橋梁の定期点検業務を受託すると、点検調書そのものより先に「電子納品」でつまずくことがあります。INDEX_D.XML が通らない、フォルダ名が弾かれる、適用要領基準の版が古いと指摘される。ところが点検要領を何度読んでも、この話は一行も出てきません。

電子納品のルールは点検要領ではなく、国土交通省 大臣官房技術調査課が所管する別系統の要領・ガイドラインに書かれています。本記事では、その中心にある「土木設計業務等の電子納品要領」(令和8年2月)「電子納品運用ガイドライン【業務編】」(令和8年2月)の原文をもとに、点検業務の成果品がどの枠組みで納まるのか、令和8年4月1日以降の契約で何が変わったのかを整理します。

この記事の要点
  • 電子納品要領の本編にも運用ガイドライン【業務編】にも、「点検」という語は1度も出てこない。点検業務は「土木設計業務等」の枠に入れて運用されている
  • 何を電子成果品にするかは要領が決めるのではなく、業務着手時の事前協議で決めるとガイドラインが明記している
  • 令和8年2月改定で実際に変わったのは2点だけ。測地系へのJGD2024追加と、Windows予約語をフォルダ名・ファイル名に単体で使わないこと
  • 管理ファイルに書く適用要領基準は「土木202602-01」で固定。令和6年3月版の「土木202403-01」から変わる
  • 設計書コードの説明が具体化され、CCMS設計書番号(基本的には数字16桁)を記入すると明記された

電子納品とは:要領が定義している言葉

まず用語です。要領の「2 用語の定義」は、次のように定めています(逐語)。

  • 納品とは、受注者が発注者に業務完成時に成果品を納めることをいう。」
  • 電子成果品とは、電子的手段によって発注者に納品する成果品となる電子データをいう。」
  • 電子納品とは、受注者が発注者に、電子成果品を納品することをいう。」
  • オンライン電子納品とは、情報共有システムに登録された電子成果品をインターネット経由で納品することをいう。」
  • 電子検査とは、書類を紙に出力せずに電子データを利用して行う検査をいう。」
  • オリジナルファイルとは、CAD、ワープロ、表計算ソフト、3次元モデル、点群データ、スキャニング(紙原本しかないもの)によって作成した電子データ等のことをいう。」
  • 公開用成果品とは、情報開示に対応するために個人情報等の公開すべきでない情報をマスキングしたデータをいう。」

実務で効くのはオリジナルファイルの定義に「点群データ」が明記されていることです。点検にレーザ計測を使った場合、その点群は「ワープロや表計算で作った電子データ」と同じ扱いの成果物として要領の視野に入っています。詳しくはLiDAR・点群データの橋梁点検活用もあわせてご覧ください。

もう1つ、「紙原本しかないものをスキャニングしたもの」もオリジナルファイルに含まれます。現場でしか手に入らない紙資料を抱えた業務でも、電子納品の枠から外れるわけではありません。

点検業務はどの要領で納めるのか

ここが本記事の芯です。要領の「1 適用」は、対象を次のように書いています(逐語)。

「土木設計業務等の電子納品要領」は、国土交通省が発注する土木工事に係る設計及び計画業務に係る土木設計業務等委託契約書及び設計図書に定める成果品を電子的手段により提出する際の基準を定めたものである。なお、測量、地質・土質調査等に関する業務についてもこれに準ずる。

「設計及び計画業務」と「測量、地質・土質調査等」が名指しされ、点検業務という言葉は出てきません。念のため機械的に数えました。本編(令和8年2月版)に「点検」は0件、「維持管理」も0件です。運用ガイドライン【業務編】(令和8年2月版・本文16万字超)でも「点検」は0件でした。一方で「測量」は本編に13回、「調査」は12回出てきます。

ガイドラインの「1.2 適用する事業」も、適用先を「国土交通省直轄事業の土木設計業務、測量業務、地質・土質調査業務」とし、事業分野として河川事業・道路事業・公園事業の3つを挙げるにとどまります。

つまり、点検業務の電子納品は「点検業務向けの規定がある」のではなく、土木設計業務等の枠に入れて運用されているのが実態です。だからこそ、点検要領を読んでも電子納品の話が出てこないという状態が起きます。何を納めるかの具体は、次に述べる事前協議と、発注者の特記仕様書の側に置かれています。

