この記事の要点
  • 区分Ⅰ・Ⅱの橋が、措置をしないまま5年後にⅢ・Ⅳへ動いた割合は3%(母数503,278橋)
  • 同じ条件でトンネルは14%、道路附属物等は7%。施設の種類で4倍以上の差があります
  • 橋梁は建設後経過年数に比例。〜10年0.4%に対し51年以上は6%で15倍です
  • 管理者別では国土交通省5%・高速道路会社6%・都道府県/政令市等5%に対し、市区町村は3%
  • 母数は「5年のあいだに修繕等の措置を講じていない施設」。措置した橋は入っていません
  • 3%は小さく見えますが、実数ではおよそ1万5千橋が5年で早期・緊急措置段階に入った計算になります

長寿命化修繕計画の見直しでも、次年度の予算要求でも、必ず聞かれる問いがあります。「今Ⅱの橋は、放っておくと何年でⅢになるのか」です。これまでは経験則で答えるしかありませんでしたが、点検が2巡目・3巡目に入ったことで、同じ橋を5年後にもう一度見た結果が全国規模で集計できるようになりました。

道路メンテナンス年報(2026年8月・国土交通省道路局)には、判定区分Ⅰ・Ⅱの施設の5年後の遷移状況という節があります。この記事では、その数字を橋梁・トンネル・道路附属物等の3つ、管理者別、建設後経過年数別に読み解きます。判定区分そのものの定義は健全性の診断(判定区分Ⅰ〜Ⅳ)とはをご覧ください。

何と何を比べた数字なのか

年報の本文は、集計の条件をこう書いています。

「2016~2020 年度の点検で健全又は予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態(区分Ⅰ・Ⅱ)と判定された橋梁のうち、修繕等の措置を講じないまま、5年後の 2021~2025 年度の点検において、早期又は緊急に措置を講ずるべき状態(区分Ⅲ・Ⅳ)へ遷移した橋梁の割合は全道路管理者合計で 3%です。」

注記はさらに母数を限定しています。「直近5年間(2021~2025 年度)に点検を実施した橋梁のうち、前回点検を5年前(2016~2020 年度)に実施しており、判定区分がⅠまたはⅡで修繕等の措置を講じていない施設数の合計」です。

ここが読み方の要です。この3%は「何もしなかった場合の5年後」に近い数字であって、全国の橋の劣化速度そのものではありません。措置を講じた橋は母数から外れているので、予防保全が効いた分は数字に入っていません。予防保全と事後保全の考え方の違いは予防保全と事後保全の違いで整理しています。

橋は3%、トンネルは14%

同じ条件で3種類の施設を並べると、差がはっきり出ます。

施設母数(施設数)5年後にⅢ・Ⅳへ遷移した割合
橋梁503,278橋3%
トンネル4,411本14%
道路附属物等23,296施設7%

トンネルの14%は橋梁の4.6倍です。年報はこの差の理由を書いておらず、書いているのは「建設後経過年数が 31 年以上となるトンネルでは、判定区分Ⅰ・Ⅱから判定区分Ⅲ・Ⅳに遷移した割合が高くなっています。」という傾向だけです。橋梁と道路附属物等については「建設後経過年数に比例して」という表現が使われており、書き分けられています。原因の推定はここでは行いません。

実務上の意味は明快で、トンネルを橋と同じ感覚で「Ⅱだから次回でよい」と置くと外れやすいということです。トンネルの点検の枠組みは道路トンネル定期点検要領にまとめています。

建設後経過年数で15倍の差が出る

橋梁を建設後経過年数で割ると、次のようになります。

建設後経過年数母数(橋)Ⅲ・Ⅳへ遷移
〜10年2,0200.4%
11〜20年21,0161%
21〜30年46,7292%
31〜40年69,8582%
41〜50年88,1754%
51年以上138,0626%
不明137,4182%

