調書:総括表 | 径間番号を記入し、部材を縦に並べて点検状況・対象の有無・異常の有無・特記事項を記入 |
| ③ | 総点検調書:損傷記録表 | 1つの部材につきなるべく1枚で作成。判定結果は損傷の種類毎に記載 |
| ④ | 総点検調書:点検予定表 | 1径間につき、1枚作成 |
総括表の4つの欄の書き方が、注記で指定されています。
| 欄 | 書く内容(原文の注記) |
|---|---|
| ① | 点検状況を、「済」「未」「外」で記載。「未」の場合、「点検予定表」を作成 |
| ② | 対象施設の有無を、「有」「無」で記載 |
| ③ | 異常の有無を、「有」「無」で記載。「有」の場合、「損傷記録表」を作成 |
| ④ | 「フェールセーフ機能の追加の必要性あり」「重大事故につながる損傷を発見」等、特記事項を記載 |
「外」の定義が注記に明記されています。「「外」とは、道路利用者及び第三者への被害が想定されない箇所のため、点検対象外であることを示す。」「未」と「外」はどちらも点検していない状態ですが、「未」は点検予定表を作る義務が付き、「外」は付きません。この2つを混ぜると、作らなくてよい予定表が増えるか、作るべき予定表が落ちます。
橋梁IDの取り方も独特です。「橋梁IDは、起点の位置情報(緯度・経度)によるものとする。」「緯度・経度については、0.1″単位まで記入することとする。」そして取得手段として「トータルステーション、ポータブルGPS等の機器のほか、携帯電話及びスマートフォンのGPS機能を用いて簡易に取得可能であるので参考とされたい。」と書かれています。平成25年の要領でスマートフォンのGPSを明示している点が、市町村向けという位置づけを表しています。
損傷記録表には「No.欄には、同一径間内における通し番号を記載」という指定があり、ポンチ絵・写真の欄には「・対象部材の位置 ・損傷部位と損傷程度 ・応急措置の前後 等」を入れることになっています。応急措置の前後が同じ欄に入るのは、B判定とC判定の根拠がここで示されるからです。
留意事項5項目に書かれている抜け道
巻末の留意事項には、実務で効く条件が並びます。
①既にあるデータを使えるという規定です。「「橋梁定期点検要領(案)」(平成16年3月 国土交通省国道・防災課)及び「橋梁における第三者被害予防措置要領(案)」(平成16年3月 国土交通省国道・防災課)、「道路附属物(標識、照明施設等)の点検要領(案)」(平成22年12月 国土交通省国道・防災課)等の各点検要領、又は、これに準じる独自の要領等に基づく点検を実施し、本要領(案)による点検データと同等の点検データが既にある場合は、そのデータを活用することも可能とする。」総点検のためにゼロから回り直す必要はないという設計です。
②特殊な構造は相談するという手続きです。「各道路管理者は、アーチ橋、トラス橋、斜長橋、吊り橋などの支間長75m以上程度の特殊な構造の橋梁の点検に際し、点検内容や方法について、事前に都道府県又は地方整備局を通じて、国土技術政策総合研究所や独立行政法人土木研究所に相談した上で点検を実施することも考慮し、点検計画を策定することとする。」支間長75m以上程度という具体的な線が引かれています(原文は「斜長橋」と表記されており、ここも原文のまま転記しています)。
③施設の機能点検は対象外です。「本要領(案)では、施設類(灯具、電気設備、通信設備等)の機能・性能状態に関する点検は対象外としている。一方で、近接目視にあわせて、例えば同時に電球を交換するなど、軽微な対応を行うことを否定してはいない。」照明や標識の点検要領との役割分担は附属物(標識、照明施設等)点検要領とは?5つの点検種別と頻度と小規模附属物点検要領と標識柱・照明柱の点検頻度が対応します。