補足:ここで扱っているのは国土交通省直轄事業のルールです。都道府県・市町村が発注する点検業務では、各発注者が独自の電子納品要領や運用ガイドラインを定めている場合があります。国の要領と自治体マニュアルの関係については国交省要領と都道府県の点検マニュアルの関係で扱っています。

何を電子成果品にするかは事前協議で決まる

ガイドラインは「4 事前協議」で、業務着手時に発注者と受注者で協議すべき事項を次のように列挙しています。

記号協議事項(ガイドライン 4.1)
業務中の情報交換方法(情報共有システムの活用)
電子成果品とする対象書類
測量業務における協議事項
地質・土質調査業務における協議事項
施設情報の登録の登録内容(施設コード、施設名称、測地系、緯度経度、平面直角座標)
納品方法(オンライン電子納品・電子媒体による納品、成果品チェック方法)
その他の事項

そのうえで「4.3 電子成果品とする対象書類」は、対象を絞る観点を2つ示しています。「効率化が図られると判断したものを対象とすること」「次フェーズ以降での各事業で必要なもの及び利活用が想定されるものを対象とすること」です。後者の脚注には、「維持管理フェーズで利用することで維持管理業務が効率化できる」ことが例示されています。点検成果はまさにここに当たる情報です。

あわせて「紙媒体と電子データの両方による納品は行わないことを原則とします」とも書かれています。二重納品を当然の前提にしないという方針が、ガイドライン側に明記されている点は押さえておくとよいところです。

この「業務着手時に決める」という構造は、実務上とても重要です。ガイドラインは発注者に対して、「業務中での電子成果品の変更等により、受注者に日々蓄積した電子データを無駄にさせたり、過度な負担をかけることのないよう、十分に留意してください」と釘を刺しています。納品直前に対象が動くと、それまでの整理作業が丸ごと無駄になるからです。点検調書作成の工数を減らす方法で扱っているとりまとめ工程のボトルネックとも、同じ構造の話です。

なお、電子化が難しい資料の扱いについては、要領の「10.3 電子化が困難な資料の取り扱い」が「電子化が難しいパース図類や特殊アプリケーションを利用したデータファイルの取扱いは、事前に調査職員と協議する」としています。専用ビューアが必要な点群や解析データを抱える業務では、この一文が拠り所になります。

フォルダ構成:ルート直下に置く9つ

要領の「3 フォルダ構成」は、電子媒体のルート直下に置くものを具体的に定めています。「REPORT」「OPENREP」「DRAWING」「PHOTO」「SURVEY」「BORING」「REGISTER」の7フォルダと業務管理ファイル、さらにi-Constructionに係る電子データファイルを格納するため「ICON」「BIMCIM」を置く、という構成です。

フォルダ格納するもの(要領 3 より)従う基準
REPORT報告書ファイル及び報告書管理ファイル。報告書、数量計算書、設計計算書、概算工事費、施工計画書等の文章・表・図で構成される電子データ。ORGサブフォルダに報告書オリジナルファイル本要領
OPENREP個人情報等の公開すべきでない情報をマスキングした公開用成果品ファイル本要領
DRAWING図面の電子データファイルCAD製図基準
PHOTO設計図書に規定する写真のうち写真帳として納品する写真の電子データファイルデジタル写真管理情報基準
SURVEY測量の電子データファイル測量成果電子納品要領
BORING地質・土質の電子データファイル地質・土質調査成果電子納品要領(案)
REGISTER台帳管理ファイル。ORGnnnオリジナルファイルフォルダに台帳オリジナルファイル本要領
ICONi-Constructionに係る電子データファイル関連する要領等
BIMCIMBIM/CIMに関する電子データファイル。下にDOCUMENT・MODELを置く本要領

点検調書の本体と損傷写真は、それぞれREPORTとPHOTOに分かれて入ることになります。写真はデジタル写真管理情報基準という別の基準に従うため、点検要領の写真の撮り方の話とは別に、ファイル名と管理項目の決まりが乗ってくる点に注意が必要です。写真の整理そのものについては損傷写真台帳の作り方を、損傷図の作図ルールについては損傷図(その5)の書き方をご覧ください。