〜10年の0.4%と51年以上の6%では15倍です。曲がり角は41年のあたりで、そこから傾きが変わります。

あわせて見ておきたいのが「不明」が137,418橋と、51年以上(138,062橋)とほぼ同じ規模だという点です。年報は建設年度不明の橋梁が約19.3万橋あるとしています。建設年度が分からない橋は経過年数で優先順位を付けられないため、この層をどう扱うかが計画側の実務になります。台帳の整備は橋梁台帳の話です。

同じ条件でトンネルを見ると、〜10年が4%、11〜20年が9%、21〜30年が12%、31〜40年が16%、41〜50年が20%、51年以上が18%です。トンネルは〜10年の時点ですでに4%で、橋梁の51年以上に近い水準から始まります。道路附属物等は〜10年が1%、41〜50年が11%、51年以上が15%です。

管理者別に見ると市区町村がいちばん低い

管理者母数(橋)Ⅲ・Ⅳへ遷移
全道路管理者503,2783%
国土交通省26,5685%
高速道路会社14,4076%
地方公共団体計462,3033%
都道府県・政令市等130,6345%
市区町村331,6693%

母数の9割以上が地方公共団体で、そのうち市区町村が331,669橋を占めます。全道路管理者合計の3%は、ほぼ市区町村の数字に引っ張られた値です。国が管理する橋のほうが遷移率が高いという並びになっている点は、そのまま読むと意外に見えます。ただし橋の規模が違います。国土交通省の管理橋は51%が橋長15メートル未満で、高速道路会社は37%が100メートル以上、市区町村は81%が15メートル未満です。母集団の構成が違うものを並べているので、管理の巧拙の比較には使えません。

2021〜2025年度の側の内訳も示されており、全道路管理者ではⅠが45%、Ⅱが52%、Ⅲが3%、Ⅳが0.02%です。5年前の時点ではⅠが48%・Ⅱが52%でしたから、Ⅰの一部がⅡへ動き、Ⅱの一部がⅢへ動いたという流れが読み取れます。

3%を実数に直すと約1万5千橋

割合のままだと小さく見えますが、母数が503,278橋なので、3%はおよそ1万5千橋です。5年のあいだに、それだけの橋が「早期に措置を講ずべき状態」へ入った計算になります。

全体の規模感も押さえておきます。過年度の点検(2014〜2025年度)の集計では、橋梁の判定区分はⅠが44%、Ⅱが49%、Ⅲが7%、Ⅳが0.1%で、修繕等が必要な区分Ⅲ・Ⅳの橋梁は51,046橋とされています。直近の3巡目(2024〜2025年度)だけを見ると、点検実施数285,424橋に対しⅢが18,698橋、Ⅳが178橋です。点検実施率は橋梁39%・トンネル34%・道路附属物等38%で、3巡目はまだ途中です。残りの進め方は3巡目定期点検のスケジュールで整理しています。

この数字を計画にどう持ち込むか

長寿命化修繕計画や予算資料で使うときの、無理のない使い方を3つ挙げます。

  • 「次の5年で何橋がⅢに入るか」の目安を置く。自組織の区分Ⅱの橋数に、建設後経過年数の構成を当てた遷移率を掛けます。全体に3%を掛けるより、年数階級ごとに掛けたほうが実態に近づきます
  • トンネルと道路附属物等を、橋と同じ扱いにしない。同じ「Ⅱ」でも5年後の動き方が4倍から2倍違います。点検と措置の順番を決めるときの重みが変わります
  • 建設年度不明の層を別枠にする。経過年数で優先順位を付ける方法が使えないため、この層だけは別の指標(架橋環境・交通量・過去の損傷履歴)で並べる必要があります

いずれも、年報の数字をそのまま自組織の予測値として使うものではありません。母数の作り方(措置を講じていない施設に限る)と、施設構成の違いを添えて示すのが正確な出し方です。計画の書式そのものは橋梁長寿命化修繕計画とは、個別の対策の区分は対策区分の一覧をご覧ください。年報全体の読み方は道路メンテナンス年報とはにまとめています。