④は他施設との連携、⑤は交通安全です。⑤には点検者自身が明記されています。「点検実施時は、第三者はもちろんのこと、点検者自身も含めて交通事故防止、交通安全の確保に十分に留意すること。」交通規制の手続きは橋梁点検の交通規制は誰が決めるのか。要領に無く積算にあるで整理しています。
1径間を判定区分まで持っていく流れ
編集部が、ここまでの要領(案)の規定だけを使って、桁下を道路が交差する1径間を想定して並べたものです。要領(案)に載っている事例ではありません。各行の根拠は上の各節に示した原文です。
| 順 | 現場での状態 | 調書と判定区分 |
|---|---|---|
| 1 | 桁下を道路が交差する径間のため対象。路面上の照明柱も対象に入れる | 橋梁諸元に路下条件、総括表の径間番号を記入 |
| 2 | 台帳に無いケーブルラックが添架されていた | 総括表の②欄に「有」。存在を記録して以降の管理へ回す |
| 3 | 床版下面を打音し、うきを確認。ハンマーでたたき落として処置完了 | ③欄に「有」→損傷記録表を作成。応急措置が効いたのでB |
| 4 | 高欄の取付ボルトにゆるみ。工具が入らず再締め付けできなかった | 損傷記録表に「できなかった理由」と措置計画。C |
| 5 | 支承部は異常なし。ただし漏水が続いており将来のうきが想定される | 異常は「無」だが将来リスクあり。D |
| 6 | 排水管は異常なしで、進行の懸念もない | 無 |
| 7 | 対傾構は足場が入らず近接できなかった | ①欄に「未」→点検予定表を1枚作成。未 |
| 8 | 桁下が河川で第三者が立ち入らない下部工 | ①欄に「外」。点検予定表は作らない |
この並べ方をすると、同じ「見ていない」でも 7 と 8 で後の手続きが分かれることが分かります。「未」は予定表が1枚増え、「外」は増えない。そして 3 と 4 は、措置が効いたかどうかだけでBとCに分かれます。異常の重さではなくその日に処置しきれたかで記号が決まるのが、定期点検の対策区分との一番の違いです。
補修・補強材そのものの損傷の扱いは補修・補強材の損傷とは?5分類で変わる評価が対応します。
よくある質問
総点検の判定区分は健全性Ⅰ〜Ⅳと同じですか。
違います。総点検実施要領(案)【橋梁編】の判定区分は無・B・C・D・未の5つで、定期点検の健全性Ⅰ〜Ⅳや対策区分A〜Eとは別の体系です。Aに当たる区分は置かれていません。判定の単位も部材毎で、健全性の診断が施設単位であることとは異なります。
BとCはどう使い分けますか。
応急措置が効いたかどうかで分かれます。要領(案)は「応急措置にて当面のリスクが回避できた場合は、判定区分「B」とする。応急措置ができなかった場合、応急措置を試みたもののその目的が達成できなかった場合は判定区分「C」とし、できなかった理由及び実施予定の措置計画(時期・方法)を策定・記録する」としています。損傷の重さではなく、その場で処置しきれたかで決まります。
Dはどういう状態に付きますか。
異常が「無」と判定されたもののうち、将来の被害リスクが拡大する危険性が予測(想定)される場合です。要領(案)は「将来の被害リスクが拡大する危険性がない場合は判定区分「無」とし、危険性が予測(想定)される場合は判定区分「D」とする」としており、予防保全が望ましいかどうかの観点で判定します。
「未」と「外」は何が違いますか。
どちらも点検していない状態ですが、後の手続きが違います。「未」は点検が実施できなかった箇所で、総括表の注記により「点検予定表」を作成します。「外」は注記で「道路利用者及び第三者への被害が想定されない箇所のため、点検対象外であることを示す」と定義されており、予定表の作成は求められていません。
表面の錆は記録しなくてよいのですか。
総点検の対象損傷としては扱いません。要領(案)は鋼部材の「著しい腐食」を「部材面積1/2以上の孔食、1/2以上の板厚減少を伴う腐食等、著しいものが対象」とし、「なお、表面錆などの単なる腐食は、異常なしと見なす」と明記しています。これは落下・転倒の危険性という観点に絞った割り切りで、定期点検での腐食の評価とは判断の基準が違います。