また要領は「フォルダ名称は、半角英数大文字とする」「格納する電子データファイルがないフォルダは作成しなくてもよい」「外部参照を行う場合は、相対パスを原則とする」とも定めています。相対パスの原則は、納品後に別の環境で開いたときにリンクが切れないようにするための規定です。

BIM/CIMフォルダの構成はBIM/CIM原則適用と維持管理への引き継ぎで扱っている話とつながります。MODELの下に置くフォルダは、LANDSCAPING・GEOLOGICAL・ALIGNMENT_GEOMETRY・STRUCTURAL_MODEL・IMAGE・REQUIREMENTの6つと定められています。

令和8年2月改定で変わった2点

令和8年2月版は、令和8年4月1日以降に契約を締結する業務から適用されます。国土交通省が公表している「電子納品等運用ガイドライン改訂の主なポイント」は、今回の改訂内容として次の2つだけを挙げています。

1. 測地系にJGD2024が加わった

改訂ポイントの記述は次のとおりです(逐語)。

国土地理院では、令和7年4月1日に電子基準点、三角点、水準点等の標高成果を、衛星測位を基盤とする最新の値「測地成果2024」に改定した。これを受けて、測地系(コード)に世界測地系(JGD2024)を追加した。

要領側では、業務管理項目の測地系の区分コードが日本測地系「00」/JGD2000「01」/JGD2011「02」/JGD2024「03」の4つになりました。境界座標については、令和6年3月版が「JGD2011に準拠する」としていたのを、令和8年2月版は「JGD2024に準拠する」に改めています。

ここで実務上ありがたいのが、続く一文です。「境界座標を世界測地系(JGD2000、JGD2011)の測地系で取得した場合には、JGD2024の座標に変換する必要はない」と明記されています。過去に取得した座標を持ち回っている業務で、変換作業が発生しないという意味です。

あわせて、国土地理院の境界座標入力支援サービスの参照URLも更新されました。令和6年3月版が示していた psgsv2.gsi.go.jp のアドレスから、令和8年2月版では www.gsi.go.jp 配下のページに差し替わっています。

2. Windows予約語をフォルダ名・ファイル名に単体で使わない

もう1点は、名前の付け方の制限です。改訂ポイントは理由を「電子成果品のチェックや登録において問題が発生することを避けるため」と説明しています。

要領本編には、次の規定が追加されました(逐語)。

「DRAWING」フォルダ及び「BIMCIM」フォルダに、管理ファイルに規定のない任意のフォルダまたはファイルを作成する場合、フォルダまたはファイル名にはWindows予約語を単体で使用しない。

解説側には、「フォルダまたはファイル名の一部にWindows予約語を含むことは問題ない」という但し書きと、予約語の例が列挙されています。例として挙がっているのは COM1 から COM9LPT1 から LPT9CONPRNAUXNULCLOCK です。

点検業務では、DRAWINGフォルダ配下に橋ごとや径間ごとのサブフォルダを切ることがあります。連番や記号で機械的に名前を振っていると、たまたま予約語と一致してしまう余地はあります。禁止されるのは「単体で使うこと」だけなので、接頭辞や連番を組み合わせた名前であれば問題ありません。

版が上がると書き換わる管理項目

改訂ポイントには挙がっていないものの、版の切り替わりに伴って記入内容が変わる項目があります。新旧対照表から拾うと、点検業務でも必ず触るのは次の3つです。

項目令和6年3月版(R6.3)令和8年2月版(R8.2)
適用要領基準「土木202403-01」で固定
(分野:土木、西暦年:2024、月:03、版:01)
「土木202602-01」で固定
(分野:土木、西暦年:2026、月:02、版:01)
設計書コード各発注者機関で業務1件につき固有の番号として付されるもので、発注機関の指示に従い記入する地方整備局単位で設定しているCCMS設計書番号(基本的には数字16桁)を記入する。テクリスに登録する設計書コードと同じ番号を記載
測地系(業務管理項目・施設情報)00/01/02の3区分00/01/02/03の4区分(03がJGD2024)

とくに適用要領基準は「固定値」です。前回の業務のXMLを流用すると、ここが古い版のまま残ります。チェックツールで弾かれる典型がこの1行なので、契約日が令和8年4月1日以降かどうかを最初に確認しておくと手戻りが減ります。