よくある質問

Q. 判定区分Ⅰ・Ⅱの施設は、5年後にどれくらいⅢ・Ⅳへ動きますか。
A. 道路メンテナンス年報(2026年8月)によれば、2016〜2020年度の点検で区分Ⅰ・Ⅱと判定され、修繕等の措置を講じないまま2021〜2025年度の点検を受けた橋梁のうち、区分Ⅲ・Ⅳへ遷移したのは全道路管理者合計で3%です。母数は503,278橋なので、実数ではおよそ1万5千橋にあたります。トンネルは14%(母数4,411本)、道路附属物等は7%(母数23,296施設)です。

Q. なぜトンネルだけ14%と高いのですか。
A. 年報は理由を書いていません。示されているのは数字と、建設後経過年数が31年以上のトンネルで遷移した割合が高くなっているという傾向だけです。橋梁では経過年数に比例して遷移率が上がるとされ、トンネルでは31年以上で高くなるという書き分けになっています。原因の推定は年報の記述の範囲を超えるため、ここでは断定しません。

Q. 建設後経過年数で遷移率はどう変わりますか。
A. 橋梁では、〜10年が0.4%、11〜20年が1%、21〜30年が2%、31〜40年が2%、41〜50年が4%、51年以上が6%です。建設年度不明は2%と示されています。〜10年と51年以上では15倍の開きがあります。

Q. この3%という数字は、自分の組織にそのまま当てはめてよいですか。
A. 管理者ごとに差があります。橋梁の遷移率は国土交通省が5%、高速道路会社が6%、都道府県・政令市等が5%、市区町村が3%です。母数も国土交通省26,568橋、高速道路会社14,407橋、地方公共団体計462,303橋と大きく違います。自組織の構成(建設年度の分布・構造形式・架橋環境)に置き換えて読む必要があります。

Q. 母数に含まれるのはどんな施設ですか。
A. 年報の注記は「直近5年間(2021~2025 年度)に点検を実施した橋梁のうち、前回点検を5年前(2016~2020 年度)に実施しており、判定区分がⅠまたはⅡで修繕等の措置を講じていない施設数の合計」としています。つまり、5年のあいだに修繕等の措置を行った施設は母数から外れています。この3%は「放置した場合の5年後」に近い数字です。

Q. 区分Ⅲ・Ⅳの橋は全体でどれくらいありますか。
A. 過年度の点検(2014〜2025年度)の集計では、橋梁の判定区分の割合はⅠが44%、Ⅱが49%、Ⅲが7%、Ⅳが0.1%で、修繕等が必要な区分Ⅲ・Ⅳの橋梁は51,046橋と示されています。3巡目(2024〜2025年度)に限れば、点検実施数285,424橋に対してⅠ45%(128,962橋)、Ⅱ48%(137,586橋)、Ⅲ7%(18,698橋)、Ⅳ0.1%(178橋)です。

出典・適用範囲

出典:国土交通省 道路局「道路メンテナンス年報」(2026年8月)2.(2)判定区分Ⅰ・Ⅱの施設の5年後の判定区分Ⅲ・Ⅳへの遷移状況(橋梁・トンネル・道路附属物等)、2.(1)3巡目の点検結果、2.(3)過年度の点検の判定区分、7.(1)橋梁の現状。図中の割合は年報の表記のまま転記しています。四捨五入の関係で合計値が100%にならない場合があると年報が注記しています。数値は公表時点のもので、最新版は必ず原典をご確認ください。 原典リンク:道路メンテナンス年報(2026年8月・国土交通省 道路局)。

判定区分Ⅳになった橋が必ず通行止めになるのかは健全性Ⅳは必ず通行止めになるのか、施設単位のデータの引き方は全国道路施設点検データベースで扱っています。