既に落ちているボルトや剥離は対象になりますか。
扱いが分かれます。ボルト・ナット類は「既に脱落しているものは、対象外」です。剥離は「既に剥離して落下した痕は、対象外」としながら、「ただし、剥離痕周辺部のうきを見逃さないため、対象損傷とした」と続きます。うきについては「全てのうきが対象」です。
落橋や基礎の洗掘は総点検で見ないのですか。
対象外とされています。要領(案)は落橋、桁端部の破損による路面段差、ケーブルの破断による橋全体の異常変形、基礎の洗掘による不等沈下等について、把握には定期点検等のより高い点検レベルが必要であることから対象外としました。ただし「それを放置してよいとする趣旨ではなく」、発見した場合は重大事故に繋がる損傷の状況及び緊急度等を判定することが必要とされています。
定期点検を済ませている橋でも、総点検を別に回す必要がありますか。
留意事項①に、既存データを活用できる規定があります。橋梁定期点検要領(案)(平成16年3月)、橋梁における第三者被害予防措置要領(案)(平成16年3月)、道路附属物(標識、照明施設等)の点検要領(案)(平成22年12月)等の各点検要領、またはこれに準じる独自の要領等に基づく点検を実施し、本要領(案)による点検データと同等の点検データが既にある場合は、そのデータを活用することも可能とされています。
出典・適用範囲
- 国土交通省 道路局「総点検実施要領(案)【橋梁編】」(平成25年2月) — 1.適用範囲/2.総点検の目的/3.総点検の対象橋梁及び箇所(対象橋梁の2観点・対象例・台帳未記載の施設・対象外とした重大損傷・占用物件)/4.対象損傷(鋼部材3種・コンクリート部材3種・その他、および表-1 主な着目箇所)/5.点検の方法(近接目視を基本・うきは打音を原則・表-2 損傷毎の標準的な方法と採用できる方法の例・非破壊検査の実施者)/6.応急措置(3つの例と限界)/7.総点検結果の判定(判定の単位・無/B/C/D/未の決まり方・フェールセーフ機能の追加の必要性・重大事故につながる損傷の6例・表-3 点検結果の判定区分)/8.総点検の実施フロー(図-1の目的①〜③と緊急度判定の分岐)/9.総点検結果の記録(調書4枚)/留意事項①〜⑤/標準的な記録様式(橋梁諸元・総括表の注記1〜4・損傷記録表・点検予定表)の確認に使用(当夜取得 HTTP 200・全15ページ・380,075バイト)
- 国立研究開発法人土木研究所 構造物メンテナンス研究センター(CAESAR)「維持管理関係(点検・調査)」 — 上記PDFの掲載一覧における書名「総点検実施要領(案) 平成25年2月」・分類「道路ストックの総点検」・出版者「国土交通省道路局」の確認に使用(当夜取得 HTTP 200)
本記事は、総点検実施要領(案)【橋梁編】の判定区分と記録の決まりを原文から読み解くための実務解説です。扱っているのは、適用範囲・目的・対象の選び方・対象損傷の線引き・点検方法・判定区分5つと緊急度判定・調書4枚と欄の注記・留意事項までです。表-1「主な着目箇所及び主な損傷の種類」の全セル(対象部材と着目部位の対応およびハッチセルの対象外の指定)、参考-2「点検の主な着目点」、参考-3「損傷事例等写真集」、参考-4「総点検調書の記入例」、および【舗装編】ほか他編の内容は扱っていません。また本要領(案)は平成25年2月に示されたもので、要領(案)自身が「主として市町村が総点検を実施する際の参考として作成した」と位置づけています。現在どの管理者がどの範囲で運用しているか、定期点検や個別施設計画との関係をどう整理するかは道路管理者の判断によります。要領(案)からの引用は、当夜取得したPDFの表記(全角数字・漢数字・「斜長橋」などの表記を含む)をそのまま転記しています。