設計書コードの説明が具体化されたのも実務的です。令和6年3月版は「発注機関の指示に従い記入する」としか書いておらず、記入例も9桁でした。令和8年2月版はCCMS設計書番号(基本的には数字16桁)と明示し、記入例も16桁に差し替わっています。テクリス(業務実績情報システム)に登録する番号と揃えるという指示も加わりました。

BIM/CIM側では、「土工形状モデル」という呼称が「土工モデル」に変更されています。フォルダ名 ALIGNMENT_GEOMETRY に格納するものの説明が「土工形状モデル及び線形モデル」から「土工モデル及び線形モデル」に改まりました。名称変更なので、格納するデータの中身が変わったわけではありません。

出典:国土交通省「土木設計業務等の電子納品要領 本編」(令和8年2月)、同「新旧対照表」、同「電子納品運用ガイドライン【業務編】」(令和8年2月)、同「電子納品等運用ガイドライン改訂の主なポイント」。いずれも電子納品に関する要領・基準のサイト(cals-ed.go.jp)で公開されています。適用は令和8年4月1日以降に契約を締結する業務からです。実際の業務では、発注者が指定する要領・基準の版を必ずご確認ください。
この記事の結論

電子納品の要領とガイドラインには「点検」という語が1度も出てきません。点検業務は「土木設計業務等」の枠で運用され、何を電子成果品にするかは業務着手時の事前協議で決まります。令和8年2月改定で変わったのは、測地系へのJGD2024追加とWindows予約語の使用制限の2点です。あわせて適用要領基準が「土木202602-01」に、設計書コードがCCMS設計書番号(基本的には数字16桁)に書き換わります。

よくある質問

橋梁点検業務の成果品は、どの電子納品要領に従えばよいですか?

国土交通省直轄事業であれば「土木設計業務等の電子納品要領」に従うのが基本です。ただし要領の「1 適用」が名指ししているのは「設計及び計画業務」と「測量、地質・土質調査等に関する業務」で、点検業務という言葉は要領にもガイドラインにも出てきません(本編・業務編ともに「点検」0件)。実際に何をどのフォルダへ納めるかは、発注者の特記仕様書と業務着手時の事前協議で確定します。都道府県・市町村発注の場合は、その発注者が定める要領を確認してください。

令和8年2月版はいつから適用されますか?

令和8年4月1日以降に契約を締結する業務から適用されます。契約日が基準なので、令和8年4月以降に納品する業務でも、契約が令和8年3月以前であれば令和6年3月版(適用要領基準「土木202403-01」)のままです。どちらの版かを最初に確定させてください。

境界座標をJGD2024に変換し直す必要はありますか?

ありません。要領は「境界座標を世界測地系(JGD2000、JGD2011)の測地系で取得した場合には、JGD2024の座標に変換する必要はない」と明記しています。ただし測地系の区分コードは取得した測地系に応じて記入します。JGD2024は「03」です。

Windows予約語はどこまで使えないのですか?

制限されるのは「DRAWING」フォルダと「BIMCIM」フォルダに、管理ファイルに規定のない任意のフォルダやファイルを作る場合です。しかも禁止されるのは予約語を単体で使うことだけで、解説は「フォルダまたはファイル名の一部にWindows予約語を含むことは問題ない」としています。例示されている予約語はCOM1からCOM9、LPT1からLPT9、CON、PRN、AUX、NUL、CLOCKです。

点群データも電子納品の対象になりますか?

要領は「オリジナルファイル」の定義に点群データを明記しており、CADやワープロで作った電子データと並ぶ扱いになっています。ただし何を電子成果品として納めるかは事前協議事項です。専用アプリケーションが必要なデータについては、要領の「10.3 電子化が困難な資料の取り扱い」が「事前に調査職員と協議する」としています。

紙と電子データの両方で納めることはありますか?

ガイドラインは「紙媒体と電子データの両方による納品は行わないことを原則とします」としています。原則として二重納品は想定されていません。個別の扱いは事前協議で決めることになります。

点検写真はREPORTとPHOTOのどちらに入りますか?

「設計図書に規定する写真のうち写真帳として納品する写真」はPHOTOフォルダで、デジタル写真管理情報基準に従って格納します。報告書の本文に貼り込まれた図表としての写真は、報告書ファイルの一部としてREPORTフォルダに入ります。どちらに該当するかは、発注者が写真帳を成果品として求めているかどうかで分かれます。